仕事はうまく回っているのに、違和感がある──管理職が立つ役割の切り替え期

「期待されている」自分に残る、説明しづらい違和感

ぼくはビジネスコーチとして、
これまで多くの方のキャリアや仕事の節目に立ち会ってきました。

今日は、その中でも、
とある企業の経営企画室長をされているクライアントさんとの対話
をきっかけに感じたことを、少し整理してみたいと思います。

あくまで一人の方との対話がきっかけではありますが、
同じような立場にある方には、
どこか重なる感覚があるかもしれません。

彼女との対話からは、
仕事はきちんと回っている。
判断に迷うことはあっても、手が止まることはない。
成果も一定水準では出せていることが伝わってきます。

むしろ組織の中では、
「安心して任せられる人」
「最後まできちんとやり切る人」
として見られていることの方が多いように見えます。

上層部からの評価も、決して低くありません。

ただ最近、
向けられている視線の質が、
少し変わってきたように感じている、ことも伝わってきます。

「もっと任せたい」というより、
「そろそろ殻を破ってほしい」
「これまでの延長ではない動きを見せてほしい」
──そんな、はっきりとは言葉にされない期待があるようです。

明確な指示があったわけではありません。
何かを求められていると、言葉で伝えられたわけでもありません。

それでも、
「次の段階に進むこと」を前提に見られているような感覚
が、どこかに残っている。

一方で、彼女自身の内側を見てみると、
不安で動けなくなっているわけでも、
自信を失っているわけでもないように感じられます。

やろうと思えば、
今のやり方で仕事は進められる。
迷いを抱えながらでも、
現実的な判断はできてしまう。

ただ、そこにひとつだけ、
うまく言葉にできない引っかかりが残っている。

どう変化していけばいいのか。
どう成長していけばいいのか。

上層部が期待している「殻を破る」という状態が、
自分の中で、まだ具体的なイメージとして結びきっていない。

そのため、
動けないというよりも、
期待の意味が、まだ十分に腑に落ちていない
そんな感覚に近いのかもしれません。

この違和感は、
「能力が足りないから」と単純に言い切れるものでも、
「やる気が下がったから」と片づけられるものでもなさそうです。

むしろ、
これまで誠実に役割を果たし、
周囲の期待に応えてきた人だからこそ、
ふと立ち止まる形で現れる、
とても静かで、説明しづらい感覚なのだと、
ぼくは感じています。

第1章|迷っているのに、仕事はちゃんと進んでしまう

迷っていないわけではありません。
ただ、その迷いは、仕事を止めてしまう種類のものではないようです。

彼女との対話からは、判断が必要な場面では判断できていることが伝わってきます。
会議では論点を整理し、現実的な落としどころを示すこともできる。
難しい調整役も、必要であれば引き受けられる。

だからこそ、日常業務は回っていきます。
多少の違和感を抱えながらでも、仕事は前に進んでしまう。
ここに、この違和感の扱いづらさがあるのかもしれません。

問題は「できない」ことではない

変化できない理由は、
しばしば「準備不足」や「能力不足」として語られます。

ただ、彼女の話を聞いていると、少し違う構図にも見えてきます。

これまで積み上げてきた経験がある。
現場も、組織全体も、どちらも見えている。
実行力も、周囲からの信頼も、すでにある。

少なくとも、「能力が足りないから動けない」と単純に言い切れる感じではありません。

それでも大きく踏み出す感覚がつかみにくいとしたら、
「次にどう変化すればいいのか」という像が、まだ自分の中で結びきっていない。
そんな状態に近いのかもしれません。

自己評価が低いというより、「慎重さ」が前に出ることがある

ご本人は、自分を過小評価しているつもりはないようです。
むしろ、現実を冷静に見ているだけだと感じている。

ただ、その冷静さはときに、
• どこまで踏み込めばいいのか
• どの変化が“やりすぎ”にならないのか

を慎重に見極めようとする姿勢につながっていきます。

その結果として、
大胆な一手よりも、確実に成立する一手を選び続けてきた。
そんな流れがあっても不思議ではありません。

そしてこれは弱さというより、
これまで信頼を積み上げてきた理由でもあるのだと思います。

ただ同時に、
役割が切り替わる局面では、その慎重さがブレーキとして働くこともあります。
(本人の意思というより、習慣や責任感の形で出てくることが多い印象です。)

「止まっている」のではなく、「まだ定義できていない」

この状態を「立ち止まっている」と表現すると、少し違和感が残ります。

実際には止まっていません。
今の役割の中では、きちんと前に進んでいます。

ただ、
• どう変化していけばいいのか
• どんな成長を求められているのか

が、まだ自分の言葉として定義しきれていない。

だから、行動できないというよりも、
変化の方向が、まだ像として結ばれていない
そんな状態に近いのではないでしょうか。

迷いながら進めてしまう人に起きやすいこと

この違和感は、
仕事がうまくいっていないときに出るものとは、少し質が違うように感じます。

むしろ、
• 周囲の期待に応えてきた人
• 組織の中核として機能してきた人
• 「任せれば大丈夫」と言われてきた人

そういう人ほど、静かに抱えやすい。

迷いながらでも進めてしまうからこそ、
どこで引っかかっているのかが、外からは見えにくい。
そして本人も、
「この程度の違和感で立ち止まっていいのだろうか」
と、自分にブレーキをかけてしまうことがあります。

この章のまとめ

第1章で扱っているのは、「停滞」そのものではありません。

役割の切り替えを前にして、
変化の定義が、まだ自分の中に定まりきっていない状態
ぼくには、まずはそう見えています。

次の章では、
なぜ未来は描けているのに、
その未来に向かう“動き方”だけが見えてこないのか。
その構造を、もう一段深く見ていきます。

第2章|未来は描けているのに、変化の仕方だけが見えてこない

不思議なことに、
彼女との対話を通して感じるのは、
未来そのものが見えていないわけではない、という点です。

5年後、組織がどうなっていたらいいか。
どんな状態であれば「うまくいっている」と言えそうか。

その輪郭は、かなり具体的です。

売上や利益といった数字の話だけではありません。
ブランドのあり方。
現場の空気。
そこで働く人たちの表情。

そうしたものを含めた
「こうありたい会社像」は、すでに言葉になっています。

見えていないのは「未来」ではない

それでも、なぜ動きづらさが残るのか。
ここで立ち止まって考えてみると、
少し違う見え方が浮かんできます。

見えていないのは未来そのものではなく、
「そこに向かう自分自身の変化の形」
なのかもしれません。

今の役割の延長で、
何を改善すればいいかは想像できる。
今の立場で、
何を最適化すればいいかも分かっている。

けれど、
• 今の役割を、どこまで越えていいのか
• 自分は、どんな存在へと変わっていく必要があるのか

そのあたりは、まだはっきりとした像になっていない。
そんな状態にも見えます。

「やるべきこと」は分かる。でも、しっくりこない

多くの管理職の方と話していると、
共通して出てくるのが
「やるべきこと」のリストです。

仕組みを整える。
数字を可視化する。
人を育てる。
部門間の連携を強める。

どれも間違いではありません。
実際、どれも必要なことです。

それでも、
「これでいいはずなのに、どこか引っかかる」
そんな感覚が残ることがあります。

それは、
それらが これまでの自分の延長線上にある動き
だからなのかもしれません。

上層部が期待しているのは、
改善の積み重ねそのものではなく、
見方や立ち位置が一段変わること
なのではないか。
そんな可能性も感じられます。

期待が、まだ腑に落ちきらない理由

「殻を破ってほしい」
「次の段階に進んでほしい」

そう言われている“気がする”。
けれど、その中身がはっきりしない。

そのため、
期待に応えられないというよりも、
期待の意味を、まだ自分の中で翻訳しきれていない
そんな状態になることがあります。

これは、理解力が足りないからではなさそうです。

むしろ、
組織の文脈や力学をよく分かっている人ほど、
安易な解釈を避けようとします。

その慎重さが、
「分かったつもりで動く」ことを、
無意識のうちに止めているのかもしれません。

未来像と行動の間にある「役割のズレ」

ここで起きているのは、
意欲と能力のズレ、ではありません。

未来像と、今担っている役割とのズレ
と捉えたほうが近いように思います。

今の役割は、
• 整える
• 回す
• 安定させる

ことを前提に設計されています。

一方で、
彼女が描いている未来は、
• 問いを立てる
• 前提を揺さぶる
• 方向性を示す

ことを必要としている。

このズレがある限り、
「何をすればいいか」は分かっても、
「どう変わればいいか」が見えにくい。
そう感じるのも、自然なことです。

動けないのではなく、「移行期にいる」

だからこれは、
決断力が足りない状態でも、
覚悟が足りない状態でもありません。

役割を移行している途中にいる
と考えるほうが、しっくりきます。

これまでの自分を完全には手放せない。
けれど、そのままでは足りないとも感じている。

その間に立たされたとき、
人は一度、動きがゆっくりになることがあります。

それは失速ではありません。
視点を切り替えるための減速
と捉えることもできそうです。

この章のまとめ

第2章で扱っているのは、
「なぜ動けないのか」という問いではありません。

なぜ、変化の像だけが結びにくいのか
という問いです。

次の章では、
このズレを生み出している背景としての
「役割の慣性」について、
もう少し踏み込んで見ていきます。

第3章|優秀な管理職がハマりやすい「役割の慣性」

ここまで見てきた違和感は、
個人の性格や意志の問題として片づけられるものではなさそうです。

ぼくがクライアントさんとの対話を通して感じるのは、
むしろ多くの場合、
役割そのものが持つ「慣性」 から生まれているのではないか、
という点です。

役割は、成果を出すほど人を固定されていく

管理職として成果を出してきた人には、
いくつか共通する特徴があります。
• 周囲の期待を正確に読み取れる
• 組織の空気を乱さずに前に進められる
• 「今、何をすべきか」を外さない

