期待されはじめた自分に戸惑ったら──思考と感情の渋滞をほどくシンプルな方法

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最近、仕事の幅が広がってきた。

上司や先輩からの期待も感じる。

それ自体は嬉しいけれど、なぜか思考がまとまらず、気づけば頭も気持ちもパンパンに…。

本記事では、そんな“前向きだけど動きづらい”状態に陥ったとき、思考と感情の渋滞をほどくためのシンプルな整理法を紹介します。

「なんとなくうまく進めない」と感じている方に、実践しやすいヒントをお届けします。

1. はじめに

「最近、ちょっと任される仕事が増えてきたな」
「ありがたいことに、周りからの期待も感じる」
そんな実感が芽生えてくる時期って、ありますよね。

もちろん、前向きな気持ちがないわけじゃない。
むしろ、今の状況をちゃんと受け止めて、しっかり応えていきたいと思ってる。
でもその一方で──

「なんだか最近、頭の中がずっとごちゃごちゃしてる」
「気持ちは前に向いてるのに、思ったより体が重たい」
「なんとなく、いろんなことに“追いついてない”感じがする」

そんな感覚を抱えながら、日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。

それは決して「能力が足りない」からではなく、
シンプルに新しい状況での思考にまだ慣れていないだけ。
そこに「もっと応えたい」「自分ならできるはず」という前向きな気持ちが重なって、
気づけば、頭の中で思考と感情が渋滞しているような状態になるんです。

ぼく自身、これまで多くのビジネスパーソンのコーチングをしてきましたが、
この「期待されているのはわかる。嬉しい。けど、しんどい」という状況は、
20代後半の“これから伸びていく人たち”にとてもよく見られる現象だと感じています。

これはむしろ、成長のフェーズに入ったからこそ起こる自然な反応。
だからこそ、その波に押し流される前に、整理する力を身につけておくことが大切です。

この記事では、そんな「整理したいけど、何から手をつければいいかわからない」状態に向き合うために、
・今どんなことが頭の中で起きているのか?
・どうすれば“整理された自分”を取り戻せるのか?
・忙しい日々の中でもできる、小さな習慣とは?
というテーマで、一緒に考えていきたいと思います。

期待に応えたい。
でも、自分のペースも大切にしたい。
そんなあなたの、少しだけ立ち止まる時間になれたら嬉しいです。

2. やりがいと混乱は、セットでやってくる

「仕事、面白くなってきたな」
「やってみたいことに、手が届くようになってきた」
そんな前向きな手応えがあるときこそ、不思議と
「なんだか思うように動けない」
「集中しようとしても、途中で意識が散ってしまう」
──そんな“混乱”もセットでやってくることがあります。

これは決してネガティブなことではありません。
むしろ、**今のあなたが“前に進もうとしている証拠”**なんです。

やりがいがある、期待もされている。
でも、そのぶん“考えること”も、“選ぶこと”も、一気に増えてくる。

たとえば──
• 自分で判断しなきゃいけない場面が急に増える
• 関係者が増えて、情報も指示もあちこちから飛んでくる
• 一つの作業の裏にある「意味」や「責任」が重く感じるようになる

こういった状況が重なると、頭の中で自然と“整理のバッファ”が足りなくなってくるんです。

しかも、あなたはそれを前向きに受け止めている
「なんとか応えたい」
「ちゃんとやりたい」
そう思えば思うほど、自分の中で無意識にスピードを上げようとしてしまう
そして、そのスピードと処理量がアンバランスになったとき、
心や身体が「ちょっと待って」とブレーキをかけ始める。

これが、“やりがいがあるのに、うまく進めない”状態の正体です。

でも大丈夫。
この状態は、“実力不足”や“失敗”の前兆なんかじゃない。
ただ今のステージに、自分の思考のスタイルがまだ追いついていないだけなんです。
そして、それはほんの少し整理の仕方を変えるだけで、ぐっと変わることも多い。

次の章では、
「じゃあ今、自分の頭の中でどんなことが起きているのか?」を、
もう少し具体的に解きほぐしてみましょう。

3. 頭と感情の渋滞の正体は?

「なんとなくスッキリしない」
「優先順位が決められない」
「やることはわかってるのに、手が動かない」

──そんなとき、実際にあなたの頭の中では何が起きているのでしょうか?

