不安も焦りも“味方”に変える──若手営業が安定して成長するためのヒント

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はじめに

営業の仕事をしていると、心が揺れる瞬間はどうしても出てきます。
調子がいいときは「自分はやれる」と思えるのに、ちょっとした失敗や成果の停滞で一気に不安に引き込まれてしまう。
「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「またやってしまった」と、頭の中で反省や自己否定がぐるぐる回り続ける。

先日のセッションでも、あるクライアントさんがまさに同じような悩みを口にしていました。
「考えすぎてしまい、自分のネガティブな面ばかりに目が行ってしまう」と。
このテーマは、多くの若手営業職にとって共通する課題だと感じています。

そんな時、「もっとポジティブに考えなきゃ」「ネガティブをなくさなきゃ」と力んでしまうほど、逆にしんどくなる経験はありませんか?

ネガティブな感情や「嫌いな自分」を完全に消す必要はありません。
むしろ、それを受け入れて扱い方を工夫したほうが、感情の波に振り回されにくくなります。

この記事では、
• ネガティブを「消す」のではなく「受け入れる」こと
• 「嫌いな自分」も含めて自己受容すること
• 考えすぎにハマる前に、行動で切り替える「置き換え行動」を持つこと

この3つを軸に、営業の現場で気持ちを安定させるヒントをお伝えします。

1. ネガティブを消すのではなく「受け入れる」

ネガティブな感情が生まれること自体は、決して悪いことではありません。
不安や焦り、自己否定の気持ちは、誰にでも自然に湧いてくるものです。営業という仕事は成果が数値で明確に表れるため、特にその波を強く感じやすい職種だと言えるでしょう。

問題は、ネガティブな感情が「あること」ではなく、それにとらわれすぎてしまうことです。
ネガティブな感情には本来“役割”があり、不安は「準備不足のサイン」、焦りは「計画を見直すタイミング」を示してくれている場合もあります。

「こんな気持ちは持ってはいけない」と押し込めようとすると、かえって意識がそこに集中してしまい、気持ちが重くなってしまう。

ここで大事なのは、ネガティブを“消そうとしない”ことです。
むしろ「今、自分はこう感じている」と認めてしまうことで、その感情に振り回される時間はぐっと短くなります。

たとえば、あるクライアントさんは「イライラを隠そう」とすればするほど、表情や声のトーンにぎこちなさが出てしまうと話していました。
そこで「まずは湧いてきた感情を受け止める」ことを意識すると、不思議と周りに与える影響も和らいだそうです。

つまり、「今、自分は不安を感じているな」「ぼくは今、焦っているな」と気づけること自体がメタ認知です。
この一歩があるだけで、感情に流されるのではなく「扱える対象」として見つめ直せるようになります。

ネガティブはなくす対象ではなく、受け入れた上で「どう扱うか」を工夫する対象。
そう捉えるだけで、心のエネルギーの使い方が大きく変わっていきます。

👉 ネガティブを受け入れられるようになると、次に向き合うのは「嫌いな自分」です。
成果やコミュニケーションの失敗でつまずいたとき、その自分をどう扱うかが安定感を大きく左右します。

2. 「嫌いな自分」も含めて自己受容する

「もっとできるはずなのに」「また同じミスをしてしまった」──。
営業という仕事は成果が目に見える分、自己評価も上下しやすくなります。
調子がいいときは自信を持てても、少し失敗すると「自分はダメだ」と嫌いな自分に目が向きやすい。

多くの人は、「好きな自分」だけを受け入れようとしがちです。
しかし、それでは気分や成果の波に強く左右されてしまいます。
本当に安定して力を発揮できるようになるためには、「嫌いな自分」も含めて受け入れることが欠かせません。

あるクライアントさんは、「目標の数字に届かなかった」「お客様とのコミュニケーションでうまく言葉が出てこなかった」と、自分を責めてしまうことがよくありました。
そこで取り組んだのは、「そんな自分も自分の一部だ」と認めること。
完璧に数字を達成できる日ばかりではなく、会話が空回りしてしまう瞬間も含めて“自分全体”だと見つめ直すことです。

つまり、「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」「ぼくは今、会話がうまく運ばなかったな」と気づき、その状態を否定せずに受け止める。
例えば、そのまんま
「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」とか
「今日の商談、ぼくの会話うまく運ばなかったな」
こうした独り言を声に出してみるだけでも、自己受容が一歩前に進みます。

