昇進・昇格したあなたへ『何から始めればいいの?』迷ったときに立ち返る5つの視点

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はじめに:昇進はゴールではなくスタート

年度初め。

この時期、新しい肩書きでスタートを切った方も多いのではないでしょうか。

昇進や昇格は、これまでの努力が認められた大きな節目です。

でも同時に、「ここからが本当のスタートだ」と実感する瞬間でもあります。

今年度も、ぼくのコーチングを継続してくださっている方の中に、昇進・昇格を迎えた方が何人かいらっしゃいます。

新しい役割に向き合う姿はどの方も本当に真摯で、ぼく自身も毎回刺激を受けています。

実はこのブログも、その中のお一人とのセッションがきっかけで書いています。

初めて部下を持つことになり、「自分に人を育てることができるのか?」という問いに向き合っていた方です。

昇進したばかりの頃って、「とにかくミスなく回さないと」とか、「まずは自分がちゃんとやらないと」って気持ちになりやすいですよね。

ぼくもこれまで何人も、そんな気持ちで新しい役割に飛び込んでいく方たちを見てきました。

その姿勢はすばらしいし、責任感のある証拠。

でも、一つだけ視点を足すとしたら──

**「チームとして成果を出すには、自分一人では限界がある」**ということです。

なりたて管理職がはまりやすい「3つのトラップ」

① ✋ これまでどおり、自分で動いたほうが早いと思ってしまう

→ 手を動かせば成果は出る。でも、それを続けるほど部下は育たない。

② 📈 プレイヤーとしての延長線上で成果を出そうとする

→ 数字や結果で目立とうとするが、それはマネジメントの本質とはズレている。

③ 🧠 部下のことより、自分のことでいっぱいいっぱいになる

→ 「まず自分がちゃんとしなきゃ」と思いすぎて、部下との関係づくりが後回しに。

これ、全部「自分のがんばり」で何とかしようとしている状態なんですよね。

でも、役割が変わった今こそ、目を向けてほしいことがあります。

それは──

部下と一緒に成果を出していく、という視点です。

たとえば、自分がいないときもチームがちゃんと動いていたり、

誰かが「そのやり方、前に○○さんから学んだんです」とあなたのことを言ってくれたり。

そういう“じわっとくる成果”って、ほんとうに嬉しいんです。

だからこそ、今このタイミングで「育てる」というテーマに目を向けることは、

マネージャーとしてのスタートラインに立った今だからこそ、意味のあることだと思っています。

このブログでは、「育てるマネジメントって、どうやって始めればいいのか?」

そのヒントをお届けしていきます。

自分らしい関わり方を見つけたいと思っているあなたに、少しでも参考になれば嬉しいです。

1️⃣ 自分でやった方が早い、の壁

「これ、教えるより自分でやった方が早いな…」

管理職になって最初にぶつかる壁が、まさにこの感覚かもしれません。

チームとして成果を出したいと思っていても、現場は待ってくれません。

納期はあるし、質も落としたくない。

だからつい、手を出してしまう。自分でやった方が早いから。

しかも、切羽詰まれば詰まるほど、頭ではわかっていても思うようにいかないんですよね。

•報告の期限が明日まで!

•月末に売上が全然足りてない!

•プレゼンのクオリティがどうしても上がらない!

こういうとき、「育てる」なんて余裕がないよ…って思うのも、正直なところじゃないでしょうか。

「自分がいないと回らない」チームができあがる

もしあなたがずっとそのやり方を続けていたら、

メンバーは「困ったら上司に頼めばいい」「任せても結局自分で直される」と感じるようになります。

その結果、少しずつ自分で考える力や、自分で動く責任感が薄れていってしまうんです。

これって、長い目で見るとけっこう大きなリスクですよね。

でも、それでも少しずつ視点をずらしていくことができれば、

“自分がやる”というスタイルから抜け出していくことができます。

じゃあ任せるって、どうすればいいの?

「任せよう」と思っても、最初は勇気がいります。

でも、いきなり“全部”任せなくていいんです。

まずは「ここまでは任せる」という範囲を決めること。

その上で、うまくいかなかったときにどうフォローするかもセットで考えておく。

この“準備付きの任せ方”が、育てるマネジメントの最初の一歩になります。

そして大事なのは、「どうだった?」と振り返る時間をつくること。

これは、任せっぱなしではなく、関わり続ける姿勢を伝えることにもつながります。

任せることは、期待を伝えることでもある

人は、自分に期待されていると感じたときに一歩前に出ます。

逆に「どうせ無理だろうな」と思われていると、それ以上がんばろうとしません。

だからこそ、「やってみて」「任せるね」と伝えることは、

**「あなたならできると信じてる」**というメッセージにもなるんです。

もちろん、うまくいかないこともあります。

でも、そこで一緒に考え、成長のプロセスに付き合うことこそ、マネジメントの醍醐味かもしれません。

あなたがやった方が早い。

でも、あなたが“任せた先”にしか生まれない成長がある

それを信じて、最初の一歩を踏み出してみませんか?

2️⃣ 1on1は“管理”じゃなく“関係づくり”

昇進後にまず始めたほうがいいアクションは何ですか?

そう聞かれたら、ぼくは迷わずこう答えます。

「1on1をやってみてください」と。

メンバー一人ひとりと、落ち着いて話す時間を取ること。

これは、これからのチームづくりの土台になります。

でも、1on1ってやったことがないと、ちょっとハードル高く感じますよね。

「何を話せばいいんだろう…」とか

「ちゃんとアドバイスできる自信がない…」とか。

大丈夫です。

最初の1on1でいきなり深い話をしようとしなくてOKです。

むしろ、“管理”じゃなく“関係”をつくる場なんだと考えてもらえたら十分です。

聴くことから始まる信頼関係

1on1でいちばん大切なのは、相手の話を“ちゃんと聴く”こと。

アドバイスすることでも、管理することでもありません。

「最近どう?」というシンプルな問いからでも大丈夫。

相手の口から出てくる言葉を、途中でさえぎらず、評価せずに聴く。

これだけで、少しずつ「この人には話してもいいかも」という空気が生まれてきます。

上司が“ちゃんと聴いてくれる人”であることの価値

メンバーにとって、上司が「ちゃんと話を聴いてくれる人」かどうかは、とても大きな意味を持ちます。

ここでの“ちゃんと”には、ただ聞いているのではなく、評価せずに、途中で遮らずに、最後まで耳を傾けてくれるというニュアンスが含まれます。

仕事で判断に迷ったとき、誰かとの関係に悩んだとき。

そんなときに「この人なら話してもいいかも」と思える存在がいるだけで、人は安心し、前を向いていけるんです。

あなたが1on1を通じて「この人は大丈夫」と思ってもらえる存在になれたら、

それだけでチームの安心感と自走力は、確実に上がっていきます。

完璧な質問なんていらない

「どんな質問をすればいいですか?」と聞かれることもありますが、

正解の質問なんて、実はありません。

大事なのは、あなたが相手に関心を持っているかどうか。

その気持ちがあれば、多少ぎこちなくても1on1は成立します。

たとえば:

•「最近、仕事で面白かったことってある?」

•「いま、ちょっとしんどいなって思ってることってある?」

•「このチームで、もっとこうなったらいいなって思うことある?」

ちょっとした問いでも、関係性を深めるきっかけになります。

まずは月1回でも、10分でもいい。

1on1を始めてみることで、チームの空気は確実に変わりはじめます。

そして気づいたとき、きっとこう思うはずです。

「チームって、ひとりひとりとの対話の積み重ねでできていくんだな」と。

3️⃣ “強み”からマネジメントするという視点

部下の育成というと、つい「どこが足りないか」「何を直すべきか」に目が向きがちです。

もちろん、改善点に気づいて支援することは大切ですが──

そればかりだと、本人のモチベーションが下がってしまうこともあります。

そんなときこそ、“強み”に目を向けるという視点が力を発揮します。

弱点を補うより、強みを活かす方が伸びる

人は、自分の得意なことをやっているときに、自然とエネルギーが湧いてきます。

集中力も高まるし、周囲にも良い影響を与えやすくなる。

それはきっと、あなた自身も経験があるはずです。

だからこそ、上司として「この人は何が得意なのか?」「どんなときにイキイキしてるのか?」に目を向けて観察すること

それが、育成の入り口になります。

では、具体的にどこを見ればいいのか?

ぼくがよくお伝えしているのは、こんな3つの観点です。

その人が楽しそうに取り組んでいること(=好き)

周囲が自然とその人に頼っていること(=任せたくなる)

結果が出ていて、周囲からも評価されていること(=成果)

この3つが重なるところに、その人の“強み”が隠れていることがよくあります。

しかもそれは、目に見えるスキルだけじゃなく、関わり方や姿勢、仕事へのスタンスのような「その人らしさ」にも現れるんです。

「役割」ではなく「可能性」で関わる

マネージャーになると、つい“役割”で人を見てしまいがちです。

「あの人は経理だから数字まわり」「彼は中堅だから後輩指導」など。

でも、強みで見るということは、「この人にはこんな可能性があるかもしれない」という視点を持つということ。

実際にやったことがなくても、「向いてそう」と思えることを小さく任せてみることで、思わぬ成長につながることもあります。

強みを活かすチームは、自走する

強みを起点に任せられたメンバーは、「自分の力が活かされている」と感じやすくなります。

その実感が、自信と行動につながり、少しずつチーム全体の流れが変わっていきます。

こうした経験を積み重ねることで、メンバーの「自立」や「主体性」が育っていきます。

自分の意思で動ける人が増えると、やがてチーム全体が“自走”しはじめる。

「この人なら、あれを任せてみようかな」

そんな小さな選択の連続が、自走できるチームを育てていくんです。

強みを見る視点は、マネジメントにおいてとても優しい眼差しです。

それは、「あなたを見ているよ」「可能性を信じてるよ」というサインでもあります。

あなたがその視点を持つだけで、メンバーの表情がふっと明るくなる瞬間が、きっとあるはずです。

4️⃣ 自分の“理想の上司像”を棚卸ししてみる

部下を育てたい。

でも、自分はどう関わればいいのか、正解がわからない。

そんなときこそ、「自分がどんな上司でいたいか?」を考えてみることがヒントになります。

難しく考えなくても大丈夫です。

過去をちょっとだけ振り返ってみるだけでいいんです。

「この人みたいになりたい」と思った上司は誰でしたか?

