調子が上がらないときの“整える技術”。感情・現象・環境の扱い方

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最近、とあるエンジニアの方とのコーチングセッションで、
「ここ数日、少しパフォーマンスが下がってきていて…」という話題が出ました。

これまでも、ときどき似たテーマを扱ってきましたが、
そのたびに「どう整えていけばいいか」をまじめに考え、
丁寧に向き合おうとする姿勢が印象的な方です。

話を伺いながら、
「こうした状態の揺れは、誰にでも起きることだ」と改めて感じました。
どれだけ誠実に仕事に向き合っている人でも、
ふっと流れが重くなるような時期があります。

そして、その“動きにくくなる時間”は、
自分の状態を知るためのサインにもなります。

この記事では、
そのセッションで整理した“整えるための3つの視点”をもとに、
エネルギーの流れが滞ったときの向き合い方をまとめました。

もし今、調子がどこかしっくり来ないと感じているなら、
そっと読み進めてもらえたら嬉しいです。

【はじめに】

どれだけ真剣に仕事に向き合っている人でも、
モチベーションが落ちる時期はあります。

頭では「やらなきゃ」とわかっていても、体が重い。
タスクを前にしても気持ちが乗らない。
そんな日々が続くと、「自分はダメなんじゃないか」と
心の中でつぶやいてしまうこともあります。

でも、それは“あなたの中のエネルギーの流れが止まった”のではなく、
静かに整えるタイミングなのかもしれません。

現場で真面目に取り組んでいる人ほど、
「ちゃんとやらなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と思う気持ちが強く、
停滞した自分を責めてしまいがちです。

けれど、**ネガティブな状態は避けるものではなく、“扱うもの”**です。
それは、心のメンテナンスのようなもの。
とくに感情の動き方や働き方を知り、整えることで、再び前に進む力が戻ってきます。

この記事では、
そんな「停滞期」を、“整える時間”として捉え直すためのきっかけに利用する
3つの視点を紹介します。

焦って動くよりも、立て直す。
自分を責めるよりも、自分の状態を整える。
静かな時間の中で、自分のエネルギーを取り戻すヒントになれば幸いです。

第1章|ネガティブな思考を“止めよう”としない

感情の波が落ちている時ほど、
「こんなふうに考えちゃいけない」と、自分の中のネガティブを押さえつけようとします。
でも、その行為自体が、心の負担をさらに大きくしてしまうことがあります。

ネガティブな思考は、あなたにきっかけをくれるサインのようなもの。

たとえば、
• 不安は、「情報や準備が足りていないかもしれない」というサイン。
• 焦りや苛立ちは、「何かがずれている」「アプローチを変えるタイミングかもしれない」というサイン。
• 無力感は、いったん立ち止まり、物事の捉え方の解像度を上げるタイミングというサイン。

つまり、どの感情も“何かを伝えようとしている”のです。
それを無理に消そうとするのは、車の警告ランプから目をそむけて走り続けるようなもの。
大事なのは、現状を把握すること。

たとえば、
「ちょっと不安が大きいな」
「今、自分は焦ってるな」
そう気づくだけで、感情の流れに巻き込まれにくくなります。
感情に名前をつけることで、自分が思考を“見ている側”に戻れるからです。

それは、仕事のトラブルシューティングにも似ています。
現象だけを見て対処しても、本質にはたどり着けません。
現象を観察し、ログを取り、パターンを読み取る。
そのプロセスの中で、ようやく“何が本当に起きているのか”が見えてくる。
感情の扱い方も同じで、観察→理解→調整の順序を踏むと、流れは自然に整っていきます。

ネガティブを否定する必要はありません。
「今は、そう感じている自分がいるんだな」と一歩引いて見つめる。
それが、心のエネルギーを再び動かす最初のステップになります。

第2章|感情・現象・環境の3層で見る

ネガティブな状態を整理するとき、
多くの人は“感情”だけに注目してしまいます。
「不安だ」「焦っている、苛立っている」「無力感を覚える」──
けれど、その感情だけを見つめ続けると、かえって視野が狭くなり、
状況の全体像を見失ってしまうことがあります。