ぼくがこれまで多くのビジネスパーソンと向き合ってきたなかで感じるのは、
この状態には**いくつかの“典型パターン”**がある、ということです。

① 情報と感情がごちゃ混ぜになっている

やらなきゃいけない仕事、気になること、ちょっと不安なこと。
それらがすべて「ひとまとまりのモヤ」として頭の中に漂っている。

明確に言語化されていなかったり、タスクリストに整理されていないと、
ただなんとなく「重たい」「落ち着かない」感じだけが残るんです。

② 「考えること」と「決めること」が混線している

• 情報を集めているつもりが、ずっと迷っている
• 判断する前に、あれもこれもと調べすぎてしまう
• 決断したつもりだけれど、「これでよかったのか?」と考え直してしまう

こういう状態もよく見られます。
頭の中で**“思考のプロセスが渋滞”**しているイメージですね。

③ 目に見えない“期待”や“プレッシャー”がずっと脳内にある

「この案件、ちゃんとやりきれるかな」
「次のステップを見据えた動き、できてるかな」
「期待されてるから、ちゃんと応えたい」

──こうした気持ちは、とても自然なものです。
でも、これが**無自覚な“背景ノイズ”**のようにずっと流れていると、
エネルギーを想像以上に消費してしまいます。

こうして、思考の中に混線やノイズが増えていくと、
実際のタスクはそれほど多くない日でも「疲れた」「もう動けない」と感じてしまうんです。

でも大丈夫。
この状態は、“実力不足”や“失敗”の前兆なんかじゃない。
ただ今のステージに、自分の思考のスタイルがまだ追いついていないだけなんです。
そして、それはほんの少し整理の仕方を変えるだけで、ぐっと変わることも多い。

次の章では、
この「頭と感情の渋滞」をほどくための、実際の整理ステップを紹介していきます。

4. 整理のための3ステップ

ここまで読んで、「たしかに今、自分の中で何かが混線してるかも」と感じた人もいるかもしれません。
でも安心してください。
この状態を解きほぐすのに、特別なツールやスキルは必要ありません。
ちょっとした視点の切り替えと、3つのシンプルなステップで、頭と気持ちの“余白”を取り戻すことができます。
ここからは、この状態を解きほぐすための、誰でも今すぐできる3つのステップを紹介しますね。

ステップ①:頭の中のことを、いったん“全部外に出す”

まずはここから。
ノートでも、スマホのメモでも、なんなら紙の裏でも構いません。
「今、自分の頭にあること」をとにかく全部書き出してみてください。

・やるべきタスク
・気になっていること
・未完了のやりとり
・やらなきゃと思ってるけど先送りしてること
・最近ひっかかってる感情や、引っかかってないけどなんとなく気になること

整理しようとせず、順番も無視してOK。
大事なのは、頭の中に“見えないかたまり”として存在していたものを可視化することです。

ステップ②:「意味」でまとめず、「構造」で分類する

書き出せたら、次は軽く仕分けてみましょう。
このときのポイントは、“意味”や“目的”でまとめようとしないこと。

たとえば──
• プロジェクト別に分ける
• 関係者ごとに分ける
• 今週中に終わること/長期的に考えること
• 外部とのやりとりが必要なもの/自分だけで完結できるもの

など、「構造」や「処理の性質」で分類するとうまくいきます。
頭の中で“ごちゃっと一塊になっていたもの”が整理されるだけで、
不思議と気持ちにも余裕が出てくるはずです。

ステップ③:「不安」や「焦り」ではなく、“今のボトルネック”を基準にする

最後に、「じゃあ、何から手をつける?」という問いに戻ってきたとき。
ここで大切なのは、感情ベースで優先順位を決めないことです。

「不安だから、これをやらなきゃ」
「やってないことで気まずくなるから、こっちを先に」

──このような“気持ち基準”は、頭の中をまた混乱に戻してしまいます。

そうではなくて、
「いまの自分の動きが止まっている一番の原因は何か?」
を探してみてください。
それがタスクであれ、迷っている決断であれ、感情であれ、
一番のボトルネックを1つだけ選ぶ。

そしてその上で、そのタスクの「最初の3ステップ」を書き出してみるのがおすすめです。
それぞれのステップは、**“5分で終わるぐらいの小ささ”**が理想。

たとえば──

・メールの下書きを開くだけ
・必要な資料のファイル名を調べる
・依頼する相手に「5分だけ相談させて」と声をかける

そんな“はじめの一歩”だけで、ぐっと動き出せる感覚が戻ってきます。

この3つのステップを「すべて完璧にやる」必要はありません。
たとえば、ステップ①の書き出しだけでも効果はあります。
大事なのは、**思考と感情をごちゃ混ぜのまま抱え込まず、“一度ひらいてあげること”**です。