嫌いな自分を排除するのではなく、あえて抱きしめてみる。
その積み重ねが、結果として「波の少ない営業スタイル」を形づくっていきます。

👉 ネガティブも、嫌いな自分も受け入れられたとしても、気を抜くと頭の中で同じ考えがぐるぐる回ってしまいます。
そこで次に大切なのが、“考えすぎを断ち切る工夫”です。

3. 考えすぎる前に“置き換え行動”を用意する

ネガティブな感情や嫌いな自分を受け入れたとしても、頭の中で考えがぐるぐると回り続けることがあります。
「なぜ失敗したんだろう」「次もうまくいかなかったらどうしよう」──。
考えすぎは、エネルギーを奪うだけでなく、行動を止めてしまう大きな要因になります。

ここで役に立つのが、“置き換え行動”です。
過剰な思考に入り込む前に、あらかじめ自分の 「置き換え行動リスト」 を用意しておき、感情や思考を 前に進む行動に切り替えましょう。

例えば、クライアントさんとのセッションではこんな置き換え行動が出てきました。
• 音楽を聴いて気持ちをリセットする
• ランニングや筋トレで身体を動かす
• 海や自然を眺めて気分を切り替える
• 思考を紙に書き出して、その紙を捨てる

ポイントは、すぐに実行できる行動を自分の“ストック”として持っておくことです。
「今、自分は考えすぎに入りそうだな」と気づいた瞬間に、「よし、走ってくるか」「一曲だけ聴こう」と行動に移せるだけで、思考のループを断ち切ることができます。

置き換え行動は、気分を誤魔化すためではありません。
むしろ、「一度気持ちを切り替えてから、改めて現実に向き合う」ための準備です。
考えすぎを止めるだけでなく、その後の営業活動を前向きに続けるためのエネルギー補給になるのです。

同じ考えが頭の中でぐるぐると回り始めたら、それは“置き換え行動”のタイミングです。
その瞬間に、あなたがやりやすい置き換え行動を一つ試してみましょう。

そして日頃から、ちょっとだけ心がけて「置き換え行動のストック」を増やし、リストに書き加えていく。
その積み重ねが、考えすぎに振り回されない営業スタイルを育てていきます。

👉 こうして気持ちを受け入れ、自己受容し、考えすぎを断ち切る準備が整ったら、あとは実際の営業現場でどう使うか。
そこで役立つのが、日常に取り入れやすい小さな工夫です。

4. 営業現場で実践する小さな工夫

ここまでの内容を、実際の営業現場で活かすために整理すると、日常で取り入れられる小さな工夫は3つにまとめられます。

ネガティブを受け入れる

 「今、自分は不安を感じているな」「ぼくは今、焦っているな」と気づけること自体がメタ認知です。
 この一歩があるだけで、感情に流されるのではなく「扱える対象」として見つめ直せるようになります。

嫌いな自分も受け入れる

 「今、自分は数字を達成できなかったと感じているな」とか
 「今日の商談、ぼくの会話うまく運ばなかったな」
 こうした独り言を声に出してみるだけでも、自己受容が一歩前に進みます。

 置き換え行動を実践する

 同じ考えが頭の中でぐるぐると回り始めたら、それは“置き換え行動”のタイミングです。
 その瞬間に、あなたがやりやすい置き換え行動を一つ試してみましょう。

この3つを日常に取り入れるだけで、感情の波に振り回されにくくなり、営業の現場で自然体に近いスタンスを保ちやすくなります。

まとめ

誰にでも、不安や焦りに揺れる瞬間はあります。
「ネガティブをなくそう」と無理をするのではなく、「そんな自分もいる」と認めて一歩ずつ進んでいくこと。
それだけで、日常の景色は少しずつ変わっていきます。

大事なのは、完璧さではなく“続けてみること”。
今日の商談で少しつまずいたとしても、明日また自然体でお客様と向き合えばいい。
その積み重ねが、あなた自身の安定した営業スタイルや、次のステージに立つ力になっていきます。

どうか自分を責めすぎず、時には受け入れ、時には切り替えながら。
そのプロセスこそが、成長の証なのだと思います。

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