“確認”が信頼をつくる──限られた時間でチームが動き出す3つの仕組み

Pocket

🟦 はじめに|限られた時間で、どう「伝える」か

「話す時間が足りない」
「一人ひとりに丁寧に説明したいけど、全員とは会えない」

──そんな現場を抱える管理職の方は少なくありません。

今回の記事のきっかけも、あるクライアントさんとのコーチングセッションでした。
その方は、客先に常駐して働く業務委託メンバーのマネジメントを任されています。
社内メンバーのように、日常的に顔を合わせて話せるわけではない。
加えて、すべてのメンバーが得意先の文化や文脈でほとんどの時間を過ごしている。
だからこそ、「限られた時間の中で、どう伝えるか」が常に課題になるのです。

打ち合わせや定例会の時間は短く、
話せるチャンスも多くて週1回。
その中で、方針を伝え、考え方を共有し、方向性を揃えなければならない。

「どうすれば、限られた時間の中で、効果的に“考え方や方向性の共有”や“共感”をつくり出せるのか。」
セッションでは、この点が本質的なテーマとなりました。

多くの職場で「伝える時間が足りない」と言われる中で、
実は“伝え方の工夫”と“確認の設計”で成果は大きく変わります。

今回の記事では、
そのセッションで見えてきたヒントをもとに、
限られた時間で、伝わるチームをつくるための3つのステップを紹介します。

🟨 第1章|伝える時間が限られているからこそ、“設計”が効果を発揮する

限られた時間の中で多くのことを伝えようとすると、
つい「要点だけ伝えよう」「細かい説明は省こう」となりがちです。
けれど実際には、そこに“解釈のズレ”が生まれることも少なくありません。

そんなときに役立つのが、「伝える前に、少しだけ設計しておく」という発想です。
これは、話す内容を固めるというよりも、
「どんな理解を得たいのか」を整理する時間をつくるという意味です。

🔹1. 目的を整理してみる

会話や打ち合わせの前に、
「今日、自分は何を理解してもらいたいのか?」と
一度立ち止まってみると、話す内容が自然に整理されます。

たとえば──
• 方向性を共有したいのか
• 行動の優先順位をそろえたいのか
• 判断基準を伝えたいのか

この目的が明確になると、話す順番や時間配分も決まりやすくなります。
短い時間だからこそ、“どんな理解を持って帰ってもらいたいか”に意識を向けておくことが効果的です。

🔹2. 情報を3つの層で整理してみる

メンバーが別々の現場や文化で働いている場合、
「背景」や「意図」を飛ばして伝えると、
その言葉の“意味”が伝わりにくくなります。

次のように3つの層で整理してみるのも一つの方法です。

1️⃣ 背景:「なぜこの話が必要なのか」

2️⃣ 意図:「どんな考え方に基づいているのか」

3️⃣ 行動:「具体的にどう動いてほしいのか」

この3層を意識して話すと、
相手が“自分の現場ではどう活かせるか”を考えやすくなります。

🔹3. 伝える順番を意識する

短時間の打ち合わせでは、
「手順や方法」から話したくなることが多いですが、
最初に“考え方”を共有するという順番を意識してみると、
話の伝わり方が変わってきます。

考え方が共有されると、
細かい指示を出さなくてもメンバーが判断しやすくなる。
その結果、後からの修正も少なくなります。

🔹4. “準備の5分”を味方につける

忙しい現場では、「準備の時間をとるのは難しい」と感じることもあると思います。
けれど、ほんの5分でも「何を、どんな順番で伝えるか」を考えておくだけで、
その後のコミュニケーションが驚くほどスムーズになることがあります。

設計とは、綿密に計画することではなく、
“相手が受け取りやすい形を考える”ための一呼吸
その小さな一手間が、限られた時間を有効に使うコツかもしれません。

🔸まとめ

• 「何を理解してもらいたいか」を整理してから話す
• 背景・意図・行動の3層で伝えるとズレが減る
• 手順よりも“考え方”を先に伝えてみる

時間が限られている状況こそ、
“話す”より“設計する”時間を少しだけつくる。
それが、伝わるチームづくりの第一歩になっていきます。

🟩 第2章|確認をどう効率的に設計するか

「ちゃんと伝えたつもりだったのに、ちょっとズレてた」
「話は通じたと思ったけど、動き方が違ってた」

──そんなこと、ないですか?

実はこの“ズレ”を防ぐ鍵は、
「確認の仕方をあらかじめ設計しておく」ことにあります。
ここでいう確認とは、「言ったことをもう一度確認する」というよりも、
“お互いの理解を揃える時間を持つ”という意味です。

時間が限られた現場ほど、
その「確認の時間」をどう取るかが、生産性に直結していきます。

🔹1. 確認の目的を共有する

まず大事なのは、「なんのために確認するのか」をチームで共有しておくこと。
確認は“間違い探し”ではなく、“方向をそろえる時間”です。

リーダーがあらかじめそういうスタンスを示しておくと、
確認の場が“チェック”ではなく“対話”になっていきます。

「ちょっとだけ確認しておこう。お互いズレたまま進めるのはもったいないしね。」

こんな軽い一言で、場の雰囲気はずいぶん柔らかくなります。

🔹2. “言葉”じゃなく“行動”で確認する

限られた時間で確認するときに効果的なのが、
「わかった?」じゃなくて「どう動く?」と聞く方法です。

たとえば──

「この方針で行くとして、最初にどんな対応から始める?」
「次の打ち合わせまでに、どこまで整理しておきたい?」

こう聞くと、相手の理解度が“言葉”じゃなく“行動イメージ”で返ってきます。
それが一番確実な確認になります。

🔹3. 確認のタイミングを“ルーティン化”する

毎回、確認の時間を別で設けるのは正直むずかしいですよね。
だからこそ、**確認を「仕組みの中に入れる」**という考え方が役立ちます。

たとえば、
• 定例ミーティングの最後3分を「共通理解の整理タイム」にする
• チャットの最後に「理解したポイントを一文で返す」
• プロジェクトの節目に「認識合わせのメモ」を残す

こうしたちょっとした習慣を仕組みにしておくと、
確認が“特別なこと”じゃなく“自然な流れ”になります。

🔹4. “確認のコスト”を減らすには(鍋蓋組織での工夫)

今回のように、各メンバーがそれぞれ別の常駐先で働く“鍋蓋型”の組織では、
「チームとしての確認」が起きにくい構造があります。
同じ現場でフォローし合うことができないぶん、
リーダーが個別にコミュニケーションを取る負担がどうしても大きくなる。

だからこそ、“接点の質を上げる”ことで確認のコストを下げるという考え方が大切です。

🟩 ① “報告の形式”を決めておく

毎回、報告のスタイルがバラバラだと、それを整理するのに手間がかかります。
たとえば、次の3項目を共通ルールにしておくだけでも、ぐっと確認がラクになります。

• 今週やったこと
• やってみて気づいたこと
• 来週どう動くか

これだけでも、やり取りの中で「考え方」や「方向性」が見えやすくなります。

🟩 ② 「同期」じゃなく「非同期」で確認をまわす

全員とリアルタイムで話すのがむずかしい場合は、
**“非同期で確認する”**仕組みを取り入れるのもひとつの方法です。

たとえば、
• 定例の前に「今週の共有メモ」を簡単に送ってもらう
• 打ち合わせでは、それを前提に“ズレ”だけをすり合わせる

こうすることで、打ち合わせの時間を“説明”ではなく“確認”に使えるようになります。

🟩 ③ “反応”をもらいやすい問いかけを使う

「了解です」だけで終わってしまうと、
確認できたようで実はズレていた、なんてこともありますよね。

そんなときは、ちょっと問いを変えてみると違います。

「今日の話で、どの部分を一番意識したいと思った?」
「次までに、どんなことを試してみようと思う?」

こんな問い方をすると、
相手の中で何が響いているか、どこまで理解が進んでいるかが自然に見えてきます。

🟩 ④ “確認しやすい関係性”をつくる

仕組みだけじゃなくて、
「確認されることがイヤじゃない関係」をつくっておくのも大事です。

確認って、“監視”ではなく“信頼の再同期”。
その感覚が共有されていれば、短い対話でもお互い気持ちよく動けます。

🔸まとめ

• 確認は“チェック”じゃなく“方向をそろえる時間”
• 「どう動く?」で理解を確かめる
• 定例やチャットの中に“確認の習慣”を組み込む
• 鍋蓋組織では、“接点の質”を上げて確認コストを下げる

