部下に「やりたいこと」を聞いたのに、手応えが残らなかったときに起きていること

はじめに|ミッションと「やりたいこと」を重ねようとしたときに起きること

とある経営者のクライアントさんとのコーチングセッションで、
会社のミッションと、社員一人ひとりの
「やりたいこと」や「成長目標」を
どう近づけていくか、という話題になりました。

組織が向かおうとしている方向と、
そこで働く人それぞれの関心や成長が、
少しずつ重なっていくこと。
そして、社員自身が
「この会社に所属していること」を
自分の成長や自己実現につながるものとして
感じられている状態。

この考え方については、
コーチとしてさまざまな立場のビジネスパーソンと
対話を重ねてきた中でも、
また、かつて自分自身が会社員だった頃、
最もパフォーマンスが高かった時期を振り返ってみても、
強く共感するところがあります。

一方で、
この考え方を実際のマネジメントや
日々のコミュニケーションに落とし込もうとすると、

「想定と違うな」と立ち止まりそうになることがあります。

たとえば、

組織が向かおうとしている方向と、社員一人ひとりの関心や成長を重ねていくきっかけとして、
「どんなことをやっていきたい?」
と問いを投げかけてみたとき。

返ってくる答えが、
自分の中で思い描いていたものと
少し違って感じられることはないでしょうか。

歯車が噛み合っていないような、ちょっとした無力感が残る。

この記事では、
こうした場面を
「質問がうまく機能しなかった」と片づけるのではなく、
その場で何が起きていたのかを、
コーチの視点から少し外側に引いて
眺めてみたいと思います。

第1章|「どんなことをやっていきたい?」という問いを投げたとき

組織の方向性と、
社員一人ひとりの関心や成長を重ねていこうとするとき、
この問いはとても自然に浮かんできます。

「どんなことをやっていきたい?」

相手を尊重しているつもりもあるし、
急かしているわけでもない。
むしろ、その人自身の考えを知りたいという
素直な関心から出てくる問いです。

実際、その場のやり取り自体は、
表面的にはきちんと成立しています。
質問が投げかけられ、
それに対して、言葉が返ってくる。

ただ、その返答を聞いた瞬間に、
管理職の側にだけ、
小さな違和感が残ることがあります。

たとえば、こんな答えです。

「まだ、そこまで考えたことがなくて……」

あるいは、

「今は、とにかく目の前の仕事を
 しっかりやりたいと思っています」

または、

「会社に求められていることを
 ちゃんとやっていきたいです」

どれも、
失礼でもなければ、
的外れでもありません。
むしろ、真面目で、無難で、
その場としては“正しい”答えにも聞こえます。

それでも、どこかで
歯車が噛み合っていないような感覚が残る。

「聞きたかったのは、
 “あなた”がやりたいことだったんだけどな

そんな思いが、
言葉にならないまま、
胸の内に残ることがあります。

このとき起きているのは、
答えが足りない、ということではありません。

返ってきた言葉は、

今の関係性の中で、
その人が安心して出せる”ちょうどいい答え”
だった、というだけです。

未来の話を避けた、というよりも、
未来の話をするには、
まだ少し距離があった。

あるいは、
その問いが
「考えを広げる問い」ではなく、
「評価される問い」として
受け取られていたのかもしれません。

もちろん、その社員さんが
未来のことにきちんと向き合っていない、
ということもあるかもしれません。

ここで大事なのは、
このやり取りを
「問いが悪かった」「引き出せなかった」
と整理してしまわないことだと思います。

コーチの立場からこの場面を眺めると、
ここで表に出ているのは、
その人の意欲や主体性ではなく、

今、この関係性の中で
どこまでの話が”安全”と感じられているか
という情報です。

問いは、

答えを引き出すために投げられたけれど、
実際には、

関係性の現在地を
そのまま映し出している。

だからこそ、
あの「歯車が噛み合っていない感じ」は、
何かが足りなかったサインではなく、

次にどこを扱えばいいのかを
教えてくれている感覚

なのかもしれません。

第2章|対話を少し外側から眺めてみると

対話の渦中にいるとき、
管理職の意識はどうしても
「何を聞くか」「どう返すか」に向きがちです。

けれど、
あの歯車が噛み合っていないような感覚が残った場面を、
少しだけ外側から眺めてみると、
違うものが見えてきます。

ぼくが、歯車が噛み合っていないような感覚がある時に
注目するのは、
返ってきた答えの中身そのものではないことが多いです。

どちらかというと

安心して回答できていない状態に、
注意が向けられます。

こうした要素は、
本人が意識してコントロールしているというよりも、

その関係性の中で自然に立ち上がってくるもの
であることがほとんどです。

たとえば、
未来の話になった瞬間に、
言葉が少し抽象的になる。
主語が「自分」から
「会社」や「求められていること」に
すっと移る。

あるいは、
考えながら話しているというより、
安全そうな言葉を
選びにいっているように感じられる。

それは、
考えていないからでも、
やる気がないからでもありません。

その距離感では、
そこまで踏み込まなくてもいい

と、身体が判断している状態
とも言えます。

また、
問いを投げた側が
評価する立場や、
何かを決める立場にあるとき、
本人にその意図がなくても、
場はわずかに緊張を帯びます。

このとき、問いは
「考えを広げるためのもの」ではなく、

「どう答えるのが無難か」を
探らせてしまうことがあります。

人は、
安心していない場で
わざわざ不確かな未来の話を
深く掘り下げようとはしません。

だから、
対話が浅くなったり、
言葉が無難になったりするのは、
個人の資質や姿勢の問題というよりも、

場と関係性がそうさせている

と捉えることができます。

ここで大切なのは、
この場面を通して、

今はどんな話題までなら安心して扱えるのか
どんな前提があれば、もう一歩踏み込めそうなのか

そうした情報が
静かに立ち上がっている、
という点に目を向けることです。

対話を少し外側から眺めると、
見えてくるのは

関係性の状態。

そして、
その状態が見えてきたとき、
次にどんな関わり方を選ぶか。
その選択肢が、
少しだけ増えていきます。

第3章|「やりたいこと」は、引き出すものなのか

ここまで見てきたように、
「どんなことをやっていきたい?」という問いが
想定どおりに展開しない場面では、
問いそのものよりも、
その場の関係性や状態が
大きく影響していることがあります。

このとき、
管理職や関わる側が
無意識に考えてしまうのが、
「どうすれば、やりたいことを引き出せるのだろうか」
という問いです。

けれど、
コーチの立場から対話を見ていると、
少し違う見え方をすることがあります。

「やりたいこと」は、
質問によって
どこかから取り出すもの、
というよりも、

状態が整った結果として、
自然に輪郭を持ってくるもの

のように見えるからです。

安心して話せているとき、
評価される心配が薄れているとき、
今すぐ決めなくていいと
身体が感じているとき。

そうした状態の中では、
本人もまだ言葉にしきれていなかった関心や違和感が、
会話の途中で、
ぽつりと現れることがあります。

それは、
最初から明確な形をしているとは限りません。
• なんとなく気になっていること
• 最近、少し引っかかっている出来事
• 得意とも不得意とも言い切れない感覚

そうした断片が、
対話の中で少しずつ並び、
あとから振り返ったときに
「あれが、やりたいことの芽だったのかもしれない」
と見えてくる。

こう言った場面での
「やりたいことを聞く」という行為は、
答えを得るためというよりも、

その人の関心に、
ご本人が、そして組織が
踏み込む準備が出来ているかどうかを
確かめる行為である

と感じます。

だからこそ、
問いに対して
はっきりした答えが返ってこなかったとしても、
それは、
まだ言葉にする段階ではなかった。
あるいは、
その問いが向けられた文脈では、
そこまで踏み込む必要を
感じていなかった。

ただ、それだけのことです。

「やりたいこと」を
無理に言語化させようとすると、
対話はどこかで窮屈になります。

一方で、
今はどんな話題なら
安心して扱えるのか。
どんな前提があれば、
もう一歩、内側の話に近づけそうなのか。

そうした状態に目を向けていると、
結果として、
その人自身の言葉で語られる
関心や方向性が、
あとから立ち上がってくることがあります。

問いは、
答えを引き出すための
道具というよりも、

状態を確かめ、
関係性と文脈が
そこに踏み込めるかどうかを見極めるためのもの

そう捉えてみると、
「やりたいことを聞く」という行為の意味も、
少し違って見えてくるかもしれません。

第4章|関係性を少し調整すると、対話の質が変わる

ここまで見てきたように、
「やりたいこと」をめぐる対話が
思ったように進まない場面では、
問いの内容そのものよりも、
その場にある関係性や前提が
大きく影響しています。

では、
その関係性を「変える」必要があるのかというと、
必ずしもそうではありません。

多くの場合に起きているのは、
少しズレた前提のまま会話が進んでいる
という状態です。

たとえば、
• 今は決める場なのか、考える場なのか
• 評価が行われる文脈なのか、探索の文脈なのか
• 会社の話をしているのか、個人の話をしているのか

こうした前提が、
共有されないまま混ざっていると、
対話はどこか噛み合わなくなります。

このとき、
大きな働きかけをしなくても、
関係性を「少しだけ調整する」ことで、
対話の質が変わることがあります。

たとえば、
今すぐ結論を出す場ではないことを
あらかじめ共有する。
今日の話が、
評価や配置に直結するものではないと
言葉にしておく。

あるいは、
「正解を出す話ではなく、
 考えを並べる時間にしたい」
と、場の目的を揃える。

それだけで、
相手の話し方や、
言葉の選び方が
少し変わることがあります。

これは、
相手を変えたというよりも、

安心して話してもいい範囲が少し広がった

という変化です。

関係性の調整とは、今、
どこまでの話なら扱えるのか。
どんな前提が共有されているのか。

その輪郭を、
ほんの少し明確にすることです。

そうして場が整うと、
それまで語られなかった関心や違和感が、
自然と話題に上がることがあります。

「やりたいことを聞こう」と
力を入れなくても、
その人の言葉で、
少しずつ方向性が語られ始める。

その変化は、
劇的ではありません。
けれど、
対話の質としては、
確かに違うものになります。

関係性を扱うというのは、
相手の内面に踏み込むことではなく、

対話が行われている”場”を
丁寧に整えること

そう考えると、
管理職が担っている役割も、
少し違って見えてくるかもしれません。

第5章|問いが投げられる前から、対話は始まっている

ここまで振り返ってみると、
「やりたいことを聞く」という問いそのものが、
対話の成否を決めていたわけではないことが
見えてきます。

問いが投げられる前に、
すでに場には空気があり、
関係性があり、
共有されている前提があります。

その状態の上に、
問いが置かれる。

だから、
同じ問いであっても、
返ってくる言葉や、
対話の手応えは変わってきます。

歯車が噛み合っていないように感じたとき、
その原因を
「問いの選び方」や
「聞き方」に求めたくなるのは、
とても自然なことです。

けれど、
その違和感はもっと手前で
すでに形を持っていたようにも感じられます。

今は、
決める場なのか。
考える場なのか。

評価が関係する文脈なのか。
探索が許されている文脈なのか。

会社の話なのか。
個人の話なのか。

そうした前提が、
言葉にされないまま混ざっていると、
問いは自然と
「どう答えるのが無難か」を
探らせるものになります。

それは、
誰かが間違えたからではありません。
その場が、
そうした対話を生みやすい状態だった、
というだけです。

対話を扱うというのは、
相手の内面に踏み込むことでも、
正しい問いを探し当てることでもありません。

問いが投げられる前に、
どんな場が出来ているかに目を向けてみる

どこまでの話が扱われそうか。
どんな前提が共有されていそうか。
今は、どんな温度の時間なのか。

そこに意識が向くと、
問いの役割も
少し違って見えてきます。

問いは、
何かを引き出すためのスイッチというより、
すでに始まっている対話の流れを
そっと確かめるためのもの。

そう考えると、
思ったような答えが返ってこなかった場面も、
違う意味を持ち始めます。

それは、
失敗でも、停滞でもなく、

今の関係性や場の状態が
そのまま現れた一瞬

だったのかもしれません。

問いが投げられる前から、
対話は始まっている。

そう捉えてみると、
管理職として、
あるいは誰かと関わる立場として、
自分が向き合う対象も、
少し静かに、
広がっていくように感じられます。

相手の回答がつくる、
あなたの中の感覚には、
どんな意味があるでしょうか。

「仮想敵」という言葉に躊躇を覚える時代に、チームビルディングを考える ── 仮想敵・教材・外部参照をめぐる、ある営業所長との対話をきっかけに

はじめに|なぜ今、あらためて「仮想敵」を考え直すのか

最近、組織やチームが少し伸び悩んでいると感じているリーダーの方々と話をする中で、
「仮想敵」という言葉を使う機会が増えています。

チームビルディングの観点で見ると、
チームの方向性を揃えたり、目的意識を持ちづらいメンバーの視線を外に向けたりするために、
仮想敵という考え方は、今も一定の有効性を持っていると感じています。
実際、この考え方によって、チームの空気が変わり、動き出す場面を何度も見てきました。

