“伝えてないのに伝わってる”──チームの空気を変えるリーダーのふるまい

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① はじめに

現場リーダーとして、「もっと主体的に動いてほしい」と感じる場面は少なくないと思います。

こちらが指示を出す前に動いてくれるのが理想。
でも、現実にはそうならず、結局は痺れを切らして指示を出す──
それでも、思ったような動きにはならない。
そんなジレンマを抱えたことはないでしょうか。

今回のコーチングセッションでは、
まさにその「メンバーがなかなか自律的に動いてくれない」という課題がテーマでした。

対話を深める中で見えてきたのは、
チームリーダー自身が抱いていた“ある感情”──
「この人にはもう言っても無駄かもしれない」
「最終的には強制的にでも動かさなきゃいけない」
といった、あきらめや苛立ちのようなもの。

そしてそれが、言葉にしなくても、
表情や態度、雰囲気といった非言語情報を通じて
メンバーに伝わってしまっている可能性があるのでは?と、感じたのでした。

このブログでは、こうした“言葉にならない影響”と、
メンバーの行動原理に目を向けながら、
現場リーダーとしてどんなふるまいや関わり方ができるかを一緒に考えていきたいと思います。

② チームの空気は“言葉にならない情報”でつくられている

「ちゃんと伝えたはずなのに、なぜか空気が重くなる」
「注意したわけでもないのに、相手がよそよそしくなる」
──そんな経験はないでしょうか。

人は言葉だけで相手とやりとりしているわけではありません。
表情、声のトーン、姿勢、タイミング、ちょっとした間(ま)──
こうした“言葉にならない情報”が、思っている以上に周囲に影響を与えています。

実際、現場でよくあるのが──
「自分が動いた方が早い」「何度言ってもできない」
そんな気持ちが、ふとした表情や態度ににじみ出てしまう場面です。

もちろん、声を荒げているわけでも、厳しく詰めているわけでもありません。
それでも、メンバーはどこかで察知してしまう。
「あ、自分は期待されていないのかもしれない」
「また怒られるんじゃないか」──そんな空気を、無意識に感じ取ってしまう。

これは、リーダーの“人としてのクセ”が悪いわけではありません。
むしろ自然な反応です。
でも、この非言語の影響に気づけるかどうかが、
チームの空気を少しずつ変えていく第一歩になるのだと思います。

③ 人は“正しさ”では動かない──行動原理を読むという視点

メンバーに対して「ちゃんと伝えたのに、なぜ動いてくれないんだろう」と感じるとき、
つい「言い方が悪かったのかな」「もう少しハッキリ言うべきだったかな」と
“伝え方”の技術に目が向きがちです。

もちろん、言い方の工夫は大切です。
でも、それだけでは動かないこともある。
それは、相手の“行動原理”とズレてしまっているからかもしれません。

人は、理屈ではなく「自分にとって意味がある」と感じたときに動きます。
たとえば、「このままだとあとで困るかもしれない」という未来の予測や、
「これは自分の役割だ」と感じる納得感。
あるいは、「あの人に頼まれたから応えたい」といった信頼のつながり。

今回のセッションでは、あるメンバーに対して
「これをやっておいた方が、あとで自分が楽になると思うよ」という伝え方を試してみる、
というアイディアが出ました。
これはまさに、“未来を想像する力”を使って行動を促すアプローチです。

ポイントは、“自分の正しさ”ではなく、“相手の行動原理”に合わせること。
指示そのものよりも、「なぜその行動が必要なのか」を、
相手の視点に立って意味づけできるかどうか。

動かないのは“部下のせい”に見えるかもしれませんが、
伝え手の視点を少し変えるだけで、状況が動き出すこともあるのです。

④ “伝えずに伝える”ふるまいを変えてみる

「もっと主体的に動いてほしい」
「指示しなくても気づいて動いてくれるといいんだけど」
──そう感じたとき、まず考えたくなるのは「どう伝えるか」かもしれません。

でも実は、“伝える”より前に
「ふるまいを変える」というアプローチが効くことがあります。

たとえば──
・朝の始まりに「今日はどんな予定?」と軽く声をかけてみる
・説明のとき、図や手順を一緒に見ながら話す
・ミスがあったときも、まず「どう感じてる?」と聞く余白をつくる
・進捗が遅れている相手にも、「前に進もうとしてるのは伝わってるよ」と一言添える