リーダーが全員を直接見られないからこそ、
「短い接点を濃くする」ことが、最大の確認効率化になります。

🟧 第3章|“関係の設計”が信頼を育てる

「伝える」と「確認する」を丁寧に設計できるようになると、
少しずつチームの関係性そのものが変わっていきます。

最初は“業務の効率化”として始めた仕組みが、
いつの間にか“関係の質”を高める土台になっていく。
それが、関係の設計=信頼を育てる仕組みづくりです。

🔹1. 「見てもらえている」という安心感を設計する

人は、自分の仕事をちゃんと見てもらえていると感じたとき、
自然と前向きなエネルギーが湧いてきます。

確認の時間は、単に“内容をそろえる”ためだけじゃなく、
「あなたの取り組みをちゃんと見ているよ」というメッセージにもなる。

「前に話してたあの件、進んできたね」
「あの判断、すごく助かったよ」

たったそれだけでも、
相手は“評価されている”よりも“理解されている”と感じます。

関係の設計とは、こうした小さな安心の接点を意図的に散りばめていくこと。
その積み重ねが、信頼の基盤になります。

🔹2. “確認”を支援の対話に変える

一見すると「確認」は“自律”を妨げるようにも見えます。
でも実際は、伝える設計・確認の設計が整っていれば、
確認は“干渉”ではなく“支援”として機能します。

「この方向で進めてみようと思うけど、どう感じる?」
「OK、まずやってみよう。途中で違うと思ったらその時また話そう。」

このやり取りの中にあるのは、支配ではなく支えです。
関係の設計とは、こうした“対話の構造”をチーム内に仕込むこと。

リーダーが「確認=見守り」として関わる姿勢を持つだけで、
メンバーの行動の質が自然と変わっていきます。

🔹3. ミスを恐れず話せる関係を設計する

確認がうまく回るようになると、
チーム内で「間違いを隠さない」空気が生まれます。

確認を“責任追及”ではなく“早く整えるための習慣”として扱うことで、

「少し迷ってるんですけど…」
「いまのやり方、少しズレてるかもです」
といった会話が自然に出てくるようになる。

それが、チームが“学習する組織”へと育つ最初のサインです。
関係の設計とは、こうした**「話せる安全圏」を意図的につくること**なんです。

🔹4. 関係を支える“構造”を持つ

信頼は感情だけでは続きません。
「安心して話せる」「任せられる」その状態を支えるために、
関係を維持する構造を持つことが大切です。

たとえば──
• 定例の最後3分を「お互いの確認タイム」にする
• チャットで「今週助かったこと」を1行だけ共有する
• 1on1では“結果”よりも“考え方”をすり合わせる

こうした小さな構造が積み重なることで、
信頼は一時的なムードではなく“再現可能な関係性”になります。

🔸まとめ

• 確認は“見張り”ではなく“見守り”
• 安心の接点を設計することで、信頼の基盤ができる
• 支援の対話を仕組みに変える
• 「話せる安全圏」を意図的につくる
• 関係を支える構造が、信頼を持続させる

確認とは、単なる業務プロセスではなく、
関係をデザインするリーダーシップの実践なんです。

リーダーがその意図を持って関係を設計すると、
チームは少しずつ、自分たちで考え、支え合いながら動く存在に変わっていきます。

🟫 まとめ|3つの設計がつくる、信頼で動くチーム

ここまで見てきたように、
限られた時間の中でチームを動かすには、
「伝える」「確認する」「関係をつくる」の3つを
“設計”という視点で捉えることが大切です。

🔹① 伝える設計

伝える内容・順序・意図を整理して話すことで、
短い時間でも「何を」「なぜ」やるのかが明確になります。
これが、チームの“理解の基礎”になります。

🔹② 確認の設計

「どう確認するか」を仕組みとして設計することで、
理解のズレを防ぎ、考えの共有を加速させることができます。
確認は“チェック”ではなく、“対話”に変わっていく。

🔹③ 関係の設計

そして、伝える・確認するを繰り返す中で、
その仕組み自体がチームの信頼を育てていきます。
安心して話せる関係、支援としての対話、
それを支える構造──これが信頼を支える「関係の設計」です。

3つの設計は、どれかひとつでは機能しません。
伝え方が整うと確認がスムーズになり、
確認の質が上がると関係が深まり、
関係が強くなることで、再び“伝える”が通じやすくなる。

この循環が生まれたチームは、
指示で動くのではなく、信頼で動くチームへと変わっていきます。

「伝える設計」

「確認の設計」

「関係の設計」

それぞれは別々の仕組みのようでいて、
実はひとつの信頼循環をつくる“チームの設計図”です。

💬 最後に問いかけを

今週、あなたのチームで
「伝え方」「確認の仕方」「関係のつくり方」──
どこに小さな一歩を加えられそうですか?

その一歩が、チームの信頼の循環を
静かに動かし始めるかもしれません。

Pocket

まじめに伝えたつもりが、距離を遠ざけていた──関わり方を整えるという選択

Pocket

「そんなつもりはない」これまでの自分の伝え方

あるコーチングセッションでのことです。
そのクライアントさんが、ふとこんなことをこぼしました。
「そんなにきつく言っているつもり、ないんですけど……」

この言葉が、どこか自分の胸にも引っかかりました。
というのも、これまでにも──特に、縦の関係性が色濃い組織でマネジメントに関わっている方たちとのコーチングセッションで、
同じような言い回しを何度か耳にしてきたからです。

「そんなつもりはなかった」。
でもその“つもり”が、人との関係性のなかでは、
ときに“圧”として伝わってしまうことがあります。

今回のセッションをきっかけに、こうした言葉が生まれる背景に、あらためて目が向きました。

コーチングの現場では、「圧が強いよね」と誰かに言われた経験について話をお聞きすることがあります。
それは、部下や後輩、あるいは上司との関係の中で出てきた言葉かもしれません。

そうしたやり取りを聴いていると、
「相手にきちんと覚えてほしい」「ちゃんとできるようになってほしい」
──そんな思いで接している方が多いと感じます。

けれど、そうした関わり方の裏には、

人との関係性を構築することへの不器用さ

でも、役割として“関わらなければならない”。

そのギャップの中で、伝え方が強くなってしまうことがあるのだと思います。

②|“伝え方”に幅を持たせるということ

これまでぼくが対話してきた「圧が強い」と言われがちな方たちは、
一人ひとりとても誠実で、責任感の強い方ばかりでした。

人に何かを教えるときも、任せるときも、
できるだけわかりやすく、丁寧に、きちんと。
抜けや誤解がないように、言葉を選び、説明を尽くす。
そんなふうに、関係性を大切にしようとしている姿を、何度も見てきました。

だからこそ、「なんで伝わらないんだろう?」と戸惑う気持ちになるのも、よくわかります。

でも、ときにその言葉や関わり方が、
相手にとっては「きつい」「重たい」と感じられてしまうことがあります。

伝える側がどれだけ丁寧でも、
受け取る側には「責められているように感じる」「詰められているように聞こえる」と
伝わってしまうことがあるんです。

それは「伝え方が強すぎる」というよりも、
**“伝え方にゆとりや幅を持たせる余地がある”**ということなのかもしれません。

「どの言葉が伝わりやすいのか」
「どのくらいの情報量でちょうどいいのか」
「どのタイミングで伝えるのが効果的なのか」

──そんな問いを持ちながら、
“伝え方”そのものを広げていくこと。

それは、伝える力をさらに磨くだけでなく、
相手との関係性をより深くするための、大切な一歩になると思うのです。

“距離感”を調整して相手に合わせる技術は、
伝える側が心にゆとりを持って、意識的に行わないと
うまくいかないことが多いように思います。

ただ、「きちんとやりたい」「丁寧に伝えたい」という思いがあるからこそ、
その“伝え方の幅”を少しずつ広げていくことで、
もっと自分らしく、相手と関われるようになるのではないか──
そんなふうに感じています。

③ 相手との間にある“ズレ”を自覚する

どんなに誠実に伝えても、「伝わらない」「響かない」というズレは、どこかで必ず生まれます。

たとえば──
言葉を尽くして伝えたつもりなのに、相手の表情は冴えない。
問いかけたはずなのに、「うーん…」と口ごもったり、黙り込まれてしまう。

こんなふうに、相手の反応が薄いときこそ、
「なんで伝わらないんだろう」
「もっとちゃんと話すべきだったかも」
と、自分の“伝え方”を強めてしまう。

でも、実はこれが悪循環の始まりであることも多い。

そして、ときには周りからのフィードバックで、ようやく
「ああ、そういうふうに伝わっていたのか」
と気づくことになるのです。

こうした“ズレ”を認識することができれば、
自分の伝え方にどんな「前提」や「思い込み」があったのか、
それに気づくきっかけとして活かしていけるようになるはずです。

だからこそ、「伝えたこと」と「伝わったこと」の間にある“ズレ”に、
すこしずつ意識を向けられるようになること。
それが、自分らしい伝え方の精度を上げていく土台になるのではないでしょうか。

④ 相手を動かすのは、言葉の量より“距離感の設計”

誠実に、真剣に、丁寧に──
相手に伝わるようにと、言葉を尽くす。
それ自体は悪いことではありません。けれども、
言葉の“量”や“強さ”で関係を動かそうとするほど、かえって相手の心が遠ざかることもあります。

たとえば、何度も念押しをしたり、繰り返し確認したり、強い言葉を使ったり。
あるいは、「わかってほしい」という気持ちが強くなりすぎて、
知らず知らずのうちに、相手の思考や感情のスペースを奪ってしまう──。
そんなことも、少なくないのではないでしょうか。

大切なのは、「どれだけ言うか」や「強い言葉で伝えること」ではなく、
「どんな距離で関わるか」という感覚です。

それは、“近づきすぎない”ということではなく、
相手のペースやタイミングに寄り添える、余白ある関係性。
つまり、「踏み込みすぎず、離れすぎず」という“距離感の設計”のようなものです。

もちろん、言葉は関係を築くための大切な手段です。
でも、それだけでは足りないこともある。
ときには、「あえて言わない」ことや「ちょっと待つ」ことが、
信頼をつくる助けになることもあるはずです。

“伝え方”を磨こうとするのと同じくらい、
“関わり方”の距離感に意識を向けること。
それが、相手を動かす静かな力になっていくのではないでしょうか。

⑤ 関係性を選びなおすための「3つの見直しポイント」

相手を動かす「距離感の設計」と言っても、
感覚だけに頼るのは難しいこともあります。

そんなときは、次のような観点から
関わり方を見直してみると、ヒントが見えてくるかもしれません。

1|“近づきすぎていないか”を見直す

• 相手の成果や成長に、過剰に責任を感じていないか?
• 「わかってほしい」「変わってほしい」という気持ちが強くなりすぎていないか?