一方で、最近はこの言葉に対して、どこか引っかかる感覚を持つようにもなりました。
「仮想敵」という表現は、今の時代感や価値観と、少しズレ始めているのではないか。
あるいは、「ライバル」という言葉でさえ、受け取り方によっては不要な緊張や対立を生んでしまうのではないか。
そんな違和感です。

そもそも、私が本当に目指しているのは、外部に基準を置かなくても、
チームが自分たちで考え、修正し、前に進んでいける「自走している状態」です。
その意味では、仮想敵という考え方そのものも、チームの成長につれて必要がなくなるものだと考えています。

とはいえ、仮想敵という考え方そのものを否定したいわけではありません。
問題なのは手法そのものではなく、
その言葉が今の組織やチームに、どのように届いているのか、という点だと感じています。

この記事では、
なぜ仮想敵という考え方がチームビルディングにおいて機能してきたのかを整理しながら、
今の時代や組織のあり方に合わせて、この考え方をどのような言葉に置き換えられるのかを考えていきます。

仮想敵を手放すための記事ではありません。
むしろ、チームを前に進めるために使ってきたこの考え方を、
今の環境に合わせて、あらためて翻訳し直す。
そのための思考整理として、ここに書いてみたいと思います。

第1章|仮想敵は、なぜチームをまとめるのか

チームの調子が上がらないとき、現場ではさまざまな兆しが見えます。
個々は真面目に取り組んでいるのに、力が噛み合わない。
会議ではそれらしい話は出るものの、決定打に欠ける。
どこか「自分ごと」になりきらない空気が漂っている。

こうした状態の背景には、
チームとしての視線が、内側に向きすぎているという問題があります。

自分たちのやり方は正しいのか。
誰がどこまで頑張っているのか。
評価は公平なのか。

問いの矢印が内向きに集まりすぎると、
チームは次第に動きづらくなっていきます。

ここで機能するのが、「仮想敵」という考え方です。

仮想敵とは、誰かを攻撃するための存在ではありません。
チームの意識を、いったん外に向けるための支点です。

「あのチームと比べて、私たちはどうか」
「外から見たとき、今の自分たちはどう映っているか」

こうした問いが生まれることで、
バラバラだった視線が、少しずつ同じ方向を向き始めます。

心理学の文脈では、人は自分が属する集団を意識した瞬間に、
「私たちは何者か」という感覚を強めると言われています。
外部との比較が生まれると、
内部の違いよりも「共通点」に目が向きやすくなるのです。

チームの黎明期や停滞期において、
仮想敵が有効に機能するのは、このためです。

まだ共通の価値観や判断基準が育っていない段階では、
内部だけで問いを回そうとしても、どうしても限界があります。
だからこそ、一度外に基準を置く。
それによって、チームの輪郭をはっきりさせる。

この意味で、仮想敵は
未成熟な組織にとって、ごく自然に立ち上がる装置だと言えます。

ただし、ここで一つ補足しておきたいことがあります。

仮想敵が「強いから」チームがまとまるのではない、という点です。
大切なのは、その存在が、
メンバー一人ひとりに
「比べてみたい」「負けたくない」と
自然に思わせるだけの質と距離感を持っていることです。

あまりにも遠すぎる存在では、現実味がありません。
逆に、明らかに格下の相手では、競争心は生まれにくい。

手が届きそうで、少し悔しい。
工夫や努力次第で追いつけそうだと感じられる。

そのくらいの距離にある、質の高い存在であることが、
仮想敵として機能するための重要な条件になります。

ここまでを見ると、
仮想敵という考え方が、これまで多くの組織で使われてきた理由も、
それなりに説明がつくのではないでしょうか。

ただし――
この手法には、使いどころがあります。

次の章では、
仮想敵そのものではなく、
それに頼り続けたときに起きる問題について整理していきます。

第2章|問題は「仮想敵」そのものではない

ここまで見てきたように、
仮想敵という考え方には、チームを前に進める力があります。
方向性を揃え、視線を外に向け、
チームとしての輪郭をつくるうえで、確かに機能してきました。

それでも、「仮想敵」という言葉に違和感を覚える人が増えているのも事実です。
そしてその違和感は、多くの場合、
仮想敵そのものではなく、その使われ方に向けられています。

仮想敵があることでしか動けない。
敵が見えなくなると、途端に空気が緩む。
誰かと比べられないと、自分たちの立ち位置がわからなくなる。

こうした状態に陥っているとしたら、
それは仮想敵という手法が間違っているのではなく、
仮想敵に依存し始めているサインだと考えたほうがよさそうです。

本来、仮想敵は「方向づけのための支点」です。
ところが、それが長く使われ続けると、
いつの間にか「動機そのもの」になってしまうことがあります。

「負けたくないから頑張る」
「比べられているから動く」

こうした状態が続くと、
チームのエネルギーは、少しずつ外部に吸い取られていきます。

さらに厄介なのは、
仮想敵を前提にした関係性が、
チーム内部の対話を減らしてしまうことです。

外に明確な基準があると、
内部で問い直す必要がなくなります。
「どうすればもっと良くなるか」よりも、
「相手より上か下か」という話に寄っていく。

これは短期的にはわかりやすく、
スピードも出やすいのですが、
長期的には、チームの思考を単純化させてしまいます。

また、仮想敵を強く打ち出しすぎると、
リーダー自身が、その役割を背負い込みやすくなります。

敵を設定し、
緊張感を保ち、
温度を下げないように気を配る。

こうした状態が続くと、
チームが回っているように見えて、
実は、リーダーが走り続けているだけ、ということも少なくありません。

ここで大切なのは、
仮想敵を「良い・悪い」で判断しないことです。

仮想敵は、
使えば必ずチームを壊すものでもなければ、
使い続ければ成長し続ける万能な手法でもありません。

問題になるのは、
本来は一時的な支点であるはずのものが、
固定化されてしまうことです。

仮想敵がなくても、
チームとして問いを立てられるか。
外部と比べなくても、
自分たちの状態を言葉にできるか。

そうした力が育つ前に、
仮想敵だけで回し続けてしまうと、
チームの成長は、そこで止まりやすくなります。

次の章では、
この「外部参照に頼る構造」をもう一段引いた視点から整理し、
仮想敵と「教材」という言葉が、
実はどのように重なっているのかを見ていきます。

第3章|仮想敵と教材は、実はほぼ同じ役割を持っている

仮想敵や外部参照から自走する組織へ移行していくチームビルディングのイメージイラスト

ここまでの話を踏まえると、
仮想敵に対して感じている違和感は、
「外部を参照すること」そのものではなく、
その言葉が呼び起こすイメージに向いているのかもしれません。

そこで一度、
「仮想敵」と「教材」という二つの言葉を、
機能の観点から並べてみたいと思います。

仮想敵も、教材も、
どちらもチームの外側に置かれる存在です。
そして、いずれも
「自分たちは今どこにいるのか」
「何が足りていないのか」
を考えるための、外部参照として使われます。

仮想敵の場合は、
「あのチームと比べて、私たちはどうか」
という問いが立ち上がります。

教材の場合は、
「あのやり方から、何を学べるか」
という問いが立ち上がります。

問いの形は違いますが、
どちらも、チームの視線をいったん外に向け、
内側にこもりすぎた思考をほぐす、という役割を果たしています。

この意味では、
仮想敵と教材は、ほぼ同じ機能を持っている
と言ってよいと思います。

では、何が違うのでしょうか。

一番大きな違いは、
その言葉がチームにもたらす感情の方向性です。

「敵」という言葉には、
どうしても対立や勝ち負けのニュアンスが含まれます。
それは、短期的な集中や結束を生みやすい一方で、
緊張感や防衛的な姿勢も同時に呼び起こします。

一方で、「教材」という言葉は、
学ぶこと、取り入れること、改善することを前提にしています。
比較はしても、相手を下げる必要はありません。
自分たちの未完成さを、
そのまま認めやすい表現でもあります。

ここまで見ると、
仮想敵と教材の違いは、
手法の優劣というよりも、
言葉が生み出す感情や関係性の違いだと言えそうです。

もう一つ、ここで整理しておきたいことがあります。

仮想敵と教材は、
機能的にはよく似た外部参照ですが、
どちらが先にチームに作用するかは、
メンバーやチームの成熟度によって変わる
という点です。

まだ自分たちの課題を言葉にできない段階では、
「学ぶ対象」としての教材よりも、
感情が先に動く仮想敵の方が、
入り口として機能しやすい場面も少なくありません。

学ぶ以前に、
まず視線を揃え、温度を上げ、
「自分たちの話」に引き戻す必要がある。
そうしたフェーズでは、
仮想敵が担ってきた役割は、今も有効です。

一方で、
ある程度チームが整ってくると、
対立や勝ち負けの構図は、
思考の幅を狭めてしまうことがあります。

この段階では、
仮想敵が持っていた機能を、
より穏やかな言葉に置き換えた方が、
チームの対話が広がりやすくなります。

つまり、
仮想敵と教材の違いは、
「どちらが正しいか」ではありません。
どのフェーズのチームに、
どの言葉が届きやすいか
という違いです。

ここまで整理してくると、
次に浮かんでくるのは、
こんな問いではないでしょうか。

では、今の時代や環境の中で、
なぜ「教材」という言葉が、
選ばれやすくなっているのか。

そして、
それでもなお、
場面によっては「仮想敵」という言葉を
使わざるを得ないと感じる現場があるのは、なぜなのか。

この問いを手がかりに、
次の章では、
言葉が選ばれる背景そのものを整理していきます。

第4章|では、今なぜ「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのか

それでも、ここまで整理してきたうえで、
どうしても浮かんでくる問いがあります。

今後も、場面によっては
「仮想敵」という言葉を使わなくてはいけないのだろうか。

正直に言えば、
私自身、この問いに明確な「はい」や「いいえ」を
用意しているわけではありません。
ただ、現場に立ち続ける中で、
一つはっきりしてきたことがあります。

それは、
「教材」という言葉が、
多くの場面で“選ばれやすく”なってきている
という事実です。

ここで注意したいのは、
「教材」という言葉が
すべてのチームに通用するようになった、
という意味ではない、という点です。

実際、私が向き合っている現場の中には、
まだ「教材」という言葉がまったく響かないチームもあります。
そうしたチームにとっては、
学ぶ以前に、まず視線を揃えることの方が重要で、
その入口としては、
今も仮想敵の方が機能しやすいと感じる場面も少なくありません。

それでもなお、
社会全体を見渡したときに、
「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのには、
いくつかの背景があるように思います。

一つは、
対立や競争を前面に出し続けることの
限界が見え始めていることです。

変化のスピードが速く、
正解が一つに定まらない環境では、
勝ち負けを軸にした比較だけでは、
前に進みにくくなってきています。

もう一つは、
組織やチームに求められる役割そのものが、
変わりつつあるという点です。

個人の成果を積み上げるだけでなく、
学び続ける力や、調整し続ける力が、
より強く求められるようになってきました。

こうした環境の中では、
「敵に勝つ」という表現よりも、
「何を学び、どう取り入れるか」という表現の方が、
チームの思考を広げやすくなります。

つまり、
「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのは、
それが正解だからではなく、
今の時代や環境において、
誤解や摩擦を生みにくい表現だから
だと言えるのかもしれません。