こうしたちょっとしたふるまいには、
「見てるよ」「気にかけてるよ」「信じてるよ」というメッセージが含まれています。
それは、“期待している”という気持ちを、言葉よりもずっと深く伝えてくれるものです。

一方で、
「どうせまた…」
「もう言ってもムダかも」
そんな思いを抱えたままだと、たとえ笑顔で接していても、どこかでその空気がにじみ出てしまう。

こういう状況は、意外と現場ではよくあることです。
だからこそ、ふるまいの根っこにある「自分のスタンス」に目を向けることが大切です。

強く言わなくても、関わり方ひとつでチームの信頼は積み上がっていきます。
まずは「相手を信じている自分でいる」──
その状態から自然に出てくるふるまいこそが、信頼をつくる最初の一歩かもしれません。

⑤ まとめ──チームに影響を与えるのは、言葉の“外側”

チームリーダーとして、メンバーの動きが思わしくないとき、
つい「ちゃんと伝えなきゃ」と思って言葉を重ねてしまう。
でも、実はその前に、すでに“何か”が伝わってしまっていることがある──
今回のテーマは、そんな「言葉の外側」にある影響力についてでした。

人は、言葉だけで動いているわけではありません。
空気を読む、表情を察する、雰囲気を感じる──
そうした非言語の情報が、日々の関わりの中でチームの空気をつくっています。

そして、リーダー自身の「どうせやらないだろう」「また同じだ」というあきらめや苛立ちは、
知らず知らずのうちに態度やふるまいに現れ、
メンバーにも伝わってしまいます。

逆に言えば、
「信じてるよ」「一緒に進もう」というスタンスで関われば、
それもまた言葉以上に伝わっていく。

大事なのは、
“伝え方”のテクニックではなく、
“どんな姿勢で関わっているか”という自分のあり方。

メンバーの行動を変えたいと思ったとき、
相手に言葉を投げる前に、
自分のふるまい・スタンスをほんの少し見直してみる。

それだけで、
チームの空気がふっとやわらかくなることも、実は少なくないのです。

あなたは、今どんなスタンスでメンバーと向き合っていますか?
次に声をかけるとき、あるいはただ隣にいるとき──
“言葉の外側”で伝えているものにも、少し意識を向けてみてください。

きっとそこに、チームが動き出すヒントがあるはずです。

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「No.2」をどう育てるか?──課長の次の仕事はリーダーを育てること

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チームの成績も雰囲気も、まずまず順調。
そんなときこそ、ふと頭をよぎることはありませんか?

「このまま自分が中心で動き続ける状態でいいのか?」
「次のリーダーを育てていく必要があるんじゃないか?」

今回の記事では、実際に営業課長の方とのコーチングセッションを通じて見えてきた、
「No.2育成」のリアルな課題と、育て方の工夫について整理しています。

・なぜNo.2を育てる必要があるのか?
・うまく任せられないときにつまずきやすいポイントは?
・具体的にどんな関わり方をすればいいのか?

そんな疑問を持つ方に、現場感あるヒントをお届けできればうれしいです。

1. 次のリーダーを育てる──営業課長との対話から考えるチームづくり

ぼくのコーチングセッションを継続的に受けていただいている方のひとりに、営業課長を務めている方がいます。
いつもチームメンバー一人ひとりが自分らしさを発揮して活躍できるように、チームのマネジメントに全力で取り組んでいらっしゃる方です。

ある日のセッションでも、メンバーとのコミュニケーションについて話している中で、「No.2をもっと育てたい」という課題が話題に上がりました。

チーム全体としてはまずまず好調。でも、自分が常に中心に立つだけでなく、次のリーダーとなる存在を育てたい──そんな視点を持つことは、課長として次のステージに進むサインでもあります。