→ 一歩引くことで、相手との関係を健全に保ちやすくなります。

2|“離れすぎていないか”を見直す

• 言わなくても伝わるだろう、と放置していないか?
• 無関心やあきらめが距離をつくっていないか?

→ あらためて伝えてみることで、想像以上に関係が動くこともあります。

3|“お互いの立場や状態”を見直す

• いま相手はどんな状況にいて、何に余裕がないのか?
• 自分の立場や発言が、どう受け取られている可能性があるか?

→ 状況の変化に合わせて関わり方を選ぶことは、信頼を保つカギになります。

これら3つの見直しを実践することで、完璧ではなくとも「距離感の再設計」をする事ができます。

⑥「関わり方」は、選び直せる

「そんなつもりじゃなかったのに」──
意図していない伝わり方に気がついた時に、
多くの人が抱くのは、“誤解された”という戸惑いや、“うまくできない”という落ち込みです。

けれど、人との関係性は、
一度つくったら終わりではなく、何度でも選び直すことができるものです。

「こうすれば伝わるはず」と思っていた関わり方も、
相手の状況や自分の立場が変われば、かえって負担になってしまうことがあります。
逆に、以前は届かなかった言葉が、タイミング次第でスッと入ることもある。

だからこそ大切なのは、
言葉の“量”や“強さ”を変えることよりも、関わり方を“見直す”視点を持ち続けること。

・近づきすぎていないか
・離れすぎていないか
・相手との「今」をちゃんと見ているか

この3つの問いかけを通して、自分のスタンスを少しずつ調整していくことで、
たとえすぐに関係が改善されなかったとしても、
「自分にできる関わり方」を丁寧に選び取っていくことができます。

完璧じゃなくていい。
でも、自分の意志で関わり方を整えていけるという実感は、
きっとあなたの人間関係に、静かな安心感をもたらしてくれるはずです。

小さな見直しの積み重ねが、やがて大きな信頼につながっていきます。

Pocket

“伝わらない立場”にいるリーダーへ──支える力を言葉に変えるヒント

Pocket

はじめに|「言っているのに、伝わらない」

「ちゃんと伝えたつもりなのに、なぜか伝わらない」──。

そんな感覚を抱えたまま日々を過ごしているリーダーは少なくありません。

上司には、現場の課題や限界を言葉にして伝えている。

メンバーにも、社長の意図をできるだけ丁寧に説明している。

どちらにも誠実に向き合っているのに、なぜか誤解されたり、

“わかってもらえない”まま話が終わってしまう。

声の大きさの問題でも、説明力の問題でもない。

それはむしろ、組織の中で立っている位置がそうさせている。

上と下のあいだに立つ人ほど、言葉が空中でほどけていくような感覚を抱く。

支える立場のリーダーが感じる「伝わらなさ」は、

怠慢でも無関心でもなく、誠実さの副作用なのかもしれません。

先日、とある社員数百名規模の企業で取締役を務める方との

コーチングセッションの中で、彼女が抱えるジレンマを聞くことがありました。

「上にも下にも伝わらない」と語るその言葉の奥には、

長く続く努力と、静かな諦めが同居していました。

現状の構造|上にも下にも「中継するだけ」のポジション

その取締役の彼女は、社長の言葉を現場へ、

現場の声を社長へと橋渡しする役割を担っている。

日々、経営会議と実務のあいだを往復しながら、

どちらにも混乱が生まれないように気を配り続けている。

社長から新しい方針が下りると、彼女はまず内容を整理し、

現場にどう伝えるのが最も理解されやすいかを考える。

会議資料を整え、言葉をやわらげ、

時には「社長の意図」を代弁するような形でメンバーに話す。

一方で、現場で生じる課題や不安を社長に届けるのも彼女の仕事だ。

「この仕組みでは運用が難しそうです」「今の時期に実施するのは負担が大きいかもしれません」

──そんな現場のリアルを慎重に伝えるが、

返ってくるのは「いや、それはできる」「やるしかない」という言葉。

社長には、現場の戸惑いや混乱が“やればわかるはずのこと”であったり、

“覚悟の足りなさ”に映っているようだ。

けれど、彼女には**“見え方のずれ”に見えている。**

気づけば、自分の言葉がどちらにも届かないような感覚が残る。

経営の近くにいながら、意思決定には関われない。

現場を理解しているのに、裁量を発揮できない。

社長は現場の未熟さを感じ、

現場は社長の“方針がコロコロ変わる”ように見えて苛立っている。

そのあいだに立つ彼女は、どちらの言い分も理解できるがゆえに、どちらからも距離を置かれる。

ときに社長の意図を代弁すれば、現場から反発を受け、

現場の声を拾えば、社長から「言い訳に聞こえる」と言われる。

だからこそ、一番誠実に立ち回っているのに、いちばん板挟みになる。

この立場の孤独は、静かだけれど、深い。

内省|「伝わらない」には3つのパターンがある

彼女が感じている「伝わらなさ」は、

単に言葉の選び方や伝達手段の問題ではない。

その根っこには、**立場によって異なる“伝わらなさの構造”**がある。

そしてそれは、大きく三つのパターンに分けられる。

① 上に伝わらない──現場のリアルが、理想の中で薄まる

社長は、会社全体を動かすための理想やスピード感を大切にしている。

だから、現場の課題を聞いても「やればできる」と返す。

そこには、成長への信念もあれば、現実への鈍感さもある。

一方で、彼女が丁寧に言葉を選ぶほど、

その“現場の温度”は、社長の頭の中で抽象化されていく。

結果として、伝えたはずの内容が、意味の輪郭を失っていく。

② 下に伝わらない──社長の意図が、彼女の口を通して弱まる

彼女は、社長の方針をできるだけ柔らかく、誤解を生まないように伝えようとする。

けれど、その“配慮”が意図の鮮度を下げてしまう。

現場のメンバーには、「また上からの指示か」としか届かない。

伝えようとすればするほど、言葉が摩耗していく。

③ 自分にも伝わらない──“考えること”を自分の役割としていない

上にも下にも橋をかけ続けるうちに、

「自分はどうしたいのか」「どうすべきなのか」を言葉にする機会が少なくなっていく。

社長の意図を理解し、現場の状況を整理する──

その“翻訳”の仕事に意識の大半を使っているからだ。

彼女は、経営の意図を正確に伝えることが自分の役割だと信じている。

だから、自分の意見を明確にする必要をあまり感じていない。

仮に「どう思う?」と問われても、

経営の全体像を描くための視点や経験がないまま、

自分の言葉を整えることができずにいる。

誠実に動いているのに、

その誠実さが“自分の意思”を育てる方向には向かっていない。

ここに、彼女が抱える“伝わらなさ”の根がある。

“伝わらない”という現象の背景には、

伝える力の不足ではなく、それぞれが見ている位置の違いがある。

そのズレを整理することが、次に進むための第一歩になる。

その“一歩”とは、何か。

転換点|“翻訳”から“意味づけ”へ

「社長の言葉をどう伝えるか」──

これまでの彼女の関心は、ほとんどがその一点にあった。

誤解を防ぎ、現場を混乱させないように。

社長の意図を崩さずに、できるだけわかりやすく。

けれど、どれだけ丁寧に“翻訳”しても、

現場が動かなければ、経営は進まない。

彼女はそのシンプルな事実に気づきはじめている。

少しずつ、彼女の中に「伝える」よりも

“どう受け取らせるか”という視点が生まれてきた。

それはまだ言葉にならないけれど、

“翻訳者”ではなく“意味づけを促す人”としての小さな目覚めでもある。

社長の言葉をそのまま伝えるのではなく、

「こう受け取りました。こう動くことで、こんな変化が想定されるので、まずそこまでやります。」

と返してみる。

それは、“意図をくんでもらう”ためではなく、

動いてもらう中で気づきを生み出すための返し方だ。

現場に理解を求めすぎず、

段階的なアプローチで「現場が動く」ことを優先する。

その小さな実践が、やがて“現場が自ら意味づけできる組織”への土台になっていく。

「伝える」から「動かす」へ。

その転換が、彼女自身の言葉に“自分の意思”を取り戻していく第一歩になる。

結び|「支えるリーダー」に共通する、静かなテーマ

今回の彼女のケースは、決して特別なものではない。

「支える立場」にいる人ほど、

自分の意思よりも、誰かの意図を優先してしまう。

その誠実さが、いつの間にか“自分の言葉の薄まり”につながっていく。

けれど、経営やチームが動くためには、

支える側がただの“翻訳者”で終わってはいけない。

言葉の背景を理解し、状況の意味を整理し、

ときに「まずこう動いてみます」と意思を返す。

その小さな対話の積み重ねが、

組織に“考える文化”をつくっていく。

支えるリーダーの成長は、

声を大きくすることでも、立場を強く主張することでもない。

状況の中で、自分なりの意味を見つけ、行動で示すこと。

静かに、けれど確かに組織を変えていく。その姿勢が、支えるリーダーの原点だ。

Pocket

現場の経験が未来のリーダーシップを育てる

Pocket

はじめに

おぼろげながら将来は経営者になりたい──そう思い描きながらも、異動になった先で今の自分がやっているのは「現場の作業をひとつずつ覚えること」。

これは、ぼくのコーチングを受け始めた頃に「私、経営者になってみたいです」と言ってくださった、あるクライアントのお話です。
そのときの彼女の表情は、自信満々というよりは「まだ輪郭ははっきりしていないけれど、心の奥にある熱を言葉にしてみた」という感じでした。