ここまで整理してくると、
仮想敵と教材の関係は、
どちらかを選び、どちらかを捨てる、
という話ではなくなってきます。

大切なのは、
「どの言葉が、このチームに届くのか」
そして、
「その言葉は、今のフェーズに合っているのか」
を見極め続けることです。

仮想敵という言葉を使う場面が、
これからもゼロになるとは思っていません。
ただし、それは
使いやすいからでも、慣れているからでもなく、
その言葉が、今このチームを動かすかどうか
という一点で判断されるべきものだと思っています。

次の章では、
こうした外部参照そのものを、
どのように扱っていけばよいのか。
仮想敵や教材を「手段」として使いながら、
最終的にどこを目指しているのかについて、
あらためて整理していきます。

第5章|外部参照は、あくまで一時的な支点である

ここまで、
仮想敵や教材といった「外部参照」が、
チームを前に進めるうえで果たしてきた役割を整理してきました。

あらためて強調しておきたいのは、
私は、これらがゴールだとは思っていないという点です。

仮想敵も、教材も、
チームが自分たちの状態を捉え直すための支点にすぎません。
視線を外に向け、比較し、気づきを得る。
そのプロセスを助けるための、一時的な装置です。

支点があるからこそ、
チームは動き出しやすくなります。
内向きに閉じていた思考がほぐれ、
共通の話題や基準が生まれる。
これは、特に立ち上げ期や停滞期において、
とても大きな意味を持ちます。

一方で、
支点は、使い続けることを前提にしたものではありません。

外部参照がなくなると動けない。
比べる相手がいないと、自分たちの位置がわからない。
そうした状態に入ってしまうと、
チームの判断や成長は、どうしても外に委ねられてしまいます。

本来、チームが少しずつ力をつけていく中で、
外部参照の役割は変わっていくはずです。

最初は、
「外を見ることで、ようやく自分たちが見える」状態だったものが、
やがて、
「自分たちの中で問いを立てられる」状態へと移っていく。

この移行が起き始めたとき、
仮想敵や教材は、
前に出る存在である必要がなくなっていきます。

大切なのは、
いつ、どのタイミングで、
外部参照の比重を下げていくかです。

それは、
明確なチェックリストで判断できるものではなく、
チームの会話の質や、
問いの立ち上がり方、
リーダーがいなくても回り始める小さな動きの積み重ねの中で、
少しずつ見えてくるものではないでしょうか。

そして、
この外部参照の有無や強弱をどうコントロールするかが、
自走できるチームをつくっていくうえでの
リーダーの役割の一つではないかと私は思っています。

仮想敵を置くか。
教材と呼ぶか。

その選択そのものよりも、
その言葉が、
今のチームにとって
「前に進むための支点」になっているのか。
それとも、
「立ち止まり続けるための拠り所」になってしまっているのか。

この違いを見極め続けることが、
リーダーやコーチに求められているのではないでしょうか。

おわりに|本当に目指しているのは、外部を必要としない状態

この記事では、
仮想敵や教材といった言葉を入り口に、
チームが前に進むときに
「何を外に置くのか」について考えてきました。

ただ、ここまで書いてきてあらためて感じるのは、
本質は言葉そのものではない、ということです。

仮想敵という言葉を使うかどうか。
教材という表現に言い換えるかどうか。

それよりも大切なのは、
今、このチームが
外部にどれくらい頼る必要があるのかを、
リーダーが感じ取れるかどうかだと思っています。

外部を強く置いた方が前に進むフェーズもあれば、
少しずつ手放した方が、
チームの思考が育つフェーズもあります。

そのどちらが正しいかではなく、
今どちらが必要かを見極め、
必要に応じて調整していく。
その繰り返しの中で、
チームは少しずつ自分たちの足で立ち始めます。

外部を見なくても、
自分たちで問いを立て、
ズレに気づき、整えていける。

私がこれからもやっていきたいのは、
そんな状態に近づいていくプロセスに、
伴走し続けることです。

あなたのチームは今、
仮想敵を必要としているフェーズでしょうか。
教材を置いて学び始めるフェーズでしょうか。
それとも、
外部参照を少しずつ手放し始めるフェーズでしょうか。

メンバー間に能力差があるチームをどう設計するか ――管理職が担う「前提の解像度を上げる」という仕事

先日、とあるクライアントさんとのコーチングセッションが、
このテーマについて立ち止まって考えるきっかけになりました。

その方は、チームの人間関係を丁寧に整え、
メンバー同士の信頼関係も、少しずつ築いてきた管理職の方です。

中心的な話題は、
「メンバー間に能力差がある状態で、
どうチームを前に進めていけばいいのか」という問いでした。

配慮が必要なメンバーもいる。
一方で、成長を期待している優秀なメンバーもいる。
そして、チームとしては前に進まなければならない。

どれも間違っていない。
むしろ、真剣に向き合っているからこそ、
判断が簡単には割り切れない。

セッションを通して感じたのは、
この悩みは特定の誰かのものではなく、
多くの管理職が静かに抱えている問いだということでした。

この記事では、
そのときの対話をきっかけに、
「メンバー間に能力差のあるチームをどう設計していくのか」
というテーマについて、言葉を整理しています。

正解を出すための記事ではありません。
管理職として、
どこに解像度を上げて考えると、
チームが動きやすくなるのか。

その視点を、共有できればと思います。

はじめに

メンバー間に能力差があるチームは、前提条件である

チームの中に、能力差がある。
経験値も、得意分野も、体調も、ライフステージも揃っていない。

これは、特別な状況ではありません。
今の多くの職場では、ごく自然な前提条件です。

それでも多くの管理職の方は、
「この状態で、どうチームを回していけばいいのか」
一度は立ち止まる場面が出てくるのではないでしょうか。

けれど、その違和感の本質は、
「能力差があること」そのものに対するものではないように思います。

多くの場合、管理職の方が向き合っているのは、
能力差がある状況の中で、
どう設計するのが“いまのチームにとって妥当なのか”を、簡単には決めきれない
という感覚です。

やみくもに厳しくしたいわけでもない。
かといって、守ることだけを優先したいわけでもない。

配慮が必要なメンバーもいる。
一方で、成長を期待したい優秀なメンバーもいる。
そして、チームとしては前に進んでいきたい。

この3つを同時に成立させようとすれば、
判断が簡単でないのは、むしろ当然です。

この記事では、
「正解のマネジメント方法」を提示することはしません。

代わりに、
管理職として、どの部分の解像度を上げて考えると、チームの設計が現実的になるのか。
その視点を、ひとつずつ整理していきます。

管理職の仕事は、
すべてを抱え込むことでも、
すぐに答えを出し続けることでもありません。

状況をもう少し立体的に捉え、
判断の前提を整えていくこと。

ここから一緒に、
そのための視点を言葉にしていきましょう。

1|能力差のあるチームで、管理職が同時に抱える3つの前提

現場で本当によくある状態

メンバー間に能力差のあるチームをマネジメントするとき、
多くの管理職が、無意識のうちにいくつかの前提を同時に背負っています。

ひとつひとつを見れば、どれももっともな判断です。
けれど、それらが同時に存在するとき、
マネジメントは一気に難易度を上げます。

まずひとつ目は、
配慮が必要なメンバーには、無理な負荷をかけられないという前提です。

体調やコンディションの波があったり、
今は踏ん張りどきではない時期にいるメンバーもいる。
その状態を理解していればいるほど、
「これ以上は任せられない」という判断が自然と生まれます。

二つ目は、
優秀なメンバーには、成長につながる仕事を任せたいという前提です。

能力があり、責任感もある。
チームの中心として期待しているからこそ、
簡単な仕事ばかりではなく、
一段階上の経験につながる負荷をかけたいと考えます。

一方で、
自分ばかりが常に大きな負荷を背負っていると、
感じさせたくはない
という思いも同時にあります。

期待しているからこそ任せている。
けれど、その背景が伝わらなければ、
負荷だけが偏って見えてしまうこともある。

そして三つ目は、
それでも、チームとしては前に進んでいきたいという前提です。

守る判断と、育てる判断。
どちらかを優先すれば楽になる場面でも、
管理職は「チーム全体としての前進」を手放したくはありません。

この三つは、相反するものではありません。
どれかが間違っているわけでもありません。

ただし同時に満たそうとするなら、
チーム全体として
どの速度で進むのかを決めておくことが重要になります。

進むスピードが明確であれば、
仕事の重みづけや役割分担は、
必要以上に迷わずに済むようになります。

ここで大切なのは

メンバー間に能力差があるチームでは、
複数の前提を同時に扱いながら判断する場面が増えます。
いま管理職に求められているのは、
その前提をどう並べて、どう整理するか、という視点です。

能力差のあるチームをマネジメントするということは、
単純な正解を一つ選ぶ作業ではありません。

いまのチームにとって、
どの前提を、どの順番で扱うのか。
その整理の粒度が、そのままチームの動き方に表れていきます。

次の章では、
こうした前提が揃ったときに、
現場で「自然と起きてしまいやすいこと」について、
もう少し具体的に見ていきます。

2|管理職が示すべき「解像度」とは何か

業務の取捨選択・重みづけ・納期を、言葉にするという仕事

メンバー間に能力差があるチームでは、
「どう進むか」を決めるだけでは、まだ十分ではありません。

もう一段、
管理職として示しておきたいことがあります。

それは、
チームが前に進むための判断の解像度を揃えておくことです。

ここでいう解像度とは、
細かな指示や、逐一の確認を意味するものではありません。

むしろ、
メンバーがそれぞれの立場で判断するときに、
同じ前提に立てる状態をつくることを指しています。

具体的には、
次の三つを、運用できるレベルまで言葉にしておくことです。

① 業務の取捨選択

まず最初に必要なのは、
「すべてをやるわけではない」という前提を
チームとして共有することです。

今のこの時期に、
• 本当に取り組むべき仕事は何か
• 今はやらなくていいことは何か

これを管理職が言葉にしないままだと、
メンバーはそれぞれの判断で、
「やれることはすべてやろう」としてしまいます。

前進スピードを決めるとは、
やらないことを含めて決めることでもあります。

② 仕事の重みづけ(完成度の指定)

次に必要なのは、
任せる仕事ごとに
どの程度の完成度を求めているのかを示すことです。

すべての仕事に
同じ熱量や作り込みが必要なわけではありません。
• まず形にできれば十分な仕事
• 一定の品質でまとめればよい仕事
• しっかり時間をかけて仕上げるべき仕事

この違いが言葉として共有されていないと、
特に責任感の強いメンバーほど、
すべてを全力で仕上げようとしてしまいます。

重みづけを示すことは、
仕事の質を下げることではなく、
力を使う場所を揃えることです。

③ 納期と優先順位

三つ目は、
時間軸の明確化です。
• どれを先に終わらせたいのか
• どこまでを、いつまでにできていればよいのか

ここが曖昧なままだと、
メンバーはそれぞれの基準で
「急ぎそうなもの」から手を付けることになります。

納期を示すというのは、
詰めるためではなく、
判断の迷いを減らすためのものです。

この三つが運用レベルで共有されていると、
管理職がすべてを決め続けなくても、
チームは同じ方向に進みやすくなります。

解像度を上げるというのは、
管理を細かくすることではありません。

判断の前提を、先にそろえておくこと。
それが、能力差のあるチームを前に進めるための、
管理職の重要な仕事です。

次の章では、
この「解像度を上げる」という行為が、
決してマイクロマネジメントではない理由について、
もう少し整理していきます。

3|解像度を上げることは、細かく管理することではない

管理職が手放していいもの、手放してはいけないもの

「解像度を上げる」と聞くと、
細かく指示することや、
進捗を頻繁に確認することを思い浮かべる方もいるかもしれません。

けれど、ここで言う解像度は、
そうしたマイクロマネジメントのことではありません。

むしろ、
管理職が細かく見続けなくても済む状態をつくることに近い考え方です。

管理職が手放していいもの

まず、手放していいのは
日々の判断そのものです。

業務の取捨選択や、
仕事の重みづけ、
納期の優先順位。

これらが共有されていれば、
現場で起きる小さな判断は、
メンバー自身が行えるようになります。

管理職が逐一判断を下さなくても、
「この判断で問題ない」と、
メンバーが自分で確かめられる状態をつくる。

それが、解像度を上げるということの大きな意味です。

管理職が手放してはいけないもの

一方で、
手放してはいけないものもあります。

それは、
方向性と判断基準を示すことです。
• 今、どの仕事を大事にしているのか
• どのレベルまでを求めているのか
• 何を優先し、何を後回しにするのか

ここを曖昧にしたまま
「任せているつもり」になると、
現場には余計な迷いが生まれます。

解像度を上げるというのは、
裁量を奪うことではなく、
裁量を使いやすくする条件を整えることです。

解像度が低いと、なぜ管理が増えるのか

皮肉なことに、
判断の前提が曖昧なままだと、
管理職はかえって現場に関わらざるを得なくなります。
• 想定と違うアウトプットが出てくる
• やり直しが増える
• 状況説明のやり取りが増える