今回はそのセッションでの対話をもとに、課長クラスの方が「No.2をどう育てていくか?」について、実際の現場感を交えながら整理していきます。

2. 中心で動くだけでは続かない──チーム成長の次のステージへ

チームが安定してきた今、次に必要なのは「次のリーダー」の育成です。
チーム運営がある程度軌道に乗ってきたタイミングで、「次のリーダーを育てたい」と感じる課長の方は少なくありません。
営業成績もチームの雰囲気も悪くない。でもその一方で、「自分がずっと中心に立ち続ける状態は、この先も続けられるのか?」という問いが生まれてきます。

実際、チームが大きくなればなるほど、課長ひとりで全員を細かく見続けることは難しくなります。
そこで必要になるのが、No.2の存在です。

No.2がいることで──
・課長が見きれない部分まで目を配れる
・メンバー同士で支え合う流れが生まれる
・チーム全体が“自走”できる状態に近づく

つまり、No.2を育てることは、自分自身の負担を減らすためだけではなく、チーム全体の力を最大化するための大切なステップなんです。

特に営業部門のような成果主義の環境では、数字に意識が向きやすく、チーム内でリーダー的な役割を担う人材育成は後回しになりがちです。
だからこそ、意識的に「次のリーダーを育てる」時間を確保していく必要があります。

No.2を育てる必要性は分かった。でも実際には、思うように育たないこともあります。
ここからは、そんなときにつまずきやすいポイントを整理していきます。

3. うまく任せられない時に見直すべき3つの視点

コーチングを通じて多くの管理職の方と対話をしていると、「No.2を育てたい」と考えた時に、いくつか共通するつまずきポイントがあると感じます。

まず一つ目は、
自分がやった方が早い──その気持ちを手放しきれないこと。

目の前の業務や数字が動いている中で、「任せたほうがいい」と頭では分かっていても、つい自分で動いてしまう。
その結果、No.2がリーダーシップを発揮する場面が減ってしまいます。

二つ目は、
任せる範囲や役割があいまいなままになってしまうこと。

「リーダーらしく動いてほしい」と思っていても、No.2自身もまだ“チーム全体を見て動く”という感覚よりも、
「自分が動いたほうが早い」という意識が強く残っていることが多いんです。

そのため、こちらが期待しているほど周りを巻き込む動きが見られなかったり、
チームマネジメントよりも自分の数字を優先しがちになったりする場面も出てきます。

ここは、No.2育成において一番大事なポイントだと感じます。
だからこそ、任せる内容や判断の範囲を具体的に言語化して、No.2自身が「どこまで自分が責任を持つのか」を腹落ちできる状態をつくる必要があります。

そして三つ目は、
「任せた=放置」になってしまうこと。

任せることと、任せきりにすることは別物です。
任せたからこそ、節目節目でフィードバックをしたり、相談しやすい関係を保ったりする必要があります。

これらはどれも、忙しい日常の中ではつい後回しになりがちなポイントです。
だからこそ、意識的に仕組みや関わり方を整えていく必要があります。

4. 実践で使える! 育成を進めるための3つの工夫

ここまで触れてきたポイントをふまえて、「No.2」を育てるための具体的なアプローチを3つに絞って整理します。

① 役割の明確化と任せる範囲の言語化

No.2に対しては、「どこまで自分で判断していいか」を明確に伝えることが大前提です。
たとえば、チーム内の進捗確認や後輩指導の主担当はNo.2に任せる、といった具合に、範囲や権限をはっきりさせること。

あいまいなままだと、結局また自分に仕事が戻ってきます。
さらに、No.2の「自分でやった方が早い」が発揮されてしまい、育成が思うように進まなくなることもあります。

② 定期的な対話とフィードバック

任せっぱなしにならないように、No.2とは定期的に状況を確認する場を持つことが大切です。
特に意識したいのは、数字や業務だけでなく「今どんなふうに感じているか」「何がやりづらいか」といった内面的な部分まで話せる関係をつくること。
面談の場所やタイミングを変えるのも一つの工夫です。