ところが、そんな彼女が異動によって任されたのは、目の前の作業を一から覚えていくこと。
経営に近づくどころか、むしろ遠ざかってしまったように感じても不思議ではありません。

きっと彼女の中には、戸惑いやギャップもあったでしょう。けれど、ぼくはその話を聞いたときに──
「現場の作業を覚える時間には、未来の経営に直結する大事な意味がある」と。

“現場を知る”とは、作業を覚えること以上の意味がある

「現場の作業を覚える」と聞くと、決められた手順を正しくこなせるようになること──そう思いがちです。
確かに、日本の職場では「現場を経験している人は信頼されやすい」という文化的な側面もあります。
一緒に汗をかいた人を自然と信用する──そんな感覚が、組織の中には今も息づいています。
だから、今の現場作業を覚える時間は、将来リーダーとして人を動かすときに「説得力」という形で返ってきます。

けれど、本当に大切なのはそこで終わらせず、その先にあるものを掴み取ることです。
現場を知る本当の意味は、作業をひとつひとつ身につける中で、**「人はどこでつまずきやすいのか」「仕組みはどんな場面で滞りやすいのか」**に気づけること。
マニュアルどおりにやってもうまく進まない瞬間や、人によってつまずくポイントが違う場面に出会うとき、私たちは“人と仕組みのリアル”に触れているのです。

こうした気づきは、将来リーダーとして人を支援したり仕組みを改善したりするときに、必ず役立ちます。
つまり、現場を知るとは「単に作業を覚えること」ではなく、“人と仕組みを理解する力”を掴み取ることなのです。

そして、その視点は仕事の外にも広がっていきます。
異動によって生まれた「公私の時間配分の変化」に向き合うこともまた、24時間という限られたリソースをどう配分するかの実践です。
睡眠・食事・勉強・仕事──その組み立ては小さな経営そのもの。
時間を整える力は、そのまま人と仕組みを整える力へとつながっていきます。

現場に立つ日々も、生活のリズムを整える試行錯誤も。
今、彼女に起きているさまざまな変化を、未来の経営に直結するトレーニングだという視点で見てみる。
そうすると、目の前の出来事の活かし方が見えてきます。

未来への接続

現場での日々は、ただの作業の積み重ねに見えるかもしれません。
けれど、その一つひとつは未来の経営に必要な力へとつながっています。

たとえば──

短期間で業務を一通り回せるようになること。

これは経営者に欠かせない「成果を出す力」の土台になります。限られた時間で結果を出す経験は、そのまま経営の実行力を磨くことにつながります。

委託メンバーと一人ひとり対話すること。

これは将来チームを率いるときに必要な「人を理解する力」へと変わります。人がどう動き、どこでつまずくのかを知ることは、組織を活かすうえで欠かせない視点です。

生活リズムを整える試行錯誤。

これは長期的に人を支える立場に必要な「持続する力」になります。経営はマラソンです。安定して力を発揮するためには、まず自分自身のコンディションを整えることが欠かせません。

──このように見ていくと、目の前の現場での多くのことが「未来の経営につながる練習」になっています。
経営に近い場所にいなくても、すでに経営の基礎は日々の中で育ち始めているのです。

まとめ

現場に立ち、作業を覚えること。
生活のリズムを整えようと試行錯誤すること。
どちらも「経営」とは無縁に見えるかもしれません。

けれど、そのひとつひとつは──
未来の経営に欠かせない力を育てる、確かなトレーニングです。

その力が日々育っている

どうか焦らず、今の経験を自分の糧として眺めてみましょう。
視点を少し変えるだけで、現場の出来事も、日常の工夫も、様々なことがリーダーとしての学びにつながっていきます。

未来のリーダーシップは、特別な場所にあるわけではありません。
現場の中に、日常の中に、その芽はすでに育ち始めているのです。

Pocket

「やりがい」と「安心感」のはざまで──40代管理職が築く“自分づくり”のキャリア

Pocket

セッションから見えた「問い」

先日のコーチングセッションで、ある管理職の方と「理想の仕事とは何か」というテーマを話し合いました。
その方は会社の現場をまとめながら、新しいプロジェクトをリードしている立場。責任も成果も大きく求められる一方で、「自分にとって理想的な仕事の条件は何だろう」とあらためて考えているところでした。

対話の中で浮かび上がってきたのは、「楽しさと報酬の両立はできるのか?」 という問いです。
やりがいを感じられる仕事に就きたい。でも、家族を支えるために報酬も大切。どちらか一方を選ぶのではなく、両方をどう成り立たせるか。これはキャリアの中盤を迎えた多くの管理職にとって、とてもリアルで切実なテーマだと思います。

この記事では、そのセッションをきっかけに見えてきた考え方を整理しながら、40代の管理職が「楽しさ」と「報酬」をどう捉え直し、“自分づくり”としてキャリアを歩んでいくヒントをお伝えしていきます。

40代に訪れる「やりがい」と「安心感」の揺れ

40代になると、多くの人が「仕事のやりがいや充実感」と「現状維持の安心感」のあいだで揺れるようになります。
「もっと自分らしい挑戦をしたい」と思う一方で、今の安定した状況を守りたい気持ちや、家族への影響を恐れる気持ちも無視できません。
この時期には、現状維持バイアスが働きやすい環境にいらっしゃる方が多いと感じます。

実際に、ぼく自身も会社員として働きながら40代でコーチングを始めたのは、この揺れを自分なりに受け止め直そうとしたからでした。
そして現在に至るまで、さまざまな40代のビジネスパーソンとのコーチングセッションの中で、この“やりがいと安心感の間での揺れ”はテーマとして繰り返しお話をしてきました。

さらに管理職の場合は、もうひとつ特有の板挟みがあります。
「会社の意向」と「現場の想い」、そして「自分らしさ」。
この三つの間でどうバランスを取るかという課題が、「やりがい」と「現状維持の安心感」の板挟みに重なるのです。

“条件”ではなく“状態”に注目する

「やりがい」と「安心感」の揺れを考えるとき、多くの方がまず思い浮かべるのは「条件」です。
たとえば──
「給与がいくらなら安心できる」
「この役職についていればやりがいがある」
「在宅勤務できる環境なら自分らしさを保てる」

多くのビジネスパーソンを支援してきて感じるのは、条件で考えることはわかりやすくて具体的ですが、それだけに縛られてしまうと、どこかで満たされない感覚が残ることも多いということです。

大切なのは、「どんな条件を満たすか」ではなく、**「どんな状態にいるとき、自分のエネルギーが自然に湧いているか」**を見つめること。

たとえば──
• 「仲間と成果を喜び合えているとき」
• 「一人でじっくり整理して頭が冴えているとき」
• 「誰かの役に立てている実感を得ているとき」

こうした“状態”に注目することで、自分が大切にしている価値観や強みがより鮮明になります。
そして、それは単なる条件を超えて、キャリアの選び方や働き方の軸をつくる手がかりになるのです。

「自分づくり」という視点で自分らしさを取り戻す

コーチングを通じて多くのビジネスパーソンを支援してきて感じるのは、キャリアの正解を「探す」のではなく、「自分をつくり続ける」という視点が大切だということです。
診断ツール(ストレングスファインダーやエニアグラムなど)は、自分の素材を知るきっかけとしてとても有効です。
そこから“自分づくり”を進めていくには、その素材をどう磨くか、どう組み合わせれば自分が活きるのかを考えながら実践していくこと。
そこに“自分づくり”の面白さと深さがあります。

そしてもうひとつ視点を広げたいのは、「自分らしさ」が活きるのは“仕事そのもの”だけではないということです。
ある人にとっては、特定の職務や役割が自分らしさを発揮する舞台になります。
一方で別の人にとっては、“働き方のスタイル”こそが自分らしさを支える要素になります。

ここでいう「働き方」とは、テレワークやジョブ型雇用といった制度の話というよりは、もっと個人的で実感的なものです。
• 人と議論しているときにアイデアがどんどん湧くタイプの人
• 一人でじっくり整理しているときに力を発揮するタイプの人

のように、特定のやり方をしているときに自分らしさを強く感じるケースです。

“自分づくり”とは、この「仕事」と「働き方」など複数の視点から柔軟に、自分にフィットする形やバランスを探り続けること。
それは新しい環境を探すこと以上に、自分のスタイルを見出し、育てていくプロセスだと思います。

実践のヒント|“自分づくり”を始める3つのステップ

ここまで「条件」ではなく「状態」に注目し、“自分づくり”の視点を持つことが大切だとお伝えしてきました。
では、実際にどのように日常のキャリアに取り入れていけばいいのでしょうか。
多くの40代のビジネスパーソンとセッションを重ねる中で見えてきた、シンプルな3つのステップを紹介します。

1. 強みの棚卸しする

まずは、自分が自然にエネルギーを発揮できる場面を振り返ってみましょう。
• 部下との1on1で安心感を与えられたとき
• プロジェクトの計画を整理しているときに頭が冴えたとき