感情は大切なサインですが、それは現象と環境の上に生まれているものです。
つまり、「環境」→「現象」→「感情」という順に影響が生まれます。
一方で、人は感情をきっかけに現象や環境を受け取ります。
ここでは、人が感じる流れにそって、感情から外側へと視野を広げる順で整理していきます。

① 感情|内側で何が起きているかを知る

最初に見るのは「自分の内側」。
不安、焦り・苛立ち、そして無力感といった感情をサインとして受け取ります。
ここで大切なのは、感情を良い・悪いで判断せず、
その感情がどんなサインかを見極めることです。

② 現象|実際に何が起きているのかを見る

次に焦点を当てるのは“外側の出来事”。
タスクの滞り、人間関係の変化、体調の乱れ──
感情の背後には、必ずトリガーとなった具体的な現象があります。
感情と現象を切り分けて見ることで、
「今の自分は何に反応しているのか」がクリアになります。

③ 環境|その現象が起きている“場”を捉える

最後に見るのは、現象が起きている環境。
仕事の量やチームの雰囲気、季節の変化、生活リズムなど、
背景にある環境が整っていないと、どんなに努力しても感情は揺らぎます。
ここを見落とすと、“頑張る”ことが空回りしてしまう。

この3層を整理すると、
たとえば「最近不安を感じる」「焦って空回りしてしまう」「何をしても力が入らない」といった感情の裏にも、
• 感情: 不安・焦り・無力感
• 現象: 仕事が滞っている、タスクが増え続けている、役割の影響範囲が大きい
• 環境: 業務量が多い、営業がとってくる仕事のコントロールができていない、上長とのコミュニケーションが不足しがち
といった構造が見えてきます。

すると、「感情をどうにかしよう」と無理に動く前に、
“現象や環境を整えるだけで自然に感情が整う”ことがあると気づくのです。

感情を起点にして、現象と環境を客観的に観察する。
この3層で見る習慣が、エネルギーの流れを静かに整えていきます。

第3章|“整える”とは、流れを取り戻すこと

感情の正体を理解し、現象や環境を整理していくと、
次に大切になるのが「整える」というプロセスです。

整えるとは、
焦って無理に“変える”ことではなく、
本来の流れを取り戻すこと。

滞っていた思考やエネルギーが少しずつ動き出し、
“自然に動ける状態”を再びつくっていくことです。

① 小さな完了を「積み上げる」

エネルギーの流れを戻す最初の一歩は、
「できたこと」を自分に伝えていくこと。

たとえば、
・メールを一件返信できた
・机の上を片づけられた
・資料の1ページだけ修正できた

──これら一つひとつは小さな“完了”です。
「この完了できている自分を自分に伝えていきます。
その積み重ねが、次の一歩を動かす力になるからです。」

② 外の流れを“取り戻す”

整えるというのは、
自分の内側だけで完結することではありません。

停滞しているときほど、
外とのつながりを再び流すことが大切です。

たとえば、
• 業務量が多いときほど、優先順位を共有し、チーム全体で負荷を見える化する。
• 営業がとってくる仕事の影響範囲が読めないときは、早めにスコープや納期を相談する。
• 上長とのコミュニケーションが不足していると感じたら、短くても定例の確認時間をつくる。

こうした“小さな調整”が、
「自分だけで抱えていたもの」を外に流し、
思考と感情の循環を取り戻してくれます。

③ 「土台を整える」ことも流れを戻す

そしてもうひとつの“整える”は、自分の土台をメンテナンスすること。

たとえば、睡眠、食事、光、音、空気──
これらは意識していなくても、
私たちの集中力や感情の安定に深く関わっています。

業務量の調整やタスクの見直しと同じくらい、
“土台を整える”ことが、
感情の流れを安定させる最も確実な支えになります。

焦って動こうとする前に、
まずは小さく完了し、外とつながり、土台を整える。

この3つを繰り返すことで、
止まっていた流れは、自然と戻り始めます。

整えるとは、動き出せる自分をつくること。

そのプロセス自体が、
あなたの中のエネルギーを静かに整えていきます。

エピローグ|静かに整う時間の中で

エネルギーの流れが滞るとき、
私たちはつい「早く戻さなきゃ」と思ってしまいます。
けれど、本当は“整う時間”そのものが、
次の流れを生み出す準備なのかもしれません。