これらは、簡単に身につく力ではありません。
だからこそ評価され、任されてきたのだと思います。

ただ、その積み重ねの中で、
ひとつ見落とされがちな点があります。

役割は、成果を出せば出すほど、
「うまくいったやり方=正解の型」 を
少しずつ強化していく、ということです。

「うまくやってきたやり方」から、離れにくくなる

これまで評価されてきた行動を振り返ると、
そこには共通点が見えてきます。
• 周囲と合意形成をとる
• 現実的な落としどころを探す
• 波風を立てずに前に進める

どれも、組織を安定させるうえで欠かせない動きです。

ただ、次の段階で求められているのが、
• 前提そのものを問い直すこと
• あえて未整理な問いを差し出すこと
• まだ答えのない方向性を示すこと

だとしたら、
これまでと同じやり方では、
どこか噛み合わなくなってくることがあります。

慣性は、怠慢ではなく「誠実さ」から生まれる

「役割の慣性」という言葉を使うと、
惰性や保身のような印象を持たれるかもしれません。

けれど、実際の対話では、
むしろ逆の印象を受けることが多いです。
• 組織を混乱させたくない
• 周囲の努力を無駄にしたくない
• 軽率な判断をしたくない

そうした 誠実さ があるからこそ、
人は慎重になります。

ですから、ここで起きているのは、
「変われない人」の話ではありません。

変化に対して、きちんと責任を感じている人
に起きやすい現象だと、ぼくは見ています。

役割が変わるとき、いちばん難しいのは「やめ方」

新しい役割に移るとき、
人はつい「何を始めるか」に意識が向きがちです。

けれど実際には、
何をやめるか のほうが難しい場合が多くあります。

たとえば、
• すべてを自分で把握しようとすること
• 正解を出そうとする姿勢
• その場をうまく収める役回り

これらは、
これまで自分を支えてきた大切な武器でもあります。

だからこそ、簡単には手放せません。

ただ、役割が変わる局面では、
それらが 次の役割への入り口を、結果として塞いでしまう
こともあります。

「殻を破る」とは、性格を変えることではない

上層部から語られる
「殻を破ってほしい」という期待は、
大胆になれ、強く主張しろ、という意味ではないことが多いです。

ぼくの経験では、それはむしろ、
• 視点の置きどころを変えること
• 自分が立つ位置を、半歩ずらしてみること
• これまでとは違う問いを引き受けること

を指しているように感じます。

つまりこれは、
性格の問題というより、
役割の置きどころの問題 なのだと思います。

この章のまとめ

第3章で見てきたのは、
なぜ慎重で誠実な人ほど、
次の一歩が見えにくくなることがあるのか、という構造です。

それは、怠慢でも、勇気不足でもありません。

役割に誠実であろうとするほど、
その役割から離れるのが難しくなる。

次の章では、
この慣性を無理に断ち切ろうとするのではなく、
どう扱っていけばいいのか。

「いきなり変わらなくていい」という前提で、
次の進み方を整理していきます。

第4章|それは停滞ではなく、「役割が切り替わり始めている」合図

ここまで読み進めてきて、
「それでも、やはり止まっているように感じる」
そんな感想を持たれた方もいるかもしれません。

仕事は回っている。
評価も大きく落ちてはいない。
未来像も、ある程度は描けている。

それなのに、
次の動きが、どうにもはっきりしない。

この状態を「停滞」と呼んでしまうと、
どうしてもネガティブな印象になります。

けれど、
ぼくが対話の中で感じているのは、
ここで起きているのは「止まっていること」ではなさそうだ
ということです。

見えている世界が、すでに変わり始めている

これまでと決定的に違ってきているのは、
「見えている範囲」そのものです。

以前は、
• どう改善すれば、うまく回るのか
• どこを整えれば、成果が出るのか

といった問いが、自然と立ち上がっていました。

ところが最近は、
• この組織は、どこに向かおうとしているのか
• 今の延長線で、本当に持続するのか
• 何を問い直す必要があるのか

といった、
もう一段、上流の問い が目に入ってくるようになります。

これは、能力が上がったから、というよりも、
役割の射程が変わり始めている
そう捉えたほうがしっくりくる場面が多いように思います。

今の役割では、扱いきれない問いが増えてくる

これまで担ってきた役割は、
• 正解を探すこと
• 最適解を選ぶこと
• 現実的に実装すること

を前提に設計されていました。

ところが今、
目の前に現れているのは、
• まだ正解が存在しない問い
• 組織の前提そのものを揺らす問い
• 答えを急ぐほど、ズレてしまう問い

です。

当然、
これまでのやり方では扱いにくく感じます。

だから違和感が生まれる。

けれどそれは、
能力の限界にぶつかっているからではありません。

役割の射程が、すでに広がり始めている
そのサインとして現れている可能性があります。

「前と同じやり方で進めない」ことは、後退ではない

この段階で、
多くの人が自分を責めてしまいます。
• 以前のような手応えがない
• 進んでいる実感が薄い
• 判断に時間がかかるようになった

そうした変化を、
「成長が止まった」と捉えてしまうことがあります。

ただ、別の見方もできそうです。

地図のスケールが変わっている
と考えると、どうでしょうか。

地図が拡大されれば、
一歩一歩は小さく見えます。

進んでいないように感じるのは、
扱っている領域が広くなっているから。
そう捉えることもできるのではないでしょうか。

役割が切り替わるとき、人は一度「鈍く」なる

役割が切り替わる局面では、
多くの人が一時的に動きづらさを感じます。

判断に時間がかかる。
即答を避けるようになる。
言葉を選ぶ時間が増える。

これは、
感覚が鈍くなったわけではありません。

これまでとは違う感覚を使い始めている
その途中段階として起きていることが多いのです。

新しい役割に必要な感覚は、
最初からはっきりしているものではありません。

だから一時的に、
「うまく動けていない」
そんなふうに感じてしまうことがあります。

この章のまとめ

第4章でお伝えしたかったのは、
次の点です。

今感じている違和感は、
止まっている証拠ではない
ということ。

それは、
役割が切り替わり始めた人にだけ現れる、
ごく自然なサインでもあります。

次の章では、
この移行期にいるとき、
いきなり行動を変えなくていい理由と、
まず整えておきたいものについて、
もう少し具体的に整理していきます。

第5章|いきなり行動を変えなくていい。まず整えるのは「問い」

ここまで読み進めてくると、
「では、何から変えればいいのだろうか」
そんな疑問が浮かんでくるかもしれません。

役割が切り替わり始めている。
違和感は、決して悪いものではない。
そこまでは、なんとなく腑に落ちてきた。

それでも、
日々の現実は待ってくれません。

だからこそ、
ここでひとつ、あらかじめ共有しておきたいことがあります。

この段階で、いきなり行動を変えなくてもいい。
ぼくは、そう考えています。

行動を急ぐほど、ズレが大きくなることがある

変化の気配を感じたとき、
人はつい「何かをしなければ」と思いがちです。

新しい施策を打つ。
役割を広げる。
思い切った提案をしてみる。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

ただ、
変化の輪郭がまだはっきりしていない段階での行動は、
かえって違和感を強めてしまうこともあります。

それは、
問いが整っていないまま、答えを出そうとする状態
に近いからかもしれません。

先に整えたいのは、「問いの置きどころ」

この移行期において、
まず必要になるのは、
行動計画よりも「問い」の整理です。

たとえば、こんな問いがあります。
• 今の役割の中で、私は何を最適化しているのか
• それは、これからの会社にとっても最適なのか
• 私が「踏み込まないことで守っているもの」は何だろうか
• 逆に、まだ引き受けていない問いは何だろうか

これらは、
すぐに答えが出る問いではないかもしれません。

けれど、
この問いを持ち続けることで、
「次にどこへ動くか」ではなく、
「どこに立てばいいのか」 が、
少しずつ見えてくることがあります。

問いが変わると、行動の意味も変わる

問いが変わると、
同じ行動でも、その意味合いが変わってきます。

たとえば、
• 会議で発言する
• 数字を見直す
• 人に問いかける

といった行動も、

「うまく回すため」ではなく、
「前提を見直すため」
という意味を帯びるようになります。

行動の数を増やす必要はありません。
行動の「質」が変わる のです。

「殻を破る」とは、劇的な変化のことではない

上層部から使われがちな
「殻を破ってほしい」という言葉は、
少し誤解を生みやすい表現でもあります。

大胆な決断をすること。
強く主張すること。
誰かを説得すること。

必ずしも、そういうことを指しているわけではありません。

ぼくの経験では、多くの場合、
• 問いのレベルを一段上げること
• これまで扱ってこなかったテーマを引き受けること
• 答えのない話を、場に出してみること

といった変化を意味しています。

つまり、
行動よりも先に、立ち位置が変わる
ということなのだと思います。

違和感を消そうとしない人から、次の流れは始まる

最後に、これだけはお伝えしておきたいことがあります。

違和感を、急いで消そうとしなくていい。
無理に納得しようとしなくてもいい。

その違和感は、
これまでの自分を否定するものではありません。

次の役割を引き受ける準備が、すでに始まっている
そのサインとして現れている可能性があります。

問いを持ち続けること。
すぐに答えを出さないこと。

それ自体が、
すでに変化の一部になっている。
ぼくは、そう感じています。

まとめ

今の仕事に、どこかハマりきらない感覚があるとしたら、
それは「足りない」からではないのかもしれません。

見えている世界が変わり、
引き受ける役割が変わり始めている
その途中にいるだけ、という可能性もあります。

その移行期にいるとき、
いちばん大切なのは、
正しく動こうとすることではありません。

正しい問いを、手放さずに持ち続けること。

「仮想敵」という言葉に躊躇を覚える時代に、チームビルディングを考える ── 仮想敵・教材・外部参照をめぐる、ある営業所長との対話をきっかけに

はじめに|なぜ今、あらためて「仮想敵」を考え直すのか

最近、組織やチームが少し伸び悩んでいると感じているリーダーの方々と話をする中で、
「仮想敵」という言葉を使う機会が増えています。

チームビルディングの観点で見ると、
チームの方向性を揃えたり、目的意識を持ちづらいメンバーの視線を外に向けたりするために、
仮想敵という考え方は、今も一定の有効性を持っていると感じています。
実際、この考え方によって、チームの空気が変わり、動き出す場面を何度も見てきました。

一方で、最近はこの言葉に対して、どこか引っかかる感覚を持つようにもなりました。
「仮想敵」という表現は、今の時代感や価値観と、少しズレ始めているのではないか。
あるいは、「ライバル」という言葉でさえ、受け取り方によっては不要な緊張や対立を生んでしまうのではないか。
そんな違和感です。

そもそも、私が本当に目指しているのは、外部に基準を置かなくても、
チームが自分たちで考え、修正し、前に進んでいける「自走している状態」です。
その意味では、仮想敵という考え方そのものも、チームの成長につれて必要がなくなるものだと考えています。

とはいえ、仮想敵という考え方そのものを否定したいわけではありません。
問題なのは手法そのものではなく、
その言葉が今の組織やチームに、どのように届いているのか、という点だと感じています。

この記事では、
なぜ仮想敵という考え方がチームビルディングにおいて機能してきたのかを整理しながら、
今の時代や組織のあり方に合わせて、この考え方をどのような言葉に置き換えられるのかを考えていきます。

仮想敵を手放すための記事ではありません。
むしろ、チームを前に進めるために使ってきたこの考え方を、
今の環境に合わせて、あらためて翻訳し直す。
そのための思考整理として、ここに書いてみたいと思います。