これは「どんな条件の仕事をしたか」ではなく、どんな状態にあるとき自分が生き生きしていたかに注目するのがポイントです。

2. 状態を言語化する

次に、そのエネルギーを感じられる瞬間を**「条件」ではなく「状態」として表現**してみます。
• 「仲間とアイデアを膨らませている状態が自分らしい」
• 「計画を形にして周囲に評価されるときに充実感がある」

こうして言語化しておくと、自分にとって大切な価値観がよりクリアになります。

3. 小さな実験を始める

最後は、日々の仕事や習慣の中で新しい“働き方のスタイル”を試してみることです。
• 普段は議論中心の人が、あえて一人でまとめる時間を長めにとってみる
• 一人で抱え込みがちな人が、あえて人に話してから考えを深めてみる

こうした小さな実験を繰り返すことで、自分らしさが発揮されやすいバランスが少しずつ見えてきます。

“自分づくり”は一度で完成するものではありません。
探る・試す・整える、そのプロセス自体がキャリアの成長を支えていくのです。

 

40代の管理職にとって、挑戦と安定のはざまで揺れるのは、40代だからこそ訪れる大切な時間です
ただ、その揺れをネガティブに捉える必要はありません。むしろ、自分をつくり直していくチャンスでもあります。

キャリアは「条件に合った仕事を選ぶ」ものではなく、自分らしい状態を見つけ出し、つくり続けていくプロセスです。
そしてその過程で、やりがいと安心感の両立も少しずつ形を変えて実現していくのだと思います。

大きな転職や環境の変化だけが答えではありません。
日々の仕事や習慣の中で、小さな実験を重ねながら“自分づくり”を続けること。
その積み重ねが未来のキャリアを形づくり、管理職としての成長を支える大切な土台になります。

最後に、あなたにこんな問いを置いて終わりたいと思います。

👉 今のあなたが最も自分らしさを感じられる状態は、どんなときでしょうか?
👉 そして、それを日常の仕事や習慣に小さく取り入れるとしたら、何から始めますか?

Pocket

経営の信頼は“成果”よりも“姿勢”で積み上がる

Pocket

1. 成果はわかりやすい、でもそれだけでは足りない

経営をしていると、どうしても「成果」で物事を測りがちです。

売上や利益、数字として表れる結果は、経営者、管理職、現場の間で共通言語にしやすいからです

でも、あるクライアントさんとのセッションでの出来事が、改めてぼくに問いを投げかけてきました。

その方は、自社で進めていたプロジェクトがうまくいかず、やむを得ず作り直しに至った案件を振り返っていました。

「結果」として見れば、顧客に満足を与えられなかった事例です。

ところが、その中で光ったのは「失敗をどう受け止め、どう対応したか」という姿勢でした。

顧客への謝罪を避けずに向き合い、必要なパートナーを紹介し、顧客の得たい「結果」に対して今、自社ができることをやり遂げようとする姿勢

それを経営者として実践しようとする姿を目の当たりにして、ぼく自身も大きな気づきを得ました。

──信頼は「成果」ではなく「姿勢」で積み上がるのではないか。

この記事では、その気づきを整理しながら、経営に携わる方にとってのヒントをお伝えしていきます。

2. 数字に頼りすぎると信頼の土台を見失う

成果はわかりやすく、数字で示せます。

経営において数字は間違いなく大切で、売上や利益といった指標がなければ、組織は健全に続けられません。

経営者・管理職・現場、それぞれの立場で共通言語にしやすいのも「数字」という形だからこそです。

ただ──数字だけを拠り所にすると、信頼の土台を見失ってしまうことがあります。

「成果が出たときは評価されるけれど、出なかった瞬間に一気に信頼が揺らぐ」

そんなとき、現場では数字の良し悪しに一喜一憂し、チームの安定感が大きく揺れ動く光景を、ビジネスコーチとして様々な現場で見てきました。

一方で、数字だけでは測れない信頼の軸があります。

それが「どんな姿勢で臨んでいるか」という部分です。

成果が出ているときも、出ていないときも、誠実に相手と向き合い続ける姿勢があるかどうか。

ここが、数字だけでは語れない長期的な信頼を左右していきます。

大切なのは、成果と姿勢のどちらか一方を選ぶことではありません。

数字を追うことと、姿勢を示すことの両輪がそろって初めて、信頼は安定して積み上がっていくのだと思います。

3. 信頼を積み上げる本当の力は「姿勢」

成果は一時的なものですが、姿勢は日常の積み重ねとして相手に映ります。

たとえば「謝るべきときにきちんと謝る」「不都合なことも隠さずに伝える」「できないことを無理に抱え込まず、適切なパートナーにつなぐ」──こうした一つひとつの姿勢が、長い時間をかけて信頼を形づくっていきます。

逆に言えば、姿勢はごまかせません。

成果だけを追っているときには見えにくい部分ですが、人は「この人はどういうスタンスで向き合ってくれているのか」を敏感に感じ取ります。

だからこそ、数字が思うように出ていないときほど、姿勢が信頼の決め手になるのです。

ある経営者のクライアントさんも、プロジェクトが計画通りに進まなかったときに、ただ謝罪するだけでなく「顧客の得たい結果に対して、今、自社ができることをやり遂げよう」とする姿勢を示しました。

その姿勢が、信頼を継続させるための大切な一歩になっていました。

信頼は、成果の波に左右されない「姿勢」という土台の上に積み上がります。

その姿勢は、日常のちょっとした態度や対応の中に表れ、相手に安心感や一貫性を感じさせます。

4. 姿勢が信頼を変えた3つの事例

「姿勢」が信頼に影響を与えるのは、抽象的な話ではありません。

現場では、ちょっとした態度や対応の積み重ねが、実際に関係を左右していきます。

今回の記事のきっかけになった、ある経営者のクライアントさんは、

顧客から「プロジェクトで制作したシステムが、運用開始後に現場からの要望で改修が必要になり、他社に開発を依頼することにした」との連絡を受けました。

このクライアントさんはきちんとお客様と向き合い、必要なパートナーを紹介し、

「顧客の得たい結果に対して、今できることをやり遂げる」姿勢を示したのです。

誠実に対応することで、今後の信頼を構築している最中です。

また、営業力がとても高い別のクライアントさんの会社では、

顧客との関係がうまくいかなくなっているときほど、営業所長や営業課長が率先して顧客先に出向くことを当たり前に行っています。

その姿勢が、商品の品質の高さとともに会社のブランドへの信頼を、より確かなものにしているのです。

そして、少し手前味噌な事例ですが──

ぼくが会社員時代、商品の企画や開発に関わる仕事をしていた頃のことです。

ぼくが企画に携わった商品で、製造現場のミスなどからトラブルが発生することが時々ありました。

そういう時に、ぼく自身がまず顧客のもとへ出向き、お話をきちんと聴くようにしていました。

結果としてお客様との距離がグッと縮まり、それ以前よりも強い信頼とともにビジネスをご一緒させていただくという経験が、幾度となくありました。

成果が出ているときはもちろんですが、むしろ成果が揺らいだときほど「姿勢」が信頼を変えていきます。

数字では測れないけれど、日常のふるまいが確実に相手の心に残り、長期的な関係性を支えるのです。

5. 経営者が姿勢を磨く3つの実践ポイント

姿勢は一朝一夕で身につくものではありません。

けれども、日々の意識や小さな行動の積み重ねによって、少しずつ磨いていくことができます。

ここでは、経営者として実践できる3つのポイントをまとめてみます。

1. 短期的な成果に一喜一憂せず、中長期の視点を持つ

数字や成果はもちろん大切です。

ただ、経営を続けていくうえで本当に必要なのは、中長期で信頼を積み上げる姿勢です。

「この判断は、3年後・5年後の会社にどんな意味を持つか」という問いを一つ加えることで、目先の成果に流されず、落ち着いた判断ができるようになります。

2. 不都合なことほど率直に伝え、組織の文化にする

トラブルや想定外のことは、必ず起こります。

そのときに「隠す」より「正直に伝える」ことが、信頼の礎になります。

経営者が自らその姿勢を示すことで、社員も同じ姿勢をとるようになり、誠実さが組織文化として根づいていきます

3. 自社だけで抱え込まず、外部の力を戦略的に使う

限られたリソースの中で、すべてを自前で解決するのは現実的ではありません。

必要に応じて信頼できるパートナーや専門家を紹介することは、顧客にとって「責任を持って対応してくれた」という安心につながります。

そして、このときに借りた外部の力をきちんと分析することが大切です。

どんな技術力を自社として獲得すべきか、どのリソースはアウトソースを継続すべきか、適切な外部パートナーは誰か──。

外部協力を単なる応急対応にせず、向後の経営戦略を明確にしていく機会へとつなげられます。

信頼を支えるのは、目に見える成果だけではなく、日常ににじみ出る姿勢です。

今日からできる小さな一歩に、中長期のビジョンを重ねていくことで、やがて大きな信頼を築く力へと変わっていきます。

6. まとめ──信頼は成果以上に姿勢で築かれる

経営の現場では、つい「成果」ばかりに目が向きがちです。

もちろん成果や数字は大切で、組織を維持し成長させるための共通言語でもあります。

けれども、信頼の本当の土台になっているのは、日々ににじみ出る「姿勢」です。

謝罪の仕方、誠実な説明、パートナーを紹介する判断、中長期を見据えた行動──。

そうした小さな積み重ねこそが、長期的な信頼を支えています。

成果は一時的に上下しますが、姿勢はどんな状況でも示すことができます。

だからこそ、「この人となら長く付き合いたい」と思ってもらえるかどうかは、成果以上に姿勢にかかっているのだと思います。

この記事を読んでくださっている経営者の方も、改めてご自身の「姿勢」を振り返ってみてはいかがでしょうか。

明日の一歩を考えるとき、まずは「どんな姿勢を示すか」から始めてみてください。

Pocket

副業は未来を試すフィールド──会社を辞めるためではなく、自分を広げるために

Pocket

① はじめに:かつての副業のイメージ

いまでは「副業」という言葉を聞いても、あまり特別な響きはないかもしれません。
企業が副業を認めるようになり、誰もが気軽に挑戦できるものとして浸透してきました。
けれど、ぼくがコーチングを始めた当初は、今とはまったく違う空気がありました。
その頃の副業は、「いずれ会社を辞めて独立するための準備」と見なされることが多かったのです。
「副業をやっている=会社に不満がある」
「副業を始めた=独立を目指している」
そんなふうに周囲から思われることも珍しくありませんでした。
だからこそ、副業に取り組むことは、今よりずっと“覚悟”や“勇気”が必要な選択だったのです。
ぼく自身もコーチングを始めた当初は「副業」という形からのスタートでした。
そしてその当初から独立して以降もしばらくは、副業に取り組む多くの方の歩みを支援してきました。