不安、焦り、無力感などからのサインを受け取りながら、
小さな完了を積み重ね、
周囲との関係と、自分の土台を少しずつ整えていく。
その過程の中で、
心や身体は静かにバランスを取り戻していきます。

整うとは、
「何もしない時間」を持つことではなく、
「今の自分を観察する余白」を持つこと。

頑張って動こうとしなくても、
丁寧に整えることで、自然な流れが生まれてきます。
その瞬間のために、
まずは呼吸を深くするところから始めましょう。

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「優しいね」と言われてきたあなたへ──“らしさ”を自分で選び直すということ

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1. はじめに

「優しいね」「しっかりしてるね」「落ち着いてるね」。
昔から、よくそんなふうに言われてきた。

もちろん、それを言ってもらえるのは嬉しいし、ありがたい。
実際、自分でも「そうありたい」と思ってきた部分はあるし、
その評価に違和感があるわけでもない。

でも時々、ふと考えることがある。
──これは“私”そのものなのか、それとも“役割”として身につけてきたものなのか。

たとえば、家族の中で自然と空気を読んだり、
職場で相手に合わせて言葉を選んだり。
気づけば「そう振る舞ってきた自分」がいて、
それがそのまま“評価”になっている気がする。

今回の記事では、そんな“長女っぽい”私を自認しているとあるクライアントさんが、
他者からの評価をどう受け取り、それをどう自分の中に位置づけていくのか

コーチングセッションで一緒に見つめ直した、そのプロセスをご紹介します。

2. 「長女っぽい」と言われる私のこれまで

今回ご紹介するクライアントさんは、自分のことを
「長女っぽいって、よく言われます」と表現しました。

話を聞いていくと、それが決してネガティブな意味ではなく、
これまでの人間関係の中で自然に身につけてきたスタイルであることが伝わってきました。

子どものころから
「しっかりしてるね」「空気が読めるね」「よく人に譲っているよね」と
言われることが多かったそうです。

特別頑張ってそうしてきたわけではないけれど、
気づけば人に気を配り、場に合わせて振る舞うことが“当たり前”になっていた。

その延長にあるのが、今の職場での評価です。
「優しい」「頼りになる」「落ち着いてる」など、周囲からの信頼を集めている。
そしてご本人も、その評価を概ね納得し、むしろ「ありがたいこと」として受け止めている。

ただ、そのうえでふと立ち止まったんです。
「これって本当に“私らしさ”なんだろうか?」
「もし私が“長女っぽくない人”だったら、どう振る舞っているんだろう?」と。

こうした問いは、自己否定から生まれるものではなく、
むしろ「今の自分を見つめ直す」という前向きな探求心から出てきたものでした。
そしてこの探求が、他者評価を“外の声”ではなく“自分の選択の結果”として受け止めていくプロセスの入口になっていきます。

3. 「落ち着いてるね」の奥にある感情と行動

クライアントさんは、職場でもよく「落ち着いているね」と言われるそうです。
プレッシャーがかかる場面でもいい意味でマイペースで、周囲に安心感を与えている──
そうした印象を持たれていることに、ご本人も納得している様子でした。

でも、本人の内側ではこんな感覚の時もあると言います。

「実はけっこう、焦ってるんですよね。
でも表に出さないようにしてるというか、
たぶん、出ないように“してる”んです。」

この言葉が出てきたとき、「落ち着いている」という状態の中には
“感情”と“行動”の二層構造があることが浮かび上がってきました。

外から見えるのは「行動としての落ち着き」。
でもその内側には、「揺れ」や「戸惑い」といった感情がある。
それらを無理に押し殺しているわけではないけれど、
ちゃんと見極めて、自分の中で「整える」ようにしている。

つまり彼女は、感情を“なくしている”のではなく、
感情を抱えたままでも、落ち着いて行動できる状態を
自分なりに作っていたということです。

この気づきは、彼女にとっても大きなものでした。
「ちゃんと感じてる自分」も、「落ち着いて動けている自分」も、
どちらも間違いなく自分なんだと認められたことで、
それまでよりも少しだけ、肩の力が抜けたように感じました。