次の章では、この整理を日常の中で“習慣化”していくための、小さな工夫についてお話しします。
一度スッキリした自分を、どうやって保っていくか──そこが、安定感のある成長の鍵です。

5. 忙しいときでも整え直せる“小さな習慣”

頭の中をいったん外に出して整理してみると、
「思っていたより少ないな。ただごちゃごちゃしてただけだった」
──そんなふうに感じる人も多いかもしれません。

でも、日々の忙しさのなかで、
この“整理の時間”を毎回丁寧に取るのは、正直むずかしい。

だからこそ大事なのが、日常に組み込める“小さな習慣”を持っておくことです。
ここでは、そんな習慣を3つ紹介します。

習慣①:朝イチに「脳内メモ」を3つ書く

朝の仕事前に、スマホでも手帳でもOK。
「今、気になってること・やろうとしていること・止まっていること」を3つだけ書き出す。

このときの目的は「全部を管理すること」ではなく、
“今の自分の思考の中心にあるもの”を浮き彫りにすること

1日のスタートに“自分の内側”を整理しておくと、
その日1日がぐっとスムーズに回り始めます。

習慣②:「ひとこと棚卸しタイム」を1日1回つくる

夜や仕事終わりに、ほんの5分でもいいので、
**「今日いちばん意識が引っ張られていたのは何か?」**をひとことで書いてみてください。

・朝のミーティングの件がずっと気になっていた
・納期が重なっている案件が頭から離れなかった
・やろうと思っていたのに、着手できなかったことがある

気づきの言語化は、脳にとっての“クールダウン”。
溜まっている情報や感情が「見える化」されるだけで、脳の疲れがスッと引いていきます。

習慣③:「動ける自分」の再起動スイッチを持っておく

どうしても動けないときや、頭が混乱しているときのために、
自分にとって“動ける状態に戻るためのスイッチ”を用意しておくのもおすすめです。

たとえば──

・お気に入りのカフェで5分間、何も考えずにコーヒーを飲む
・いつものBGMをかけて、深呼吸してからパソコンを開く
・「まず1個だけ」チェックリストに✓を入れてから本格始動する

人は「きっかけ」があると、思った以上にすぐ切り替えられるもの。
ルーティンではなく“リカバリーのトリガー”になる動作を1つ持っておくだけでOKです。

習慣というと、どうしても“続けなきゃいけないもの”に感じてしまうかもしれません。
でもここで大事なのは、「日常の中に織り込める、整え直す選択肢を持っておくこと」。

完璧じゃなくていい。
でも、自分に戻れる場所をちゃんと知っておくこと。

それが、忙しさの波に飲まれず、長く心地よく働き続けるための力になります。

6. おわりに

仕事の幅が広がってきた。
周りからの期待も少しずつ感じるようになってきた。
──それは、あなたがちゃんと成長してきた証だと思います。

でもそのぶん、
頭の中は忙しくなり、感情も揺れやすくなって、
「自分って今、ちゃんと前に進めてるのかな?」と
立ち止まることもあるかもしれません。

そんなとき、思い出してほしいのは──
“やる気”や“覚悟”だけで進み続けなくても大丈夫だということ。
むしろ、一度立ち止まって整理することが、次に進むエネルギーをつくることもあるんです。

整理する力は、成長する力とつながっています。
「今、こんな状態だな」と把握できることは、もうすでに前に進んでいる証拠。

完璧じゃなくていい。
まずは頭の中を少しだけ“ひらいてみる”ことから始めてみませんか?

その小さな一歩が、
今の自分にちゃんと合ったペースで、前に進んでいく力になっていきます。

ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
この記事が、あなたの「今」と「これから」をつなぐヒントになれば嬉しいです。

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「ありがとう」と「数字」を共有する営業所は、なぜ強くなるのか?

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――とある営業所長との対話から見えた、“信頼の空気”をつくるふたつの鍵