② 時代の変化

あれから10年以上の時間が経ち、副業を取り巻く環境は大きく変わりました。
まず、企業そのものが副業を容認するようになったこと。
背景には「終身雇用や経済的な保証をすべて担い続けることは難しい」という現実もあります。
だからこそ、社員には“自分自身で収入やキャリアを広げる力”を期待する企業が増えてきました。
その結果、副業は「本業の妨げ」ではなく、「広い視野と新しい経験・スキルを得る機会」として受け入れられつつあります。
社会全体でも副業のハードルがぐっと下がりました。
クラウドソーシングやオンラインサービスが整い、SNSを通じて自分の活動を発信することも容易になっています。
副業はもはや特別な挑戦ではなく、誰にとっても身近な選択肢になりました。
その背景には大人世代の“副業観”の変化があります。
かつては「副業=独立へのステップ」というイメージが強かったのに対し、今は「収入の複線化」「選択肢を広げる」「自分の可能性を試す」といった、もっとフラットで自然な感覚へと移り変わっています。
副業は「会社を辞めるための準備」ではなく、「自分らしい生き方を形づくる一つの方法」になってきたのです。


③ 象徴的なクライアントさんたちの歩み

副業に関して特に印象的なのは、まだ副業が一般的でなかった頃から、その歩みをコーチングでご一緒してきたクライアントさんたちです。
当時は、副業を始めること自体が今よりずっと“挑戦的”な選択でした。
そうした方々は、自分の興味や強みを活かしながら、会社員としての仕事と並行して活動を積み重ねてきました。
パラレルワークを育ててきた方もいれば、実際に独立を果たした方もいます。
「どちらが正解」ということではなく、自分の生き方や時代の変化に合った道を選び取ってきた姿です。
副業を通じて得たのは、お金だけではありません。
自分の意思で選び、行動してきたという経験そのものが、今のキャリアや生き方に大きな自信を与えているのです。


④ 副業は「自分の力で一歩を選び取る」ための場

年代の若い方たちには少ない価値観だとは思いますが、
副業というと、いまでも「いつか独立するための準備なのでは?」と思われることがあります。
けれど、実際に多くのクライアントさんとご一緒してきた経験から言えるのは──副業は必ずしも独立に結びつける必要はないということです。
こうした取り組みの本質は、収入を増やすことだけではありません。
「自分の意思で選び、動く」という経験そのものが、主体的に生きる力を育てます。
会社の仕事だけでは得られない出会いや視点、責任感に触れることで、ものの見方や行動の選択肢が広がります。
その積み重ねが、自分らしい働き方やキャリアをつくる土台になるのです。
だから副業は、独立を目指す人だけのものではありません。
「自分の力で一歩を選び取る」ための場として、誰にとっても意味のある選択肢なのだと思います。


⑤ まとめ

副業の形やゴールは、ひとりひとりの人生が違うのと同じように人それぞれ違います。
独立を目指す人もいれば、会社員としての仕事と両立しながら副業を続ける人もいる。
どちらが正解ということはなく、大切なのは「自分の意思で選び取る」という姿勢です。
副業を通じて手にするのは、お金やスキルだけではありません。
自分の選択に責任を持ち、自分の人生を主体的に形づくる力です。
それはこれからの時代を生きるうえで、最も確かな土台になるものだと思います。
あなたにとっての副業は──
あなたが選び取った一歩の先に、どんな未来を描いてみたいですか?

Pocket

会社文化と自分らしさ、そのはざまで──バランスを取り戻す小さなヒント

Pocket

会社文化と“自分らしさ”の間で揺れるとき

先日、とあるクライアントさんとのコーチングセッションで、こんな気づきがありました。
それは──**「プロ意識を取り戻すこと」こそが、その方の課題の本質的な解決策につながる**ということです。

その課題とは、会社文化を受け入れきれずに“自分らしさ”との間で揺れる気持ちをどう扱うか、ということでした。

このテーマは、特定の誰かだけに限らず、多くの人に共通するものだと感じています。
大企業の中で働いていると、組織の文化や空気にどうしても影響を受けます。会社の伝統的な価値観や文化、外から見ると独特な暗黙のルール。そうしたものに触れ続けるうちに、「自分はどう働きたいのか」「どんな価値を提供したいのか」という基準が、少しずつ揺らいでしまうことがあるのです。

会社の文化に明確な違和感を感じている方もいれば、
「どこの会社もこんな感じで、ただ自分の価値観とずれているのだろう」と思い込んでしまう方もいるかもしれません。

実はその背景には、転職の経験がある人と、新卒から一社で働き続けている人とで、
“違和感の解像度”が違うという可能性があります。

もちろん、こうした会社の文化に適応していくことは、円滑に仕事を進める上で欠かせないでしょう。
しかし、適応に偏りすぎると、自分のスタイルや考え方を置き去りにしてしまう。
その結果、“プロとしての誇り”や“自分らしさ”が曖昧になり、仕事へのエネルギーも削がれていきます。

今回のセッションでの気づきを通じてあらためて思ったのは、これは決して個人の弱さの問題ではなく、
「個人」と「組織」とのバランスをどう取るかという普遍的なテーマだということです。

会社文化との付き合い方──“適応”と“距離感”

会社という組織には、それぞれ固有の文化があります。
それは理念や制度といった目に見えるものだけでなく、日々の会話の雰囲気や、当たり前とされている働き方のリズム、そして「ここではこうするものだ」という無言の圧力まで含まれます。

文化にうまく適応することは、円滑に仕事を進めるうえで欠かせません。新しい環境に入ったときほど、まずは周囲の空気に合わせることが重要です。そこから信頼関係が生まれ、任される仕事も広がっていくからです。

一方で、適応に偏りすぎてしまうと、次第に「自分は何を大事にしたいのか」が見えなくなっていきます。会社の文化に完全に飲み込まれると、思考や判断の基準が自分の外側にあることになり、やがて疲れや違和感につながってしまいます。

一概に正解があるわけではないと思いますが、ビジネスコーチとして様々な組織の方々を支援してきた経験から言うと、
大切なポイントのひとつは、“どこまで適応するか、どこからは自分を守るか”を意識的に決めることだと感じています。

つまり、会社文化との関係は「ゼロいち」ではなく、“適応”と“距離感”のバランスを取り続けることが、プロとしての健全さを保つカギなのです。

プロとしての姿勢を取り戻すためにできること

プロ意識を揺らさないためには、まず「自分はどうありたいか」をあらためて確認することが欠かせません。
会社の文化や環境は変えられなくても、自分の立ち位置や姿勢は自分で選び直すことができます。

その際に、「違和感の感受性」には人によって差があることを心に留めておくことも大切です。

たとえば、転職経験がある人は、別の文化を知っているからこそ今の環境に違和感を覚えやすい。
一方で、新卒から一社に勤めている人は「どこの会社もこんなものだろう」と思い込みやすく、
本当はうまく言葉にできないだけで会社とのズレを感じていても、比較対象がないために「自分だけがズレている」と思い込み、苦しんでしまうケースがあります。

この点も踏まえると、これまで様々な立場のビジネスパーソンをコーチングしてきた経験から、
次のような取り組みが効果的であることが多いと感じます。

• 自分の強みを棚卸しする

「努力せずに自然と評価されていること」を書き出してみる。
それは、プロとしての価値を支えている“素の力”です。

• 外の世界に触れる機会を増やす

社外の勉強会や副業のチャレンジ、異業種の人との会話。
会社の内と外、両方の視点を持つことで、バランスが整います。

• 評価の軸を自分に取り戻す

周囲の期待や組織の基準だけでなく、「私はどういう仕事を誇りに思うか」という視点で日々を見直してみる。

こうした「自分の基準をどこに置くか」を少しずつ確かめていくことが、プロ意識を整えていく大切なプロセスになります。

プロ意識を支える“小さなルール”