4. 優しさと境界線──どちらも守っていい

クライアントさんは、「人に優しくしたい」という気持ちをとても大切にしている方です。
職場でもプライベートでも、相手の気持ちを思いやって接している。
その姿勢が、周囲からの「優しい」「気が利く」「頼りになる」といった評価にもつながっています。

でも、その“優しさ”が、時に自分自身を苦しくさせてしまうことがある。
たとえば、本当は余裕がないのに「大丈夫です」と言ってしまったり、
誰かのために行動しすぎて、自分の時間やエネルギーがすり減ってしまったり。

こんなふうに語ってくれました。

「“いい人でいたい”というより、“そういう自分でいたい”という気持ちなんです。
でも、その分、自分に無理させてるときがあるのもわかってて……。
気づかないうちに、自分の境界線が薄くなってるなって思うときがあるんです。」

この気づきもまた、とても大切なものでした。

人に優しくすることと、自分の境界線を守ること。
この2つは、相反するものではなく、両立していていいもの。
むしろ、自分をすり減らさずに人に接するためには、
「どこまでなら心地よく関われるか」という“優しさの半径”を知っておくことが必要なのかもしれません。

そして、それを知ることは、「自分を大切にする」という選択でもあります。
自分を雑に扱ったまま、他者に丁寧には接し続けられないからこそ──
優しさと境界線、どちらも守っていい。
このシンプルだけど奥行きのある前提を、彼女は少しずつ自分の中に育てはじめていました。

5. 評価は“土台”にも“呪縛”にもなる

「優しいね」「落ち着いてるね」「しっかりしてるね」──
クライアントさんが受け取ってきた評価は、どれも温かく、信頼のこもったものです。
そしてそれは、まさに彼女がこれまでしてきた選択と行動の積み重ねに対する“結果”でもあります。

本人が意識していたかどうかにかかわらず、
彼女は周囲に安心感を与えるような振る舞いを、自然と選んできた。
だからこそ、その評価に納得できるということは、
「そうしたくて、そうしてきたんだって、自分でも思えること」
という自分への信頼でもあるんです。

こうした見方に立つと、評価というものは
“他人から与えられるラベル”ではなく、
**「自分が育ててきたひとつの結果」**として捉え直せるようになります。

ぼくが一番大切だと思うのは、

自分の選択を肯定しながら、これからの選択も自由にできる。

ということ。

今までは「しっかりしてなきゃ」「落ち着いて見られてるから」──
そんな無言の期待に応えようとしていたかもしれない。
でも、評価を「過去の自分が築いてきたもの」として受け止められたとき、
そこに縛られる必要はないことにも気づけたんです。

「そういう自分でありたい」と思えば、これからもそうしていける。
でももし違う選択をしたくなったら、それも自分で決めていい。
評価を“自分の軸”にしながらも、進む方向は自由に選んでいい。

彼女の中に、そんな柔らかくもしなやかな自覚が芽生えていくのを感じました。

6. おわりに

「長女っぽいよね」と言われてきた彼女には、
人を思いやる力や、場を整える力が、自然と備わっていました。
そしてその力は、彼女自身が無意識のうちに選び、磨いてきたものでもあります。

他者からの評価は、外側からのラベルに見えるかもしれません。
でもそれは、自分が選んできた行動や姿勢の“積み重ね”に対する反応でもある。
だからこそ、その評価に納得できるということは、
**「私はそうしたくて、そうしてきた」**という自分への肯定でもあるんだと思います。

ただ、どんなにその評価がポジティブなものであっても、
それに縛られ続ける必要はありません。

これまでを肯定しながら、これからの選択は自由にできる。
そう思えることが、ほんとうの意味で「自分らしさ」を大切にするということかもしれません。

ぼくは、彼女のその姿勢にとても希望を感じました。

さて、ここまで読んでくださったあなたに、ひとつだけ問いかけを残して終わりにします。

あなたが今、大切にしている“らしさ”は、どんな選択の積み重ねからできていますか?