③ チーム全体との関係性づくりを支援する

No.2が本当の意味で“リーダー”として機能するためには、他のメンバーからも頼られる存在になる必要があります。
そのためには、課長自身が「No.2を通す」場面を増やしたり、ナンバー3・4・5といった他のメンバーとの橋渡し役を積極的に任せたりすることも有効です。
No.2が自然と中心に立つ流れをつくること。
それが、結果的にチーム全体の自走力につながります。
この3つを意識して関わることで、「自分だけで何とかする」状態から「チームで自然に回る」状態へと、一歩進めるきっかけになります。

 

多くの場合、まずは自分が中心で動く時期があります。
でも、チームが成長し続けるためには、いつかその状態を手放すタイミングがやってきます。

No.2を育てることは、自分の仕事を減らすことではなく、チームの力を底上げすること。
むしろ、自分よりも優秀なNo.2が育った時こそ、本当の意味でチームが強くなったと言えるのかもしれません。

今回まとめた3つのアプローチは、そのための一つのヒントです。
「自分ひとりで全部やる」のではなく、「チームみんなで自然に回る」状態を目指して。
次のリーダーを育てることも、リーダー自身の大事な役割です。
チームの未来を考えるなら、No.2育成から、ぜひ始めてみてください。

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重責を担う管理職が、自分らしさを取り戻すとき──仕事のストーリーを描き直す3つの問い

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責任ある立場を任され、チームや組織全体を見渡す毎日。
ふと気がつくと、自分自身の気持ちや「わたしらしさ」を後回しにしてしまっている──
そんな感覚を持ったことはありませんか?

この記事では、経営企画部門課長という立場を例に、
重責を担う管理職が、自分らしさを取り戻すためのヒントをまとめました。

忙しい日々の中でも立ち止まり、自分自身を見つめ直すための「3つの問い」をご紹介します。
よかったら、今のあなた自身と重ねながら読み進めてみてください。

① はじめに

経営企画部門の課長として、日々多くの判断や調整を任される。
それは、信頼されている証でもあり、組織を支える大切な役割です。

けれど──
「このままでいいんだろうか」
「自分の気持ちは、どこに置いてきたんだろう」

ふとそんな風に立ち止まる瞬間もあるのではないでしょうか。
家族やチーム、組織のことを優先し続ける中で、
自分らしさがどこかに行ってしまった気がする。

そんな時こそ、一度立ち止まって
「わたし自身のストーリー」を描き直す時間を持ってみませんか。

今日は、とある経営企画部門の管理職の方とのコーチングセッションをきっかけに
重責を担いながら自分らしく働くことについて考えてみたいと思います。

自分らしさを忘れずに働き続けるためのヒント。ぜひ最後までお読みください。

② 「課長」という役割に押しつぶされそうになる瞬間

経営企画部門の課長という立場は、現場の状況を見渡し、
組織全体の流れをつくるポジションでもあります。

自分ひとりの判断が、部署や会社全体に影響する──
そんな責任の重さが、いつの間にか心に積み重なっているかもしれません。

さらに、家族やプライベートの時間も大切にしたい。
でも、すべてを完璧にこなそうとすればするほど、
「時間が足りない」「もっとできるはずなのに」と
自分自身を責める気持ちが強くなってしまうこともあります。

気がつけば、
「わたしは何のためにこの仕事をしているんだろう」
そんな問いさえ後回しになり、
ただ目の前のタスクをこなすだけの日々になってしまう──。

役割が大きくなればなるほど、
そんなふうに自分自身を見失いそうになる瞬間は、誰にでもあるものです。

まずはその事実に静かに気づき、
一度立ち止まること。
それもまた、大切なひとつの選択なのかもしれません。

③ 仕事は“タスク”ではなく“ストーリー”

経営企画部門の課長という役割を担っていると、
日々やるべきことは山のようにあります。
会議、資料作成、調整業務、チームマネジメント…。

気づけば、それら一つひとつが「ただのタスク」に見えてしまう。
そんな状態に陥ることもあるかもしれません。

けれど本来、仕事は単なるタスクの積み重ねではなく、
あなた自身の“ストーリー”の一部でもあります。

「このプロジェクトは、誰のために役立つものなのか?」
「この提案書は、どんな未来につながっていくのか?」
そんなふうに一歩引いて全体を見渡すと、
自分が今やっていることの意味や価値が、少しずつ輪郭を取り戻してきます。