結果として、
「確認」「修正」「フォロー」に
多くの時間を取られてしまう。

管理が増える原因は、
管理しようとし過ぎていることではなく、
判断の前提が共有されていないことにあります。

解像度を上げると、チームはどう変わるか

解像度が揃うと、
チームの会話は少しずつ変わっていきます。
• 「これ、今やるべきですか?」
• 「ここは、8割で一度出しますね」
• 「納期を優先して、今回はこう判断しました」

こうした言葉が自然に出てくるようになると、
管理職は
「全部を管理する人」ではなく、
方向を確認する人になっていきます。

解像度を上げることは、
管理を強めることではありません。

チームが自分たちで判断できる範囲を、広げていくこと。
そのために、
管理職が最初に示すべきものを、
少しだけ具体にすることです。

次は最後に、
この記事全体をまとめながら、
管理職の仕事を一つの言葉で言い換えてみます。

まとめ|正解を出すのではなく、前提を揃える仕事

ここまで、
能力差のあるチームを前にしたとき、
管理職が何に向き合っているのかを整理してきました。

大事なのは、
「正しいマネジメントの型」を身につけることでも、
すべての判断を自分で背負い続けることでもありません。

メンバー間に能力差があるチームでは、
判断が難しくなるのは自然なことです。
問題は、その難しさを
個人の資質や決断力の話にしてしまうことにあります。

管理職の仕事は、
その場その場で「正解」を出し続けることではありません。

むしろ大切なのは、
チームとして
• 何をやるのか
• どこまでを求めるのか
• 何を優先するのか

こうした判断の前提条件を、運用できる形で揃えておくことです。

前提が揃っていれば、
現場の判断は一気にやりやすくなります。
管理職がすべてを見なくても、
メンバーは同じ方向を向いて考えられるようになります。

それは、
管理を強めることでも、
裁量を奪うことでもありません。

チームが自律的に判断できる範囲を、少しずつ広げていくこと。
そのために、
管理職が果たすべき役割があります。

メンバー間の能力差は、なくなりません。
状況も、常に変わり続けます。

だからこそ、
「どうすれば正解か」を探すよりも、
「何を前提として進むのか」を揃え続けること。

それが、
メンバー間に能力差のあるチームを前に進める、
管理職の仕事なのだと思います。

メンバーが気づいていない“停滞のサイン”。リーダーだけが感じる違和感の正体とは?

✏️ 【1. はじめに】

「数字は悪くないのに、何かが止まっている」そんな瞬間、ありませんか?

受注状況はそこそこ。

悪くはないと言える状況。

メンバーも、淡々と“やるべきこと”をこなしているように見える。

チームの状態も、ぱっと見は良好に見える。

けれど──

リーダーである自分だけが、薄い違和感に気づいている。

メンバーからも、
「順調です」
「ちゃんと動けています」
といった声が普通に出てくる。

でも、リーダーの目にはわかる。
• 行動が「これだけやっておけば大丈夫。」になっている
• ミーティングの空気に“勢い”がなくなってきている
• 「やり切るぞ」というエネルギーの温度が、じんわり下がっている

数字にはまだ表れない。
けれど、確かにチームのどこかで“静かな停滞”が始まっている。

これは経験あるリーダーほど敏感に察知する“空気の変化”。
逆に、メンバーは気づきません。
彼らは“いつも通り”の感覚で動き続けてしまう。

だからこそ、この最初の違和感に気づいたリーダーには、

「チームの空気を整える」という一番大事な仕事が発生します。

本記事では、
この“静かな停滞”の正正体と、
それを適切にほぐして再び前に進ませる「健全なカウントダウン」の使い方について、
現場の感覚に寄り添いながら解説していきます。

✏️ 【2. 営業チームに起こる“停滞のサイン”とは?】

“静かな停滞”は、数字の遅れよりも先に

チームの空気やメンバーの言動に現れる

ここでは、営業チームでよく見られる
4つの停滞の予兆 を見ていきましょう。

どれも表面上は小さな変化ですが、
放っておくと後半の数字にじわじわ効いてきます。

サイン①:行動が「必要最低限モード」になっている

「これだけやっておけば大丈夫ですよね」
「今日の分は終わりました」

こうした言葉が増えてきます。

表面上はちゃんと動いている。
でも、本当にやり切っている時にある “前のめりな姿勢” が薄れます。

営業は行動量が数字に直結する仕事。
その行動が “守りの動き” に寄っていくと、
徐々にチーム全体のギアが落ちていきます。

サイン②:ミーティングの空気に“勢い”がなくなる

ミーティングでの発言が減る。
声のトーンが落ちる。
やり取りのスピード感がなくなる。

一言で言えば、チームの“温度”が下がっている状態です。

良い時期は、
「これやってみます」
「こういう提案どうですか?」
と自然に言葉が出てくる。

停滞期は、
反応がワンテンポ遅れる、
同じテンションが続かない──など、
小さな変化が積み重なります。

サイン③:中位層(ナンバー4・5)が“受動モード”になる

トップは動く。
ボトムは支援の対象になる。
一番気づきにくいのは、

中位層の“ギアが入らない”状態

「今日はこれくらいで…」
「明日挽回します」

このあたりの言葉が増えたら要注意。
チームの空気は“中位層”がつくるため、
ここが受動的になると数字の伸びが止まります。

サイン④:個人数字ばかり気にして、視野が狭くなる

停滞が始まると、
メンバーは“数字に追われる感覚”を強めがちです。
• 「あと何件…」が口癖になる
• 行動以上に結果ばかりを気にする
• 新しい打ち手よりも“安全策”を優先する

こうした状態は、

チーム全体が“挑戦”ではなく“防御”に入っているサイン

ここまでの予兆は、
いずれも 「数字に出る前の、最初の揺らぎ」 です。

そして多くのチームでは、
リーダーだけがこれらの微細な変化に気づき、
メンバーは“いつも通り”の感覚で動き続けてしまう。

だからこそ、ここから先で紹介する

「健全なカウントダウン」

チームの空気を整える強い味方になります。

✏️ 【3. 停滞の正体は「プレッシャーの偏り」】

営業チームが停滞しはじめる背景には、
単純に「やる気が落ちた」や「能力の問題」というよりも、

チーム内でのプレッシャーのかかり方に偏りが生まれている

これは、現場を見ているとよく見られる現象です。

プレッシャーが“個人”に寄りやすいときに起きること

営業という仕事柄、
どうしても「個人数字」や「個人の責任」に意識が向きがちです。

もちろん大切な視点ではありますが、
そこに比重がかかりすぎると、
• 結果への意識が強まりすぎて、動きが小さくなる
• “ミスしないこと”が優先される
• 個人ごとで抱え込みやすくなる
• チーム内の相談や協力が少しずつ減っていく

といった変化が見られるケースもあります。

これが重なると、チーム全体のエネルギーが
“攻め”から“守り”に変わりやすくなります。

プレッシャーが“チーム全体”に向くと、動きが前に向きやすい

一方で、プレッシャーを

チーム全体で適切に共有できている状態

メンバーの動きは前向きに揃いやすくなります。

たとえば、
• 「あなたはあと何件?」ではなく
 「チームとしてあと◯◯件」 と考える
• 個人の責めや焦りではなく
 チームの残り数字を共有する
• “追い詰める感覚”ではなく
 前に進むためのエネルギーとして扱う

こうした関わり方をしているチームは、
自然と助け合いやアイデアのやり取りが増え、
行動も揃いやすくなっていきます。

停滞が生まれるとき、内部では何が起きているか

リーダーだけが「何かが止まっている」と感じる場面では、
このプレッシャーのかかり方に
わずかなアンバランスが生まれていることが多いように思います。
• 特定のメンバーに負荷が寄っている
• 中位層のエネルギーが上がりづらい
• チームとして数字を共有する機会が減っている
• 会話が“個人数字”に集まりすぎている

こんな状態が重なると、
チーム全体が少しずつ“守り”の動きになっていきます。

これは決して誰かが悪いわけではなく、
忙しい現場では自然に起きやすいことです。

だからこそ、「健全なカウントダウン」が役に立つ

次章で紹介する

「健全なカウントダウン」

このプレッシャーの偏りを“やさしく整える”ための実践的な方法です。

個人を追い詰めないまま、
チーム全体の目線と動きを揃えていくことができます。

停滞の空気が生まれる前に、
あるいは違和感を覚えたその瞬間に、
リーダーが打てる手として活用しやすい考え方です。

✏️ 【4. 健全なカウントダウンでチームを動かす】

チームに停滞の兆しを感じた時、
リーダーが使える手のひとつが

「健全なカウントダウン」

カウントダウンは、本来“追い詰める”ためのものではありません。
むしろ、

プレッシャーを個人からチームにやわらかく割り戻すための方法

と捉えると、現場でも使いやすくなります。

カウントダウンの目的は“焦らせること”ではない

数字を追う時期は、どうしても
メンバーそれぞれが“自分の数字”に意識を寄せやすくなります。

そんなときにこそ、
チームとして目線をそろえ、状況を共有し、行動の基準を整えることが、
停滞を防ぐための土台になります。

健全なカウントダウンは、そのための架け橋になる考え方です。

健全なカウントダウンの3つのポイント

① 個人ではなく“チームの残数字”を共有する

「あなたはあと何件?」ではなく、

「チームとして、あと◯◯件」

こうすることで、
個人が抱え込む感覚が薄れ、
自然とチームとして動きやすくなります。

② 毎日追わない。“定点”で見直す

カウントダウンを毎日行うと、
どうしても締めつけになりがちです。
• 週のはじまり
• midweek
• 週末の締め

など、週3回の定点観測だけでも、
チーム全体の進み方は大きく変わります。

③ 行動量の“最低ライン”を共有する

数字の話だけをしても、動きは変わりにくいものです。

そのため、

行動量の最低ライン(週◯件、1日◯件)

メンバーは動き出しやすくなります。

小さな承認で、チームの温度が上がる

カウントダウンを使って数字の話をするときは、
同時に “行動の事実を拾う承認” を一緒に添えると効果的です。

これは褒めるというより、

「見ているよ」というサインを送る関わり方

たとえば:
• 「動き出しが早かったのが印象的だったよ」
• 「今日の提案、しっかり準備してたね」
• 「あのお客様へのフォロー、すごくいいと思うよ」

いずれも、メンバー自身がコントロールできる行動を認める言葉です。

こうした声がけは、
“数字の話”でやや重たくなりがちな空気をほどよく中和し、
チーム全体の温度を整える助けになります。

健全なカウントダウンは、“整える技術”