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期待されはじめた自分に戸惑ったら──思考と感情の渋滞をほどくシンプルな方法

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最近、仕事の幅が広がってきた。

上司や先輩からの期待も感じる。

それ自体は嬉しいけれど、なぜか思考がまとまらず、気づけば頭も気持ちもパンパンに…。

本記事では、そんな“前向きだけど動きづらい”状態に陥ったとき、思考と感情の渋滞をほどくためのシンプルな整理法を紹介します。

「なんとなくうまく進めない」と感じている方に、実践しやすいヒントをお届けします。

1. はじめに

「最近、ちょっと任される仕事が増えてきたな」
「ありがたいことに、周りからの期待も感じる」
そんな実感が芽生えてくる時期って、ありますよね。

もちろん、前向きな気持ちがないわけじゃない。
むしろ、今の状況をちゃんと受け止めて、しっかり応えていきたいと思ってる。
でもその一方で──

「なんだか最近、頭の中がずっとごちゃごちゃしてる」
「気持ちは前に向いてるのに、思ったより体が重たい」
「なんとなく、いろんなことに“追いついてない”感じがする」

そんな感覚を抱えながら、日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。

それは決して「能力が足りない」からではなく、
シンプルに新しい状況での思考にまだ慣れていないだけ。
そこに「もっと応えたい」「自分ならできるはず」という前向きな気持ちが重なって、
気づけば、頭の中で思考と感情が渋滞しているような状態になるんです。

ぼく自身、これまで多くのビジネスパーソンのコーチングをしてきましたが、
この「期待されているのはわかる。嬉しい。けど、しんどい」という状況は、
20代後半の“これから伸びていく人たち”にとてもよく見られる現象だと感じています。

これはむしろ、成長のフェーズに入ったからこそ起こる自然な反応。
だからこそ、その波に押し流される前に、整理する力を身につけておくことが大切です。

この記事では、そんな「整理したいけど、何から手をつければいいかわからない」状態に向き合うために、
・今どんなことが頭の中で起きているのか?
・どうすれば“整理された自分”を取り戻せるのか?
・忙しい日々の中でもできる、小さな習慣とは?
というテーマで、一緒に考えていきたいと思います。

期待に応えたい。
でも、自分のペースも大切にしたい。
そんなあなたの、少しだけ立ち止まる時間になれたら嬉しいです。

2. やりがいと混乱は、セットでやってくる

「仕事、面白くなってきたな」
「やってみたいことに、手が届くようになってきた」
そんな前向きな手応えがあるときこそ、不思議と
「なんだか思うように動けない」
「集中しようとしても、途中で意識が散ってしまう」
──そんな“混乱”もセットでやってくることがあります。

これは決してネガティブなことではありません。
むしろ、**今のあなたが“前に進もうとしている証拠”**なんです。

やりがいがある、期待もされている。
でも、そのぶん“考えること”も、“選ぶこと”も、一気に増えてくる。

たとえば──
• 自分で判断しなきゃいけない場面が急に増える
• 関係者が増えて、情報も指示もあちこちから飛んでくる
• 一つの作業の裏にある「意味」や「責任」が重く感じるようになる

こういった状況が重なると、頭の中で自然と“整理のバッファ”が足りなくなってくるんです。

しかも、あなたはそれを前向きに受け止めている
「なんとか応えたい」
「ちゃんとやりたい」
そう思えば思うほど、自分の中で無意識にスピードを上げようとしてしまう
そして、そのスピードと処理量がアンバランスになったとき、
心や身体が「ちょっと待って」とブレーキをかけ始める。

これが、“やりがいがあるのに、うまく進めない”状態の正体です。

でも大丈夫。
この状態は、“実力不足”や“失敗”の前兆なんかじゃない。
ただ今のステージに、自分の思考のスタイルがまだ追いついていないだけなんです。
そして、それはほんの少し整理の仕方を変えるだけで、ぐっと変わることも多い。

次の章では、
「じゃあ今、自分の頭の中でどんなことが起きているのか?」を、
もう少し具体的に解きほぐしてみましょう。

3. 頭と感情の渋滞の正体は?

「なんとなくスッキリしない」
「優先順位が決められない」
「やることはわかってるのに、手が動かない」

──そんなとき、実際にあなたの頭の中では何が起きているのでしょうか?