第1章 はじめに

「所内の空気は悪くないし、売上も上がっています。

でも…どこかに“温度差”がある気がするんです。」

そんな言葉から始まった、とある営業所長とのコーチングセッション。

その方はこれまで複数の営業所で経験を重ね、今年4月に現在の営業所に着任しました。

プレイヤーとして結果を出しながら、育成にも真剣に取り組んできた方です。

今回の営業所でも、数字は安定しており、外から見れば順調に見えます。

しかし、着任から数週間、所内を丁寧に観察する中で、

少しずつ“見えない課題”に気づきはじめました。

「課をまたいだ連携が弱い気がする」

「非営業部門の動きに、やや“やらされ感”がある」

「報告や会議はあるけれど、行動の芯が揃っていない感じがする」

こうした感覚は、制度や仕組みの問題というよりも、空気の問題です。

表には見えにくいけれど、確実に営業所全体の力に影響しているものだと感じさせる内容でした。

その違和感に、正面から向き合おうとする姿勢に、

コーチとしての私も強く共感しました。

コーチングセッションを進めていく中で、とある営業所長の中に少しずつ浮かび上がってきたのが、

「ありがとうをもっと増やしたい」

「数字をもっとオープンにしていきたい」

という、ふたつのキーワードです。

どちらもシンプルな言葉ですが、

背景には「この営業所を、もっと信頼でつながった場所にしたい」という思いがありました。

この記事では、とある営業所長とのコーチングセッションを通じて見えてきた、

営業所全体を“信頼で動く組織”に育てていくための具体的なヒントを、

コーチとしての視点からお伝えしていきます。

第2章|数字を全所員と共有する──“営業所のひとつの船”としての自覚を育てる

コーチングセッションの中で、このクライアントさんはこんな話をしてくれました。

「営業のメンバーは、自分の数字とか、自分の課の数字にはちゃんとこだわるんです。

でも、“営業所全体の数字”に対しては、あまり関心がないというか…

そこへのこだわりが、もう少し欲しいなと思ってるんですよね。」

そしてもうひとつ。

「非営業のメンバーにも、もっと“数字への意識”を持ってもらいたい」とも話してくれました。

これは、営業所という単位でマネジメントをしていく上で、非常に本質的な課題だと感じました。

個人や課が目標に向かって努力する姿勢はもちろん大事です。

でも、それだけでは営業所全体の一体感や連携は生まれてきません。

営業所という「ひとつの船」を意識できるか

営業所は、ひとつのチームではなく、複数の課や機能が集まった集合体です。

それぞれが目標に向かって動いているからこそ、

全体を“ひとつの船”として動かしていくには、意識のベクトルを揃える必要があります。

クライアントさんはこう話していました。

「自分の数字は気にする。自分の数字をやっていれば営業所の数字はなんとかなるだろうってなりがちなんです。」

この“他人任せの空気”を変えていくためには、

やはり営業所全体の数字を「見える化」していくことが大切です。

・今、営業所はどんな状況なのか?

・どこに強みがあって、どこに弱点があるのか?

・数字の意味や背景を、全体で共有できているか?

数字の見せ方を工夫することで、営業所内に「共通言語」を育てていくことができます。

非営業メンバーの“数字感覚”を育てる

クライアントさんがもうひとつ強く望んでいたのは、

非営業メンバーにも“数字へのこだわり”を持ってほしいということでした。

でも、非営業の立場からすると、

「自分の仕事が数字とどうつながっているか」は見えにくいものです。

だからこそ、所長であるクライアントさんが、そのつながりを丁寧に言葉にしていくことが求められています。

・この仕事が、どういう数字に影響しているのか

・それが営業所にとって、どんな意味を持つのか

・その一手が、営業所の“力”をつくっていること

情報をただ共有するだけでなく、「腹落ち」してもらうことが大切です。

全員が“同じ数字”を見ているという感覚

クライアントさんは今後、営業所会議の場で、

経営の数字を全所員と共有していく予定です。

もちろん、細部まで細かく開示するわけではありません。

けれど、「この営業所は今こういう状況にある」

「この目標を達成するには、こういう力が必要なんだ」

というメッセージを、自分の言葉で伝えていくつもりだそうです。

数字を開示するのは、管理や評価のためではなく、

“一緒に動いていくための言葉”を整えることなのだと感じます。

全員が「自分の数字」「自分の課の数字」だけでなく、

「営業所全体の数字」も“自分ごと”として見られるようになったとき、

ようやく営業所は“組織としての力”を発揮しはじめるのではないでしょうか。

次章では、もうひとつのキーワード「ありがとう」を通じて、

“関係性の空気”をどう整えていくかを掘り下げていきます。

第3章|“ありがとう”が自然に生まれる営業所とは?