•どんな関わり方をしてくれていましたか?

•どんな言葉が印象に残っていますか?

•自分がどんなふうに変わっていったか、覚えていますか?

あなた自身が成長したと感じた瞬間には、きっと誰かの“関わり”があったはずです。

そして大事なのは、その人のすべてを真似しようとしなくていいということ。

完璧に理想的な人なんて、きっといません。

でも、「あのときの言葉が嬉しかったな」「あの接し方は印象に残ってるな」

そんな“ひとつひとつの部品”のような要素を、自分なりに切り取って取り入れていけばいいんです。

そうやって、少しずつ自分だけのマネジメントスタイルをつくっていけばいい。

正解を探すのではなく、「自分の軸」を持つこと

マネジメントに“正解”はありません。

でも、「自分がどんな上司でいたいか」という軸があると、

迷ったときにもブレにくくなります。

•部下にどんなふうに関わりたいか

•どんなチームをつくりたいか

•自分がどんなふうに信頼されたいか

言葉にしてみることで、自分のマネジメントスタイルが少しずつ見えてきます。

育てるマネジメントは、他人のマネをすることじゃない。

あなた自身の言葉と行動で、少しずつ形づくられていくものです。

だからまずは、自分の過去を棚卸しして、

「自分が大切にしたい関わり方」を見つけるところから始めてみませんか?

5️⃣ 育成に“正解”はない

ここまで読んで、「なるほど、とは思うけれど…」と感じている方もいるかもしれません。

現場は忙しいし、余裕なんてない日もある。

ちゃんとやれている実感が持てないまま、毎日が過ぎていく。

そんな中で、「育てるマネジメント」なんて言われても、うまくできる気がしない──

そう感じるのも、すごく自然なことです。

育成は、正解を目指すものじゃない

マネジメントって、“うまくやろう”と思えば思うほど、プレッシャーが増します。

でも実際は、育成に「これが正解!」という唯一の答えなんてありません。

相手も状況も日々変わっていく中で、

あなた自身も試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ形をつくっていくしかない。

ときには遠回りに感じることもあるけれど、

そのプロセスこそが、あなたのチームを育てていく時間になります。

大切なのは、「関わろうとする意志」

うまくいくかどうかよりも、

何より大切なのは、**「部下と関わろうとする意志があるかどうか」**です。

忙しい中でも、少し時間を取って話を聴こうとする。

うまく伝わらなくても、また別の角度で伝えようとする。

任せたことに口を出したくなっても、信じて見守ろうとする。

その積み重ねが、メンバーに伝わっていきます。

「ちゃんと見てもらえている」「自分のことを気にかけてもらえている」

そんな実感が、行動を変えていくんです。

あなたのマネジメントには、あなたらしさがあっていい

ここまで読んでくれたあなたには、きっと「いいマネジメントをしたい」という思いがあるはずです。

その気持ちがある限り、たとえ迷いながらでも、きっとチームはついてきてくれます。

大事なのは、正しくやろうとしすぎないこと

完璧じゃなくていい。あなたらしさがある関わり方こそが、チームの空気をつくっていきます。

育成は、ゆっくりでいいんです。

関わる中で、お互いが育っていけばいい。

それが、あなたのチームの、これからの土台になっていきます。

🧭 おわりに:あなたらしい育成の一歩を

ここまで、「育てるマネジメント」をテーマに、5つの視点をお届けしてきました。

✅ 自分でやった方が早い、の壁を超える

✅ 1on1は“管理”ではなく“関係づくり”

✅ 強みからマネジメントするという視点

✅ 自分の理想の上司像を棚卸ししてみる

✅ 育成に“正解”はない

どれも、すぐに完璧にできるものではありません。

でも、どれも「意識して関わろう」と思ったその瞬間から、

少しずつチームの空気は変わっていきます。

昇進・昇格は、ゴールではなく新しいスタート。

大変なことも増えるけれど、その分だけ“育てる喜び”も手にしていけるはずです。

だからこそ、正解を探すのではなく、

「自分だったら、どんなふうに関わりたいか?」を問いながら、

あなたらしい育成の一歩を踏み出してみてください。

その一歩が、未来のチームをつくっていきます。

今日もその歩みを応援しています

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若手の“転職したい”に、あなたが正解を出さなくても良い理由

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「部下から“転職を考えています”と言われました」

そんな報告を受けたとき、あなたはどう反応するでしょうか。
引き止めるべきか、黙って背中を押すべきか、それとも上司として何かを伝えるべきか。
――いろんな考えが一気に頭を駆け巡るかもしれません。

私たち管理職は、「その場で的確に対応すること」や「部下にとって正しい助言をすること」を求められる場面が多くあります。
だからこそ、“転職”という言葉を聞いた瞬間、つい「どう対処すればいいか?」という答え探しのスイッチが入ってしまうのも無理はありません。

でも、そんなときこそいったん立ち止まって考えてみてはどうでしょうか?
その言葉、本当に“辞めたい”という意味なのでしょうか?
そして――

その言葉をどう受け取るかが、あなた自身のマネジメントを問い直すチャンスになるかもしれません。


“転職”という言葉の奥にあるもの?

以前のセッションで、ある管理職の方からこんな相談を受けました。
「新入社員の女性から“転職を考えています”と言われて、正直、どう対応すればいいかわからなくなってしまいました」

この方は、これまで対話型のマネジメントを実践し、部下の主体性を引き出し、安心して意見を出し合えるチームづくりを地道に積み重ねてきました。
実際、とても良いチームビルディングができていました。

しかし、今回の新人にはこれまでのやり方が通用しませんでした。

一見すると明るく、ポジティブな印象で、コミュニケーションもきちんと取れているように見える――
けれど、どこか本気さが感じられず、常に薄い違和感が残る。
大きなトラブルがあるわけではないものの、時折、目立たないかたちで自己中心的な行動が見られることもありました。

そんな新人との関わり方に悩み始めていた矢先の“転職発言”だったのです。

これまでも難しい局面は何度もあったけれど、自分のマネジメントでなんとか乗り越えてこられた。
でも今回は通用しないのではないか――そんな迷いが、少しずつ心の中に生まれていたようです。

とはいえ、「これまでのやり方が通用しない」という感覚は、これまで積み上げてきた自分のマネジメントに対する小さな不信感を呼び起こすこともあります。

とくに対話型のマネジメントを実践している人ほど、
「関係性を築く」「対話する」「相手の成長を信じて関わる」といった原則を大切にしているからこそ、
うまくいかない相手と出会ったときに、「自分のやり方がズレていたのではないか?」という自責の思考に陥りやすいのです。

だからこそ、「接し方を変えれば解決するのでは」と考えるのは、ある意味とても自然な反応です。
けれどその視点は、相手に合わせようとするがゆえに、逆に自分の視野を狭めてしまうこともある。

この方も、「新人に対してどのように接すればいいのか?」という“接し方の修正”に意識が向いている感じがしました。
けれど、それだと関わり方の選択肢の幅が狭くなるように感じたので、

私は、視点を変えることが効果的だと思えたのです。

そこで私は、こう問いかけてみました。

「その“転職したい”という言葉、本当にそのまま受け取って良いと思いますか?」

もしかすると――
• 自分の存在を認めてほしいという“試し行動”
• 過度な期待への“抵抗”
• 職場に対する違和感を言語化できず、転職という言葉に置き換えている

そんな背景がある可能性もあります。
「転職したいです」は、単なる意思表明ではなく、“何かを伝えたい”というサインなのかもしれません。


正解探しより、問いの力を信じてみる

転職の意思を伝えてきた新人に対して、どんな言葉をかければよいのか。
どんな態度で接するべきなのか。
管理職としてその場に立たされたとき、私たちはつい「正しい対応」を探そうとしてしまいます。

でも、すぐに“正解”を出そうとすることが、かえって状況を見誤らせてしまうこともあります。

対話型のマネジメントを実践してきたこの方も、今回ばかりは、

「自分のマネジメントにどこか足りないところがあったのではないか」
「接し方をもっと変えた方がよかったのではないか」
そんなふうに“答え”を求め始めていました。

ですが、マネジメントにはそもそも正解がありません。
あるのは、その時々の相手に合わせた“問い”を持てるかどうかです。

とはいえ、正解を出したくなる気持ちは、とてもよくわかります。
上司という立場にあると、部下の不安を取り除くことや、スムーズに仕事が回るように整えることが求められます。
だからこそ、「何か言わなければ」「すぐに動かなければ」と感じてしまうのは、ある意味自然な反応です。

けれど、「正しく対応すること」ばかりに意識が向いてしまうと、
いつの間にか、“相手の言葉をどう受け取るか?”という問いよりも、
“自分がどう振る舞えばいいか?”という問いにすり替わってしまうことがあります。

問いを持つとは、「正解を探し続ける」ことではありません。

一度立ち止まり、その言葉の裏にある背景やサインを見つめる余白を持つこと。

それこそが、対話型マネジメントを実践する上での“本当の問い”なのだと思います。

たとえば今回のように、「転職したい」という言葉が出てきたとき、
それをそのままの意味で受け取って、“転職したい部下”への接し方を選ぶのか?
それとも、その言葉を何かしらのサインとして捉えたうえで接するのか?