第1章|仮想敵は、なぜチームをまとめるのか

チームの調子が上がらないとき、現場ではさまざまな兆しが見えます。
個々は真面目に取り組んでいるのに、力が噛み合わない。
会議ではそれらしい話は出るものの、決定打に欠ける。
どこか「自分ごと」になりきらない空気が漂っている。

こうした状態の背景には、
チームとしての視線が、内側に向きすぎているという問題があります。

自分たちのやり方は正しいのか。
誰がどこまで頑張っているのか。
評価は公平なのか。

問いの矢印が内向きに集まりすぎると、
チームは次第に動きづらくなっていきます。

ここで機能するのが、「仮想敵」という考え方です。

仮想敵とは、誰かを攻撃するための存在ではありません。
チームの意識を、いったん外に向けるための支点です。

「あのチームと比べて、私たちはどうか」
「外から見たとき、今の自分たちはどう映っているか」

こうした問いが生まれることで、
バラバラだった視線が、少しずつ同じ方向を向き始めます。

心理学の文脈では、人は自分が属する集団を意識した瞬間に、
「私たちは何者か」という感覚を強めると言われています。
外部との比較が生まれると、
内部の違いよりも「共通点」に目が向きやすくなるのです。

チームの黎明期や停滞期において、
仮想敵が有効に機能するのは、このためです。

まだ共通の価値観や判断基準が育っていない段階では、
内部だけで問いを回そうとしても、どうしても限界があります。
だからこそ、一度外に基準を置く。
それによって、チームの輪郭をはっきりさせる。

この意味で、仮想敵は
未成熟な組織にとって、ごく自然に立ち上がる装置だと言えます。

ただし、ここで一つ補足しておきたいことがあります。

仮想敵が「強いから」チームがまとまるのではない、という点です。
大切なのは、その存在が、
メンバー一人ひとりに
「比べてみたい」「負けたくない」と
自然に思わせるだけの質と距離感を持っていることです。

あまりにも遠すぎる存在では、現実味がありません。
逆に、明らかに格下の相手では、競争心は生まれにくい。

手が届きそうで、少し悔しい。
工夫や努力次第で追いつけそうだと感じられる。

そのくらいの距離にある、質の高い存在であることが、
仮想敵として機能するための重要な条件になります。

ここまでを見ると、
仮想敵という考え方が、これまで多くの組織で使われてきた理由も、
それなりに説明がつくのではないでしょうか。

ただし――
この手法には、使いどころがあります。

次の章では、
仮想敵そのものではなく、
それに頼り続けたときに起きる問題について整理していきます。

第2章|問題は「仮想敵」そのものではない

ここまで見てきたように、
仮想敵という考え方には、チームを前に進める力があります。
方向性を揃え、視線を外に向け、
チームとしての輪郭をつくるうえで、確かに機能してきました。

それでも、「仮想敵」という言葉に違和感を覚える人が増えているのも事実です。
そしてその違和感は、多くの場合、
仮想敵そのものではなく、その使われ方に向けられています。

仮想敵があることでしか動けない。
敵が見えなくなると、途端に空気が緩む。
誰かと比べられないと、自分たちの立ち位置がわからなくなる。

こうした状態に陥っているとしたら、
それは仮想敵という手法が間違っているのではなく、
仮想敵に依存し始めているサインだと考えたほうがよさそうです。

本来、仮想敵は「方向づけのための支点」です。
ところが、それが長く使われ続けると、
いつの間にか「動機そのもの」になってしまうことがあります。

「負けたくないから頑張る」
「比べられているから動く」

こうした状態が続くと、
チームのエネルギーは、少しずつ外部に吸い取られていきます。

さらに厄介なのは、
仮想敵を前提にした関係性が、
チーム内部の対話を減らしてしまうことです。

外に明確な基準があると、
内部で問い直す必要がなくなります。
「どうすればもっと良くなるか」よりも、
「相手より上か下か」という話に寄っていく。

これは短期的にはわかりやすく、
スピードも出やすいのですが、
長期的には、チームの思考を単純化させてしまいます。

また、仮想敵を強く打ち出しすぎると、
リーダー自身が、その役割を背負い込みやすくなります。

敵を設定し、
緊張感を保ち、
温度を下げないように気を配る。

こうした状態が続くと、
チームが回っているように見えて、
実は、リーダーが走り続けているだけ、ということも少なくありません。

ここで大切なのは、
仮想敵を「良い・悪い」で判断しないことです。

仮想敵は、
使えば必ずチームを壊すものでもなければ、
使い続ければ成長し続ける万能な手法でもありません。

問題になるのは、
本来は一時的な支点であるはずのものが、
固定化されてしまうことです。

仮想敵がなくても、
チームとして問いを立てられるか。
外部と比べなくても、
自分たちの状態を言葉にできるか。

そうした力が育つ前に、
仮想敵だけで回し続けてしまうと、
チームの成長は、そこで止まりやすくなります。

次の章では、
この「外部参照に頼る構造」をもう一段引いた視点から整理し、
仮想敵と「教材」という言葉が、
実はどのように重なっているのかを見ていきます。

第3章|仮想敵と教材は、実はほぼ同じ役割を持っている

仮想敵や外部参照から自走する組織へ移行していくチームビルディングのイメージイラスト

ここまでの話を踏まえると、
仮想敵に対して感じている違和感は、
「外部を参照すること」そのものではなく、
その言葉が呼び起こすイメージに向いているのかもしれません。

そこで一度、
「仮想敵」と「教材」という二つの言葉を、
機能の観点から並べてみたいと思います。

仮想敵も、教材も、
どちらもチームの外側に置かれる存在です。
そして、いずれも
「自分たちは今どこにいるのか」
「何が足りていないのか」
を考えるための、外部参照として使われます。

仮想敵の場合は、
「あのチームと比べて、私たちはどうか」
という問いが立ち上がります。

教材の場合は、
「あのやり方から、何を学べるか」
という問いが立ち上がります。

問いの形は違いますが、
どちらも、チームの視線をいったん外に向け、
内側にこもりすぎた思考をほぐす、という役割を果たしています。

この意味では、
仮想敵と教材は、ほぼ同じ機能を持っている
と言ってよいと思います。

では、何が違うのでしょうか。

一番大きな違いは、
その言葉がチームにもたらす感情の方向性です。

「敵」という言葉には、
どうしても対立や勝ち負けのニュアンスが含まれます。
それは、短期的な集中や結束を生みやすい一方で、
緊張感や防衛的な姿勢も同時に呼び起こします。

一方で、「教材」という言葉は、
学ぶこと、取り入れること、改善することを前提にしています。
比較はしても、相手を下げる必要はありません。
自分たちの未完成さを、
そのまま認めやすい表現でもあります。

ここまで見ると、
仮想敵と教材の違いは、
手法の優劣というよりも、
言葉が生み出す感情や関係性の違いだと言えそうです。

もう一つ、ここで整理しておきたいことがあります。

仮想敵と教材は、
機能的にはよく似た外部参照ですが、
どちらが先にチームに作用するかは、
メンバーやチームの成熟度によって変わる
という点です。

まだ自分たちの課題を言葉にできない段階では、
「学ぶ対象」としての教材よりも、
感情が先に動く仮想敵の方が、
入り口として機能しやすい場面も少なくありません。

学ぶ以前に、
まず視線を揃え、温度を上げ、
「自分たちの話」に引き戻す必要がある。
そうしたフェーズでは、
仮想敵が担ってきた役割は、今も有効です。

一方で、
ある程度チームが整ってくると、
対立や勝ち負けの構図は、
思考の幅を狭めてしまうことがあります。

この段階では、
仮想敵が持っていた機能を、
より穏やかな言葉に置き換えた方が、
チームの対話が広がりやすくなります。

つまり、
仮想敵と教材の違いは、
「どちらが正しいか」ではありません。
どのフェーズのチームに、
どの言葉が届きやすいか
という違いです。

ここまで整理してくると、
次に浮かんでくるのは、
こんな問いではないでしょうか。

では、今の時代や環境の中で、
なぜ「教材」という言葉が、
選ばれやすくなっているのか。

そして、
それでもなお、
場面によっては「仮想敵」という言葉を
使わざるを得ないと感じる現場があるのは、なぜなのか。

この問いを手がかりに、
次の章では、
言葉が選ばれる背景そのものを整理していきます。

第4章|では、今なぜ「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのか

それでも、ここまで整理してきたうえで、
どうしても浮かんでくる問いがあります。

今後も、場面によっては
「仮想敵」という言葉を使わなくてはいけないのだろうか。

正直に言えば、
私自身、この問いに明確な「はい」や「いいえ」を
用意しているわけではありません。
ただ、現場に立ち続ける中で、
一つはっきりしてきたことがあります。

それは、
「教材」という言葉が、
多くの場面で“選ばれやすく”なってきている
という事実です。

ここで注意したいのは、
「教材」という言葉が
すべてのチームに通用するようになった、
という意味ではない、という点です。

実際、私が向き合っている現場の中には、
まだ「教材」という言葉がまったく響かないチームもあります。
そうしたチームにとっては、
学ぶ以前に、まず視線を揃えることの方が重要で、
その入口としては、
今も仮想敵の方が機能しやすいと感じる場面も少なくありません。

それでもなお、
社会全体を見渡したときに、
「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのには、
いくつかの背景があるように思います。

一つは、
対立や競争を前面に出し続けることの
限界が見え始めていることです。

変化のスピードが速く、
正解が一つに定まらない環境では、
勝ち負けを軸にした比較だけでは、
前に進みにくくなってきています。

もう一つは、
組織やチームに求められる役割そのものが、
変わりつつあるという点です。

個人の成果を積み上げるだけでなく、
学び続ける力や、調整し続ける力が、
より強く求められるようになってきました。

こうした環境の中では、
「敵に勝つ」という表現よりも、
「何を学び、どう取り入れるか」という表現の方が、
チームの思考を広げやすくなります。

つまり、
「教材」という言葉が選ばれやすくなっているのは、
それが正解だからではなく、
今の時代や環境において、
誤解や摩擦を生みにくい表現だから
だと言えるのかもしれません。

ここまで整理してくると、
仮想敵と教材の関係は、
どちらかを選び、どちらかを捨てる、
という話ではなくなってきます。

大切なのは、
「どの言葉が、このチームに届くのか」
そして、
「その言葉は、今のフェーズに合っているのか」
を見極め続けることです。

仮想敵という言葉を使う場面が、
これからもゼロになるとは思っていません。
ただし、それは
使いやすいからでも、慣れているからでもなく、
その言葉が、今このチームを動かすかどうか
という一点で判断されるべきものだと思っています。

次の章では、
こうした外部参照そのものを、
どのように扱っていけばよいのか。
仮想敵や教材を「手段」として使いながら、
最終的にどこを目指しているのかについて、
あらためて整理していきます。