前章でお伝えしたように、このクライアントさんは、営業所全体のベクトルを揃えるために、

まず「数字を全所員と共有する」ことに取り組もうとしていました。

営業のメンバーは自分や課の数字には強くこだわる一方で、

営業所全体の数字には無関心になりがち。

また、非営業のメンバーは数字とのつながりを実感しづらく、当事者意識を持ちにくい。

そこで、数字を“見える化”し、みんなで同じ方向を向けるようにする――

このアプローチは、所長としての意思ある一歩でした。

けれど、コーチングセッションのなかでぼくと対話を重ねていく中で、

クライアントさんは、ふとこうつぶやきました。

「数字を共有すれば、確かに意識はそろうかもしれません。

でも、それだけで営業所が一体感を持って動けるようになるとは思えなくなってきました。」

数字で方向をそろえるだけでは、心のベクトルを揃えることは難しい

クライアントさんが感じていたのは、

「全体の目標はある。でも、個々の行動や関わりには“温度差”がある」という感覚でした。

そのとき、以前から頭の片隅にあったキーワードが、再び浮かび上がってきました。

それが――**「感謝される営業所」**です。

この言葉を思い出したとき、クライアントさんの中で、ある確信が生まれました。

お客様に「ありがとう」と言われる組織になるためには、まず自分たちが、互いに積極的に感謝を表現する必要がある。

「感謝される営業所」の第一歩は、営業所のなかで『ありがとう』が自然に飛び交う空気をつくることだ――

そんな考えに至ったのです。

「ありがとう」は、感情のベクトルをそろえる

クライアントさんは言います。

「ありがとうって、気づいたときに自然に出る言葉じゃないですか。

でも、その“気づき”自体が、今ちょっと薄れている気がするんです。」

ありがとうの言葉が自然に出てくるようになるためには、

お互いの動きや思いを“見る”力が必要です。

そしてその根っこには、「この場所を良くしたい」「一緒にやっていきたい」という

感情の方向性=ベクトルの一致があります。

感謝を“増やす”というマネジメント

クライアントさんは、感謝の言葉を増やすことを、

単なる“雰囲気づくり”とは捉えていませんでした。

むしろ、それを営業所の基礎力を上げるアプローチだと考えています。

・小さな気づきを見逃さない

・役割や立場を超えて声をかけ合う

・「助かった」「ありがたい」をためらわずに言葉にする

こうしたことが日常的に行われるようになると、

数字や制度では生まれにくい“関係性の信頼”が育っていきます。

「ありがとう」が飛び交う営業所にしたい。

その思いは、どんなマネジメント手法よりも、

このクライアントさんのあり方そのものを体現しているように感じました。

次章では、このような空気を営業所全体に広げていくために、

どんな“仕掛け”が考えられるのかをご紹介していきます。

第4章|言葉を空気に変えていくための「仕掛け」

「営業所のなかに“ありがとう”が飛び交う空気をつくりたい」

そんな思いを口にしたこのクライアントさんの言葉を受けて、

ぼく自身も、感謝の言葉が自然と交わされる組織にはどんな共通点があるのかを改めて考えていました。

その中で浮かんできたのが、「仕掛け」というキーワードです。

“いい雰囲気になったら感謝が増える”のではなく、

意図して空気をつくるための導線を用意することが必要なのではないかと。

雰囲気ではなく、仕掛けで空気をつくる

「ありがとう」は、自発的な言葉だからこそ力を持ちます。

でも、それを職場で自然に交わし合うには、ちょっとしたきっかけや仕組みがあった方がいいと感じています。

たとえば──

•面談や振り返りの場で「感謝したこと・されたこと」を言葉にする時間をつくる

•チャットやホワイトボードに“ありがとうメモ”を貼れるスペースを設ける

•定例の営業所会議に「今週のありがとう」という一言共有コーナーをつくる

こうした“動線”があるだけで、感謝の言葉は少しずつ日常に溶け込んでいきます。

感謝は「言おう」ではなく「言いたくなる」をつくるもの

「ありがとう」は強制できません。

むしろ、「感謝すべきことを探さなきゃいけない」となると、言葉が軽くなってしまうこともあります。

だからこそ大事なのは、自然と感謝したくなる空気をつくること

そのためには、“誰かが見てくれている”“自分も誰かを見ている”という相互の関心が必要です。

仕掛けの役割は、その“最初の一歩”を後押しすることにあると、ぼくは考えています。

そして、所長が動き方で語る

どんな仕掛けも、“誰がどう動くか”によって意味が変わります。

クライアントさんは、それをよく理解していました。

仕掛けを用意するだけでなく、

所長自身が一番最初に「ありがとう」を口にし、形にしていく――

その姿勢そのものが、組織へのメッセージになるのだと思います。

「ありがとう」の出発点に、自分がなる。