どちらの姿勢で関わるかによって、見えてくる景色は大きく変わってきますし、
関わり方の選択肢の幅も、圧倒的に変わってきます。

人は、心の中で思っていることをそのまま言葉にできないこともありますし、
意図的に、違う言葉を発することもありますよね。

だから、言葉に反応することではなく、問いを持ち続ける意識をもつこと。

その問いが、次の一手を見つける力になります。


「見守る」という粘り強さ

今回のケースでこの管理職の方が選んだのは、すぐに何かを変えようとするのではなく、“見守る”という選択でした。

ただ、それは決して放置ではありません。
「社会人としてのルールに明確に反したときだけ指導する」
「必要に応じて人事部門にも状況を共有する」
――そうした対応策を冷静に整えた上で、“あえて踏み込まない”という判断をされたのです。

そしてもう一つ、大切にされていたことがあります。
それは、新人の成長を諦めないこと
感情を介入させすぎず、でも見捨てることなく、距離を取りながらも可能性に目を向け続ける。
その姿勢には、粘り強さと覚悟がありました。

けれど、「見守る」という選択は、言うほど簡単ではありません。
人間のもつ本当の力を信じたいと思う反面、

「本当にこのままでいいのか」「何か動いた方がいいのではないか」――
そんな葛藤が、心の中で何度も浮かんでは消えます。

ときには、周囲からの声がプレッシャーになることもあります。
「最近あの子、大丈夫なの?」「もっと声をかけてあげた方がいいんじゃない?」
そんなふうに言われると、
自分の静かな“見守り”の姿勢が、消極的に見えているのではと不安になる瞬間もあるでしょう。

でも本当は、「見守る」というのは何もしないことではなく、“すぐに動かない”という決断を続けること。
その裏には、手を出すことが自分の安心のためになっていないかという、内省と問いかけがあるのだと思います。

すぐに動くこと、すぐに言葉をかけることが「マネジメントらしさ」だと思い込んでしまうと、
“何もしない”ことは無責任に感じられるかもしれません。
そして、とくに自分が迷っているときは、「動く」ほうが自分が楽なことも、本当は多いと思います。

でも実は、問いを持ち続けながら見守ることこそ、最もエネルギーがいるマネジメントのひとつなのだと思います。


部下の「転職したい」は、上司の成長の扉

「転職したい」と口にする部下に、どう向き合うか。
それは単に、“引き止める or 見送る”という二択の話ではありません。

まず大前提として、転職は悪いことではありません。
部下には部下の人生があり、その時点でのベストな選択として転職を選ぶことも、当然あり得ることです。

けれど、その選択が正しいかどうかを判断することよりも、
上司として本当に大切なのは――

たとえそれがマネジメント側の要因ではなかったとしても、その言葉が発せられた“状況”に、どれだけ真摯に向き合えるかどうか

正解を出そうと焦るよりも、問いを持ち続ける。
すぐに動くのではなく、粘り強く見守る。
その姿勢が、部下の未来を信じることにもなり、同時に自分自身を育てることにもつながっていきます。

だからこそ、「転職したい」のように、一見会社側にはマイナスに聞こえる、
現状を大きく変えようとする部下の言葉は、

結果がどうなろうとも、上司自身の成長に向けた扉をノックしてくれているのかもしれません。

たとえ最終的にその部下が転職という選択をしたとしても、関わった時間が無駄になるわけではありません。

マネジメントは、“関係性の結論”ではなく、“関わったプロセス”そのものに価値がある。

上司の問い続ける姿勢は、部下の心に直接届かなくても、
その後の誰かとの関係、あるいは自分自身の在り方に、きっとつながっていくはずです。

その扉の前で、あなたはどんな問いを持ちますか?

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目標設定は”道具”である!評価に振り回されない成長の考え方

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チームをまとめる立場の人としてのジレンマ:メンバーに寄り添うほど評価制度に疑問を持つ

Aはすごく頑張っているのに、評価はBの方が高いんですよね。」

チームをまとめる立場の人として、メンバーの努力や成長を間近で見ているからこそ、評価制度の結果に納得がいかないことがあります。

会社の評価基準は一応「公平」を目指しているはずですが、どうしても基準化できない「プロセスの頑張り」や「状況の違い」があります。

もちろん、会社としての評価制度は一定の基準を設けることで公平性を保とうとしています。しかし、実際の現場では、どうしても一律の基準では測れない努力や貢献があるため、管理職として納得感を持ちにくい部分があるのです。

その結果、

メンバーに寄り添いたい自分

会社の評価制度を運用する立場の自分

この間でジレンマを抱えることになります。

ぼくのコーチングを受けていただいている方には、現場を見ている管理職の方もたくさんいらっしゃいます。その中には、メンバーの評価に悩む方も少なくありません。

両方の立場を理解できるからこそ、「この評価制度で本当にいいのか?」という疑問が生まれがちです。

そんな中、ひとつ視点を変えることで、評価制度に振り回されず、メンバーの成長を本当に後押しできるマネジメントができます。そのポイントは、「目標設定は道具である」という考え方にあります。

目標設定は“成長の道具”であるはずなのに、“評価の義務”になっていないか?

評価制度のもとでの目標設定は、本来「メンバーが成長するための指針」として機能すべきものです。

しかし、現実には「評価のための義務」として運用されてしまうことが多いのではないでしょうか。

•「評価シートを埋めるために、とりあえず適当に目標を作る」
•「上司に指摘されないように無難な目標を設定する」
•「過去の目標をほぼそのままコピペする」

こうなってしまうと、目標設定の本来の意義が薄れ、

✅ メンバーの成長につながらない
✅ 評価のためにやらされ感が生まれる
✅ 目標が形骸化してしまう

といった問題が発生します。

「目標を設定しても、結局何も変わらない」と感じてしまうと、次第に目標設定そのものが形骸化してしまいます。

例えば、現場からこんな声を聞くことがあります。

•「去年と同じような目標を書いているけど、正直、内容を覚えていない。」
•「達成できるかどうかより、とりあえず書けばOKみたいになっている。」
•「評価のタイミングで上司に『これ、何のための目標だっけ?』と聞かれて、自分でも答えに詰まることがある。」
•「とにかく書かないといけないので、毎回適当に埋めているだけ。」

このような状態では、目標設定が形だけのものになり、実際の成長にはつながりません。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」として活用できるのでしょうか?

目標設定制度を厳しくすることで解決しようとする企業の落とし穴

目標設定制度が上手く機能しないときに、目標設定の範囲を狭くしたり、ルールを厳しくしたりすることで「なんとかしよう」とする企業を時々見かけます。

ですが、これをした企業でうまくいった事例というのは残念ながら見たことがありません。

このような”対処”をした企業の多くでは、前の章で挙げたような形骸化がさらに加速したり、現場社員の主体性が損なわれることが多いようです。

例えば、

•「目標フォーマットが細かすぎて、目標を自由に考える余地がなくなった。」
•「達成度の計測方法が厳密になりすぎて、短期的な目標しか立てられなくなった。」
•「自由度が低くなり、社員が“どうせ決められた範囲でしか目標を作れない”と諦めてしまった。」

目標設定制度のルールを厳しくすればするほど、社員は「決められた枠の中で適当にこなす」ことに意識を向けがちになります。

そして、目標設定の範囲が狭かったり、ルールが厳しいほど “適当にこなしやすく” なるのです。

結果として、目標設定そのものが単なる形式的な作業になり、メンバーの成長につながらないままとなってしまうのです。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」に変えられるのでしょうか?

メンバーの目標設定を「成長のための道具」にするための3つの工夫

1. 「何を達成したいのか?」を本人と対話する

評価のための目標ではなく、本人が「これができるようになったら、自分の仕事の幅が広がる」と思える目標を引き出すことが大切です。

「この1年で、どんなスキルを身につけたいですか?」
「今の仕事をより良くするために、どんなことができるようになりたいですか?」
「3年後のキャリアを考えたときに、どんな経験を積んでおきたいですか?」

このような問いかけをすることで、目標設定の意義を本人の成長に紐づけることができます。

2. 「目標達成のプロセス」に価値を置く

評価制度の枠組みでは、目標の「結果」だけが評価されがちですが、成長のためにはプロセスの学びを重視することが重要 です。

「目標に向かって何を工夫しましたか?」
「途中で壁にぶつかったとき、どう乗り越えましたか?」
「どの部分が一番成長を実感できましたか?」

こうしたフィードバックを通じて、「目標達成のプロセス」そのものを評価の一部として意識づけることができます。

3. 目標は「途中で変えてもいい」と伝える

評価制度のもとでは、目標を一度設定したら固定されることが多いですが、現場では以下のようなことが日常的に起こります。

📌 業務の状況が変わる
📌 新たな課題が見つかる
📌 途中で「もっと良い目標」が見つかる

そのため、「目標は修正可能である」と伝え、

「途中で方向転換してもOK」
「柔軟に軌道修正できるようにする」

という意識を持つことで、目標がより実践的なものになります。

もちろん、目標を頻繁に変えるのではなく、成長に必要な修正であることを説明し、上司やチームとも共有することが大切です。目標設定の目的が『達成ありき』ではなく、『成長のための指針』であることをメンバーにも伝えることで、安心して挑戦しやすい環境を作ることができます。

このような工夫をすることで、目標設定を単なる「義務」ではなく、本当の意味での「成長のための道具」として機能させることができます。

そして、これらの工夫を機能させるためには、管理職のより高いリーダーシップを必要とします。

つまり、目標設定を成長の道具として機能させるための本質的な課題解決の方法は、管理職が成長すること なのです。

経営側にも求められる管理職の成長のための施策

管理職としてメンバーの成長を支援したくても、評価制度や会社の仕組みが壁になってしまうことがあります。だからこそ、経営側もこの問題に向き合い、管理職が成長支援をしやすい環境を整えることが重要です。

経営側にできることは、大きく3つです。

1. 目標設定を「成長の場」にする文化を作る
2. 管理職向けのコーチングや研修を実施する
3. 目標設定の自由度を確保する

特に、「こういう仕組みがあると助かる」と管理職が経営側にフィードバックすることは、現場の変化を生む大きな力になります。

経営側の支援を待つだけではなく、管理職自身が「この仕組みが必要だ」と働きかけることもできます。

では次のパートではいよいよ、管理職が自分のリーダーシップをどのように磨けばいいのかを見ていきましょう

管理職はどんなことを意識して自分のリーダーシップを磨いたら良いのか?