第5章|外部参照は、あくまで一時的な支点である

ここまで、
仮想敵や教材といった「外部参照」が、
チームを前に進めるうえで果たしてきた役割を整理してきました。

あらためて強調しておきたいのは、
私は、これらがゴールだとは思っていないという点です。

仮想敵も、教材も、
チームが自分たちの状態を捉え直すための支点にすぎません。
視線を外に向け、比較し、気づきを得る。
そのプロセスを助けるための、一時的な装置です。

支点があるからこそ、
チームは動き出しやすくなります。
内向きに閉じていた思考がほぐれ、
共通の話題や基準が生まれる。
これは、特に立ち上げ期や停滞期において、
とても大きな意味を持ちます。

一方で、
支点は、使い続けることを前提にしたものではありません。

外部参照がなくなると動けない。
比べる相手がいないと、自分たちの位置がわからない。
そうした状態に入ってしまうと、
チームの判断や成長は、どうしても外に委ねられてしまいます。

本来、チームが少しずつ力をつけていく中で、
外部参照の役割は変わっていくはずです。

最初は、
「外を見ることで、ようやく自分たちが見える」状態だったものが、
やがて、
「自分たちの中で問いを立てられる」状態へと移っていく。

この移行が起き始めたとき、
仮想敵や教材は、
前に出る存在である必要がなくなっていきます。

大切なのは、
いつ、どのタイミングで、
外部参照の比重を下げていくかです。

それは、
明確なチェックリストで判断できるものではなく、
チームの会話の質や、
問いの立ち上がり方、
リーダーがいなくても回り始める小さな動きの積み重ねの中で、
少しずつ見えてくるものではないでしょうか。

そして、
この外部参照の有無や強弱をどうコントロールするかが、
自走できるチームをつくっていくうえでの
リーダーの役割の一つではないかと私は思っています。

仮想敵を置くか。
教材と呼ぶか。

その選択そのものよりも、
その言葉が、
今のチームにとって
「前に進むための支点」になっているのか。
それとも、
「立ち止まり続けるための拠り所」になってしまっているのか。

この違いを見極め続けることが、
リーダーやコーチに求められているのではないでしょうか。

おわりに|本当に目指しているのは、外部を必要としない状態

この記事では、
仮想敵や教材といった言葉を入り口に、
チームが前に進むときに
「何を外に置くのか」について考えてきました。

ただ、ここまで書いてきてあらためて感じるのは、
本質は言葉そのものではない、ということです。

仮想敵という言葉を使うかどうか。
教材という表現に言い換えるかどうか。

それよりも大切なのは、
今、このチームが
外部にどれくらい頼る必要があるのかを、
リーダーが感じ取れるかどうかだと思っています。

外部を強く置いた方が前に進むフェーズもあれば、
少しずつ手放した方が、
チームの思考が育つフェーズもあります。

そのどちらが正しいかではなく、
今どちらが必要かを見極め、
必要に応じて調整していく。
その繰り返しの中で、
チームは少しずつ自分たちの足で立ち始めます。

外部を見なくても、
自分たちで問いを立て、
ズレに気づき、整えていける。

私がこれからもやっていきたいのは、
そんな状態に近づいていくプロセスに、
伴走し続けることです。

あなたのチームは今、
仮想敵を必要としているフェーズでしょうか。
教材を置いて学び始めるフェーズでしょうか。
それとも、
外部参照を少しずつ手放し始めるフェーズでしょうか。

経営方針にモヤモヤしたら──現場と経営の間に立つ管理職のための橋渡しスキル

①はじめに

先日、とある管理職のクライアントさんとのコーチングセッションで、こんな話になりました。
「経営方針や新しい施策を聞くと、どうしても“うーん”と引っかかる部分があるんです。」

実はこのテーマ、さまざまな企業の管理職の方をコーチングさせていただく中で、時々話題にのぼります。
現場を日々見ているからこそ、経営層が描く理想と、現場のリアルとの間にギャップを感じる──これは決して珍しいことではありません。

会議や説明会で経営陣の話を聞きながら、「本当に現場の状況をわかっているのかな」と心の中でつぶやいた経験がある方も多いのではないでしょうか。
その違和感は、あなたが現場を知っている証拠でもありますが、一方で、経営との距離を感じるきっかけにもなり得ます。

今回は、そんな“違和感”を抱えたときに、異なる価値観を受け入れつつ、現場の声を経営に届ける「橋渡し」のスキルについて考えていきます。

② 管理職が直面しやすい3つの壁

現場と経営の間に立つ立場だからこそ、管理職には特有の“壁”があります。
この壁は、本人の意識や努力だけでは越えにくく、気づかないうちにコミュニケーションや判断をゆがめてしまうことがあります。

1. 価値観の固定化

長く現場を経験してきた分、「こうするのが正しい」という自分なりの“正解”がしっかり根付いています。
それは経験値として強みになる一方で、新しい考え方や施策を受け入れるときの柔軟性を奪ってしまうことがあります。
結果として、経営層の方針を「現場に合わない」と瞬間的に判断し、可能性を狭めてしまうこともあります。

2. 経営層との距離感

経営陣が決めた方針や施策も、その背景や意図を知らなければ「なぜこれをやるのか?」という疑問だけが残ります。
特に大きな組織では、経営会議や戦略策定のプロセスに直接関わる機会が少なく、どうしても“上から降ってきた感”が強くなりがちです。
その距離感が、信頼関係や理解の深さに影響を与えます。

3. 現場視点の“翻訳”不足

現場の不満や課題をそのまま経営層に伝えても、必ずしも動いてもらえるわけではありません。
経営層は全社的な視点で判断するため、数字・影響度・リスクといった尺度で情報を求めます。
一方で、経営方針を現場にそのまま伝えても、抽象的すぎて「で、何をすればいいの?」となってしまうことも少なくありません。
この“翻訳不足”が、現場と経営の間に誤解や温度差を生む大きな原因になります。

この3つの壁を意識できるだけでも、日々の会話や会議でのスタンスが変わってきます。
次の章では、この壁を乗り越えるためのステップをお伝えします。

③ 壁を越えるための3つのステップ

現場と経営の間にある壁は、一気に壊す必要はありません。
むしろ、日々の会話ややり取りの中で少しずつ“通り道”を広げていくことが現実的です。
ここでは、管理職として意識したい3つのステップをご紹介します。

ステップ1「まず受け取る姿勢を保つ」

経営層から新しい方針や施策が伝えられたとき、賛否や是非を判断する前に、一度 自分の中で「背景や意図をまるごと受け取る時間」をつくります。
この時点で「現場には合わない」と決めつけてしまうと、情報の幅が狭まり、対応策も限定的になります。
背景理解を深めるための質問例:
• 「この施策の狙いは何ですか?」
• 「どの指標や数字に影響を与える想定ですか?」

ステップ2「現場と経営の言語を行き来する」

現場の声をそのまま経営に伝えるのではなく、経営層が判断に使いやすい形に変換します。
例えば「作業が増えて大変」という声なら、作業時間の増加や人員配置の影響を数値化して示す。
逆に、経営方針を現場に伝えるときは、「売上10%アップ」という目標を「具体的に何をどう変えるのか」という行動レベルまで落とし込みます。
この翻訳作業があることで、双方の理解が深まり、動きやすくなります。

ステップ3「異なる価値観の接点を探す」

経営と現場では、守りたいもの・重視するものが違う場合があります。
しかし、よく話を聞くと「組織を成長させたい」という目的は共通していることが多いもの。
対立する意見の中にも共通ゴールを見つけ、「ではそのためにどこで歩み寄れるか」を探ります。
接点が見えた瞬間、対立は協力の土台に変わります。

この3つのステップは、特別な会議やイベントのときだけでなく、日常的なやり取りにも活かせます。
一方的な主張や押し付けではなく、相互理解の通路をつくること──それが管理職の橋渡し力を高める第一歩です。

④ 実践イメージ──一つのやり方として

例えば、経営方針説明会で新しい施策が発表されたとします。
あなたは聞いた瞬間、「これは現場には負担が大きいのでは…」と感じるかもしれません。
ここで多くの人は、すぐに反論や否定の言葉を頭に浮かべてしまいます。
そんな時に、前の章でご紹介した3つのステップを実際に行うイメージをご紹介します。

【ステップ1|受け取る】

その場では意図や背景を丁寧に聞き、必要があれば後日、担当役員や関連部署に質問をして情報を補います。
「なぜこの時期に?」「狙っている成果は?」といった問いを通じて、施策の“裏側”を知ることができます。

次に

【ステップ2|翻訳する】

現場から聞こえてくる懸念や課題を、経営層が理解しやすい形に変換します。
「負担が増える」ではなく、「この業務に週5時間の追加工数が必要になり、結果としてA案件の納期に影響が出る可能性がある」といった具合です。
逆に、経営の狙いを現場に伝えるときは、「売上10%アップ」という数字目標を、「この製品の提案回数を週○件増やす」という行動に落とし込みます。

そして

【ステップ3|接点を探す】

経営の意図と現場の懸念の中で、共通の目的を探ります。
「売上アップ」というゴールは共有できるなら、負担を軽減しつつ成果を出す方法を一緒に考える──例えば優先度の低い業務を一時的に減らす提案などです。

こうして“受け取る→翻訳する→接点を探す”という流れを踏むことで、
一方的な意見のぶつけ合いではなく、相互理解に基づいた橋渡しが可能になります。

⑤ 橋渡し力を支える3つの能力と鍛え方

ここまでご紹介した「受け取る → 翻訳する → 接点を探す」という流れは、意識すれば誰でも取り入れられます。
ただし、その土台にはいくつかのスキルが必要です。
このスキルが育っているほど、日常的な会話や会議の中で自然に橋渡しができるようになります。

1. 意図を理解するための質問力

経営層からの説明や新しい施策を聞いたとき、その“背景や狙い”まで理解できているかどうかで、その後の動きやすさは大きく変わります。
表面的な説明に留まらず、「なぜ」「何を」「どうやって」という3つの視点で掘り下げる質問を意識しましょう。
• フレーム(WHY → WHAT → HOW)
 1. WHY:なぜこれをやるのか(背景・目的)
 2. WHAT:何を変える/実現するのか(成果・指標)
 3. HOW:どう進めるのか(方法・プロセス)
• 鍛え方:自分が質問をしない場面でも、頭の中でこの3ステップを組み立てる練習をしておく

2. 翻訳能力(現場 ⇔ 経営)