プロ意識を取り戻すといっても、大きな変化を起こす必要はなく
むしろ日常の中で、ささやかな「小さなルール」を持つことが、自分を支える大きな力になります。

• 仕事の区切りを意識する

たとえば、始業と終業の時間を自分で決める。メールを送る時間を区切る。
こうした小さな線引きが「ここからは仕事」「ここからは自分」という切り替えを助けます。

• 一日の成果を短く言葉にする

「今日はこれをやり切った」と3行程度でまとめる。
仕事に流される感覚を減らし、自分の達成感を確かめられます。

• 感情を外に出す練習をする

モヤっとしたら心の中で飲み込まず、言葉やメモで表現してみる。
それだけで冷静さを取り戻すきっかけになります。

こうした小さなルールは、実際にやってみると思いのほか気持ちよく感じるものです。
おそらく自己承認ができるからでしょう。
そして、それが積み重なると、会社の文化に流されすぎず、かといって突き放すこともなく、バランスを保ちながら働くことができるようになります。

プロとしての姿勢は、一度決めたら揺るがないものではありません。
日常に置いた“小さなルール”が、揺らぎを整える支えとなり、自然と自分らしい働き方へと導いてくれるのです。

まとめ:流されず、自分を守る働き方

会社文化との違和感に苦しむとき、どう自分を守り、働き方のバランスを整えるか──今回の記事でお伝えしてきたのは、この問いへのヒントです。
どのように自分を守り、働き方のバランスを整えていけるのかについて考えてきました。

• 企業には伝統的な価値観や文化、独特な暗黙のルールがあり、それに触れ続けるうちに自分の基準が揺らぐことがある。

• 文化に適応することは必要だけれど、「ゼロいち」ではなくバランスを取ることが大切。

• そして、そのバランスを取る方法のひとつが、プロとしての姿勢を取り戻すことです。

• 具体的には、「自分はどうありたいか」を確認し、誇れる基準を自分で選ぶこと。

• 日常に“小さなルール”を置くことで、自然とバランスを取り戻せる。

プロ意識とは、特別な肩書きや完璧な成果のことではなく、
むしろ、日々の中で「自分の基準をどこに置くか」を選び直し続ける姿勢そのものではないでしょうか?

会社の文化にただ流されるのでもなく、突き放すのでもなく。
自分らしいプロ意識を持ちながら働くことが、結果的に心地よいパフォーマンスや周囲からの信頼につながっていくはずです。

では、あなたにとっての「基準」は、今どこにあり、これからどこに置いていきたいでしょうか。

Pocket

あなたが強みを知ると、問いかけられる──リーダーの“聴く”は、そこから始まる

Pocket

1. はじめに──「どう思う?」と言えなかった頃の自分へ

管理職やリーダー的な立場を担っている方の中には、
部下やメンバーとの接し方に、漠然とした課題を感じている人が少なくありません。
「もっと自分から動いてくれたらいいのに」
「任せたいけれど、結局自分が動いたほうが早い」
そんな思いを抱えながら、日々のマネジメントをしている方は多いのではないでしょうか。

コーチングの現場でも、「どう伝えるか」「どう関わるか」といったご相談はよくあります。
その背景には、「相手を信じて任せることが難しい」という感覚が、
ご本人も気づかないうちに隠れていることがあります。

先日のあるクライアントさんとのセッションでも、まさにそうしたテーマが浮かび上がってきました。

そのクライアントさんは、ITエンジニア。
複数の業務委託メンバーをまとめるリーダー的な立場にあり、
構造を整理し、優先順位を見極め、ゴールまでの道筋を描くことを、日々ごく自然に行っていました。

ところがご本人は、それを「自分の強み」としては捉えていませんでした。
むしろ、「なぜ他の人はこれがわからないんだろう?」と感じることが多く、
「自分が動かないとプロジェクトが止まってしまう」というプレッシャーを、
一人で抱えていたそうです。

セッションの中で、その思考や行動の特徴を一緒に棚卸ししていくと、
それが特性であり、他の人にはない価値ある強みであることに、少しずつ気づかれていきました。

「自分にとって当たり前すぎて、気づいていませんでした」

そうおっしゃったとき、表情が少し和らいだのが印象的でした。

その気づきをきっかけに、心に少し余裕が生まれ、
「全部自分が決めなくてもいいのかもしれない」という感覚が芽生えていったそうです。
そしてこんな言葉が出てきました。

「だから『どう思う?』って言えばよかったんですね。
 それだけで、チームって動き出すんですね」

このnoteでは、このクライアントさんの変化をもとに、
「問いかけるリーダーシップ」と「自己理解」の関係について、整理してみたいと思います。

部下を尊重することと、自分の強みを活かすことは、実はつながっている。
その実感を、ひとつのプロセスとして言葉にしていきます。

2. 問いかけられるリーダーになる第一歩は、自分の強みを知ること

「どう思う?」と部下やメンバーに言ってみる。
その一言が、チームの空気を変えるきっかけになることは少なくありません。

けれど実際には、それを言うことが難しいと感じているリーダーも多いようです。

その背景には、リーダー自身の心理的な余裕のなさが関係していることがあります。
「自分が判断しなければならない」
「リーダーが迷ってはいけない」
そんな思い込みがあると、相手に委ねるよりも先に自分で答えを出してしまうのです。

先ほどのクライアントさんも、まさにその状態でした。
しかし、自分の強みに気づいたことで、そこに変化が生まれました。

彼の強みは、「物事を素早く整理し、ゴールまでの道筋を描けること」
それはプロジェクトを前に進めるうえで大きな力ですが、
本人にとってはあまりにも当たり前すぎて、強みとして捉えられていませんでした。

その力が他の人には簡単にできることではないと理解したとき、
「なぜ他の人はわからないのか」という苛立ちはやわらぎ、
「だから自分はこういう役割を担っているのだ」という納得感に変わっていきました。

自分の強みを客観的に理解すると、自然と心に余裕が生まれます。
「全部自分で背負わなくてもいい」
「自分はここを担えるから、他の部分は任せればいい」
そんなふうに、力の抜きどころを見つけられるようになるのです。

そしてその余裕が、「どう思う?」と言ってみようという気持ちを支えてくれます。
最初はぎこちなくても、それが自然に出るようになっていく。

つまり、問いかけられるリーダーになる第一歩は、テクニックを磨くことではなく、
自分の強みを知り、それを受け入れることなのです。

3. 「どう思う?」が生まれるチームの土壌とは

「どう思う?」という問いをチームに投げかけることは、
単に意見を求めるだけでなく、信頼を示す行動でもあります。

ですが、それが自然に出てくるには、ある程度の“土壌”が必要です。
心理的な余裕、自分の強みへの理解、そして何より、
相手の中にも答えがあるはずだと信じられる感覚がそのベースになります。

先ほどのクライアントさんも、自分の特性を理解し、
それを強みとして認識できるようになったことで、
「全部自分が決めなくてもいいのかもしれない」と少しずつ感じ始めていました。

これまでさまざまなリーダーの支援をしてきた中で、
「問いかけよう」と意識が変わったこと自体が、関係性の変化のきっかけになっていく場面を何度も見てきました。

たとえば、問いかけを習慣にしはじめたリーダーのチームでは、
メンバーからこんな言葉が返ってくることが多くあります。

「なんか最近、相談しやすくなりました」
「考えたことをちゃんと聞いてくれる感じがします」

リーダーがすべてを決めるのではなく、
「あなたはどう思う?」と対話を始めることが、
チーム全体の心理的な安全性や、自律的な関わりに影響していくのです。

「問いかける」という行動は、単なる言葉のやりとりではありません。
返ってきた言葉にきちんと反応し、
相手の考えに耳を傾け、場に残していくこと。
そうした一つひとつのやりとりが、信頼の土壌をつくっていきます。

そして、そうした空気は「メンバーを尊重しよう」と頑張ってつくるものではなく、
リーダー自身が無理のない状態で問いかけられるようになることで、少しずつ育っていくのだと思います。

4. 強みを活かせると、尊重も自然にできる

「どう思う?」と問いかけることが、部下への尊重につながる──
そう理解していても、いざ実践しようとすると、うまくいかないことがあります。

その背景には、「尊重しなければ」と気負ってしまう気持ちや、
「相手の意見をちゃんと受け止めないといけない」というプレッシャーが潜んでいることもあります。

実は、こうした状態のときにこそ、必要なのは“自分の強みの理解”です。

自分の強みを客観的に理解できるようになると、
その強みを「どう発揮するか」に意識が向いていきます。
そこには無理のない納得感があり、自然な安定感が生まれてきます。

たとえば、「整理して道筋を描く力」が強みであれば、
その役割を自覚することで「自分が全部をやらなければ」という思い込みから解放されていきます。

さらに、自分の強みを尊重できるようになると、
相手の強みにも目が向くようになっていきます。
「この人にはこの人の見え方や得意があるのかもしれない」と、
視野が広がっていくのです。

このような内面的な変化が起きることで、
「どう思う?」と問いかける余裕や土台が育っていきます。

問いかけとは、単なる“聞き方”の問題ではなく、
リーダー自身の立ち位置や心の状態によって、自然に生まれてくるものです。

だからこそ、問いかけを実践するために必要なのは、
「言い方を工夫すること」よりも、まずは自分の強みを理解し、活かすこと
そのプロセスを経て、尊重も、問いかけも、無理なくできるようになっていくのだと思います。

5. 自分を知ることが、問いかけのはじまりになる

リーダーとして、部下やメンバーにどう関わればいいのか。
答えのない問いに向き合いながら、日々奮闘されている方は多いと思います。

今回紹介したクライアントさんのように、
「自分が動いたほうが早い」
「なぜみんなわからないんだろう」
という感覚を抱えながらも、誠実にチームと向き合っている方こそ、
きっと問いかけの力を必要としているのではないでしょうか。

ただ、「問いかけよう」と意識するだけでは、なかなか続かないものです。
言葉の選び方やタイミングに悩んでしまったり、
相手の反応が薄くて、不安になることもあるかもしれません。

だからこそ、**問いかけの一歩手前にある「自己理解」**が大切なのだと思います。

自分の強みに気づくと、そこに安心感が生まれます。
その安心感が、自分をゆるめてくれて、相手にもスペースを与えられるようになる。
そして自然と、「どう思う?」という言葉が口に出せるようになっていくのです。

問いかけは、テクニックではなく“あり方”から始まる。
それが、今回のセッションを通してあらためて感じたことでした。

ここまで読んでくださったあなたに、
最後にこんな問いを残したいと思います。

あなたがふだん、つい自然にやってしまうことの中で、
周りの人に想像以上に喜んでもらえることが多いのは、どんなことですか?