管理職のリーダーシップとは、単に指示を出すことではなく、部下の成長を促し、主体性を引き出す力のことです。目標設定を『評価の義務』ではなく『成長の機会』にするためには、管理職自身の関わり方が大きな影響を与えます。

管理職の立場として、メンバーの成長を支援したいと考えても、経営側の方針や評価制度の仕組みによって、その動きを制限されることがあ流かもしれません。

ですが管理職自身が出来ることとして、目標設定を「評価の義務」ではなく、「部下の成長を支援する機会」 と捉えて行動することが重要です。

1. 目標設定は「成長を引き出す場」だと捉える

「この目標は評価にどう影響するか?」ではなく、「この目標は、あなたのキャリアデザインにおいてどんな役割を果たすと想う?」 という視点を持つことが大切です。

目標設定面談でこの問いを投げかける
目標達成のプロセスを評価し、成長の視点からフィードバックする

こうした関わりをすることで、目標設定を通じて部下の成長を支援できるようになります。

2. 目標設定のフィードバックを充実させる

目標設定は、設定した時点ではなく、振り返りの場面でどれだけ学びを得られるかが重要 です。

「目標に向かって何を工夫した?」
「途中で困ったことは?どう乗り越えた?」
「次に活かせることは何?」

このような問いかけをすることで、部下が目標を成長の機会として捉えやすくなります。

3. 現場のリアルな声を拾う

部下が「目標設定が意味のあるもの」と感じているかどうかを、普段の会話や1on1の場で確認することも大切です。

「この目標、今の業務にどんなプラスがあった?」
「やってみて、どんな気づきがあった?」
「目標設定の仕方、変えたほうがいいことはある?」

こうしたやりとりを通じて、目標設定のあり方を、現場のリアルなニーズに合わせて進化させる視点 を持つことが、管理職としてのリーダーシップにつながります。

つまり、目標設定を「成長のための道具」として機能させるためには、管理職が自らの成長にチャレンジにながら、リーダーシップを発揮していくことが求められるのです。

まとめ

目標設定は本来、メンバーの成長を支援するための「道具」であるはずです。しかし、多くの企業では目標設定が「評価のための義務」となり、形骸化してしまっています。

その結果、メンバーはただ目標を書くだけの状態になり、管理職も「評価をつけるためのもの」として扱いがちです。こうした状況を変えるためには、目標設定を「成長のための道具」にする工夫 が必要です。

管理職がメンバーの成長を促すためにできることは、次の3つです。

1. 目標を「成長の場」にする

「評価のために作るもの」ではなく、「キャリアデザインの指針」として活用する。

✔ 目標設定面談で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」を対話する。

2. プロセスを評価する

結果だけでなく、取り組みの中で得られた学びや工夫を振り返る。

✔ 「この目標に向かって何を工夫した?」と問いかける。

3. 現場の声を拾い、柔軟に調整する

業務の変化に合わせて、目標設定を柔軟に見直す。

✔ 「今の目標、現場の実情に合っている?」と確認する。

評価制度に振り回されるのではなく、目標設定を成長の機会に変える。その視点を持ち、実践することが、これからの時代の管理職に求められる重要な役割です。まずは、自分のチームの目標設定のあり方を見直し、できることから始めることであなたのリーダーシップを発揮してください。

まずは、次の1on1で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」と問いかけてみませんか?

そこから、あなたのリーダーシップは始まります。

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7,000回の対話をデザインし、組織を変革してきたビジネスコーチが語る、伝わるマネジメントの視点

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「うちの組織は風通しがいい」「心理的安全性のある組織を作っている」と言っているのに、実際には現場の意見が出てこない——そんな経験はありませんか?

また、「成長を促すマネジメントをしているつもり」が、実は部下にとって プレッシャー になっていることも。

多くのビジネスパーソンのコーチングをしていると、実はこうした話はとてもよく出てきます。

経営者や管理職の方をコーチングしていると、こんな声をよく聞きます。
✅ 「うちはオープンな組織だから、誰でも意見を言えるはずなんです。でも、現場は全然意見を言わないし、自立もしないんですよね。」
✅ 「成長の機会をたくさん与えているのに、なぜかチャレンジしようとしない。」
✅ 「フィードバックをしっかりしているのに、部下が受け身のままで困る。」

一方で、現場の社員さんをコーチングしていると、まったく逆のことを言われます。
✅ 「意見をどんどん言っていいって言われるけど、実際には言える雰囲気じゃない。」
✅ 「意見を出しても、結局いつも上の意見が通るから、言う意味がないんですよね。」
✅ 「自由にやっていいって言われるけど、失敗すると厳しく指摘されるから怖い。」

経営者や管理職の側は「オープンな組織を作っている」「心理的安全性を確保している」と思っている。
でも、現場の人たちは「いやいや、そんな空気じゃない」と感じている。

この 「マネジメントのズレ」 は、思っている以上に多くの職場で起こっています。
そして、このズレは 「経営者や管理職が悪い」「現場が受け身すぎる」 という単純な話ではありません。

多くの場合、そのズレは 「お互いの前提や考え方の違い」 から生まれます。

あなたがもし、「うちの上司のマネジメント、なんか違和感あるな」と感じたことがあるなら
それは、もしかすると 「自分自身のマネジメントにもアップデートの余地がある」というサイン かもしれません。

「うちの職場、こういうところがちょっとズレているかも?」

そう思いながら読み進めてみてください。

1. 「心理的安全性を作る」と言いながら、実は圧をかけている?

「うちはオープンな組織だから、誰でも意見を言えるはずなのに、なぜか現場が黙ってしまう」

そんな悩みを持つ管理職や経営者の方は多いです。

「意見を自由に言っていいよ」「上下関係なくフラットな議論をしよう」と言っているのに、なぜか 実際の会議ではほとんど意見が出てこない

なぜでしょう?

実は、「心理的安全性を作ろう」と意識すればするほど、逆に圧をかけてしまうことがある のです。

■ 「意見を言っていいよ」が、逆に沈黙を生む理由

例えば、ある会議の場面を想像してみてください。

マネージャーが部下にこう言います。

「今日は何でも自由に意見を出してほしい!遠慮はいらないよ!」

でも、部下は目を合わせず、誰も話そうとしない。
少し沈黙が続いた後、マネージャーはこう続けます。

「なんで誰も何も言わないの?せっかくオープンに話せる場なのに!」

すると、部下たちはさらに黙り込んでしまう。

この光景、あなたの職場でも見たことはありませんか?

これは、単に部下が受け身だからではありません。
むしろ 「意見を言っていい」と言われることで、逆にプレッシャーがかかってしまっている のです。

なぜなら、多くの職場では 「意見を言う=何か正しいことを言わなければいけない」 という空気があるから。
自由に意見を言っていいと言われても、上司がすでに考えを持っている場合、それに逆らうのはリスク だと感じるのです。

■ 「心理的安全性」を作るつもりが、実はコントロールしている?

もう一つ、よくあるケースがあります。

マネージャーが会議でこう言います。

「この新しいプロジェクトについて、みんなの意見を聞かせてほしい。」

部下たちは少し考えたあと、恐る恐る発言します。

「現場的には、少しスケジュールが厳しいかもしれません……」

すると、マネージャーはこう返します。

「でも、チャレンジしないと成長できないよね?」

「おお……」と微妙な空気が流れる。

別の部下が言います。

「現行の業務とのバランスを考えると、リソース的に難しいのでは……?」

すると、マネージャーは少し不機嫌な顔をして、こう返します。

「でも、他のチームは同じ条件でもやれてるよ?」

こうなると、もう 「意見を言っても、結局上司の考えが優先されるだけだ」 という空気になってしまいます。

結果、部下は次回から 「何を言っても意味がないから、黙っておこう」 となるのです。

■ 「意見を言っていいよ」の言葉だけでは、安全な場は生まれない

心理的安全性とは、単に「意見を自由に言えること」ではありません。
本当の意味で心理的安全な環境とは、「何を言っても否定されない」「意見を言ったことで不利益が生じない」 という安心感がある状態のこと。

「意見を言っていい」と言いながら、実は 「正しい意見」「上司が求める意見」を期待している ことはありませんか?

「本音を言っていいよ」という空気を作るつもりが、
実は「上司の考えに合うことを言わなければならない」と、部下に感じさせてしまっていることはないでしょうか?

もし、あなたの職場で「意見を言っていいのに、なぜか誰も言わない」状態が続いているなら、
それは 「心理的安全性の作り方」にズレがあるサインかもしれません。

では、どうすれば本当の意味で心理的安全性のある環境を作れるのか?
次の章で具体的に解説していきます。

2. 気づかないうちにマウントを取っているマネジメントの落とし穴

「部下の成長を促したい」
「せっかくの機会だから、挑戦してほしい」
「自分が学んできたことを伝えて、少しでも役に立てたら」

そんな 純粋な気持ち で、部下にアドバイスをしたり、フィードバックをしたりすることがあると思います。

でも、その “善意” のつもりが、実は部下にとっては「マウントを取られている」と感じることがある のです。

■ 「アドバイスのつもり」が、実はマウントになっている?