経営と現場では使う言葉や判断基準が違います。
橋渡しをするためには、相手が理解・判断しやすい“言語”に変換する力が不可欠です。
• 経営 → 現場:数字や戦略を、日々の行動レベルまで具体化する
• 現場 → 経営:感覚的な声や不満を、数字・影響度・リスクに置き換える
• フレーム(3C変換)
 1. Concrete(具体化):「抽象的な方針」を現場が動ける形にする
 2. Calculate(数値化):感覚的な課題を時間・コスト・成果の数字に変える
 3. Context(文脈化):相手の視点や優先事項に合わせた説明にする
• 鍛え方:報告や説明の前に「相手が重視しているのは何か?」を先に推測する習慣を持つ

3. 共通の目的を探る調整力

経営と現場では、守りたいものや優先順位が異なることがあります。
しかし、その奥には意外と共通するゴールが隠れています。
それを見つけ、歩み寄る道を設計するのが調整力です。
• フレーム(GAP → GOAL → BRIDGE)
 1. GAP:双方のズレを洗い出す
 2. GOAL:共通のゴールを明確にする
 3. BRIDGE:そのゴールに向けた歩み寄り策を考える
• 鍛え方:意見が割れた場面で、「相手の最終目的は何か?」を紙に書き出す習慣をつける

これら3つの能力は、日常の会話や打ち合わせの中で意識して使い続ければ、自然と自分の中に定着し、橋渡し役としての信頼と存在感が高まっていきます。

⑥ まとめ

経営と現場の間に立つ管理職は、しばしば“違和感”を抱えます。
それは、現場を知り尽くしているからこそ生まれる感覚であり、決して悪いことではありません。
むしろ、その違和感をきっかけに経営と現場の橋渡し役としての価値を発揮できるチャンスがあります。

今回お伝えした
• 受け取る姿勢
• 翻訳する力
• 共通の目的を探す調整力

この3つは、会議や説明会といった特別な場面だけでなく、日常的なやり取りの中でも磨けます。

次に経営方針や新しい施策が発表されたときは、まず「なぜ」「何を」「どうやって」を意識して受け取り、
現場と経営の間で“言語”を変換し、共通のゴールを探す──そんな一歩から始めてみてください。

橋渡し役として信頼される管理職は、組織の中で欠かせない存在になります。
そしてその信頼は、あなた自身のキャリアを大きく広げる力にもなるはずです。

トッププレイヤーから営業所長へ。課長時代とは違う“次のマネジメント視点”

はじめに

4月の人事異動で、より上位の管理職に就かれた方も多いのではないでしょうか。
現場の第一線で成果を出し続け、課長としてチームをまとめながら部下育成とチームの業績の両立を成し遂げてきたからこその結果が評価されたのだと思います。
まさに「プレイヤーとしてもマネージャーとしても結果を残してきた優秀な方々」ですね。

実際、ぼくのクライアントさんの中にも、この4月の人事異動でさらに上位の役職に就かれた方が複数いらっしゃいます
日々のセッションを通じて感じるのは、「すでに管理職経験も実績もある方」であっても、次の役職では求められる視点や取り組み方がここでもう一回変わるということです。

たとえば、これまでは「自らのチームや担当メンバー」に目を向けていれば良かったところが、今後は「営業所全体」や「部門横断の組織運営」に関与する場面が増えてきます。

今回のブログでは、営業所長をされているとあるクライアントさんの事例をもとに、複数のリーダーの個性を活かして組織をマネジメントしていくヒントをお伝えしていきます。

ご自身の現場と重ね合わせながら、次のステージでのマネジメントの視点として活用していただければ幸いです。

1. チームのカギは“3名の課長の個性”

営業所長として組織を見るとき、重要な視点の一つが「誰がどのポジションで、どのような役割を果たしているのか」という組織設計です。
特に営業所では、複数の課長が存在し、それぞれが異なる強みやスタイルを持ちながらチームをマネジメントしています。

ぼくのクライアントさんが所長をしている営業所でも、

その個性を活かしながら組織全体を機能させていくことが、営業所長としての大きなテーマとなりました。
ここでは、その3つのタイプをご紹介します。

① 縁の下で信頼を勝ち取る課長

このタイプの課長は、あえて前に出ることなく周囲から厚い信頼を得ています。
指示や指導よりも「見守り」や「支え」に重きを置き、メンバーの相談に対しては親身に応えます。
チームのメンバーからすると、「この人がいるから安心して挑戦できる」と感じられる存在です。

営業所全体の安定感や継続的な成果には、このような“影の安定軸”となる課長の存在が不可欠です。

② 経験と実績を持つベテラン課長

長年の経験と豊富な知識で、チーム内の「文化」や「基準」を守る役割を担っています。
特に業界や自社のルール・慣習に詳しく、チームの意思決定や若手メンバーの育成にも影響力を持ちます。

一方で、自身のやり方への強いこだわりや変化への抵抗感が出やすい側面もあります。
営業所長としては、その経験と知見を尊重しつつ、適度に変化を促す関わり方が求められます。

③ チャレンジ精神旺盛な次世代課長

新しいアイデアや手法を積極的に提案し、行動力と実行力でチームをリードしていくタイプです。
特に若手メンバーに対しては、指示待ちではなく「自ら考え行動する」スタンスを育てる点で頼もしい存在となります。

ただし、既存のルールや手順よりも成果・スピードを重視する傾向もあり、営業所全体としてはバランスが求められます。
このタイプの課長には「枠を与えすぎない自由さ」と「方向性のガイド」の両立がカギになります。

3名の課長の個性とスタイルは異なりますが、それぞれがチームの成果に欠かせない存在です。
営業所長としては、こうした多様なマネジメントスタイルを対立させるのではなく補完し合う関係として設計していくことが、営業所全体の成果につながっていきます。

2. 課長として経験した「営業所を動かす」チャレンジ

上位管理職に昇進された多くの方は、すでに課長としての経験を積み、チームマネジメントにおいて成果を上げてこられたことでしょう。
プレイヤーとして自身の営業成績を残し、その後は課長として **「メンバーを通じて成果を出す」**という難しさとやりがいの両方を体験されたはずです。

ぼくのクライアントさんも、まさにこのプロセスを経て営業所長に就任されました。
課長時代には、自ら動いて成果を出すのではなく、メンバーに任せ、成長を促しながらチームとして結果を出すことに力を注いでこられました。
プレイヤーとして成果を出していた時代とは違い、課長として **「人を通じて成果を出すこと」**に意識を切り替えることは、決して簡単なことではありません。

そして今、営業所長として再び「役割の変化」に直面しています。
課長時代は **「自分のチーム」**をマネジメントすればよかったものが、
営業所長となった今は **「営業所全体」**をどう動かすか、
複数の課長や部門をどのように連携させ成果につなげていくかが問われる立場となりました。

プレイヤー→課長→所長とステージが変わる中で、求められるマネジメントの視点やスタンスも進化しています。
クライアントさんも今、**「課長の個性を活かしながら営業所全体として成果を出す」**という次のチャレンジに挑んでいます。

この変化にうまく対応するためのカギとなるのが、課長同士の役割設計営業所全体の方針やビジョンを明確にすることです。
次章では、その具体的な考え方についてご紹介していきます。

3. チームの成果を引き出す役割設計

営業所長として営業所全体の成果を生み出すためには、課長同士の役割設計が非常に重要なポイントになります。
現場を預かる課長たちは、それぞれ異なる強み・スタイルを持っています。
その個性を理解し、意図的にチームや営業所全体のパフォーマンスにつなげる設計が求められます。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の強みと課題を整理するところから取り組みを始めました。
例えば「縁の下でメンバーを支える課長」「経験と実績を持つベテラン課長」「チャレンジ精神旺盛な次世代課長」という特徴をふまえ、

誰にどの領域・期待を託すのか

ポイント1:組織課題と個人課題を切り分ける

所長として「何が営業所全体の課題なのか」「どこは各課長に任せられるのか」を整理することが大切です。
たとえば、営業所全体の方針や人材育成の枠組みは所長が担い、
日々の目標管理やメンバーの育成は各課長に裁量を持たせるといった 役割のすみ分け を意識します。

ポイント2:期待値を明確にする

課長のスタイルや強みが違うからこそ、**「何を期待しているのか」**をあらかじめ言語化し、すり合わせることが欠かせません。
「この領域ではリードしてほしい」「このテーマは一緒に取り組もう」など、

あいまいさを減らし、安心して動ける環境

ポイント3:若手と次期所長候補の育成を意識する

営業所全体として中長期的に成果を出すためには、若手育成の視点も外せません。
課長には「日々の業務を回す責任」だけでなく、若手のチャレンジの場を意図的に作る役割も期待します。
また営業所長としては、中長期的な視点で**「次期所長候補となる人材を見極め、成長を支援していくこと」**も重要な役割になります。
次の世代の所長を意識して育成しておくことは、営業所全体の安定と継続的な成果につながります。

複数の課長の強みとスタイルを組み合わせて営業所の成果を引き出すこと。
そのための「役割の整理と言語化」が営業所長としての重要なマネジメントポイントになります。
次章では、この土台の上に「所長自身の発信力」がなぜ求められるのかについて考えていきます。

4. 所長としての“言語化力と発信力”

営業所長の役割に就くと、多くの方が感じるのが「課長時代と比べて自分の考えや方針を“言葉にして伝える”機会が圧倒的に増えた」という変化です。

課長としてチームをマネジメントしていたときは、日常のコミュニケーションや行動の積み重ねでメンバーと信頼関係を築けました。
しかし営業所長になると、複数の課長や部門、さらには経営層や他拠点との連携も必要になります。
その中で求められるのが **「所長としての発信力」**です。

組織の方針・優先順位を明確に伝える

複数のチーム・課長を束ねる立場では、所長自身が組織の「軸」を言語化し、明確に発信することが不可欠です。
営業所の方針や優先順位、期待する行動基準をあいまいにせず、誰もが理解できる形で示すことがメンバーの安心感と行動の統一につながります。

コーチングの視点を取り入れる

ぼくのクライアントさんの場合も、コーチングで培った**「問いかけ力」「対話力」**を所長のマネジメントに活かしています。
「〇〇について意見を聴かせて?」「この課題の解決策を提案して?」など、

課長自身に考えさせる言葉を投げかけることで、自走力や当事者意識を育てる

言葉の力で組織を前進させる

組織が大きくなればなるほど「察してくれるだろう」は通用しません。
所長の発信がなければ、現場は迷い、判断基準を失いがちです。
所長の役割として大事なのは、「細かなやり方を教えること」ではなく、課長や営業所員ひとりひとりが自ら考え判断ができるようになるための方向性を示すことです。
この発信が、課長たちの主体的なリーダーシップを後押しし、営業所全体の成長につながっていきます。

次章では最後に、こうした考え方を踏まえて所長としてのスタンスのまとめと、読者への問いかけをしていきます。

5. おわりに

営業所長としての役割は、プレイヤーや課長としての経験・実績を土台にしながらも、さらに視野とスタンスを広げることが求められます。
自身で成果を出す・自チームを動かすところから、営業所全体をどのように動かし成果につなげていくかという「組織全体視点」への進化です。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の個性や強みを活かしながら、
役割の設計や営業所としての方針の言語化、さらには次期所長候補の育成までを意識したマネジメントに取り組んでいます。
その過程は決して簡単ではありませんが、「人を通じて成果を生み出す」という上位管理職としての醍醐味とやりがいを実感されています。

この内容は、ぼくが実際にご支援しているクライアントさんとの取り組みの中でも成果につながっている実践例です。
ぜひ、ご自身の営業所や組織でも活かしていただければ嬉しいです。

ここまで読んでくださった方も、ぜひご自身の営業所や組織に置き換えて考えてみてください。
自分は今、どの課題に取り組むべきだろうか?
課長やメンバーが主体的に動ける環境を整えられているだろうか?
次のステージに進むために、今の自分に必要な成長は何だろうか?