停滞のサインを感じていても、
強くテコ入れする必要はありません。

目線をそろえる → 行動基準を整える → 行動の事実を拾う

という流れをつくるだけで、
チームはゆっくりと、でも確実に前に進みはじめます。

健全なカウントダウンは、
その流れを自然につくるための、シンプルで扱いやすい方法です。

✏️ 【5. 実際の現場で、健全なカウントダウンをどう使うか?】

健全なカウントダウンは、
“数字を追わせるテクニック”というより、
チームの動きを整えるための“関わり方” として使うと、現場で機能しやすくなります。

ここでは、営業リーダーが
日々のチーム運営の中でどのように取り入れると効果的かを、
いくつかの場面に分けて整理してみます。

① 朝礼・昼礼で「全体の位置」を短く共有する

朝礼や昼礼のような短い共有の場は、
健全なカウントダウンを最も自然に取り入れやすいタイミングです。

たとえば:
• 「今週はチームであと◯◯件。今日はこのあたりを意識していこう」
• 「ここまでの流れは悪くないね。この調子で進めよう」

ポイントは、
“個人”ではなく “チームとしての位置” を共有すること。

これだけでも、
メンバーの行動基準がそろい、
動きが自然に前向きになります。

② ミーティングの冒頭で「方向の確認」を入れる

ミーティングは、
数字の話が中心になりやすい時間です。

冒頭の1〜2分で、
リーダーが落ち着いたトーンで“方向”を示すだけでも、
その日の場の空気が整います。
• 「今日は、この3つだけ押さえて動きましょう」
• 「この流れは悪くないので、続けていきましょう」

細かく言いすぎないことがポイントです。
やるべきことがシンプルになると、
動きが整理されやすくなります。

③ 行動量が落ち始めたメンバーには“軽い声がけ”から入る

停滞が起きはじめると、
どうしても動き出しが重くなるメンバーが出てきます。

そんなとき、いきなり数字の話に入ると、
相手は守りに入りやすくなります。

まずは、

本人がコントロールできる行動の事実を拾う

• 「動き出しが早かったのが印象的だったよ」
• 「今日の提案、しっかり準備してたね」
• 「あのお客様へのフォロー、すごくいいと思うよ」

こうした声がけは、
「見てもらえている」という感覚を生み、
その日一日のエネルギーの底上げにつながります。

④ 中位層(ナンバー4・5)には“行動ベースの会話”を増やす

チームの空気をつくるのは、
トップでもボトムでもなく、
実は 中位層(ナンバー4・5) のメンバーです。

停滞が近いときほど、
この層と“行動ベースの問い”を交わしておくと、
チーム全体のギアが整いやすくなります。

使いやすい質問は、例えば:
• 「この1週間で、大事にしたいポイントは?」
• 「次に良くしていきたいところはどこ?」

広すぎず、狭すぎず、
本人の視点が自然に整理される問いです。

この問いをきっかけに、
メンバーは“数字”よりも “動き方の質” に意識が向きやすくなり、
停滞の時期でも前向きなギアを入れやすくなります。

⑤ 月末の追い込みでは“追い詰めない進捗共有”を使う

月末の数字の追い込み時期は、
チームの空気が重くなりがちです。

ここで大事なのは、

追い詰めずに“次の一歩”だけを短く示す

たとえば:
• 「ここまでの進み方は悪くないよ。あと少しだけ進めよう」
• 「今日はここまで来たね。明日はこのあたりを意識しよう」

淡々とした共有の方が、
プレッシャーの偏りを生みにくく、
チーム全体が落ち着いて動けるようになります。

健全なカウントダウンは、“チームの呼吸を整える技術”

数字を追う時期ほど、
焦り・疲れ・視野の狭まりがチーム内に生まれやすくなります。

健全なカウントダウンは、
そうした“乱れた呼吸”を整えていくような、
落ち着いたマネジメントの手法です。
• 目線をそろえる
• 行動基準を整える
• 行動の事実を拾う

この積み重ねが、
チームの動きをゆっくり、でも確実に前へ押し出していきます。

✏️ 【6. 実際に変化が起きたケース】

ある営業チームでは、
受注状況はそこそこ。
数字としては悪くはないのに、
リーダーは“静かな停滞の気配”を感じはじめていました。
• 行動が「これだけやっておけば大丈夫」に寄ってきている
• ミーティングに勢いがない
• 中位層のメンバーが少し受動的になっている

数字にはまだ表れないものの、
チームの“温度”がじんわり下がりはじめている──
そんな状況でした。

リーダーは強くテコ入れするのではなく、

とくに中位層に丁寧に働きかけながら、
チーム全体の動きを整えることに意識を向けました。

その上で取り組んだのが、次の3つのアクションです。

① 週6件の新規顧客訪問という、コントロール可能な目標を設定する

まず取り組んだのは、
**「行動量の最低ラインをはっきりさせる」**ことでした。

設定したのは、
メンバー自身がコントロールできる行動として、

週に6件の新規顧客訪問。

数字そのものではなく、
「まずは行動を整える」ことをチーム全体で共有しました。

これにより、
メンバーが“やるべき最初の一歩”をつかみやすくなり、
動き出しの重たさが減っていきました。

② チーム全体の数字をカウントダウンし、“個人”から“チーム”へ視点を戻す

次に行ったのが、

個人数字ではなく「チームとしての残数字」を共有すること。

朝礼や短いミーティングで、
• 「チームとしてあと◯◯件」
• 「今週は、この数字をみんなで進めよう」

といった“全体の位置”を短く伝えることで、
プレッシャーが個人に偏らず、
自然にチーム全体へと戻っていきました。

これによって、
メンバー同士の視線が“縦の数字”ではなく
**“横のつながり”**に向きはじめ、
空気が少し軽くなっていきました。

③ 行動に対して「ありがとう」を伝え、メンバーの動きを肯定する

そしてもうひとつ大切にしたのが、

行動へ「ありがとう」を伝えること。

提案に向けた準備や
お客様へのフォローなど、
メンバー自身がコントロールできる行動に対して
短く「ありがとう」を伝える。
• 「今日の準備、ありがとう」
• 「あのお客様へのフォロー、助かったよ」

こうした言葉が積み重なると、
数字に追われがちな時期でも、
チームの“温度”が下がりにくくなります。

承認は大げさにほめる必要はなく、
ただ “動いた事実を丁寧に拾う”
これだけでエネルギーが整っていきます。

■ 数字より先に、“動きが整いはじめた”

この3つを続けたことで、
チーム内に少しずつ変化が出始めました。
• 行動のペースが整う
• 中位層が受動性から抜けはじめる
• ミーティングの空気が少し明るくなる
• 個人数字よりもチーム全体の動きに関心が戻る

派手な変化ではなく、
「日々の動き方の質」が静かに改善されていくような変化でした。

数字が急に跳ねたわけではありません。
けれど、

動きの整い方が変わると、チーム全体のリズムも変わる。

その結果として、
後半の数字も自然に伸びていきました。

■ このケースが示すこと

大きなテクニックや強いテコ入れではなく、
この3つの“シンプルな整え”の積み重ねこそが、
停滞しかけたチームを動かす土台になるということです。
• 行動量を整える(週6件の新規訪問)
• 視点を整える(チーム全体のカウントダウン)
• エネルギーを整える(行動への「ありがとう」)

チームにとって必要だったのは、
この“整えるための関わり方”でした。

✏️ 【7. まとめ】

営業チームの停滞は、
数字の遅れとして表れる前に、
ほんの小さな違和感や温度の変化となって現れることが多いものです。

そして、その違和感に最初に気づくのは、
いつも現場を見ているリーダーです。

本記事で紹介した
“健全なカウントダウン”は、
その違和感を無理なく整えていくための、

シンプルで扱いやすい関わり方

停滞をほぐす3つの視点

記事の中で取り上げてきたように、
チームの停滞をほぐすためには、
大きな施策よりも、日々の“整え”の積み重ねが役に立ちます。

そのための3つの視点がこちらです:
• 行動量を整える
 週6件の新規顧客訪問のように、
 コントロールできる行動のラインを提示する。

• 視点を整える
 個人数字ではなく、
 チーム全体の数字をカウントダウンすることで、
 視野を“チーム”に戻す。

• エネルギーを整える
 提案やフォローなど、
 メンバー自身がコントロールできる行動の事実を拾い、
 「ありがとう」を伝える。

どれも派手ではありません。
けれど、こうした“小さな整え”が、
チームの呼吸をゆっくりと前に向けていきます。

“整える力”は、数字をつくる土台になる

リーダーは数字を動かす存在ですが、
数字そのものを“直接”動かすことはできません。

動かせるのは、

行動と視点とエネルギー。

ここを整えることで、
結果のほうが自然とついてきます。

健全なカウントダウンは、
その整え方をシンプルにしてくれる、
ひとつの実践的なツールです。

もし、あなたのチームでも
「数字は悪くないのに、どこかに停滞があるように感じる」
そんな瞬間があるなら、
今回紹介した“整える3つの視点”を、
ぜひ小さく試してみてください。