そのリーダーシップのある姿勢は、周囲の信頼と空気を確実に変えていく力を持っています。

“言葉を空気に変える”。

そのためにできる工夫は、決して大げさなものである必要はありません。

けれど、そこに意図があるかどうかで、営業所の未来は大きく変わると、ぼくは信じています。

次章では、ここまでの対話や気づきを踏まえて、

このクライアントさんが取り組もうとしている営業所マネジメントの“今とこれから”を整理していきます。

第5章|「信頼で動く営業所づくり」の今とこれから

ここまで書いてきたように、このクライアントさんは、

営業所を“信頼で動く組織”へと少しずつ変えていこうとしています。

その取り組みは、派手さこそありませんが、

現場で日々のリアルと向き合いながら、一歩ずつ“空気の質”を変えていく営みです。

取り組みの3つの柱

現在、営業所で進めようとしている取り組みは、大きく分けて3つの柱で構成されています。

① 数字の共有で、見ている方向をそろえる

営業や課の数字だけでなく、営業所全体の状況や経営的な観点も丁寧に共有していくことで、

メンバー一人ひとりが“営業所の一員”としての意識を持てるようにする。

② 感謝の言葉で、関係性の温度を上げる

「ありがとう」が自然と出てくるような関係性を、所内に少しずつ育てていく。

感情のベクトルをそろえることで、行動のベクトルにも影響が生まれていく。

③ 所長が仕掛け人として動く

場の空気は、自然発生するものではなく、意図してつくっていくもの。

その出発点に立つのが所長自身であり、日々の姿勢やふるまいこそが最大のメッセージになる。

“マネジメントとは、空気をつくること”

コーチとしてこのクライアントさんと関わる中で、

ぼく自身が改めて実感したことがあります。

それは――**マネジメントとは、“人を動かすこと”ではなく、“空気を整えること”**だということです。

制度や仕組みを整えても、思うように人が動かないのはよくある話です。

でも、関係性の空気が変わると、言葉の届き方も、行動の変化も、まるで違ってきます。

このクライアントさんのように、

目の前のチームや所の“空気”に意識を向け、より良い組織にしていこうとする姿勢は、

とても誠実で、実践的なマネジメントのあり方だと感じています。

「できることからやる」ことの力

最後に強調しておきたいのは、

このクライアントさんが決して完璧な状態を目指しているわけではない、ということです。

大きな改革でも、制度の見直しでもなく、

「できることからやる」というシンプルな行動こそが、営業所の空気を変える原動力になっています。

だからこそ、同じようにマネジメントに悩む方々にとっても、

こうした取り組みは“特別なこと”ではなく、すぐにでも始められる現実的な一歩として響くのではないでしょうか。

おわりに

この記事は、あるクライアントさんとのセッションを通じて見えてきた、

“信頼で動く営業所”へのヒントを整理したものです。

現場を預かる責任と孤独の中で、

「どうしたらうまくいくか」ではなく「どうしたら信頼が育つか」を考え続ける。

そんな所長の姿に、ぼく自身もたくさんエネルギーをいただきました。

組織が変わるきっかけは、いつも“小さな気づき”と“丁寧な実践”から始まります。

もしこの文章が、誰かのその一歩の背中をそっと押せたなら、これ以上うれしいことはありません。

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トッププレイヤーから営業所長へ。課長時代とは違う“次のマネジメント視点”

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はじめに

4月の人事異動で、より上位の管理職に就かれた方も多いのではないでしょうか。
現場の第一線で成果を出し続け、課長としてチームをまとめながら部下育成とチームの業績の両立を成し遂げてきたからこその結果が評価されたのだと思います。
まさに「プレイヤーとしてもマネージャーとしても結果を残してきた優秀な方々」ですね。

実際、ぼくのクライアントさんの中にも、この4月の人事異動でさらに上位の役職に就かれた方が複数いらっしゃいます
日々のセッションを通じて感じるのは、「すでに管理職経験も実績もある方」であっても、次の役職では求められる視点や取り組み方がここでもう一回変わるということです。

たとえば、これまでは「自らのチームや担当メンバー」に目を向けていれば良かったところが、今後は「営業所全体」や「部門横断の組織運営」に関与する場面が増えてきます。

今回のブログでは、営業所長をされているとあるクライアントさんの事例をもとに、複数のリーダーの個性を活かして組織をマネジメントしていくヒントをお伝えしていきます。

ご自身の現場と重ね合わせながら、次のステージでのマネジメントの視点として活用していただければ幸いです。

1. チームのカギは“3名の課長の個性”