日々の業務の中でこの問いを持ち続けることが、次の成果と成長への第一歩になるはずです。

大規模な組織変更を乗り越える!組織がやるべき施策

 

はじめに

組織変更は、企業の成長や戦略転換に不可欠なプロセスですが、現場の社員にとっては不安やストレスの要因にもなります。単に新しい組織体制を発表するだけではなく、社員が変化を前向きに受け入れ、主体的に動ける環境を整えることが、組織として求められます。

しかし、実際には、
• 「なぜこの変更が必要なのか?」が十分に伝わらず、社員が納得感を持てない
• 情報が不足し、不安や憶測が広がる
• 「この変化で自分はどうなるのか?」という不安が生まれる

といった課題が発生しがちです。組織変更を単なる構造の変更で終わらせず、組織の成長につなげるためには、適切なアプローチが不可欠です。

ぼくは長年、さまざまな企業の人事・教育部門の方々とコーチングを通じて関わってきました。その中でも、特に長い付き合いのある人事・教育部門の方がいます。彼女の勤める会社では、現在、関連会社も絡んだ大規模な組織変更が進行中です。組織再編が行われることで、社内のキャリアパスや業務フローが大きく変わり、会社としても社員のサポートや組織の安定化に尽力する必要があります。

本記事では、 ビジネスコーチの視点から、「大規模な組織変更を成功させるために組織がやるべき施策」 を解説します。
まず、組織変更を成功させるためには、次の5つの施策が重要になります。

✅ 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える
✅ 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る
✅ 社員が将来への不安を感じる → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する
✅ 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する
✅ 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする

これらの施策を実践することで、組織変更を単なる構造の変化ではなく、社員の成長と組織の進化につなげることができます。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

第1章 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える

組織変更の際に起こる課題

組織変更がスムーズに進むかどうかは、社員の納得感に大きく左右されます。ただ「変更の背景を説明する」だけではなく、組織としてどう語るかが重要になります。

  • 「この変更は会社にとって必要なことです」

  • 「市場の変化に対応するためです」

と伝えるだけでは、社員にとって「他人ゴト」になりがちです。社員が「自分のこととして受け止める」には、ストーリーの設計がカギになります。

✅ ビジネスコーチの視点:伝え方の順番を意識する

組織変更の話をするとき、最初に「変更の理由」を説明するのは定石です。しかし、社員の立場に立つと、まずは『不安』を解消する情報が欲しいものです。
《伝える順番のポイント》
1️⃣ 変わること(ファクト)
→ 「この組織変更では、○○部と△△部が統合されます」
2️⃣ なぜ変わるのか(背景・目的)
→ 「市場環境の変化に対応し、スピード感を持って業務を進めるためです」
3️⃣ 社員にとっての意味(メリット・成長機会)
→ 「この変更によって、異なる分野の知見が結びつき、新たなキャリア機会も生まれます」
4️⃣ 具体的にどう影響するのか(実務レベルの説明)
→ 「日々の業務では、△△部との連携が増え、○○のプロジェクトに参加する可能性があります」
5️⃣ 不安へのフォロー
→ 「変更直後は戸惑いもあると思いますが、フォロー体制を整えます。不安なことがあれば気軽に相談してください」
🟠 コーチング的な問いかけ
✔ あなたが今伝えようとしている『変更の目的』は、社員にとって納得できる内容になっていますか?
✔ 「なぜこの変更が必要なのか?」を、組織の目線ではなく、社員の視点で説明できますか?
✔ 伝える順番を工夫することで、社員の受け取り方がどう変わると思いますか?

✅ ストーリーを活用して「自分ゴト化」させる

「なぜ変わるのか?」を説明するときに、単なるデータやロジックだけでなく、「ストーリー」を交えて伝えることで、理解しやすくなります。
例えば、次のような話し方ができます。
🔹 パターン①(市場変化を実感させるストーリー)
「5年前と比べて、私たちの業界の競争環境は大きく変わりました。 昔は○○が主流でしたが、今は△△が求められています。 この変化に対応しないと、競争力が低下してしまいます。 だからこそ、今回の組織変更が必要なんです。」
🔹 パターン②(社員の成長につなげるストーリー)
「実は、○○部のAさんも、△△部と関わることで新しいスキルを身につけ、キャリアの幅を広げました。 今回の組織変更では、より多くの社員がこうした経験を積めるようになります。」
🟠 コーチング的な問いかけ
✔ 社員が「自分ゴト」として捉えられるようなストーリーを作れていますか?
✔ 「会社としての変化」ではなく、「社員一人ひとりにとっての変化」を伝えていますか?
✔ 過去にうまく伝わったストーリーや、逆に伝わりにくかった経験を振り返ると、どんな違いがありましたか?

第2章 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る

組織変更の際に起こる課題

組織変更が発表されたとき、「情報が不十分」「何も知らされていない」 という状態が続くと、社員の間に不安や憶測が広がります。
特に、大規模な組織変更では、現場の混乱を防ぐためにも、

  • 「適切なタイミングで」

  • 「わかりやすく」

  • 「双方向のやり取りができる形で」

情報共有を行うことが重要です。

✅ ビジネスコーチの視点:情報共有=単なる通知ではない

「情報共有」と聞くと、メールや社内ポータルで一方的に通達する ことを想像しがちですが、それでは不十分です。社員が納得し、安心して働くためには、「情報を受け取る側の理解度や感情を考慮する」 必要があります。
例えば、次のようなアプローチを意識すると、より効果的な情報共有ができます。
1️⃣ 「知りたい情報が揃っているか?」を意識する
→ 社員が本当に知りたいのは「会社の都合」ではなく、「自分にどう影響するか?」
→ 役職ごとに異なる懸念点を考え、適切な情報を準備する
2️⃣ 情報が届いていない層を見落とさない
→ 一部のメンバーだけが情報を持っている状態になっていないか?
→ 伝えたつもりでも、現場では共有されていないケースはないか?
3️⃣ 双方向のやり取りを設計する
→ 質問を受け付ける場を設け、社員が安心して疑問を解消できるようにする
→ 説明会だけでなく、1on1や小規模の対話の場を作る

✅ 透明性の高い情報共有のポイント

1. 組織変更の説明会を開催し、質疑応答の場を設ける

✅ 形式:全社ミーティング、部門別説明会、1on1面談など

✅ 伝えるべき内容:

✔ 「何が変わるのか?」(組織全体の変更点)
✔ 「なぜこの変更が必要なのか?」(背景・目的)
✔ 「自分たちは何を求められるのか?」(役割・期待値)
✔ 「自部門への直接的な影響は?」(具体的な業務変化)

✅ 説明のポイント:

✔ 社員が「自分ごと」として受け止められるように、部門ごとに影響を整理する
✔ 「今後の動き」と「求められること」を明確に伝える
✔ 社員が納得するまで説明を続ける姿勢を見せる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は「自分に関係のある情報」を十分に得られていますか?
✔ 説明を受けた社員が「どんな質問を持つか?」を事前に想定できていますか?
✔ 情報を一方的に伝えるだけでなく、社員が意見を言える場を設けていますか?

2. FAQを整備し、社内ポータルやチャットで共有する

✅ 具体的なアクション:

✔ よくある質問と回答を整理し、誰でもアクセスできるようにする
✔ 「何を聞いていいのかわからない…」とならないように、具体例を交えた質問を用意する
✔ 新しい質問が出たら、FAQを随時更新し、組織として情報の透明性を維持する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が「気軽に質問できる環境」になっていますか?
✔ FAQは最新の情報に更新され、社員が活用できるものになっていますか?
✔ 「この情報を事前に共有しておけばよかった」と思ったことはありませんか?

3. 不安や疑問を気軽に相談できる窓口を設置する

✅ 実践ポイント:

✔ 人事やマネージャーが、定期的に社員の声を拾う仕組みを作る
✔ 「何か質問はある?」ではなく、「○○について気になっていることはある?」と具体的に聞く
✔ 匿名アンケートを活用し、心理的ハードルを下げる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が安心して疑問を話せる仕組みが整っていますか?
✔ 「質問が出にくい場」になっていないか、振り返る機会を持っていますか?
✔ 社員が本当に聞きたいことを拾い上げる工夫をしていますか?

✅ まとめ

情報共有は、単なる通知ではなく、社員の不安を解消し、納得感を高めるプロセスです。
そのためには、
✅ 「確定したことから伝える」姿勢を持つこと
✅ 社員一人ひとりに情報が確実に届くよう、複数のチャネルを活用すること
✅ 双方向の対話を促し、意見や質問を収集・反映すること
組織変更において、情報をどう伝えるかは、社員の信頼やエンゲージメントにも直結する重要な要素です。
「情報を伝える側」としてではなく、「情報を受け取る社員の視点」に立つこと。 その意識を持つだけでも、組織の変化をスムーズに進めるための大きな一歩になるはずです。

第3章 社員が将来への不安を感じる → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する

組織変更の際に起こる課題

組織変更が行われると、社員は 「これから自分はどうなるのか?」 と考えます。
組織の再編成や役割の変更があると、これまでのキャリアがどう影響を受けるのかが不透明になり、不安を感じるのは当然です。
しかし、「この変化は、あなたの成長のチャンスでもある」 というメッセージが伝われば、受け止め方は大きく変わります。
そのためには、組織としてキャリアパスを明確にし、成長の機会を提供し、変化を好まない社員への適切なアプローチを行い、キャリアについての対話の場を設計することが重要です。

✅ 1. キャリアパスの明確化 – 社員に「自分の未来」を見せる

✅ キャリアパスを明確にするためのアクション

  • 変更後の職務や役割の期待値を言語化し、社員に伝える

  • 「どのようなスキル・経験を積めば次のキャリアに進めるのか?」 を整理する

  • 職種ごとのキャリアパスモデル を作り、選択肢を提示する

  • 上司と部下の間でキャリアに関する 1on1ミーティング を実施する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は 「この組織変更の先に、どんなキャリアが開けるのか?」 を理解できていますか?
✔ 役職や役割が変わる社員に、十分な説明とサポートを提供できていますか?
✔ 組織の視点ではなく、社員一人ひとりの視点 に立ったキャリアの道筋を示せていますか?