大きな変化ではなくても、
チームの動き方が静かに整い始めるのを感じられるはずです。

“伝わらない立場”にいるリーダーへ──支える力を言葉に変えるヒント

はじめに|「言っているのに、伝わらない」

「ちゃんと伝えたつもりなのに、なぜか伝わらない」──。

そんな感覚を抱えたまま日々を過ごしているリーダーは少なくありません。

上司には、現場の課題や限界を言葉にして伝えている。

メンバーにも、社長の意図をできるだけ丁寧に説明している。

どちらにも誠実に向き合っているのに、なぜか誤解されたり、

“わかってもらえない”まま話が終わってしまう。

声の大きさの問題でも、説明力の問題でもない。

それはむしろ、組織の中で立っている位置がそうさせている。

上と下のあいだに立つ人ほど、言葉が空中でほどけていくような感覚を抱く。

支える立場のリーダーが感じる「伝わらなさ」は、

怠慢でも無関心でもなく、誠実さの副作用なのかもしれません。

先日、とある社員数百名規模の企業で取締役を務める方との

コーチングセッションの中で、彼女が抱えるジレンマを聞くことがありました。

「上にも下にも伝わらない」と語るその言葉の奥には、

長く続く努力と、静かな諦めが同居していました。

現状の構造|上にも下にも「中継するだけ」のポジション

その取締役の彼女は、社長の言葉を現場へ、

現場の声を社長へと橋渡しする役割を担っている。

日々、経営会議と実務のあいだを往復しながら、

どちらにも混乱が生まれないように気を配り続けている。

社長から新しい方針が下りると、彼女はまず内容を整理し、

現場にどう伝えるのが最も理解されやすいかを考える。

会議資料を整え、言葉をやわらげ、

時には「社長の意図」を代弁するような形でメンバーに話す。

一方で、現場で生じる課題や不安を社長に届けるのも彼女の仕事だ。

「この仕組みでは運用が難しそうです」「今の時期に実施するのは負担が大きいかもしれません」

──そんな現場のリアルを慎重に伝えるが、

返ってくるのは「いや、それはできる」「やるしかない」という言葉。

社長には、現場の戸惑いや混乱が“やればわかるはずのこと”であったり、

“覚悟の足りなさ”に映っているようだ。

けれど、彼女には**“見え方のずれ”に見えている。**

気づけば、自分の言葉がどちらにも届かないような感覚が残る。

経営の近くにいながら、意思決定には関われない。

現場を理解しているのに、裁量を発揮できない。

社長は現場の未熟さを感じ、

現場は社長の“方針がコロコロ変わる”ように見えて苛立っている。

そのあいだに立つ彼女は、どちらの言い分も理解できるがゆえに、どちらからも距離を置かれる。

ときに社長の意図を代弁すれば、現場から反発を受け、

現場の声を拾えば、社長から「言い訳に聞こえる」と言われる。

だからこそ、一番誠実に立ち回っているのに、いちばん板挟みになる。

この立場の孤独は、静かだけれど、深い。

内省|「伝わらない」には3つのパターンがある

彼女が感じている「伝わらなさ」は、

単に言葉の選び方や伝達手段の問題ではない。

その根っこには、**立場によって異なる“伝わらなさの構造”**がある。

そしてそれは、大きく三つのパターンに分けられる。

① 上に伝わらない──現場のリアルが、理想の中で薄まる

社長は、会社全体を動かすための理想やスピード感を大切にしている。

だから、現場の課題を聞いても「やればできる」と返す。

そこには、成長への信念もあれば、現実への鈍感さもある。

一方で、彼女が丁寧に言葉を選ぶほど、

その“現場の温度”は、社長の頭の中で抽象化されていく。

結果として、伝えたはずの内容が、意味の輪郭を失っていく。

② 下に伝わらない──社長の意図が、彼女の口を通して弱まる

彼女は、社長の方針をできるだけ柔らかく、誤解を生まないように伝えようとする。

けれど、その“配慮”が意図の鮮度を下げてしまう。

現場のメンバーには、「また上からの指示か」としか届かない。

伝えようとすればするほど、言葉が摩耗していく。

③ 自分にも伝わらない──“考えること”を自分の役割としていない

上にも下にも橋をかけ続けるうちに、

「自分はどうしたいのか」「どうすべきなのか」を言葉にする機会が少なくなっていく。

社長の意図を理解し、現場の状況を整理する──

その“翻訳”の仕事に意識の大半を使っているからだ。

彼女は、経営の意図を正確に伝えることが自分の役割だと信じている。

だから、自分の意見を明確にする必要をあまり感じていない。

仮に「どう思う?」と問われても、

経営の全体像を描くための視点や経験がないまま、

自分の言葉を整えることができずにいる。

誠実に動いているのに、

その誠実さが“自分の意思”を育てる方向には向かっていない。

ここに、彼女が抱える“伝わらなさ”の根がある。

“伝わらない”という現象の背景には、

伝える力の不足ではなく、それぞれが見ている位置の違いがある。

そのズレを整理することが、次に進むための第一歩になる。

その“一歩”とは、何か。

転換点|“翻訳”から“意味づけ”へ

「社長の言葉をどう伝えるか」──

これまでの彼女の関心は、ほとんどがその一点にあった。

誤解を防ぎ、現場を混乱させないように。

社長の意図を崩さずに、できるだけわかりやすく。

けれど、どれだけ丁寧に“翻訳”しても、

現場が動かなければ、経営は進まない。

彼女はそのシンプルな事実に気づきはじめている。

少しずつ、彼女の中に「伝える」よりも

“どう受け取らせるか”という視点が生まれてきた。

それはまだ言葉にならないけれど、

“翻訳者”ではなく“意味づけを促す人”としての小さな目覚めでもある。

社長の言葉をそのまま伝えるのではなく、

「こう受け取りました。こう動くことで、こんな変化が想定されるので、まずそこまでやります。」

と返してみる。

それは、“意図をくんでもらう”ためではなく、

動いてもらう中で気づきを生み出すための返し方だ。

現場に理解を求めすぎず、

段階的なアプローチで「現場が動く」ことを優先する。

その小さな実践が、やがて“現場が自ら意味づけできる組織”への土台になっていく。

「伝える」から「動かす」へ。

その転換が、彼女自身の言葉に“自分の意思”を取り戻していく第一歩になる。

結び|「支えるリーダー」に共通する、静かなテーマ

今回の彼女のケースは、決して特別なものではない。

「支える立場」にいる人ほど、

自分の意思よりも、誰かの意図を優先してしまう。

その誠実さが、いつの間にか“自分の言葉の薄まり”につながっていく。

けれど、経営やチームが動くためには、

支える側がただの“翻訳者”で終わってはいけない。

言葉の背景を理解し、状況の意味を整理し、

ときに「まずこう動いてみます」と意思を返す。

その小さな対話の積み重ねが、

組織に“考える文化”をつくっていく。

支えるリーダーの成長は、

声を大きくすることでも、立場を強く主張することでもない。

状況の中で、自分なりの意味を見つけ、行動で示すこと。

静かに、けれど確かに組織を変えていく。その姿勢が、支えるリーダーの原点だ。

経営の信頼は“成果”よりも“姿勢”で積み上がる

1. 成果はわかりやすい、でもそれだけでは足りない

経営をしていると、どうしても「成果」で物事を測りがちです。

売上や利益、数字として表れる結果は、経営者、管理職、現場の間で共通言語にしやすいからです

でも、あるクライアントさんとのセッションでの出来事が、改めてぼくに問いを投げかけてきました。

その方は、自社で進めていたプロジェクトがうまくいかず、やむを得ず作り直しに至った案件を振り返っていました。

「結果」として見れば、顧客に満足を与えられなかった事例です。

ところが、その中で光ったのは「失敗をどう受け止め、どう対応したか」という姿勢でした。

顧客への謝罪を避けずに向き合い、必要なパートナーを紹介し、顧客の得たい「結果」に対して今、自社ができることをやり遂げようとする姿勢

それを経営者として実践しようとする姿を目の当たりにして、ぼく自身も大きな気づきを得ました。

──信頼は「成果」ではなく「姿勢」で積み上がるのではないか。

この記事では、その気づきを整理しながら、経営に携わる方にとってのヒントをお伝えしていきます。

2. 数字に頼りすぎると信頼の土台を見失う

成果はわかりやすく、数字で示せます。

経営において数字は間違いなく大切で、売上や利益といった指標がなければ、組織は健全に続けられません。

経営者・管理職・現場、それぞれの立場で共通言語にしやすいのも「数字」という形だからこそです。

ただ──数字だけを拠り所にすると、信頼の土台を見失ってしまうことがあります。

「成果が出たときは評価されるけれど、出なかった瞬間に一気に信頼が揺らぐ」

そんなとき、現場では数字の良し悪しに一喜一憂し、チームの安定感が大きく揺れ動く光景を、ビジネスコーチとして様々な現場で見てきました。

一方で、数字だけでは測れない信頼の軸があります。

それが「どんな姿勢で臨んでいるか」という部分です。

成果が出ているときも、出ていないときも、誠実に相手と向き合い続ける姿勢があるかどうか。

ここが、数字だけでは語れない長期的な信頼を左右していきます。

大切なのは、成果と姿勢のどちらか一方を選ぶことではありません。

数字を追うことと、姿勢を示すことの両輪がそろって初めて、信頼は安定して積み上がっていくのだと思います。

3. 信頼を積み上げる本当の力は「姿勢」

成果は一時的なものですが、姿勢は日常の積み重ねとして相手に映ります。

たとえば「謝るべきときにきちんと謝る」「不都合なことも隠さずに伝える」「できないことを無理に抱え込まず、適切なパートナーにつなぐ」──こうした一つひとつの姿勢が、長い時間をかけて信頼を形づくっていきます。

逆に言えば、姿勢はごまかせません。

成果だけを追っているときには見えにくい部分ですが、人は「この人はどういうスタンスで向き合ってくれているのか」を敏感に感じ取ります。

だからこそ、数字が思うように出ていないときほど、姿勢が信頼の決め手になるのです。

ある経営者のクライアントさんも、プロジェクトが計画通りに進まなかったときに、ただ謝罪するだけでなく「顧客の得たい結果に対して、今、自社ができることをやり遂げよう」とする姿勢を示しました。

その姿勢が、信頼を継続させるための大切な一歩になっていました。

信頼は、成果の波に左右されない「姿勢」という土台の上に積み上がります。

その姿勢は、日常のちょっとした態度や対応の中に表れ、相手に安心感や一貫性を感じさせます。

4. 姿勢が信頼を変えた3つの事例

「姿勢」が信頼に影響を与えるのは、抽象的な話ではありません。

現場では、ちょっとした態度や対応の積み重ねが、実際に関係を左右していきます。

今回の記事のきっかけになった、ある経営者のクライアントさんは、

顧客から「プロジェクトで制作したシステムが、運用開始後に現場からの要望で改修が必要になり、他社に開発を依頼することにした」との連絡を受けました。

このクライアントさんはきちんとお客様と向き合い、必要なパートナーを紹介し、

「顧客の得たい結果に対して、今できることをやり遂げる」姿勢を示したのです。

誠実に対応することで、今後の信頼を構築している最中です。

また、営業力がとても高い別のクライアントさんの会社では、

顧客との関係がうまくいかなくなっているときほど、営業所長や営業課長が率先して顧客先に出向くことを当たり前に行っています。

その姿勢が、商品の品質の高さとともに会社のブランドへの信頼を、より確かなものにしているのです。

そして、少し手前味噌な事例ですが──

ぼくが会社員時代、商品の企画や開発に関わる仕事をしていた頃のことです。

ぼくが企画に携わった商品で、製造現場のミスなどからトラブルが発生することが時々ありました。

そういう時に、ぼく自身がまず顧客のもとへ出向き、お話をきちんと聴くようにしていました。

結果としてお客様との距離がグッと縮まり、それ以前よりも強い信頼とともにビジネスをご一緒させていただくという経験が、幾度となくありました。

成果が出ているときはもちろんですが、むしろ成果が揺らいだときほど「姿勢」が信頼を変えていきます。

数字では測れないけれど、日常のふるまいが確実に相手の心に残り、長期的な関係性を支えるのです。

5. 経営者が姿勢を磨く3つの実践ポイント

姿勢は一朝一夕で身につくものではありません。

けれども、日々の意識や小さな行動の積み重ねによって、少しずつ磨いていくことができます。

ここでは、経営者として実践できる3つのポイントをまとめてみます。

1. 短期的な成果に一喜一憂せず、中長期の視点を持つ

数字や成果はもちろん大切です。

ただ、経営を続けていくうえで本当に必要なのは、中長期で信頼を積み上げる姿勢です。

「この判断は、3年後・5年後の会社にどんな意味を持つか」という問いを一つ加えることで、目先の成果に流されず、落ち着いた判断ができるようになります。

2. 不都合なことほど率直に伝え、組織の文化にする

トラブルや想定外のことは、必ず起こります。

そのときに「隠す」より「正直に伝える」ことが、信頼の礎になります。

経営者が自らその姿勢を示すことで、社員も同じ姿勢をとるようになり、誠実さが組織文化として根づいていきます

3. 自社だけで抱え込まず、外部の力を戦略的に使う

限られたリソースの中で、すべてを自前で解決するのは現実的ではありません。

必要に応じて信頼できるパートナーや専門家を紹介することは、顧客にとって「責任を持って対応してくれた」という安心につながります。

そして、このときに借りた外部の力をきちんと分析することが大切です。

どんな技術力を自社として獲得すべきか、どのリソースはアウトソースを継続すべきか、適切な外部パートナーは誰か──。

外部協力を単なる応急対応にせず、向後の経営戦略を明確にしていく機会へとつなげられます。

信頼を支えるのは、目に見える成果だけではなく、日常ににじみ出る姿勢です。

今日からできる小さな一歩に、中長期のビジョンを重ねていくことで、やがて大きな信頼を築く力へと変わっていきます。

6. まとめ──信頼は成果以上に姿勢で築かれる

経営の現場では、つい「成果」ばかりに目が向きがちです。

もちろん成果や数字は大切で、組織を維持し成長させるための共通言語でもあります。

けれども、信頼の本当の土台になっているのは、日々ににじみ出る「姿勢」です。

謝罪の仕方、誠実な説明、パートナーを紹介する判断、中長期を見据えた行動──。

そうした小さな積み重ねこそが、長期的な信頼を支えています。

成果は一時的に上下しますが、姿勢はどんな状況でも示すことができます。

だからこそ、「この人となら長く付き合いたい」と思ってもらえるかどうかは、成果以上に姿勢にかかっているのだと思います。

この記事を読んでくださっている経営者の方も、改めてご自身の「姿勢」を振り返ってみてはいかがでしょうか。

明日の一歩を考えるとき、まずは「どんな姿勢を示すか」から始めてみてください。

「No.2」をどう育てるか?──課長の次の仕事はリーダーを育てること

チームの成績も雰囲気も、まずまず順調。
そんなときこそ、ふと頭をよぎることはありませんか?

「このまま自分が中心で動き続ける状態でいいのか?」
「次のリーダーを育てていく必要があるんじゃないか?」

今回の記事では、実際に営業課長の方とのコーチングセッションを通じて見えてきた、
「No.2育成」のリアルな課題と、育て方の工夫について整理しています。

・なぜNo.2を育てる必要があるのか?
・うまく任せられないときにつまずきやすいポイントは?
・具体的にどんな関わり方をすればいいのか?