例えば、こんな会話を想像してみてください。

🌟 部下:「この仕事、結構難しいですね……」
👔 上司:「そうだよね。でも、私も昔は同じように苦労したよ。最初は大変だったけど、乗り越えたから今があるんだよ。」

一見、普通のアドバイスに見えます。
でも、部下からすると 「いや、今しんどいのはこっちなのに、過去の話されても……」 という気持ちになることもあります。

また、こんなケースもあります。

🌟 部下:「今のやり方だと、ちょっとやりにくいかもしれません……」
👔 上司:「うーん、でも他のチームはできてるよ?」

この発言も、上司の側からすると
「他のチームを参考にして、もっと工夫してほしい」 という意味かもしれません。
でも、部下の視点では 「結局、否定されてる」「意見を言っても意味がない」 と感じることが多いのです。

■ 「成長の機会を与えるつもり」が、逆にプレッシャーになることも

「機会を与えることは、部下のためになる」と考えている人は多いです。
でも、部下が「やりたい」と思っていないタイミングで、突然 「これはいい機会だから、チャレンジしよう!」 と言われるとどうでしょう?

✅ 「せっかくのチャンスなんだから、やったほうがいいよ」
✅ 「この機会を逃すのはもったいないよ」
✅ 「成長するためには、こういう経験が必要だからね」

上司側の意図としては 「背中を押してあげたい」 なのですが、部下からすると 「断れない圧がある」「プレッシャーをかけられている」 と感じることもあります。

実際に、こういったケースの後で、部下からこんな言葉を聞くことがあります。

💬 「やれって言われたからやるけど、本音はやりたくなかった」
💬 「結局、成長って言いながら無理を強いられてるだけじゃない?」
💬 「上司が成長させたって自己満足になってるだけかも」

こうなると、せっかくの「成長の機会」も、部下にとっては 「上司の押しつけ」 に感じられてしまいます。

■ 「私はあなたのためを思って言ってる」が、実はNGな理由

上司が「部下のために」と思って言う言葉の中には、 実は相手の行動を制限するフレーズ が多く含まれています。

例えば、こんな言葉を使っていませんか?

❌ 「この業界では、こういうのが当たり前だからね」
❌ 「私の経験上、これが一番うまくいくやり方だよ」
❌ 「私はこうやって乗り越えてきたけどね」

もちろん、これらの言葉には 悪意はまったくない と思います。
むしろ 「役に立ちたい」「部下に成功してほしい」 という思いが込められているはずです。

でも、これらの言葉は 「部下の視点を否定する」「上司の経験が絶対だと示してしまう」 ことにつながるのです。

上司の「こうすべき」は、部下の「こうしたい」を奪ってしまうことがある。

このズレが、気づかないうちにマウントを取ってしまう構図 を作り出してしまいます。

■ 「正しいことを言っているのに、なぜか部下が反発する」理由

「でも、私は間違ったことを言ってるわけじゃないのに」
「実際に、これが正しいやり方だから伝えてるんだけど」

そう思うこともあるかもしれません。

でも、大事なのは 「正しいかどうか」ではなく、「相手がどう受け取るか」 です。

例えば、こんな場面を考えてみてください。

👔 上司:「〇〇さん、最近ちょっと仕事の進め方が遅いね。効率を上げる工夫をしたほうがいいよ。」
🌟 部下:「(そうか……自分はダメなんだ……)」

上司は「仕事を改善してほしい」という意図で言っています。
でも、部下は「自分は能力が足りない」と感じてしまう。

つまり、「正しいことを言っているかどうか」よりも、「相手がどう受け止めるか」 のほうが重要なのです。

もし、部下があなたの言葉を「マウントを取られた」と感じたなら、
それは 「正しいアドバイスが間違った形で伝わってしまった」 というサインかもしれません。

■ どうすれば「気づかないマウント」を防げるのか?

「気づかないうちにマウントを取る」ことを防ぐためには、
まず 「自分の経験や考えを押し付けていないか?」を振り返ること が大事です。

その具体的な方法については、次の章で詳しく解説していきます。

3. 伝わるマネジメントを実践するための3つの視点

「じゃあ、どうすればいいの?」
ここまで読んできた方は、そう思っているかもしれません。

「心理的安全性を作るつもりが、実は圧をかけていた……」
「アドバイスや機会提供が、マウントになっていたかもしれない……」

でも、だからといって 「何も言わない」「関わらない」 では、マネジメントとしての役割を果たせません。

実は、「押し付けるマネジメント」と「放任するマネジメント」の間には、もう一つの選択肢がある のです。

それが 「伝わるマネジメント」 です。
では、具体的にどうすればよいのか?
ここでは、実践しやすい 3つの視点 を紹介します。

① 「意見を言っていいよ」ではなく、「どう考えてる?」と聞く

多くの管理職や経営者が、「意見を言いやすい環境を作るために」こんな言葉を使っています。

✅ 「何でも自由に意見を言っていいよ!」
✅ 「オープンな場だから、どんどん発言して!」

でも、これは部下からすると 「何を言えばいいのかわからない」 ことが多いです。

では、どうすればいいか?
実は、「意見を言っていいよ」よりも、「どう考えてる?」と聞くほうが、圧倒的に意見が出やすくなる のです。

例えば、こんな風に聞いてみると、部下は意見を言いやすくなります。

✅ 「この企画、どこがリスクになりそう?」
✅ 「この施策をやるとしたら、どこが課題になりそう?」
✅ 「実際にやる側として、何か違和感を感じる点ある?」

このように 「具体的な質問を投げる」 ことで、部下は安心して意見を言えるようになります。

また、「どう思う?」と聞いたあとに 「なるほど」 と一言添えるだけでも、部下の話しやすさは大きく変わります。

② 「私はこう思う」よりも、「どうしたらうまくいくと思う?」

これは、「意見を引き出す方法」ともつながるポイントです。

例えば、部下が仕事のやり方について相談してきたとき、
つい 「私の経験上、こうやったほうがいいよ」 と言ってしまうことはありませんか?

これは、決して悪いことではありません。
ただ、「正解を先に示す」と、部下は 「自分で考える余地がない」 と感じてしまうことがあります。

では、どうすればいいか?
ポイントは、「正解を言う前に、まず部下の考えを聞くこと」 です。

🌟 部下:「この業務、どう進めるのがいいですか?」
👔 上司:「どうしたらうまくいくと思う?」

これだけで、部下は 「あ、自分の考えを言ってもいいんだ」 と感じます。

その後で、「なるほど、それならこういう視点もあるかもね」と補足すると、押し付けではなく、アドバイスとして受け入れやすくなる のです。

③ 「経験談を話す前に、相手の話を聞く」

上司として、「自分の経験を伝えること」はとても大事です。
でも、部下が何を考えているかを聞かずに経験談を話すと、相手にとっては「押しつけ」に聞こえてしまう ことがあります。

例えば、こんな会話になっていませんか?

🌟 部下:「この仕事、ちょっと難しいかもしれません……」
👔 上司:「私も最初はそう思ったけどね。でも、やってみると意外とできるものだよ!」

上司としては「励まし」のつもりかもしれませんが、
部下にとっては「いや、今しんどいんだけど……」と思ってしまうこともあります。

では、どうすればいいか?

ここで使えるのが、「経験談を話す前に、まず部下の気持ちを受け止める」 というアプローチです。

✅ 「そうなんだ、どこが難しいと感じてる?」
✅ 「なるほど、どの部分が一番大変そう?」
✅ 「やり方の問題? それとも時間が足りない感じ?」

こうやって 「相手の視点を知る」 ことができると、
自分の経験を伝えるときも 「ピンポイントで役立つ話」 をすることができます。

つまり、「まず聞く → それから話す」 という順番を意識するだけで、
経験談が 「押しつけ」ではなく、「助言」 に変わるのです。

まとめ:「伝わるマネジメント」を進化させるために、まず何をする?

もし、あなたが 「部下の意見が出てこない」 と感じていたり、
「成長の機会を与えているのに、なぜか部下が動かない」 と思ったことがあるなら、

それは 「マネジメントを進化させるタイミング」 かもしれません。

まず最初に、今日からできる3つのアクション

💡 「伝わるマネジメント」を進化させるために、最初の一歩として試してみてほしいこと

✅ ① 意見を求めるとき、「どう思う?」ではなく「どこが課題になりそう?」と聞いてみる

→ より具体的な問いを投げることで、部下が考えやすくなる

✅ ② アドバイスをする前に、一呼吸おいて「君はどう考えている?」と聞いてみる

→ いきなり自分の経験を話すのではなく、部下の考えを引き出す習慣をつける

✅ ③ 1on1やミーティングで、「私はこう思うけど、他に良い方法はあるかな?」と投げかける

→ 「上司の意見が絶対」ではなく、「一緒に考える姿勢」を見せることで、心理的安全性が高まる

■ 小さな実践が、大きな変化を生む

マネジメントを進化させるのに、大きな改革は必要ありません。
「伝え方を少し変える」だけで、部下の反応が変わり、組織の空気が変わることもあります。

「私はもう現代的なマネジメントを理解している」と思っていても、
ちょっとしたズレが、コミュニケーションのすれ違いを生んでいることもある。

だからこそ、「伝わるマネジメント」を意識して進化させる ことが大事です。

■ あなたのマネジメントを、次のステージへ

これからの時代、リーダーに求められるのは 「指示する力」ではなく、「相手の主体的な考えと自発的行動を引き出す力」 です。

あなたのマネジメントが、ただの「伝えるマネジメント」ではなく、
「伝わるマネジメント」へと進化することを願っています。

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報告が苦手な管理職へ。上司も部下も変わる、報告の極意

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1. 上長への報告に悩む管理職

「管理職なら、報告くらいスムーズにできて当然だろう」と思う人もいるかもしれません。
しかし、実際には管理職だからこそ報告に悩むケースは少なくありません。
ぼくのコーチングを受けていただいている管理職のクライアントさんも、その一人でした。
彼は日々、部下の報告を受ける立場にありながら、自分自身の上長への報告に対して強い苦手意識を持っていました。
「上司からあれこれ指示をされると思い通りにできなくなるのが嫌なんです」
「上司にどう思われるかが気になって、できれば報告自体を避けたい」
彼の話を聞いていると、「報告」に対して過度なプレッシャーを感じていることがわかりました。
特にこんな場面で、強いストレスを感じていました。

  • 「上司の機嫌が読めないとき」 → 「今このタイミングで話していいのか?」と悩み、結局後回しにしてしまう。

  • 「報告内容に自信がないとき」 → 「突っ込まれたらどうしよう」と考え、結論を濁してしまう。

  • 「上司の反応が冷たいとき」 → 「自分の報告の仕方が悪いのか?」と落ち込み、次回以降の報告が億劫になる。

彼自身、「報告は仕事の一部だから、やらないわけにはいかない」とは理解していました。
しかし、報告するたびに感じる「緊張感」「ストレス」「無力感」によって、
報告が義務感だけのものになり、いつの間にか「避けたい業務」になってしまっていたのです。
しかし、あるとき彼は気づきました。
「もしかして、これは部下の報告の仕方にも影響を与えているのではないか?」
そう思ったとき、報告に対する見方を変えるべきタイミングが来ていると感じました。

2. 報告の仕方を変えてみたら?