✅ 2. 変化を好まない社員へのアプローチ

「変化をポジティブに捉えられる社員」 もいれば、「現状維持を好む社員」 もいます。
変化を好まない社員に対して、「これからはこう変わります」と一方的に伝えるだけでは、むしろ抵抗感を強める 可能性があります。
そのため、以下のようなアプローチを意識することが重要です。

✅ 変化を好まない社員へのアプローチ

 1️⃣ 「変わらないこと」も伝える
→ 「これまでと変わらない部分もある」 と伝えることで、安心感を提供する
2️⃣ 変化を小さく分解し、「少しずつ適応できる」形にする
→ 「この変更で、最初に影響があるのは○○だけです」 など、ステップごとに伝える
3️⃣ 変化による「損失」ではなく「得られるもの」を強調する
→ 「この変更で、○○の経験が積める」「将来的に△△の選択肢が増える」 というポジティブな視点を提供する

🟠 コーチング的な問いかけ

「変化に抵抗がある社員」 に対して、どんなサポートが必要でしょうか?
✔ 変化の中にも 「変わらないこと」 があると伝えていますか?
✔ いきなり大きな変化を求めるのではなく、適応のステップを示せていますか?

✅ 3. 成長機会を提供する – 変化を「学びのチャンス」にする

「成長機会の提供」 は、組織変更をポジティブに捉えるための強力なツールです。
「この変更で何を学べるのか?」 を明確にすることで、社員のモチベーションを高め、変化に適応する意欲を引き出すことができます。

成長機会を提供するための施策

  • 社内外の研修プログラム を整備し、新しいスキル習得を支援する

  • 異動やプロジェクト参画 を通じて、多様な経験を積める環境をつくる

  • メンター制度やコーチング の仕組みを導入し、個別の成長をサポートする

  • 資格取得や専門スキルの習得 を奨励し、補助制度を活用できるようにする

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が 「この変化を成長の機会」 と捉えられる環境を提供できていますか?
✔ 組織変更後に必要となるスキルを、社員がどこで学べるのか明確になっていますか?
✔ 社員が主体的に学べる文化を育てるために、どんな支援ができますか?

✅ 4. キャリアについての対話の場をつくる

社員がキャリアについて考えられる環境を整えることも、組織としての責任です。
特に、「これまでのキャリアプランが通用しなくなるかもしれない」 という不安を持っている社員に対しては、上司や人事が積極的に対話の場を作ることが重要です。

✅ キャリアについての対話を促す施策

  • 定期的な1on1ミーティング で、キャリアについて話す機会を設ける

  • 「キャリア対話会」 などの場を作り、他の社員の経験を学べる機会を提供する

  • 組織変更後の新しいポジションについて、実際に経験している人の話を共有する

  • 「あなたが望むキャリアに進むために、組織としてどうサポートできるか?」 という視点で関わる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は 「キャリアについて安心して相談できる場がある」 と感じていますか?
✔ 1on1や対話の場で、キャリアの不安を拾い上げる仕組みは整っていますか?
✔ 社員が 「この組織変更の中で、自分のキャリアをどう築くか」 を考えられる環境を作れていますか?

✅ まとめ

組織変更は、単にポジションが変わるイベントではなく、社員にとってのキャリアの転機 です。
そのために、
✅ キャリアパスを明確にし、社員が「自分の未来」をイメージできるようにする
✅ 変化を好まない社員に対して、適応しやすいサポートを提供する
✅ 成長機会を提供し、変化を「学びのチャンス」にする
✅ キャリアについて話せる場を作り、社員が前向きに行動できる環境を整える
これらのアクションを組み合わせることで、組織変更を「社員の成長につながる機会」に変えていくことができます。

第4章 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する

組織変更の際に起こる課題

組織変更が発表されると、社員の多くが業務面だけでなく、「人間関係の変化」 に対しても不安を感じます。

  • 「これまで一緒に働いていたメンバーと別の部署になってしまった…」

  • 「新しいチームで、自分はうまくやっていけるのか?」

  • 「誰に何を相談すればいいのかわからない」

こうした心理的な不安を放置すると、社員のモチベーションやパフォーマンスの低下につながる可能性があります。
そこで、組織として 「新しい環境でのつながりを意識的に作る」 ことで、社員が安心して適応できるようにサポートすることが重要です。

✅ 1. 交流の機会を意図的に設計する

組織変更後、「なんとなく仲良くなるのを待つ」ではなく、会社側が交流の機会を設計すること が求められます。
✅ 交流の機会を作るためのアクション

  • 「キックオフミーティング」 や 「オリエンテーション」 を実施し、新体制のビジョンを共有する

  • 部門間のコラボレーションを促進する ランチ会やオンライン交流会 を設ける

  • 雑談しやすい場(社内カフェスペース、チャットツールの雑談チャンネルなど) を活用する

  • 「新メンバー紹介」 を定期的に実施し、互いの理解を深める

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 新しい組織になった社員同士が気軽に交流できる仕組みを用意できていますか?
✔ 社員が安心して話せる場はありますか?
✔ 業務上の関係だけでなく、人間関係の構築をサポートできていますか?

✅ 2. 協働プロジェクトを活用し、自然な交流を生み出す

「話しやすい環境を作るだけ」 では、関係性の深まりが限定的になりがちです。
そこで、「協働する機会」 を増やし、自然な形で交流が生まれるようにすることが効果的です。

協働プロジェクトを活用するための施策

  • 小規模な ワーキンググループ を作り、新体制に関する意見交換の場を設ける

  • 部署を横断した プロジェクト を立ち上げ、異なるメンバーと協働する機会を増やす

  • ペアワークやメンター制度 を導入し、個別の交流を促す

  • 社内イベント(ワークショップ、アイデアソンなど) を活用して、チームワークを強化する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員同士が自然に関わる仕組みを作れていますか?
✔ 新しいチームの中で「共通の目標」を持てるようなプロジェクトを設計できていますか?
✔ 業務の枠を超えて、横のつながりを作るための工夫はありますか?

✅ 3. 心理的安全性を高め、意見が言いやすい環境を作る

新しい組織では、「何を言っていいのか、どう行動すればいいのか」がわからず、様子見する社員が多くなる傾向があります。
この状態が続くと、

  • 「周囲にどう思われるか不安で、意見を出せない」

  • 「新しいチームの中で発言しにくい」

  • 「指示がないと動きづらい」

といった状況になり、組織の成長が停滞します。
そこで、「心理的安全性」 を高めるための仕組みを整えることが重要です。

心理的安全性を高めるための施策

  • 「わからないことは聞いていい」「新しいアイデアを歓迎する」 という文化を組織が示す

  • リーダー自身も「完璧でなくていい」と伝え、挑戦する姿勢を見せる

  • 組織にとっても「変化に適応し、学び、成長する機会」になると考える

  • 1on1ミーティングやチームディスカッションを定期的に実施し、社員の意見を拾う

  • ミスを責めるのではなく、「学びの機会」として共有する場を作る

  • 「話しやすい環境」を整えるため、フラットなコミュニケーションを促進する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織のリーダーが「新しい環境に適応する姿勢」を見せられていますか?
✔ 社員が気兼ねなく発言できる場を設けていますか?
✔ 社員だけでなく、リーダー層が「変化をポジティブに受け入れる文化」を作れていますか?

✅ まとめ

組織変更後、社員が 「新しい人間関係の中で安心して働ける」 と感じることが、適応の鍵 になります。
そのために、
✅ 交流の機会を意図的に設計し、自然な会話が生まれる場を作る
✅ 協働プロジェクトを活用し、業務を通じたつながりを強化する
✅ 心理的安全性を高め、意見を言いやすい環境を整える
また、組織にとっても「新しい環境をつくる側」としての成長の機会 であることを意識することで、より主体的に関与できるようになります。
これらのアクションを組み合わせることで、新体制への適応をスムーズにし、組織全体の活性化を促すことができます。

第5章 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする

組織変更の際に起こる課題

組織変更は、発表して完了するものではなく、「新体制が定着し、社員がスムーズに適応できるまで続くプロセス」 です。
最初の数週間や数ヶ月で表面的には落ち着いて見えても、

  • 「役割の変化に慣れず、業務に支障が出ている」

  • 「新しい組織文化が浸透せず、部門間の連携がうまくいかない」

  • 「変化のストレスが、モチベーションやエンゲージメントの低下につながっている」

といった問題が水面下で進行することも珍しくありません。
だからこそ、組織変更後も継続的に社員の声を拾い、必要なフォローアップを行うことが不可欠です。

✅ 1. 定期的なフィードバックを収集し、適応状況を把握する

組織変更後、社員がどのように感じているのかを定期的に確認することが重要です。

✅ フィードバックを収集するためのアクション

  • 1on1ミーティング を活用し、現場のリアルな声を拾う

  • 匿名アンケート を実施し、組織変更への不安や課題を把握する

  • マネージャーやリーダーから、現場のフィードバックを集約する仕組み を作る

  • 「何か問題はありますか?」ではなく、「今の業務で困っていることは?」と具体的に聞く

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更後、社員が本音を話せる場を定期的に設けていますか?
✔ 社員の適応状況を把握する仕組みは整っていますか?
✔ 表面的な意見だけでなく、現場のリアルな課題を深掘りできていますか?

✅ 2. 評価の仕組みを柔軟に運用し、適応の負担を軽減する

組織変更により、新しい役割や業務プロセスに慣れるまでの時間が必要になります。
しかし、従来の評価の仕組みをそのまま適用してしまうと、社員に過度なプレッシャーを与え、適応の妨げになる 可能性があります。

評価の仕組みを見直すポイント

  • 短期的な適応期間を考慮し、評価基準を調整する

  • 「結果」だけでなく、「適応のプロセス」 も評価に含める

  • 現場の業務負担を把握し、適応に必要なリソースを提供する

  • 成果の評価だけでなく、「試行錯誤したこと」や「新しいチャレンジ」 を肯定的にフィードバックする

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更後、社員が過度なプレッシャーを感じないよう、評価基準を調整していますか?
✔ 短期的な成果だけでなく、適応のプロセスも評価できていますか?
✔ 評価の仕組みが形骸化せず、社員の成長を促進するものになっていますか?