ぼくがこれまで多くのビジネスパーソンと向き合ってきたなかで感じるのは、
この状態には**いくつかの“典型パターン”**がある、ということです。

① 情報と感情がごちゃ混ぜになっている

やらなきゃいけない仕事、気になること、ちょっと不安なこと。
それらがすべて「ひとまとまりのモヤ」として頭の中に漂っている。

明確に言語化されていなかったり、タスクリストに整理されていないと、
ただなんとなく「重たい」「落ち着かない」感じだけが残るんです。

② 「考えること」と「決めること」が混線している

• 情報を集めているつもりが、ずっと迷っている
• 判断する前に、あれもこれもと調べすぎてしまう
• 決断したつもりだけれど、「これでよかったのか?」と考え直してしまう

こういう状態もよく見られます。
頭の中で**“思考のプロセスが渋滞”**しているイメージですね。

③ 目に見えない“期待”や“プレッシャー”がずっと脳内にある

「この案件、ちゃんとやりきれるかな」
「次のステップを見据えた動き、できてるかな」
「期待されてるから、ちゃんと応えたい」

──こうした気持ちは、とても自然なものです。
でも、これが**無自覚な“背景ノイズ”**のようにずっと流れていると、
エネルギーを想像以上に消費してしまいます。

こうして、思考の中に混線やノイズが増えていくと、
実際のタスクはそれほど多くない日でも「疲れた」「もう動けない」と感じてしまうんです。

でも大丈夫。
この状態は、“実力不足”や“失敗”の前兆なんかじゃない。
ただ今のステージに、自分の思考のスタイルがまだ追いついていないだけなんです。
そして、それはほんの少し整理の仕方を変えるだけで、ぐっと変わることも多い。

次の章では、
この「頭と感情の渋滞」をほどくための、実際の整理ステップを紹介していきます。

4. 整理のための3ステップ

ここまで読んで、「たしかに今、自分の中で何かが混線してるかも」と感じた人もいるかもしれません。
でも安心してください。
この状態を解きほぐすのに、特別なツールやスキルは必要ありません。
ちょっとした視点の切り替えと、3つのシンプルなステップで、頭と気持ちの“余白”を取り戻すことができます。
ここからは、この状態を解きほぐすための、誰でも今すぐできる3つのステップを紹介しますね。

ステップ①:頭の中のことを、いったん“全部外に出す”

まずはここから。
ノートでも、スマホのメモでも、なんなら紙の裏でも構いません。
「今、自分の頭にあること」をとにかく全部書き出してみてください。

・やるべきタスク
・気になっていること
・未完了のやりとり
・やらなきゃと思ってるけど先送りしてること
・最近ひっかかってる感情や、引っかかってないけどなんとなく気になること

整理しようとせず、順番も無視してOK。
大事なのは、頭の中に“見えないかたまり”として存在していたものを可視化することです。

ステップ②:「意味」でまとめず、「構造」で分類する

書き出せたら、次は軽く仕分けてみましょう。
このときのポイントは、“意味”や“目的”でまとめようとしないこと。

たとえば──
• プロジェクト別に分ける
• 関係者ごとに分ける
• 今週中に終わること/長期的に考えること
• 外部とのやりとりが必要なもの/自分だけで完結できるもの

など、「構造」や「処理の性質」で分類するとうまくいきます。
頭の中で“ごちゃっと一塊になっていたもの”が整理されるだけで、
不思議と気持ちにも余裕が出てくるはずです。

ステップ③:「不安」や「焦り」ではなく、“今のボトルネック”を基準にする

最後に、「じゃあ、何から手をつける?」という問いに戻ってきたとき。
ここで大切なのは、感情ベースで優先順位を決めないことです。

「不安だから、これをやらなきゃ」
「やってないことで気まずくなるから、こっちを先に」

──このような“気持ち基準”は、頭の中をまた混乱に戻してしまいます。

そうではなくて、
「いまの自分の動きが止まっている一番の原因は何か?」
を探してみてください。
それがタスクであれ、迷っている決断であれ、感情であれ、
一番のボトルネックを1つだけ選ぶ。