クライアントさんは、「自分の報告の仕方を変えてみる」ことからスタートしました。
「上司がどう反応するか?」を気にするよりも、「自分がどう報告すれば伝わりやすいか?」に意識を向けることが大事だと考えたのです。
そこで、次の3つのことを実践してみることにしました。

① 明るい雰囲気で話す

報告の場面では、つい慎重になってしまうことがあります。
「余計なことを言って、話がこじれたらどうしよう」
「ちょっと曖昧にしておけば、深掘りされずに済むかも」
そんな心理が働き、無意識に声が小さくなったり、表情が硬くなったりすることは珍しくありません。
しかし、意識して声のトーンを上げ、リラックスした雰囲気を作ると、上司の表情が少し柔らかくなるのが分かりました。
例えば、報告の際にこんな風に話すことを意識しました。
🔹「〇〇の件ですが、現在ここまで進んでいます。今、課題としてはこの部分があるのですが、○○の方向で進めようと思っています。いかがでしょうか?」
すると、上司の反応がスムーズになりました。
👨‍💼「なるほど、それでいこう」
それまで「報告=指摘される場」と思っていたのが、「報告=提案する場」に変わった瞬間でした。

② 箇条書きで整理し、簡潔に伝える

上司への報告でありがちなのが、「何を言いたいのかが分かりにくくなること」です。
話しながら考えると、言葉がまとまりにくくなります。
一生懸命説明しているつもりでも、「結局、どういうこと?」と聞き返されることがあります。
そこで、「結論 → 背景 → 次のアクション」の順番で整理して話すことにしました。
例えば、以前はこうなりがちでした。
🔸「〇〇の件ですが、実はちょっと問題があって、その……あの……」
このような伝え方を、次のように変えました。
✅「〇〇の件ですが、Aという進め方で対応予定です。理由はBです。Cが課題なので、確認をお願いします。」
すると、上司の理解スピードが上がり、報告がスムーズになりました。
👨‍💼「なるほど、OK。じゃあこのまま進めて」

③ 「イエス」の数を数える

さらに、上司のフィードバックに注目することにしました。
「自分の報告がどれだけ受け入れられているか?」を知るために、
上司が「いいね」「それでいこう」「問題ない」など、ポジティブな反応を示した回数を数えてみました。
これをやってみると、意外なことに気づきました。
「報告の仕方を変えたら、上司の『OK』が増えてきた…?」
それまで報告のたびに「指摘されるかもしれない」と警戒していましたが、実はそうではありませんでした。
よくよく振り返ってみると、「意外と上司はちゃんと話を聞いて、肯定してくれていた」のです。
「報告=詰められる場」だと思い込んでいましたが、そうではなく、「報告=方向性をすり合わせる場」だと気づきました。
こうして3つの実践を続けていくうちに、報告に対する心理的なハードルが下がっていきました。
上長の反応が変わり、自分の意識も変わった

こうして3つの実践を続けていくうちに、報告に対する心理的なハードルが下がっていった

「報告のたびに上司に詰められるかも…」という不安が、
「自分の提案を試せる機会だ」というポジティブな感覚に変わっていきました。

この気づきは、クライアントさんにとって 「報告=嫌なもの」という思い込みを壊すきっかけ になっていったのです。

そして、ここでまた新たな視点に気づきます。

「もしかして、部下たちも同じように、自分への報告を怖がっているのでは?」

そう考えたとき、今度は 「報告を受ける側としての自分の姿勢」 を見直す必要があることに気づいたのでした。

3. 部下の報告の受け方を振り返る

報告の仕方を変えたことで、上司とのやり取りがスムーズになり、心理的なハードルも下がってきました。
そんな中で、クライアントさんはふと、ある疑問を抱きました。
「もしかして、部下たちも同じように、自分への報告をためらっているのでは?」
報告する側の気持ちを理解したことで、報告を受ける側の自分の姿勢を見直すきっかけになりました。
「報告しづらい上司」になっていなかったか?
これまでのクライアントさんは、「部下がもっと主体的に報告してくれたらいいのに」と思うことが多かったそうです。
「大事なことはちゃんと報告してくれよ」
「もっと整理して伝えてくれたら分かりやすいのに」
そんなふうに感じることもあったそうです。
しかし、自分が上司への報告に不安を感じていたことを思い出すと、視点が変わりました。
「部下たちも、自分と同じように、報告をプレッシャーに感じているのかもしれない」

  • 「上司が忙しそうにしているから、話しかけるタイミングがわからない」

  • 「細かいことを報告すると、『そんなことは自分で考えろ』と言われそう」

  • 「相談することで、自分の判断力が足りないと思われるかもしれない」

そんなふうに思って、報告を躊躇している可能性があることに気づきました。
そこで、クライアントさんは、部下が報告しやすい環境を作るために、自分の「報告を受ける姿勢」を見直すことにしました。
報告しやすい上司になるための3つの工夫
部下に「ちゃんと報告しろ」と求める前に、報告しやすい空気を作ることが大切だと考えたクライアントさんは、3つのことを意識するようにしました。

① 先に「結論」を求めすぎない

「で、結論は?」と急かしてしまうと、部下が焦ってしまい、肝心の情報を正しく伝えられなくなります。
以前は、「シンプルに、結論を言え」というスタンスでしたが、これが逆に部下を委縮させている可能性があると気づきました。
そこで、「結論は最後でいいから、まず状況を整理して話してみて」と促すようにしました。
すると、部下も安心して話せるようになり、結果的に報告の質が上がっていきました。

② 「ここまでの話で、他に気になることはある?」と聞く

報告を受けると、つい「もっと端的に」「もっと分かりやすく」と思ってしまうことがあります。
しかし、それを指摘する前に、「ここまでの話で、他に気になることはある?」と促すだけで、部下が自分で考えて話を整理し始めることに気づきました。
報告の途中で、「もう少し詳しく説明してくれる?」と付け加えるだけで、部下自身が「伝え方を工夫しよう」と意識するようになったのです。
これまでは、「報告を簡潔にさせること」を重視していましたが、今は「部下が自分で考えながら伝えること」を優先するようになりました。

③ 報告を「評価の場」にしない

部下が報告をためらう理由の一つに、「ダメ出しされるかもしれない」という心理的な抵抗があります。
そのため、報告の場では、すぐにジャッジするのではなく、
「この報告を受けて、自分は何を決める必要があるのか?」に意識を向けるようにしました。
「こういう考え方もあるかもしれないね」
「この視点はいいね、ここを少しブラッシュアップするともっと良くなるよ」
そんなふうにフィードバックすることで、部下が報告しやすい雰囲気を作ることを意識しました。
報告は「上司のため」ではなく「チームのため」
こうした工夫を続けていくうちに、部下からの報告の質も変わっていきました。
以前よりも、部下が主体的に報告してくれるようになり、「上司に言われる前に、自分から伝えよう」という空気が生まれました。
「報告は、上司のためではなく、チームのためにするもの」
この視点を持つことで、部下の報告に対する考え方も変わり、結果的にチーム全体のコミュニケーションがスムーズになりました。
そして、クライアントさん自身もこう感じました。
「報告の仕方を変えることは、自分の伝え方を変えることだけじゃなく、受け止め方を変えることでもあったんだ」
報告は一方通行ではなく、「受ける側」が変わることで、する側も変わるものなのです。

4. 「報告」は上司部下の関係を映す鏡

この経験を通じて、クライアントさんが得た最大の学びは、
「報告の仕方を変えるだけで、チームのコミュニケーション全体が変わる」 ということでした。

多くの管理職は、部下に対して 「もっと分かりやすく報告してほしい」 と感じています。
だからこそ、「部下の報告の仕方を改善しなければ」 と考えがちです。

しかし、クライアントさんが実感したのは、
「部下の報告の仕方を変える前に、上司としての報告の受け方を変えることが重要だ」 ということでした。

報告というのは、ただの情報伝達ではありません。
それは、「お互いの考えをすり合わせる場」 であり、「チームの文化を形成するもの」 でもあります。

「上司が変わることで、部下も変わる」

もし、あなたが 「部下の報告の仕方が悪い」 と思ったことがあるなら、
それは 「上司としての自分の受け止め方」 を見直すチャンスかもしれません。
• 部下は報告しやすい雰囲気を感じているか?
• 上司として、結論ばかりを求めていないか?
• 部下が主体的に報告できる関係性を築けているか?