これは、“英雄の旅”とも呼ばれる『ヒーローズジャーニー』という考え方にも通じます。
物語や神話に共通する流れをまとめたもので、
主人公がある日、普段の世界から一歩踏み出し、
さまざまな試練や学びを経て成長し、また元の場所に戻ってくる──
そんな循環のことを指します。

どんな物語にも、挑戦や試練があり、
それを越えた先に成長や新しい視点があります。

日々の忙しさに埋もれてしまいそうなときこそ、
「いま、自分はどんなストーリーのどの場面にいるんだろう?」
そんな問いを、そっと自分自身に投げかけてみてください。

タスクをこなすだけの日々から、
一歩先の視点を持つことができるはずです。

④ 「自分らしさ」を取り戻すための3つの問い

忙しさや責任感に押される日々の中でも、
自分らしさを見失わずに働き続けるためには、
ときどき自分自身と向き合う時間が必要です。

とはいえ、いきなり「自分らしさとは?」と考えるのは難しいもの。
そこで、日々の中で立ち止まったときに役立つ
3つの問いをお届けします。

1. いま、自分はどんなストーリーのどの場面にいるのか?

──「挑戦の真っ只中」かもしれないし、
「少し休む時期」かもしれません。
まずはその場所を静かに確認することから。

2. この経験を通じて、誰に何を伝えたいのか?

──仕事は、自分一人のものではありません。
後輩や部下、家族、あるいは未来の自分へ。
この経験を通じて伝えたいことを考えてみると、
今やっていることの意味がまた少し変わって見えるはずです。

3. 自分の強みは、どの場面で一番活かせるのか?

──強みは「いつも同じ形で発揮するもの」ではありません。
状況に応じて形を変えながら活かしていくもの。
だからこそ、自分の強みと仕事の場面をすり合わせる視点を持つことが大切です。

この3つの問いは、特別な時間を取らなくても大丈夫。
朝の通勤時間や、ふと一息ついたとき。
そんなちょっとした瞬間に、自分自身に問いかけてみてください。

小さな習慣の積み重ねが、
「わたし自身のストーリー」を描き直す力になります。

⑤ おわりに

経営企画部門の課長という立場は、
チームや組織を支える重要な役割である一方で、
ときに「わたし自身」を置き去りにしてしまうこともあります。

けれど、役割や立場が変わったとしても、
あなた自身のストーリーは、ずっと続いています。

誰かの期待に応えることも大切。
組織を守ることももちろん大切。
でも、その中に「自分自身の想い」をそっと置いておけるかどうか。

それが、責任ある立場を長く続けていくための、
静かでしなやかな土台になるのだと思います。

今回お伝えした3つの問いを、ぜひ日々の中で思い出してみてください。
立場や状況がどんなに変わっても、
「わたし自身のストーリー」を描き続けていけるように。

あなたのストーリーが、これからもあなたらしく続いていくことを願っています。

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『人が足りない』は本質じゃない??──とあるセッションで感じた、“感情を扱う”という視点

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「人が足りないんです」

そんな言葉を、現場を預かる立場の方から聞くことは少なくありません。

たしかに、採用が難しい。育成にも時間がかかる。

仕組みや制度を見直しても、思うように動かない──

そんな歯がゆさを感じている方も多いのではないでしょうか。

今回のブログは、ある取締役とのコーチングセッションをきっかけに書いたものです。

その方の現場で起きていたのも、「人が足りない」ことで見えてきた業務の停滞でした。

でも、対話を通じてあらためて浮かび上がってきたのは、

仕組みや制度の話だけではなく、

“関係性の中にある小さな感情”が、チームや業務の流れを左右しているという事実でした。

「うまくいかない理由」に、もう少しだけ丁寧に目を向けてみる。

そんな視点のヒントになれば嬉しいです。

① 背景にある問い:「人が足りない」のか、本当に?