そんな疑問を持つ方に、現場感あるヒントをお届けできればうれしいです。

1. 次のリーダーを育てる──営業課長との対話から考えるチームづくり

ぼくのコーチングセッションを継続的に受けていただいている方のひとりに、営業課長を務めている方がいます。
いつもチームメンバー一人ひとりが自分らしさを発揮して活躍できるように、チームのマネジメントに全力で取り組んでいらっしゃる方です。

ある日のセッションでも、メンバーとのコミュニケーションについて話している中で、「No.2をもっと育てたい」という課題が話題に上がりました。

チーム全体としてはまずまず好調。でも、自分が常に中心に立つだけでなく、次のリーダーとなる存在を育てたい──そんな視点を持つことは、課長として次のステージに進むサインでもあります。

今回はそのセッションでの対話をもとに、課長クラスの方が「No.2をどう育てていくか?」について、実際の現場感を交えながら整理していきます。

2. 中心で動くだけでは続かない──チーム成長の次のステージへ

チームが安定してきた今、次に必要なのは「次のリーダー」の育成です。
チーム運営がある程度軌道に乗ってきたタイミングで、「次のリーダーを育てたい」と感じる課長の方は少なくありません。
営業成績もチームの雰囲気も悪くない。でもその一方で、「自分がずっと中心に立ち続ける状態は、この先も続けられるのか?」という問いが生まれてきます。

実際、チームが大きくなればなるほど、課長ひとりで全員を細かく見続けることは難しくなります。
そこで必要になるのが、No.2の存在です。

No.2がいることで──
・課長が見きれない部分まで目を配れる
・メンバー同士で支え合う流れが生まれる
・チーム全体が“自走”できる状態に近づく

つまり、No.2を育てることは、自分自身の負担を減らすためだけではなく、チーム全体の力を最大化するための大切なステップなんです。

特に営業部門のような成果主義の環境では、数字に意識が向きやすく、チーム内でリーダー的な役割を担う人材育成は後回しになりがちです。
だからこそ、意識的に「次のリーダーを育てる」時間を確保していく必要があります。

No.2を育てる必要性は分かった。でも実際には、思うように育たないこともあります。
ここからは、そんなときにつまずきやすいポイントを整理していきます。

3. うまく任せられない時に見直すべき3つの視点

コーチングを通じて多くの管理職の方と対話をしていると、「No.2を育てたい」と考えた時に、いくつか共通するつまずきポイントがあると感じます。

まず一つ目は、
自分がやった方が早い──その気持ちを手放しきれないこと。

目の前の業務や数字が動いている中で、「任せたほうがいい」と頭では分かっていても、つい自分で動いてしまう。
その結果、No.2がリーダーシップを発揮する場面が減ってしまいます。

二つ目は、
任せる範囲や役割があいまいなままになってしまうこと。

「リーダーらしく動いてほしい」と思っていても、No.2自身もまだ“チーム全体を見て動く”という感覚よりも、
「自分が動いたほうが早い」という意識が強く残っていることが多いんです。

そのため、こちらが期待しているほど周りを巻き込む動きが見られなかったり、
チームマネジメントよりも自分の数字を優先しがちになったりする場面も出てきます。

ここは、No.2育成において一番大事なポイントだと感じます。
だからこそ、任せる内容や判断の範囲を具体的に言語化して、No.2自身が「どこまで自分が責任を持つのか」を腹落ちできる状態をつくる必要があります。

そして三つ目は、
「任せた=放置」になってしまうこと。

任せることと、任せきりにすることは別物です。
任せたからこそ、節目節目でフィードバックをしたり、相談しやすい関係を保ったりする必要があります。

これらはどれも、忙しい日常の中ではつい後回しになりがちなポイントです。
だからこそ、意識的に仕組みや関わり方を整えていく必要があります。

4. 実践で使える! 育成を進めるための3つの工夫

ここまで触れてきたポイントをふまえて、「No.2」を育てるための具体的なアプローチを3つに絞って整理します。

① 役割の明確化と任せる範囲の言語化

No.2に対しては、「どこまで自分で判断していいか」を明確に伝えることが大前提です。
たとえば、チーム内の進捗確認や後輩指導の主担当はNo.2に任せる、といった具合に、範囲や権限をはっきりさせること。

あいまいなままだと、結局また自分に仕事が戻ってきます。
さらに、No.2の「自分でやった方が早い」が発揮されてしまい、育成が思うように進まなくなることもあります。

② 定期的な対話とフィードバック

任せっぱなしにならないように、No.2とは定期的に状況を確認する場を持つことが大切です。
特に意識したいのは、数字や業務だけでなく「今どんなふうに感じているか」「何がやりづらいか」といった内面的な部分まで話せる関係をつくること。
面談の場所やタイミングを変えるのも一つの工夫です。

③ チーム全体との関係性づくりを支援する

No.2が本当の意味で“リーダー”として機能するためには、他のメンバーからも頼られる存在になる必要があります。
そのためには、課長自身が「No.2を通す」場面を増やしたり、ナンバー3・4・5といった他のメンバーとの橋渡し役を積極的に任せたりすることも有効です。
No.2が自然と中心に立つ流れをつくること。
それが、結果的にチーム全体の自走力につながります。
この3つを意識して関わることで、「自分だけで何とかする」状態から「チームで自然に回る」状態へと、一歩進めるきっかけになります。

 

多くの場合、まずは自分が中心で動く時期があります。
でも、チームが成長し続けるためには、いつかその状態を手放すタイミングがやってきます。

No.2を育てることは、自分の仕事を減らすことではなく、チームの力を底上げすること。
むしろ、自分よりも優秀なNo.2が育った時こそ、本当の意味でチームが強くなったと言えるのかもしれません。

今回まとめた3つのアプローチは、そのための一つのヒントです。
「自分ひとりで全部やる」のではなく、「チームみんなで自然に回る」状態を目指して。
次のリーダーを育てることも、リーダー自身の大事な役割です。
チームの未来を考えるなら、No.2育成から、ぜひ始めてみてください。

若手の“転職したい”に、あなたが正解を出さなくても良い理由

「部下から“転職を考えています”と言われました」

そんな報告を受けたとき、あなたはどう反応するでしょうか。
引き止めるべきか、黙って背中を押すべきか、それとも上司として何かを伝えるべきか。
――いろんな考えが一気に頭を駆け巡るかもしれません。

私たち管理職は、「その場で的確に対応すること」や「部下にとって正しい助言をすること」を求められる場面が多くあります。
だからこそ、“転職”という言葉を聞いた瞬間、つい「どう対処すればいいか?」という答え探しのスイッチが入ってしまうのも無理はありません。

でも、そんなときこそいったん立ち止まって考えてみてはどうでしょうか?
その言葉、本当に“辞めたい”という意味なのでしょうか?
そして――

その言葉をどう受け取るかが、あなた自身のマネジメントを問い直すチャンスになるかもしれません。


“転職”という言葉の奥にあるもの?

以前のセッションで、ある管理職の方からこんな相談を受けました。
「新入社員の女性から“転職を考えています”と言われて、正直、どう対応すればいいかわからなくなってしまいました」

この方は、これまで対話型のマネジメントを実践し、部下の主体性を引き出し、安心して意見を出し合えるチームづくりを地道に積み重ねてきました。
実際、とても良いチームビルディングができていました。

しかし、今回の新人にはこれまでのやり方が通用しませんでした。

一見すると明るく、ポジティブな印象で、コミュニケーションもきちんと取れているように見える――
けれど、どこか本気さが感じられず、常に薄い違和感が残る。
大きなトラブルがあるわけではないものの、時折、目立たないかたちで自己中心的な行動が見られることもありました。

そんな新人との関わり方に悩み始めていた矢先の“転職発言”だったのです。

これまでも難しい局面は何度もあったけれど、自分のマネジメントでなんとか乗り越えてこられた。
でも今回は通用しないのではないか――そんな迷いが、少しずつ心の中に生まれていたようです。

とはいえ、「これまでのやり方が通用しない」という感覚は、これまで積み上げてきた自分のマネジメントに対する小さな不信感を呼び起こすこともあります。

とくに対話型のマネジメントを実践している人ほど、
「関係性を築く」「対話する」「相手の成長を信じて関わる」といった原則を大切にしているからこそ、
うまくいかない相手と出会ったときに、「自分のやり方がズレていたのではないか?」という自責の思考に陥りやすいのです。

だからこそ、「接し方を変えれば解決するのでは」と考えるのは、ある意味とても自然な反応です。
けれどその視点は、相手に合わせようとするがゆえに、逆に自分の視野を狭めてしまうこともある。

この方も、「新人に対してどのように接すればいいのか?」という“接し方の修正”に意識が向いている感じがしました。
けれど、それだと関わり方の選択肢の幅が狭くなるように感じたので、

私は、視点を変えることが効果的だと思えたのです。

そこで私は、こう問いかけてみました。

「その“転職したい”という言葉、本当にそのまま受け取って良いと思いますか?」

もしかすると――
• 自分の存在を認めてほしいという“試し行動”
• 過度な期待への“抵抗”
• 職場に対する違和感を言語化できず、転職という言葉に置き換えている

そんな背景がある可能性もあります。
「転職したいです」は、単なる意思表明ではなく、“何かを伝えたい”というサインなのかもしれません。


正解探しより、問いの力を信じてみる

転職の意思を伝えてきた新人に対して、どんな言葉をかければよいのか。
どんな態度で接するべきなのか。
管理職としてその場に立たされたとき、私たちはつい「正しい対応」を探そうとしてしまいます。

でも、すぐに“正解”を出そうとすることが、かえって状況を見誤らせてしまうこともあります。

対話型のマネジメントを実践してきたこの方も、今回ばかりは、

「自分のマネジメントにどこか足りないところがあったのではないか」
「接し方をもっと変えた方がよかったのではないか」
そんなふうに“答え”を求め始めていました。

ですが、マネジメントにはそもそも正解がありません。
あるのは、その時々の相手に合わせた“問い”を持てるかどうかです。

とはいえ、正解を出したくなる気持ちは、とてもよくわかります。
上司という立場にあると、部下の不安を取り除くことや、スムーズに仕事が回るように整えることが求められます。
だからこそ、「何か言わなければ」「すぐに動かなければ」と感じてしまうのは、ある意味自然な反応です。

けれど、「正しく対応すること」ばかりに意識が向いてしまうと、
いつの間にか、“相手の言葉をどう受け取るか?”という問いよりも、
“自分がどう振る舞えばいいか?”という問いにすり替わってしまうことがあります。

問いを持つとは、「正解を探し続ける」ことではありません。

一度立ち止まり、その言葉の裏にある背景やサインを見つめる余白を持つこと。

それこそが、対話型マネジメントを実践する上での“本当の問い”なのだと思います。

たとえば今回のように、「転職したい」という言葉が出てきたとき、
それをそのままの意味で受け取って、“転職したい部下”への接し方を選ぶのか?
それとも、その言葉を何かしらのサインとして捉えたうえで接するのか?