営業所長として組織を見るとき、重要な視点の一つが「誰がどのポジションで、どのような役割を果たしているのか」という組織設計です。
特に営業所では、複数の課長が存在し、それぞれが異なる強みやスタイルを持ちながらチームをマネジメントしています。

ぼくのクライアントさんが所長をしている営業所でも、

その個性を活かしながら組織全体を機能させていくことが、営業所長としての大きなテーマとなりました。
ここでは、その3つのタイプをご紹介します。

① 縁の下で信頼を勝ち取る課長

このタイプの課長は、あえて前に出ることなく周囲から厚い信頼を得ています。
指示や指導よりも「見守り」や「支え」に重きを置き、メンバーの相談に対しては親身に応えます。
チームのメンバーからすると、「この人がいるから安心して挑戦できる」と感じられる存在です。

営業所全体の安定感や継続的な成果には、このような“影の安定軸”となる課長の存在が不可欠です。

② 経験と実績を持つベテラン課長

長年の経験と豊富な知識で、チーム内の「文化」や「基準」を守る役割を担っています。
特に業界や自社のルール・慣習に詳しく、チームの意思決定や若手メンバーの育成にも影響力を持ちます。

一方で、自身のやり方への強いこだわりや変化への抵抗感が出やすい側面もあります。
営業所長としては、その経験と知見を尊重しつつ、適度に変化を促す関わり方が求められます。

③ チャレンジ精神旺盛な次世代課長

新しいアイデアや手法を積極的に提案し、行動力と実行力でチームをリードしていくタイプです。
特に若手メンバーに対しては、指示待ちではなく「自ら考え行動する」スタンスを育てる点で頼もしい存在となります。

ただし、既存のルールや手順よりも成果・スピードを重視する傾向もあり、営業所全体としてはバランスが求められます。
このタイプの課長には「枠を与えすぎない自由さ」と「方向性のガイド」の両立がカギになります。

3名の課長の個性とスタイルは異なりますが、それぞれがチームの成果に欠かせない存在です。
営業所長としては、こうした多様なマネジメントスタイルを対立させるのではなく補完し合う関係として設計していくことが、営業所全体の成果につながっていきます。

2. 課長として経験した「営業所を動かす」チャレンジ

上位管理職に昇進された多くの方は、すでに課長としての経験を積み、チームマネジメントにおいて成果を上げてこられたことでしょう。
プレイヤーとして自身の営業成績を残し、その後は課長として **「メンバーを通じて成果を出す」**という難しさとやりがいの両方を体験されたはずです。

ぼくのクライアントさんも、まさにこのプロセスを経て営業所長に就任されました。
課長時代には、自ら動いて成果を出すのではなく、メンバーに任せ、成長を促しながらチームとして結果を出すことに力を注いでこられました。
プレイヤーとして成果を出していた時代とは違い、課長として **「人を通じて成果を出すこと」**に意識を切り替えることは、決して簡単なことではありません。

そして今、営業所長として再び「役割の変化」に直面しています。
課長時代は **「自分のチーム」**をマネジメントすればよかったものが、
営業所長となった今は **「営業所全体」**をどう動かすか、
複数の課長や部門をどのように連携させ成果につなげていくかが問われる立場となりました。

プレイヤー→課長→所長とステージが変わる中で、求められるマネジメントの視点やスタンスも進化しています。
クライアントさんも今、**「課長の個性を活かしながら営業所全体として成果を出す」**という次のチャレンジに挑んでいます。

この変化にうまく対応するためのカギとなるのが、課長同士の役割設計営業所全体の方針やビジョンを明確にすることです。
次章では、その具体的な考え方についてご紹介していきます。

3. チームの成果を引き出す役割設計

営業所長として営業所全体の成果を生み出すためには、課長同士の役割設計が非常に重要なポイントになります。
現場を預かる課長たちは、それぞれ異なる強み・スタイルを持っています。
その個性を理解し、意図的にチームや営業所全体のパフォーマンスにつなげる設計が求められます。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の強みと課題を整理するところから取り組みを始めました。
例えば「縁の下でメンバーを支える課長」「経験と実績を持つベテラン課長」「チャレンジ精神旺盛な次世代課長」という特徴をふまえ、

誰にどの領域・期待を託すのか

ポイント1:組織課題と個人課題を切り分ける

所長として「何が営業所全体の課題なのか」「どこは各課長に任せられるのか」を整理することが大切です。
たとえば、営業所全体の方針や人材育成の枠組みは所長が担い、
日々の目標管理やメンバーの育成は各課長に裁量を持たせるといった 役割のすみ分け を意識します。