それが「自分にとっては当たり前すぎて、気づいていなかったあなたの強み」かもしれません。

自分自身への問いかけが、チームへの問いかけを育てていきます。
それが、リーダーとしての信頼をつくる一歩になると信じています。

Pocket

不安も焦りも“味方”に変える──若手営業が安定して成長するためのヒント

Pocket

はじめに

営業の仕事をしていると、心が揺れる瞬間はどうしても出てきます。
調子がいいときは「自分はやれる」と思えるのに、ちょっとした失敗や成果の停滞で一気に不安に引き込まれてしまう。
「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「またやってしまった」と、頭の中で反省や自己否定がぐるぐる回り続ける。

先日のセッションでも、あるクライアントさんがまさに同じような悩みを口にしていました。
「考えすぎてしまい、自分のネガティブな面ばかりに目が行ってしまう」と。
このテーマは、多くの若手営業職にとって共通する課題だと感じています。

そんな時、「もっとポジティブに考えなきゃ」「ネガティブをなくさなきゃ」と力んでしまうほど、逆にしんどくなる経験はありませんか?

ネガティブな感情や「嫌いな自分」を完全に消す必要はありません。
むしろ、それを受け入れて扱い方を工夫したほうが、感情の波に振り回されにくくなります。

この記事では、
• ネガティブを「消す」のではなく「受け入れる」こと
• 「嫌いな自分」も含めて自己受容すること
• 考えすぎにハマる前に、行動で切り替える「置き換え行動」を持つこと

この3つを軸に、営業の現場で気持ちを安定させるヒントをお伝えします。

1. ネガティブを消すのではなく「受け入れる」

ネガティブな感情が生まれること自体は、決して悪いことではありません。
不安や焦り、自己否定の気持ちは、誰にでも自然に湧いてくるものです。営業という仕事は成果が数値で明確に表れるため、特にその波を強く感じやすい職種だと言えるでしょう。

問題は、ネガティブな感情が「あること」ではなく、それにとらわれすぎてしまうことです。
ネガティブな感情には本来“役割”があり、不安は「準備不足のサイン」、焦りは「計画を見直すタイミング」を示してくれている場合もあります。

「こんな気持ちは持ってはいけない」と押し込めようとすると、かえって意識がそこに集中してしまい、気持ちが重くなってしまう。

ここで大事なのは、ネガティブを“消そうとしない”ことです。
むしろ「今、自分はこう感じている」と認めてしまうことで、その感情に振り回される時間はぐっと短くなります。

たとえば、あるクライアントさんは「イライラを隠そう」とすればするほど、表情や声のトーンにぎこちなさが出てしまうと話していました。
そこで「まずは湧いてきた感情を受け止める」ことを意識すると、不思議と周りに与える影響も和らいだそうです。

つまり、「今、自分は不安を感じているな」「ぼくは今、焦っているな」と気づけること自体がメタ認知です。
この一歩があるだけで、感情に流されるのではなく「扱える対象」として見つめ直せるようになります。

ネガティブはなくす対象ではなく、受け入れた上で「どう扱うか」を工夫する対象。
そう捉えるだけで、心のエネルギーの使い方が大きく変わっていきます。

👉 ネガティブを受け入れられるようになると、次に向き合うのは「嫌いな自分」です。
成果やコミュニケーションの失敗でつまずいたとき、その自分をどう扱うかが安定感を大きく左右します。

2. 「嫌いな自分」も含めて自己受容する

「もっとできるはずなのに」「また同じミスをしてしまった」──。
営業という仕事は成果が目に見える分、自己評価も上下しやすくなります。
調子がいいときは自信を持てても、少し失敗すると「自分はダメだ」と嫌いな自分に目が向きやすい。

多くの人は、「好きな自分」だけを受け入れようとしがちです。
しかし、それでは気分や成果の波に強く左右されてしまいます。
本当に安定して力を発揮できるようになるためには、「嫌いな自分」も含めて受け入れることが欠かせません。

あるクライアントさんは、「目標の数字に届かなかった」「お客様とのコミュニケーションでうまく言葉が出てこなかった」と、自分を責めてしまうことがよくありました。
そこで取り組んだのは、「そんな自分も自分の一部だ」と認めること。
完璧に数字を達成できる日ばかりではなく、会話が空回りしてしまう瞬間も含めて“自分全体”だと見つめ直すことです。

つまり、「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」「ぼくは今、会話がうまく運ばなかったな」と気づき、その状態を否定せずに受け止める。
例えば、そのまんま
「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」とか
「今日の商談、ぼくの会話うまく運ばなかったな」
こうした独り言を声に出してみるだけでも、自己受容が一歩前に進みます。

嫌いな自分を排除するのではなく、あえて抱きしめてみる。
その積み重ねが、結果として「波の少ない営業スタイル」を形づくっていきます。

👉 ネガティブも、嫌いな自分も受け入れられたとしても、気を抜くと頭の中で同じ考えがぐるぐる回ってしまいます。
そこで次に大切なのが、“考えすぎを断ち切る工夫”です。

3. 考えすぎる前に“置き換え行動”を用意する

ネガティブな感情や嫌いな自分を受け入れたとしても、頭の中で考えがぐるぐると回り続けることがあります。
「なぜ失敗したんだろう」「次もうまくいかなかったらどうしよう」──。
考えすぎは、エネルギーを奪うだけでなく、行動を止めてしまう大きな要因になります。

ここで役に立つのが、“置き換え行動”です。
過剰な思考に入り込む前に、あらかじめ自分の 「置き換え行動リスト」 を用意しておき、感情や思考を 前に進む行動に切り替えましょう。

例えば、クライアントさんとのセッションではこんな置き換え行動が出てきました。
• 音楽を聴いて気持ちをリセットする
• ランニングや筋トレで身体を動かす
• 海や自然を眺めて気分を切り替える
• 思考を紙に書き出して、その紙を捨てる

ポイントは、すぐに実行できる行動を自分の“ストック”として持っておくことです。
「今、自分は考えすぎに入りそうだな」と気づいた瞬間に、「よし、走ってくるか」「一曲だけ聴こう」と行動に移せるだけで、思考のループを断ち切ることができます。

置き換え行動は、気分を誤魔化すためではありません。
むしろ、「一度気持ちを切り替えてから、改めて現実に向き合う」ための準備です。
考えすぎを止めるだけでなく、その後の営業活動を前向きに続けるためのエネルギー補給になるのです。

同じ考えが頭の中でぐるぐると回り始めたら、それは“置き換え行動”のタイミングです。
その瞬間に、あなたがやりやすい置き換え行動を一つ試してみましょう。

そして日頃から、ちょっとだけ心がけて「置き換え行動のストック」を増やし、リストに書き加えていく。
その積み重ねが、考えすぎに振り回されない営業スタイルを育てていきます。

👉 こうして気持ちを受け入れ、自己受容し、考えすぎを断ち切る準備が整ったら、あとは実際の営業現場でどう使うか。
そこで役立つのが、日常に取り入れやすい小さな工夫です。

4. 営業現場で実践する小さな工夫

ここまでの内容を、実際の営業現場で活かすために整理すると、日常で取り入れられる小さな工夫は3つにまとめられます。

ネガティブを受け入れる

 「今、自分は不安を感じているな」「ぼくは今、焦っているな」と気づけること自体がメタ認知です。
 この一歩があるだけで、感情に流されるのではなく「扱える対象」として見つめ直せるようになります。

嫌いな自分も受け入れる

 「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」とか
 「今日の商談、ぼくの会話うまく運ばなかったな」
 こうした独り言を声に出してみるだけでも、自己受容が一歩前に進みます。

 置き換え行動を実践する

 同じ考えが頭の中でぐるぐると回り始めたら、それは“置き換え行動”のタイミングです。
 その瞬間に、あなたがやりやすい置き換え行動を一つ試してみましょう。

この3つを日常に取り入れるだけで、感情の波に振り回されにくくなり、営業の現場で自然体に近いスタンスを保ちやすくなります。

まとめ

誰にでも、不安や焦りに揺れる瞬間はあります。
「ネガティブをなくそう」と無理をするのではなく、「そんな自分もいる」と認めて一歩ずつ進んでいくこと。
それだけで、日常の景色は少しずつ変わっていきます。

大事なのは、完璧さではなく“続けてみること”。
今日の商談で少しつまずいたとしても、明日また自然体でお客様と向き合えばいい。
その積み重ねが、あなた自身の安定した営業スタイルや、次のステージに立つ力になっていきます。

どうか自分を責めすぎず、時には受け入れ、時には切り替えながら。
そのプロセスこそが、成長の証なのだと思います。

Pocket

PAGE TOP