どちらの姿勢で関わるかによって、見えてくる景色は大きく変わってきますし、
関わり方の選択肢の幅も、圧倒的に変わってきます。

人は、心の中で思っていることをそのまま言葉にできないこともありますし、
意図的に、違う言葉を発することもありますよね。

だから、言葉に反応することではなく、問いを持ち続ける意識をもつこと。

その問いが、次の一手を見つける力になります。


「見守る」という粘り強さ

今回のケースでこの管理職の方が選んだのは、すぐに何かを変えようとするのではなく、“見守る”という選択でした。

ただ、それは決して放置ではありません。
「社会人としてのルールに明確に反したときだけ指導する」
「必要に応じて人事部門にも状況を共有する」
――そうした対応策を冷静に整えた上で、“あえて踏み込まない”という判断をされたのです。

そしてもう一つ、大切にされていたことがあります。
それは、新人の成長を諦めないこと
感情を介入させすぎず、でも見捨てることなく、距離を取りながらも可能性に目を向け続ける。
その姿勢には、粘り強さと覚悟がありました。

けれど、「見守る」という選択は、言うほど簡単ではありません。
人間のもつ本当の力を信じたいと思う反面、

「本当にこのままでいいのか」「何か動いた方がいいのではないか」――
そんな葛藤が、心の中で何度も浮かんでは消えます。

ときには、周囲からの声がプレッシャーになることもあります。
「最近あの子、大丈夫なの?」「もっと声をかけてあげた方がいいんじゃない?」
そんなふうに言われると、
自分の静かな“見守り”の姿勢が、消極的に見えているのではと不安になる瞬間もあるでしょう。

でも本当は、「見守る」というのは何もしないことではなく、“すぐに動かない”という決断を続けること。
その裏には、手を出すことが自分の安心のためになっていないかという、内省と問いかけがあるのだと思います。

すぐに動くこと、すぐに言葉をかけることが「マネジメントらしさ」だと思い込んでしまうと、
“何もしない”ことは無責任に感じられるかもしれません。
そして、とくに自分が迷っているときは、「動く」ほうが自分が楽なことも、本当は多いと思います。

でも実は、問いを持ち続けながら見守ることこそ、最もエネルギーがいるマネジメントのひとつなのだと思います。


部下の「転職したい」は、上司の成長の扉

「転職したい」と口にする部下に、どう向き合うか。
それは単に、“引き止める or 見送る”という二択の話ではありません。

まず大前提として、転職は悪いことではありません。
部下には部下の人生があり、その時点でのベストな選択として転職を選ぶことも、当然あり得ることです。

けれど、その選択が正しいかどうかを判断することよりも、
上司として本当に大切なのは――

たとえそれがマネジメント側の要因ではなかったとしても、その言葉が発せられた“状況”に、どれだけ真摯に向き合えるかどうか

正解を出そうと焦るよりも、問いを持ち続ける。
すぐに動くのではなく、粘り強く見守る。
その姿勢が、部下の未来を信じることにもなり、同時に自分自身を育てることにもつながっていきます。

だからこそ、「転職したい」のように、一見会社側にはマイナスに聞こえる、
現状を大きく変えようとする部下の言葉は、

結果がどうなろうとも、上司自身の成長に向けた扉をノックしてくれているのかもしれません。

たとえ最終的にその部下が転職という選択をしたとしても、関わった時間が無駄になるわけではありません。

マネジメントは、“関係性の結論”ではなく、“関わったプロセス”そのものに価値がある。

上司の問い続ける姿勢は、部下の心に直接届かなくても、
その後の誰かとの関係、あるいは自分自身の在り方に、きっとつながっていくはずです。

その扉の前で、あなたはどんな問いを持ちますか?

目標設定は”道具”である!評価に振り回されない成長の考え方

チームをまとめる立場の人としてのジレンマ:メンバーに寄り添うほど評価制度に疑問を持つ

Aはすごく頑張っているのに、評価はBの方が高いんですよね。」

チームをまとめる立場の人として、メンバーの努力や成長を間近で見ているからこそ、評価制度の結果に納得がいかないことがあります。

会社の評価基準は一応「公平」を目指しているはずですが、どうしても基準化できない「プロセスの頑張り」や「状況の違い」があります。

もちろん、会社としての評価制度は一定の基準を設けることで公平性を保とうとしています。しかし、実際の現場では、どうしても一律の基準では測れない努力や貢献があるため、管理職として納得感を持ちにくい部分があるのです。

その結果、

メンバーに寄り添いたい自分

会社の評価制度を運用する立場の自分

この間でジレンマを抱えることになります。

ぼくのコーチングを受けていただいている方には、現場を見ている管理職の方もたくさんいらっしゃいます。その中には、メンバーの評価に悩む方も少なくありません。

両方の立場を理解できるからこそ、「この評価制度で本当にいいのか?」という疑問が生まれがちです。

そんな中、ひとつ視点を変えることで、評価制度に振り回されず、メンバーの成長を本当に後押しできるマネジメントができます。そのポイントは、「目標設定は道具である」という考え方にあります。

目標設定は“成長の道具”であるはずなのに、“評価の義務”になっていないか?

評価制度のもとでの目標設定は、本来「メンバーが成長するための指針」として機能すべきものです。

しかし、現実には「評価のための義務」として運用されてしまうことが多いのではないでしょうか。

•「評価シートを埋めるために、とりあえず適当に目標を作る」
•「上司に指摘されないように無難な目標を設定する」
•「過去の目標をほぼそのままコピペする」

こうなってしまうと、目標設定の本来の意義が薄れ、

✅ メンバーの成長につながらない
✅ 評価のためにやらされ感が生まれる
✅ 目標が形骸化してしまう

といった問題が発生します。

「目標を設定しても、結局何も変わらない」と感じてしまうと、次第に目標設定そのものが形骸化してしまいます。

例えば、現場からこんな声を聞くことがあります。

•「去年と同じような目標を書いているけど、正直、内容を覚えていない。」
•「達成できるかどうかより、とりあえず書けばOKみたいになっている。」
•「評価のタイミングで上司に『これ、何のための目標だっけ?』と聞かれて、自分でも答えに詰まることがある。」
•「とにかく書かないといけないので、毎回適当に埋めているだけ。」

このような状態では、目標設定が形だけのものになり、実際の成長にはつながりません。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」として活用できるのでしょうか?

目標設定制度を厳しくすることで解決しようとする企業の落とし穴

目標設定制度が上手く機能しないときに、目標設定の範囲を狭くしたり、ルールを厳しくしたりすることで「なんとかしよう」とする企業を時々見かけます。

ですが、これをした企業でうまくいった事例というのは残念ながら見たことがありません。

このような”対処”をした企業の多くでは、前の章で挙げたような形骸化がさらに加速したり、現場社員の主体性が損なわれることが多いようです。

例えば、

•「目標フォーマットが細かすぎて、目標を自由に考える余地がなくなった。」
•「達成度の計測方法が厳密になりすぎて、短期的な目標しか立てられなくなった。」
•「自由度が低くなり、社員が“どうせ決められた範囲でしか目標を作れない”と諦めてしまった。」

目標設定制度のルールを厳しくすればするほど、社員は「決められた枠の中で適当にこなす」ことに意識を向けがちになります。

そして、目標設定の範囲が狭かったり、ルールが厳しいほど “適当にこなしやすく” なるのです。

結果として、目標設定そのものが単なる形式的な作業になり、メンバーの成長につながらないままとなってしまうのです。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」に変えられるのでしょうか?

メンバーの目標設定を「成長のための道具」にするための3つの工夫

1. 「何を達成したいのか?」を本人と対話する

評価のための目標ではなく、本人が「これができるようになったら、自分の仕事の幅が広がる」と思える目標を引き出すことが大切です。

「この1年で、どんなスキルを身につけたいですか?」
「今の仕事をより良くするために、どんなことができるようになりたいですか?」
「3年後のキャリアを考えたときに、どんな経験を積んでおきたいですか?」

このような問いかけをすることで、目標設定の意義を本人の成長に紐づけることができます。

2. 「目標達成のプロセス」に価値を置く

評価制度の枠組みでは、目標の「結果」だけが評価されがちですが、成長のためにはプロセスの学びを重視することが重要 です。

「目標に向かって何を工夫しましたか?」
「途中で壁にぶつかったとき、どう乗り越えましたか?」
「どの部分が一番成長を実感できましたか?」

こうしたフィードバックを通じて、「目標達成のプロセス」そのものを評価の一部として意識づけることができます。

3. 目標は「途中で変えてもいい」と伝える

評価制度のもとでは、目標を一度設定したら固定されることが多いですが、現場では以下のようなことが日常的に起こります。

📌 業務の状況が変わる
📌 新たな課題が見つかる
📌 途中で「もっと良い目標」が見つかる

そのため、「目標は修正可能である」と伝え、

「途中で方向転換してもOK」
「柔軟に軌道修正できるようにする」

という意識を持つことで、目標がより実践的なものになります。

もちろん、目標を頻繁に変えるのではなく、成長に必要な修正であることを説明し、上司やチームとも共有することが大切です。目標設定の目的が『達成ありき』ではなく、『成長のための指針』であることをメンバーにも伝えることで、安心して挑戦しやすい環境を作ることができます。

このような工夫をすることで、目標設定を単なる「義務」ではなく、本当の意味での「成長のための道具」として機能させることができます。

そして、これらの工夫を機能させるためには、管理職のより高いリーダーシップを必要とします。

つまり、目標設定を成長の道具として機能させるための本質的な課題解決の方法は、管理職が成長すること なのです。

経営側にも求められる管理職の成長のための施策

管理職としてメンバーの成長を支援したくても、評価制度や会社の仕組みが壁になってしまうことがあります。だからこそ、経営側もこの問題に向き合い、管理職が成長支援をしやすい環境を整えることが重要です。

経営側にできることは、大きく3つです。

1. 目標設定を「成長の場」にする文化を作る
2. 管理職向けのコーチングや研修を実施する
3. 目標設定の自由度を確保する

特に、「こういう仕組みがあると助かる」と管理職が経営側にフィードバックすることは、現場の変化を生む大きな力になります。

経営側の支援を待つだけではなく、管理職自身が「この仕組みが必要だ」と働きかけることもできます。

では次のパートではいよいよ、管理職が自分のリーダーシップをどのように磨けばいいのかを見ていきましょう

管理職はどんなことを意識して自分のリーダーシップを磨いたら良いのか?

管理職のリーダーシップとは、単に指示を出すことではなく、部下の成長を促し、主体性を引き出す力のことです。目標設定を『評価の義務』ではなく『成長の機会』にするためには、管理職自身の関わり方が大きな影響を与えます。

管理職の立場として、メンバーの成長を支援したいと考えても、経営側の方針や評価制度の仕組みによって、その動きを制限されることがあ流かもしれません。

ですが管理職自身が出来ることとして、目標設定を「評価の義務」ではなく、「部下の成長を支援する機会」 と捉えて行動することが重要です。

1. 目標設定は「成長を引き出す場」だと捉える

「この目標は評価にどう影響するか?」ではなく、「この目標は、あなたのキャリアデザインにおいてどんな役割を果たすと想う?」 という視点を持つことが大切です。

目標設定面談でこの問いを投げかける
目標達成のプロセスを評価し、成長の視点からフィードバックする

こうした関わりをすることで、目標設定を通じて部下の成長を支援できるようになります。

2. 目標設定のフィードバックを充実させる

目標設定は、設定した時点ではなく、振り返りの場面でどれだけ学びを得られるかが重要 です。

「目標に向かって何を工夫した?」
「途中で困ったことは?どう乗り越えた?」
「次に活かせることは何?」

このような問いかけをすることで、部下が目標を成長の機会として捉えやすくなります。

3. 現場のリアルな声を拾う

部下が「目標設定が意味のあるもの」と感じているかどうかを、普段の会話や1on1の場で確認することも大切です。

「この目標、今の業務にどんなプラスがあった?」
「やってみて、どんな気づきがあった?」
「目標設定の仕方、変えたほうがいいことはある?」

こうしたやりとりを通じて、目標設定のあり方を、現場のリアルなニーズに合わせて進化させる視点 を持つことが、管理職としてのリーダーシップにつながります。

つまり、目標設定を「成長のための道具」として機能させるためには、管理職が自らの成長にチャレンジにながら、リーダーシップを発揮していくことが求められるのです。

まとめ

目標設定は本来、メンバーの成長を支援するための「道具」であるはずです。しかし、多くの企業では目標設定が「評価のための義務」となり、形骸化してしまっています。

その結果、メンバーはただ目標を書くだけの状態になり、管理職も「評価をつけるためのもの」として扱いがちです。こうした状況を変えるためには、目標設定を「成長のための道具」にする工夫 が必要です。

管理職がメンバーの成長を促すためにできることは、次の3つです。

1. 目標を「成長の場」にする

「評価のために作るもの」ではなく、「キャリアデザインの指針」として活用する。

✔ 目標設定面談で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」を対話する。

2. プロセスを評価する

結果だけでなく、取り組みの中で得られた学びや工夫を振り返る。

✔ 「この目標に向かって何を工夫した?」と問いかける。

3. 現場の声を拾い、柔軟に調整する

業務の変化に合わせて、目標設定を柔軟に見直す。

✔ 「今の目標、現場の実情に合っている?」と確認する。

評価制度に振り回されるのではなく、目標設定を成長の機会に変える。その視点を持ち、実践することが、これからの時代の管理職に求められる重要な役割です。まずは、自分のチームの目標設定のあり方を見直し、できることから始めることであなたのリーダーシップを発揮してください。

まずは、次の1on1で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」と問いかけてみませんか?

そこから、あなたのリーダーシップは始まります。

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