先日、とある企業の取締役の方とのコーチングセッションを行いました。

バックオフィス全体を統括されている方で、実務にも現場にも深く関わっておられます。

その日のテーマは、経理業務が思うように進まず、全体の流れに遅れが出ているというものでした。

人が足りないのかもしれない。

経験者を採用しても定着せず、派遣で補っても引き継ぎに時間がかかる。

今いるメンバーには限界が見えはじめている──

そんな現場の実感が、静かな語り口の中ににじんでいました。

話は自然と、人材の配置や教育プロセス、新しいシステムの導入といった「実務上の打ち手」に流れていきます。

けれど、そのやり取りの中で、ぼくの中にはある問いが浮かび上がってきました。

仕組みや制度だけじゃなくて、

人と人との関わり方にも、業務をスムーズにするヒントがあるんじゃないか。

関係性が止めていた:仕組みだけでは動かない理由

セッションでは、業務の流れをどう整えるか、人の配置をどう見直すか、具体的な話題が次々と出てきました。

チームや業務が滞っているとき、多くの組織では「仕組み」「制度」「スキル」の話をします。

もちろん、それらはとても大事な要素です。

でも、多くの企業をコーチングを通じて支援してきた中で、

実際には「仕組み」「制度」「スキル」の改善をしてもうまくいかない場面をたくさん見てきました。

うまく回らない原因が、“人と人との関係性”の中にあることは、これまで何度も見てきました。

たとえば──

誰に、どう伝えるか。どこまで任せるか。

マネージャーになることを避ける人に、どう声をかけるか。

こうしたテーマは一見、実務の範囲内に見えます。

でもその奥には、ちょっとした気まずさや、失敗への恐れ、責任感の重さといった“感情”の層がある。

それらは会議の議題には上がらないし、表立っては語られない。

でも、そこに少し目を向けるだけで、滞っていたやりとりがスッと動き出すことがある──

これも、コーチングを通じてぼくが何度も実感してきたことの一つです。

今回のセッションは、そのことをあらためて思い出させてくれるような時間でした。

③ 話すより、まず“聴く”:リーダーにできる対話のつくり方

役職が上がるほど、「どう判断するか」「どう決めるか」が求められる場面が増えていきます。

それ自体は当然のことだし、現場が混乱しないようにするための重要な役割でもあります。

でも、状況が複雑だったり、メンバーの思いや関係性が絡むときほど、

「まずは、相談という形で話してみる」という選択肢が、有効な場面もあると感じています。

今回のセッションでも、

「それって、決めるというより、まず“相談ベース”で伝えてみるのはどうでしょう?」

というやり取りが自然と出てきました。

誰かに動いてもらいたいとき、指示や依頼ではなく「聴くこと」から始める。

その余白があるだけで、相手の受け取り方がまったく変わることもあります。

何かを決めてから伝えるのではなく、

まだ決まっていない段階で声をかけてみる。

そうすることで、相手との間に「考える時間」や「すり合わせの余地」が生まれていく。

そんな関わり方が、感情が複雑に絡むような場面では、

実はすごく実務的な“前進のきっかけ”になるんじゃないか──

そんなことを、あらためて感じたセッションでした。

④ おわりに:感情は“チームを動かす力”になる

業務が滞っているとき、つい「仕組みを整えよう」「人を増やそう」といった対策に意識が向きがちです。

でも実際には、その前に「関係性のひっかかり」や「伝え方への迷い」といった、

表に出にくい“感情の層”が、動きを止めていることも少なくありません。

感情といっても、大げさな話ではなくて──

ちょっとした気まずさとか、失敗への恐れとか、「これ以上負担をかけたくないな」という遠慮とか。

そういう小さな気持ちの積み重ねが、チームや業務の流れをじわじわと止めてしまうことがあるんです。

今回のセッションでは、そうした話題が大きく扱われたわけではありません。

むしろ、話題の中心はあくまで実務でした。

でも、その中にふと現れた一言や反応が、ぼく自身にとって大事なヒントになりました。

「感情を扱う」というと、構えてしまう方も多いかもしれません。

でも実はそれは、チームをスムーズに動かすための、ごく実践的なヒントでもあるんだと思います。

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