クライアントさん自身、「自分の報告に不安を感じていた時期」 があったからこそ、
「部下も同じような気持ちでいるのでは?」 と考えることができました。

そして、報告の受け方を変えたことで、
「部下からの報告の質が変わり、チーム全体の会話がスムーズになった」 という成果が生まれました。

「報告=チームの文化を作るもの」

あなたの組織のコミュニケーションを良くするために、
まずは 「自分自身の報告の受け方」 を見直してみるのも一つの手です。

報告を 「指摘の場」ではなく「前向きな意見交換の場」 にすることで、
チーム内の会話が活発になり、部下が主体的に動きやすくなる環境 が生まれます。

「報告の仕方を変えることは、単なる業務改善ではなく、チームの未来をつくること」

そう考えると、報告の時間が、ただの業務連絡ではなく、
チーム全体の成長を促す機会 に変わっていきます。

管理職として、今日からできること

✅ 部下が話しやすい雰囲気を作るために、報告の途中で『で、結論は?』と急かすのではなく、『もう少し詳しく教えて?』と促してみる
✅ 報告の内容だけでなく、「報告のしやすさ」もチェックする
✅ 報告の場を「評価」ではなく「成長の場」として活用する

報告を変えることは、チームの文化を変えること です。
その第一歩は、上司であるあなたの受け止め方から 始まります。

「報告が変われば、チームが変わる」

その変化を、今日から試してみてください。

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仕事を断る勇気:ビジネスパーソンが効率と満足度を向上させる方法

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1. はじめに

先日あるエンジニアのクライアントさんのコーチングセッションの際に 「仕事のキャパがオーバーしてしまって、処理が追いつかないので仕事を効率的に処理する方法について考えたい」というお話をいただきました。
「仕事を断るのは難しい」と感じるビジネスパーソンは多いです。特に経験な方ほど、周囲からの期待が大きく、つい頼まれた仕事を引き受けてしまいがちです。
しかし、すべての仕事を受け入れていると、結果的にパフォーマンスが下がり、ストレスが増え、満足度も低下します。あなたが最高のパフォーマンスを発揮できるように仕事をマネジメントしていくためには、いくつかのテクニックが考えられますが、その一つが「適切に仕事を断る」ことです。
適切な基準を持って仕事を選び、無理なものは断ることで、仕事のクオリティを上げ、効率を向上させることができます。本記事では、ビジネスパーソンが効率と満足度を向上させる、仕事の断り方についてお伝えしていきます。

2. 仕事を断れない理由

ビジネスパーソンが仕事を断ることが難しいのには、いくつかの理由がありますが、それを明確に言語化できている方は少ないかもしれません。 前出のエンジニアのクライアントさんも、おそらくは漠然と「仕事を断るのはいけない事」と感じていらっしゃったように思います。
では、実際にはどんな理由で仕事を断ることが難しいと感じているのでしょうか??

  • 「断ると評価が下がるのでは?」という不安

  • 「せっかくのチャンスを逃すのでは?」という恐れ

  • 「後輩の成長を阻害するかも」という心理的プレッシャー

  • 「チームのために頑張らなければ」という責任感

これらの要因が重なり、結果的にすべての仕事を引き受けてしまいます。しかし、長期的に見れば、キャパオーバーの状態では良い成果を出し続けることは難しいですし、もしかしたら、ひとつひとつの仕事のクォリティはもうすでに落ちてしまっているかもしれません。

3. 仕事を断るメリット

その一方で、仕事を断ることには、明確なメリットがあります。 どんなことがメリットとして考えられるでしょうか??

  • 時間と集中力の確保:技術的なスキル向上や専門分野の深化に時間を使える

  • 仕事のクオリティ向上:適切な量をこなすことで成果が出やすくなる

  • ストレスの軽減:無理な仕事を背負わなくなる

  • チームの成長促進:後輩に仕事を任せる機会が増える

仕事を選ぶことで、自分の強みを活かしやすくなり、結果的により良い成果を出せるのです。先ほどのクライアントさんもこのような効果が得たいと考えて「仕事を効率的に処理する方法について考えたい」とおっしゃったのだと思います。

4. 仕事を断る基準を持つ

ビジネスパーソンが仕事を断るためには、まず自分なりの基準を明確にする必要があります。

① 自分のキャパシティを基準にする

  • 「今の仕事量で新しい依頼を受けても、パフォーマンスを維持できるか?」

  • → 無理なら断る(または調整を提案する)

② 仕事の重要度で判断する

  • 「この仕事は自分の技術力向上やキャリア成長につながるか?」

  • → 価値が低い仕事なら優先度を下げる(もしくは断る)

③ 相手の基準と自分の基準の違いを理解する

  • 例)あるマネージャーは納期最優先、あるビジネスパーソンは品質最優先

  • → 自分の判断基準を明確にすることで、迷いなく断れる

では、具体的にどのような基準を設定すればよいでしょうか?
基準の例:

  • 納期:スケジュールが厳しく、短期間での対応が必要かどうか

  • 品質:成果物の精度やクオリティが重要かどうか

  • 成長:自分のスキル向上につながる仕事かどうか

  • 育成:後輩やチームメンバーの成長を促せる仕事かどうか

  • 技術的な興味:自身の専門分野や関心のある分野と合致するかどうか

上記はあくまで例ですが、あなたが優先したいものを明確にして自分が仕事を受けるかどうかを判断すると、無理なく仕事をマネジメントできるようになります。

5. 実際に仕事を断る際のコツ

① 率直かつ誠実に伝える

  • NG例:「無理です」「できません」

  • OK例:「今のスケジュールでは難しいですが、○○なら対応可能です」

② 代替案を提示する

  • 「今月は厳しいですが、来月なら可能です」

  • 「この部分なら対応できますが、全体は難しいです」

③ チームのリソースを活用する

  • 「この仕事は○○さんのスキルアップにもつながるので、任せてみてはいかがでしょうか?」

相手の立場を尊重しながら、誠実に伝えることが重要です。

6. 仕事を断ることで得られる未来

仕事を断ることは単に業務負担を軽減するだけでなく、以下のようなスキルと密接に関連しています。

  • キャパシティマネジメント:自分の限界を知り、無理なく働くことで持続的に成果を出す

  • プライオリティ設定:本当に価値のある仕事に集中することで、成果を最大化する

  • Noと言う力:不要な業務を適切に見極め、優先すべき仕事に時間を割く

  • タスクの委任:後輩やチームメンバーに適切に仕事を振ることで、全体の効率を上げる

  • 仕事の仕組み化:定型業務を自動化・効率化し、戦略的な業務に時間を割く

これらのスキルを活用することで、仕事を断ることが単なる拒否ではなく、より効果的な仕事の選択となります。
結果として、次のようなメリットを得られます。

  • 仕事のバランスを取れるようになり、長期的な成長につながる

  • 持続的に成果を出し続けることができる

  • チームのパフォーマンスが向上し、リーダーとしての信頼が高まる

  • 後進の育成につながる

  • 「なんでも引き受ける人」ではなく、「価値を生み出す人」になれる

こうした視点を持つことで、単なる「仕事を断る」行為が、戦略的なキャリア形成の一環となるのです。

7. まとめ

  • 仕事を断るのは「逃げ」ではなく「選択」です

  • 断る基準を持つことで、自分の効率と満足度を高められます

  • 相手にも誠実に対応しながら、より良いチーム環境をつくることができます

実践の第一歩

ここまでの内容を踏まえ、まずは以下のステップを実践してみましょう。

  1. 自分の仕事の基準を紙に書き出してみる(納期・品質・成長・育成など)

  2. 断る際のフレーズを考えておく(「○○なら対応可能です」など)

  3. 一度、自分の仕事を棚卸しし、必要以上に抱え込んでいないかを確認する

こうしたアクションを取り入れることで、無理なく仕事を断りながら、より良い成果を出せるようになります。

ビジネスパーソンとして、仕事を「こなす」のではなく、「マネジメントする」ことが、パフォーマンス向上の鍵になります。ぜひ、自分なりの基準を持ち、仕事を選択していきましょう。

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『役職は貸し衣装』という考え方が自律型の強い組織をつくる理由

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1. はじめに:役職はゴールではなく道具である

「役職は貸し衣装」とある管理職のクライアントさんのコーチングセッションをしている時に出てきた言葉です。
これは、役職は一時的に与えられるものであり、それを使って何を成し遂げるかが重要だという考え方です。日本企業では、55歳前後で役職を退く「役職定年制度」を設けている企業が少なくありません。しかし、役職を自分の価値と誤認してしまうと、定年後にモチベーションが低下し、組織全体の活力が失われる可能性があります。
最近では役職定年制度を廃止する企業も増えてきています。この背景には、労働力人口の減少や経験豊かなシニア人材の活用といった課題があります。特に、年齢に関わらず実力や成果で評価する動きが強まっており、役職定年制度の見直しが進んでいます。
コーチングを通じて多くの企業の支援をしていて感じるのは、これらの理由に加えて、役職定年を迎えた方達のモチベーションの低下も役職定年制度廃止の流れの理由になっていると感じます。
本来、役職定年制度には次世代リーダーの育成や組織の新陳代謝を促進するというメリットがあります。新しい視点や発想を取り入れ、組織全体の活力を維持するための仕組みとして導入されてきました。

2. 役職に依存するリーダーのリスク

役職に依存するリーダーには、次のようなリスクがあります。

2-1. 指示待ち部下の増加

役職者が立場を利用して「自分の言うことを聞かせる」姿勢で部下と向き合うと、部下は指示を待つ受動的な姿勢になりがちです。自分で考え、行動する文化が育たず、イノベーションの芽が摘まれてしまいます。

2-2. 役職定年後のモチベーション低下

役職を「自分の価値」と捉えてしまうと、定年後に役割を失ったと感じ、自己肯定感が低下します。その結果、組織への貢献意欲が減退する可能性があります。

2-3. 部下の成長機会の減少

本来のリーダーシップを発揮できていない役職者が自己承認のために業務を抱え込むと、部下が成長する機会が失われ、次世代のリーダー育成が遅れてしまいます。

3. 貸し衣装としての役職を受け入れるメリット

では、役職を貸し衣装と捉えた場合、つまりは役職は自分自身ではなく組織やチームをより良くするためのもので、自分はその道具を預かっているのだという捉え方をした場合には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

3-1. 自分の強みや経験をフル活用できる

「役職を任された今、自分には何ができるのか?」と考えることで、主体的に行動する意識が芽生えます。役職という「道具」を使って、組織に価値を提供しようとする姿勢が生まれるのです。

3-2. 組織への貢献意識の向上

役職を道具として捉えれば、「役職がなくなった後も組織に貢献できることは何か?」と考えるようになります。その結果、役職定年後も社内外で活躍する人材が育つ可能性が高まります。

3-3. 自律的な組織文化の醸成

役職に依存しないリーダーシップを持つ人材が増えると、役職に関係なく意見を出し合い、挑戦する文化が育ちます。組織はより柔軟で成長志向の強いチームへと進化します。

4. 役職に依存しないリーダーシップを育む4つのアプローチ

役職に依存しないリーダーシップを育てるためには、例えば次の4つのアプローチが効果的です。

4-1. 「役職は期間限定のミッション」というマインドセットを浸透させる

役職は「組織から託されたミッション」であり、永遠のものではありません。研修やコーチングを通じて、「任期中に何を成し遂げるか」を考えさせる機会を設けることが大切です。

ワークショップ例

  • 自分の役職があと1年で終わるとしたら、何を優先するか?