そしてその上で、そのタスクの「最初の3ステップ」を書き出してみるのがおすすめです。
それぞれのステップは、**“5分で終わるぐらいの小ささ”**が理想。

たとえば──

・メールの下書きを開くだけ
・必要な資料のファイル名を調べる
・依頼する相手に「5分だけ相談させて」と声をかける

そんな“はじめの一歩”だけで、ぐっと動き出せる感覚が戻ってきます。

この3つのステップを「すべて完璧にやる」必要はありません。
たとえば、ステップ①の書き出しだけでも効果はあります。
大事なのは、**思考と感情をごちゃ混ぜのまま抱え込まず、“一度ひらいてあげること”**です。

次の章では、この整理を日常の中で“習慣化”していくための、小さな工夫についてお話しします。
一度スッキリした自分を、どうやって保っていくか──そこが、安定感のある成長の鍵です。

5. 忙しいときでも整え直せる“小さな習慣”

頭の中をいったん外に出して整理してみると、
「思っていたより少ないな。ただごちゃごちゃしてただけだった」
──そんなふうに感じる人も多いかもしれません。

でも、日々の忙しさのなかで、
この“整理の時間”を毎回丁寧に取るのは、正直むずかしい。

だからこそ大事なのが、日常に組み込める“小さな習慣”を持っておくことです。
ここでは、そんな習慣を3つ紹介します。

習慣①:朝イチに「脳内メモ」を3つ書く

朝の仕事前に、スマホでも手帳でもOK。
「今、気になってること・やろうとしていること・止まっていること」を3つだけ書き出す。

このときの目的は「全部を管理すること」ではなく、
“今の自分の思考の中心にあるもの”を浮き彫りにすること

1日のスタートに“自分の内側”を整理しておくと、
その日1日がぐっとスムーズに回り始めます。

習慣②:「ひとこと棚卸しタイム」を1日1回つくる

夜や仕事終わりに、ほんの5分でもいいので、
**「今日いちばん意識が引っ張られていたのは何か?」**をひとことで書いてみてください。

・朝のミーティングの件がずっと気になっていた
・納期が重なっている案件が頭から離れなかった
・やろうと思っていたのに、着手できなかったことがある

気づきの言語化は、脳にとっての“クールダウン”。
溜まっている情報や感情が「見える化」されるだけで、脳の疲れがスッと引いていきます。

習慣③:「動ける自分」の再起動スイッチを持っておく

どうしても動けないときや、頭が混乱しているときのために、
自分にとって“動ける状態に戻るためのスイッチ”を用意しておくのもおすすめです。

たとえば──

・お気に入りのカフェで5分間、何も考えずにコーヒーを飲む
・いつものBGMをかけて、深呼吸してからパソコンを開く
・「まず1個だけ」チェックリストに✓を入れてから本格始動する

人は「きっかけ」があると、思った以上にすぐ切り替えられるもの。
ルーティンではなく“リカバリーのトリガー”になる動作を1つ持っておくだけでOKです。

習慣というと、どうしても“続けなきゃいけないもの”に感じてしまうかもしれません。
でもここで大事なのは、「日常の中に織り込める、整え直す選択肢を持っておくこと」。

完璧じゃなくていい。
でも、自分に戻れる場所をちゃんと知っておくこと。

それが、忙しさの波に飲まれず、長く心地よく働き続けるための力になります。

6. おわりに

仕事の幅が広がってきた。
周りからの期待も少しずつ感じるようになってきた。
──それは、あなたがちゃんと成長してきた証だと思います。

でもそのぶん、
頭の中は忙しくなり、感情も揺れやすくなって、
「自分って今、ちゃんと前に進めてるのかな?」と
立ち止まることもあるかもしれません。

そんなとき、思い出してほしいのは──
“やる気”や“覚悟”だけで進み続けなくても大丈夫だということ。
むしろ、一度立ち止まって整理することが、次に進むエネルギーをつくることもあるんです。

整理する力は、成長する力とつながっています。
「今、こんな状態だな」と把握できることは、もうすでに前に進んでいる証拠。

完璧じゃなくていい。
まずは頭の中を少しだけ“ひらいてみる”ことから始めてみませんか?

その小さな一歩が、
今の自分にちゃんと合ったペースで、前に進んでいく力になっていきます。

ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
この記事が、あなたの「今」と「これから」をつなぐヒントになれば嬉しいです。

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