✅ 3. 組織の健全性をチェックし、必要な改善を行う

組織変更後、「思っていたよりスムーズにいかない」「予想外の課題が発生している」 というケースは少なくありません。
そのため、組織として定期的に 「今の状態」 を振り返り、必要な改善を加えていくことが重要です。

✅ 組織の健全性をチェックする方法

  • 部門ごとに現状の課題を洗い出し、「組織変更前と比べて何が変わったか?」 を振り返る

  • エンゲージメントサーベイ を実施し、社員の満足度やモチベーションを測る

  • 経営層・リーダー層・現場社員の3層で意見交換を行い、方向性をすり合わせる

  • 「この変更は本当にうまくいっているか?」という視点で、継続的に改善を行う

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更の効果を定期的に評価し、改善する仕組みを作れていますか?
✔ 現場・管理職・経営層、それぞれの視点での意見をすり合わせていますか?
✔ 変更後の組織文化が、社員にとって働きやすいものになっているかを振り返れていますか?

✅ まとめ

組織変更の成功は、発表した時点ではなく、「新しい体制がスムーズに機能しているかどうか」 で決まるものです。
そのために、
✅ 定期的なフィードバックを収集し、社員の適応状況を把握する
✅ 評価の仕組みを柔軟に運用し、適応の負担を軽減する
✅ 組織の健全性をチェックし、継続的な改善を行う
この3つのアクションを実践することで、組織変更を 「一時的な変化」で終わらせず、社員の成長につながるプロセスにできる ようになります。
全文まとめの部分を、提案した5つの見出しに合わせて修正しました!

まとめ:組織変更を成功させるために組織がやるべき5つの施策

組織変更は、単なる「発表して終わり」のものではなく、社員が新しい環境に適応し、組織がスムーズに機能するまで続くプロセスです。
この変化を成功させるために、組織として取り組むべきポイントは以下の5つです。

✅ 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える
→ 社員が「自分ゴト」として変化を受け入れられるよう、伝え方を工夫する

✅ 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る
→ 確定した情報は早めに伝え、社員が不安を感じない環境を整える

✅ 「この変化で自分はどうなるのか?」という不安 → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する
→ 変化を「リスク」ではなく「成長のチャンス」と捉えられるようサポートする

✅ 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する
→ 人間関係の不安を軽減し、新しいチームの中で信頼関係を築ける仕組みを作る

✅ 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする
→ 定期的にフィードバックを収集し、柔軟な評価制度と組織改善を続ける

💡 組織変更を「成長のチャンス」にするために

組織が変わるとき、最も大切なのは 「人の適応」 です。
組織としての目的や戦略がどれほど優れていても、社員がその変化を 「自分ゴト」として受け止められなければ、組織変更の効果は最大化されません。

この変化を「組織の都合によるもの」として押し付けるのではなく、「社員の成長やキャリアの選択肢を広げる機会」 として伝え、支援することが重要です。

では、具体的に この変化をどう活かせばよいのか?

1️⃣ 社員一人ひとりが「自分の成長の機会」として捉えられるよう、適切な情報と支援を提供する。
2️⃣ 組織全体が変化を「短期的な負担」ではなく「長期的な進化のプロセス」として認識できるよう、ストーリーを設計する。
3️⃣ 新しい環境の中で社員同士のつながりを強め、心理的な安全性を高めることで、前向きな行動を促す。

組織変更は、ただの「変化」ではなく、組織と社員がともに成長するチャンス です。
この機会を 「主体的に活かす」か、「受け身で乗り切る」か で、組織の未来は大きく変わります。

最後に今すぐできる3つのアクションを提案します。

1. 組織変更に関する「伝え方」を見直す
• 社員の視点で納得感を得られる説明になっているか?
• 「なぜこの変更が必要なのか?」のストーリーは明確か?
2. 社員の不安を解消する「対話の場」を作る
• 情報共有の方法は一方通行になっていないか?
• 質問や不安を話せる場は十分に確保されているか?
3. 変化を「成長の機会」として捉え、支援策を考える
• 社員のキャリアパスをどのように支援できるか?
• 新しいチームの適応を促す施策はあるか?

組織の在り方を進化させるためにも、「変化を味方につける」視点を持ち、前向きに取り組んでいきましょう! 🚀

『役職は貸し衣装』という考え方が自律型の強い組織をつくる理由

1. はじめに:役職はゴールではなく道具である

「役職は貸し衣装」とある管理職のクライアントさんのコーチングセッションをしている時に出てきた言葉です。
これは、役職は一時的に与えられるものであり、それを使って何を成し遂げるかが重要だという考え方です。日本企業では、55歳前後で役職を退く「役職定年制度」を設けている企業が少なくありません。しかし、役職を自分の価値と誤認してしまうと、定年後にモチベーションが低下し、組織全体の活力が失われる可能性があります。
最近では役職定年制度を廃止する企業も増えてきています。この背景には、労働力人口の減少や経験豊かなシニア人材の活用といった課題があります。特に、年齢に関わらず実力や成果で評価する動きが強まっており、役職定年制度の見直しが進んでいます。
コーチングを通じて多くの企業の支援をしていて感じるのは、これらの理由に加えて、役職定年を迎えた方達のモチベーションの低下も役職定年制度廃止の流れの理由になっていると感じます。
本来、役職定年制度には次世代リーダーの育成や組織の新陳代謝を促進するというメリットがあります。新しい視点や発想を取り入れ、組織全体の活力を維持するための仕組みとして導入されてきました。

2. 役職に依存するリーダーのリスク

役職に依存するリーダーには、次のようなリスクがあります。

2-1. 指示待ち部下の増加

役職者が立場を利用して「自分の言うことを聞かせる」姿勢で部下と向き合うと、部下は指示を待つ受動的な姿勢になりがちです。自分で考え、行動する文化が育たず、イノベーションの芽が摘まれてしまいます。

2-2. 役職定年後のモチベーション低下

役職を「自分の価値」と捉えてしまうと、定年後に役割を失ったと感じ、自己肯定感が低下します。その結果、組織への貢献意欲が減退する可能性があります。

2-3. 部下の成長機会の減少

本来のリーダーシップを発揮できていない役職者が自己承認のために業務を抱え込むと、部下が成長する機会が失われ、次世代のリーダー育成が遅れてしまいます。

3. 貸し衣装としての役職を受け入れるメリット

では、役職を貸し衣装と捉えた場合、つまりは役職は自分自身ではなく組織やチームをより良くするためのもので、自分はその道具を預かっているのだという捉え方をした場合には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

3-1. 自分の強みや経験をフル活用できる

「役職を任された今、自分には何ができるのか?」と考えることで、主体的に行動する意識が芽生えます。役職という「道具」を使って、組織に価値を提供しようとする姿勢が生まれるのです。

3-2. 組織への貢献意識の向上

役職を道具として捉えれば、「役職がなくなった後も組織に貢献できることは何か?」と考えるようになります。その結果、役職定年後も社内外で活躍する人材が育つ可能性が高まります。

3-3. 自律的な組織文化の醸成

役職に依存しないリーダーシップを持つ人材が増えると、役職に関係なく意見を出し合い、挑戦する文化が育ちます。組織はより柔軟で成長志向の強いチームへと進化します。

4. 役職に依存しないリーダーシップを育む4つのアプローチ

役職に依存しないリーダーシップを育てるためには、例えば次の4つのアプローチが効果的です。

4-1. 「役職は期間限定のミッション」というマインドセットを浸透させる

役職は「組織から託されたミッション」であり、永遠のものではありません。研修やコーチングを通じて、「任期中に何を成し遂げるか」を考えさせる機会を設けることが大切です。

ワークショップ例

  • 自分の役職があと1年で終わるとしたら、何を優先するか?

  • その役職を引き継ぐ後継者に何を伝えたいか?

4-2. 「ミッション評価制度」を導入する

上席と協議をして自分の役職のミッションを定義し、進捗や成果を定期的に振り返る評価制度を導入します。これにより、役職期間中の成果が可視化されるだけでなく、役職後もその経験が次のステージで活かされる基盤が作られます。

  • 評価のポイント例:

    • 役職期間中にどのような組織的変化を促進したか

    • 部下の成長をどのように支援したか

    • 役職後に引き継ぐべき知見や成果物をどのように残したか

4-3. 後継者育成の「貸し衣装試着体験」を設ける

若手リーダーに、プロジェクトリーダーや重要な会議での発表を任せる機会をつくり、「役職体験」を提供します。仮の役職でも、実際にその役割を経験することで、自分のリーダーシップスタイルや強みが見えてきます。

4-4. 「貢献の可視化」、「失敗を許容する文化」「チャレンジを称賛する文化」を育てる

役職の有無に関わらず、組織に貢献した人を称賛する文化を育てます。加えて、挑戦した結果の「失敗」も成長のための重要な経験として認め、許容する文化を醸成します。

具体的な取り組み例:

  • チャットツールでの「いいね」機能を活用して、成功事例だけでなく、挑戦したプロセスを共有し称賛する。

  • 社内表彰制度を見直し、チャレンジ精神を発揮した取り組みを積極的に表彰する。

  • 失敗談を共有する「チャレンジミーティング」を定期開催し、挑戦しやすい心理的安全性を確保する。

5. 役職定年制度を超えたリーダーシップの可能性

このような取り組みを通じて、社内のリーダーシップが醸成されれば、そもそも「役職定年制度」が導入された理由である 次世代リーダーの育成組織の新陳代謝の促進 といったメリットが自然に達成されます。

一方で、役職定年制度を廃止する企業が増えている背景には、経験豊かなシニア人材の活用役職定年を迎えた方たちのモチベーション維持・向上 という目的があります。

こうしたアプローチにより、役職定年制度を維持する企業 であっても、廃止を選んだ企業 であっても、組織の活性化や人材の成長促進といった共通のメリットを享受できると考えられます。

6. まとめ:役職を超えて、組織に何を残すか

役職は「貸し衣装」みたいなものです。着ている間は、その道具を最大限に活用し、組織に貢献する。その意識が、リーダー個人の成長につながり、組織全体を強くします。

役職という道具は、「自分が何を得るか」ではなく、「何を組織に残せるか」を考えるためにあるものです。これを「貸し衣装」として受け取り、期間限定のミッションに全力で取り組む姿勢が、リーダーの本質的な力を育みます。

また、役職定年制度を維持する企業 にとっても、廃止を選んだ企業 にとっても、リーダーシップ醸成の取り組みは重要です。役職を「貸し衣装」という道具と捉え、その期間を最大限活用する意識があれば、制度に関係なく組織は成長していくでしょう。

こうした個々の意識変化が、結果として組織全体の柔軟性や主体性を高め、強い組織を育むことにつながるのです。

あなたが「貸し衣装」という道具を脱ぐとき、どんな価値を組織に残しますか?

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