  • その役職を引き継ぐ後継者に何を伝えたいか?

4-2. 「ミッション評価制度」を導入する

上席と協議をして自分の役職のミッションを定義し、進捗や成果を定期的に振り返る評価制度を導入します。これにより、役職期間中の成果が可視化されるだけでなく、役職後もその経験が次のステージで活かされる基盤が作られます。

  • 評価のポイント例:

    • 役職期間中にどのような組織的変化を促進したか

    • 部下の成長をどのように支援したか

    • 役職後に引き継ぐべき知見や成果物をどのように残したか

4-3. 後継者育成の「貸し衣装試着体験」を設ける

若手リーダーに、プロジェクトリーダーや重要な会議での発表を任せる機会をつくり、「役職体験」を提供します。仮の役職でも、実際にその役割を経験することで、自分のリーダーシップスタイルや強みが見えてきます。

4-4. 「貢献の可視化」、「失敗を許容する文化」「チャレンジを称賛する文化」を育てる

役職の有無に関わらず、組織に貢献した人を称賛する文化を育てます。加えて、挑戦した結果の「失敗」も成長のための重要な経験として認め、許容する文化を醸成します。

具体的な取り組み例:

  • チャットツールでの「いいね」機能を活用して、成功事例だけでなく、挑戦したプロセスを共有し称賛する。

  • 社内表彰制度を見直し、チャレンジ精神を発揮した取り組みを積極的に表彰する。

  • 失敗談を共有する「チャレンジミーティング」を定期開催し、挑戦しやすい心理的安全性を確保する。

5. 役職定年制度を超えたリーダーシップの可能性

このような取り組みを通じて、社内のリーダーシップが醸成されれば、そもそも「役職定年制度」が導入された理由である 次世代リーダーの育成組織の新陳代謝の促進 といったメリットが自然に達成されます。

一方で、役職定年制度を廃止する企業が増えている背景には、経験豊かなシニア人材の活用役職定年を迎えた方たちのモチベーション維持・向上 という目的があります。

こうしたアプローチにより、役職定年制度を維持する企業 であっても、廃止を選んだ企業 であっても、組織の活性化や人材の成長促進といった共通のメリットを享受できると考えられます。

6. まとめ:役職を超えて、組織に何を残すか

役職は「貸し衣装」みたいなものです。着ている間は、その道具を最大限に活用し、組織に貢献する。その意識が、リーダー個人の成長につながり、組織全体を強くします。

役職という道具は、「自分が何を得るか」ではなく、「何を組織に残せるか」を考えるためにあるものです。これを「貸し衣装」として受け取り、期間限定のミッションに全力で取り組む姿勢が、リーダーの本質的な力を育みます。

また、役職定年制度を維持する企業 にとっても、廃止を選んだ企業 にとっても、リーダーシップ醸成の取り組みは重要です。役職を「貸し衣装」という道具と捉え、その期間を最大限活用する意識があれば、制度に関係なく組織は成長していくでしょう。

こうした個々の意識変化が、結果として組織全体の柔軟性や主体性を高め、強い組織を育むことにつながるのです。

あなたが「貸し衣装」という道具を脱ぐとき、どんな価値を組織に残しますか?

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現場のエースが管理職になった時、陥る罠──AIを活用して“本物のリーダー”へ進化する方法

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1. 現場のエースが管理職になったとき、なぜチームは停滞するのか?

多くの企業では、**「現場で成果を出した人が、そのまま管理職になる」**というキャリアパスが一般的です。これは、業務の現場を深く理解している人がマネジメントに入ることで、組織全体の業務効率が向上し、実務と戦略のギャップが埋まりやすくなるというメリットがあります。

✅ 業務の細かい部分を熟知しているため、現場の課題を素早く把握できる
✅ これまでの成功体験を活かし、実践的なアドバイスを提供できる
✅ 部下と同じ目線でコミュニケーションを取りやすく、信頼関係を築きやすい

一方で、管理職とプレイヤーの役割は異なり、個人で成果を上げるスキルとチームを導くスキルは必ずしも一致しません。実際に、多くの管理職の方をコーチングさせていただいていると、「チームが思うように動いてくれない」と支援を求められることがたびたびあります。

こうした課題を解決する方法の一つとして、**「AIを活用し、業務を効率化しながら、リーダーシップを高め、部下の主体性を引き出す」**アプローチがあります。もちろん、AIだけが解決策ではありませんが、テクノロジーを活用することで管理職の役割をより効果的に果たせる可能性があります。


2. AIを活用し「管理職が手を離せる領域」を増やす

管理職の多くは、プレイヤーの延長で動き続け、**「自分が動いた方が早い」「部下に任せるのは不安」と感じ、業務を抱え込んでしまいがちです。しかし、これでは管理職の本来の役割である「チームを導くこと」**に時間を割くことができません。

AIを活用することで、不要な業務を減らし、管理職としての本来の役割に集中できる環境を作ることができます。

✅ AIで削減できる業務

  • 会議の要約・議事録作成 → AIに自動化

    • Zoomの録音データをAIが要約し、報告書を自動生成

    • → 空いた時間で、部下との対話や育成に時間を使える

  • 営業データ管理・報告業務 → AIで自動更新

    • CRMツールを活用し、営業フェーズを可視化

    • 部下が「報告のための資料作成」に時間を取られない

    • → データをもとに主体的な行動を促すマネジメントが可能に

  • タスクの優先順位付け → AIがサポート

    • ChatGPTなどを活用し、何に集中すべきかを明確化

    • → 「管理職の思い込み」ではなく、客観的なデータでリーダーシップを発揮できる

これにより、管理職の仕事が「現場の仕事」ではなく「チームを成長させる仕事」へとシフトする。


3. AIが「管理職の視座」を高める理由

1. 業務から解放されることで、視点が現場から「組織の未来」へシフトする

AIを活用して日々の業務負担を減らすことで、より高い視点から組織を見る時間が生まれるのです。

例えば、

  • 「日々の営業数値を手作業で管理していた時間」を削減することで、市場の変化や組織の成長戦略を考える余裕が生まれる。

  • 「部下の報告を集約して評価する時間」を削減することで、部下一人ひとりの潜在能力やキャリアの方向性を考える視点を持てる

AIによって「目の前の業務」に追われる状態から脱し、「チームの成長と未来」にフォーカスする視座を得ることができる。

2. 視座が高まることで、組織全体に与える長期的な影響

管理職が視座を高めることは、個人の成長にとどまらず、組織全体の文化や成果にも大きな影響を与えます

  • 長期的な視点での意思決定が可能になる

    • 目先の成果だけでなく、「組織の持続的な成長」を見据えた戦略が立てられる。

    • 例えば、「今の売上を伸ばす施策」ではなく、「市場環境の変化に適応するビジネスモデル」を考えられるようになる。

  • 部下の成長を促す問いかけが増える

    • AIの活用でデータを基にしたフィードバックが可能になり、より具体的かつ戦略的なアドバイスができる。

    • 「次に何をするか」だけでなく、「どうすれば成長できるか?」という問いかけの質が向上し、部下の主体性を引き出す。

  • 組織の学習能力が高まる

    • 管理職の視座が上がることで、「個々の成功ではなく、組織全体が学び成長する」環境が整う。

    • データを活用したPDCAサイクルが定着し、チームが継続的に改善し続ける文化が生まれる。

「高い視座を持つ管理職」が増えることで、組織全体の成長スピードが加速し、持続的な成果を生み出すチームが育つ。


4. AIを活用し「部下の主体性を引き出す仕組み」を作る

部下の主体性を育むには、「指示する」のではなく、「考えさせる」ことが重要です。
AIを活用すれば、**「管理職が手取り足取り指導しなくても、部下が自ら成長する環境」**を整えることができます。

✅ AIを活用した育成の仕組み

  • 「AIメンター」で部下の自己学習を促す

    • Chatbotや学習支援AIを導入し、部下が業務で直面した課題に対するアドバイスを即座に得られるようにする

    • → 上司の指導を待たずに、部下が主体的に学習できる環境を提供

  • 「成長フィードバックの自動化」

    • AIが営業トークや業務成果を分析し、具体的な改善点や成功ポイントをリアルタイムで提供

    • → 部下自身が課題を認識し、改善策を考える習慣をつける

  • 「強み・弱みのデータ化」

    • AIが過去の業務データを分析し、部下の得意分野や苦手な業務を可視化

    • → 適材適所の配置を可能にし、部下が自信を持って業務に取り組める


5. まとめ:管理職がAIを活用することで得られる未来

まずどれか一つで良いので、ぜひ取り組んでみてください。小さな変化が、管理職としての視座を高め、チームの成長を促すきっかけになるはずです。

今こそ、AIを活用し、視座を高めながら**「組織を導くリーダー」へと進化する可能性を探ってみましょう。**

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