ポイント2:期待値を明確にする

課長のスタイルや強みが違うからこそ、**「何を期待しているのか」**をあらかじめ言語化し、すり合わせることが欠かせません。
「この領域ではリードしてほしい」「このテーマは一緒に取り組もう」など、

あいまいさを減らし、安心して動ける環境

ポイント3:若手と次期所長候補の育成を意識する

営業所全体として中長期的に成果を出すためには、若手育成の視点も外せません。
課長には「日々の業務を回す責任」だけでなく、若手のチャレンジの場を意図的に作る役割も期待します。
また営業所長としては、中長期的な視点で**「次期所長候補となる人材を見極め、成長を支援していくこと」**も重要な役割になります。
次の世代の所長を意識して育成しておくことは、営業所全体の安定と継続的な成果につながります。

複数の課長の強みとスタイルを組み合わせて営業所の成果を引き出すこと。
そのための「役割の整理と言語化」が営業所長としての重要なマネジメントポイントになります。
次章では、この土台の上に「所長自身の発信力」がなぜ求められるのかについて考えていきます。

4. 所長としての“言語化力と発信力”

営業所長の役割に就くと、多くの方が感じるのが「課長時代と比べて自分の考えや方針を“言葉にして伝える”機会が圧倒的に増えた」という変化です。

課長としてチームをマネジメントしていたときは、日常のコミュニケーションや行動の積み重ねでメンバーと信頼関係を築けました。
しかし営業所長になると、複数の課長や部門、さらには経営層や他拠点との連携も必要になります。
その中で求められるのが **「所長としての発信力」**です。

組織の方針・優先順位を明確に伝える

複数のチーム・課長を束ねる立場では、所長自身が組織の「軸」を言語化し、明確に発信することが不可欠です。
営業所の方針や優先順位、期待する行動基準をあいまいにせず、誰もが理解できる形で示すことがメンバーの安心感と行動の統一につながります。

コーチングの視点を取り入れる

ぼくのクライアントさんの場合も、コーチングで培った**「問いかけ力」「対話力」**を所長のマネジメントに活かしています。
「〇〇について意見を聴かせて?」「この課題の解決策を提案して?」など、

課長自身に考えさせる言葉を投げかけることで、自走力や当事者意識を育てる

言葉の力で組織を前進させる

組織が大きくなればなるほど「察してくれるだろう」は通用しません。
所長の発信がなければ、現場は迷い、判断基準を失いがちです。
所長の役割として大事なのは、「細かなやり方を教えること」ではなく、課長や営業所員ひとりひとりが自ら考え判断ができるようになるための方向性を示すことです。
この発信が、課長たちの主体的なリーダーシップを後押しし、営業所全体の成長につながっていきます。

次章では最後に、こうした考え方を踏まえて所長としてのスタンスのまとめと、読者への問いかけをしていきます。

5. おわりに

営業所長としての役割は、プレイヤーや課長としての経験・実績を土台にしながらも、さらに視野とスタンスを広げることが求められます。
自身で成果を出す・自チームを動かすところから、営業所全体をどのように動かし成果につなげていくかという「組織全体視点」への進化です。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の個性や強みを活かしながら、
役割の設計や営業所としての方針の言語化、さらには次期所長候補の育成までを意識したマネジメントに取り組んでいます。
その過程は決して簡単ではありませんが、「人を通じて成果を生み出す」という上位管理職としての醍醐味とやりがいを実感されています。

この内容は、ぼくが実際にご支援しているクライアントさんとの取り組みの中でも成果につながっている実践例です。
ぜひ、ご自身の営業所や組織でも活かしていただければ嬉しいです。

ここまで読んでくださった方も、ぜひご自身の営業所や組織に置き換えて考えてみてください。
自分は今、どの課題に取り組むべきだろうか?
課長やメンバーが主体的に動ける環境を整えられているだろうか?
次のステージに進むために、今の自分に必要な成長は何だろうか?

日々の業務の中でこの問いを持ち続けることが、次の成果と成長への第一歩になるはずです。

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会社を辞めるだけが自由じゃない。選べる自分になるための準備

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副業が少しずつ軌道に乗ってきた。
本業もそれなりにうまくいっていて、収入も安定している。
「じゃあ、何も問題ないはずじゃない?」
…頭ではそう思っているのに、ふとした瞬間にモヤモヤする。

このまま、ずっと会社に軸足を置いて生きていくんだろうか。
副業の予定も、本業の合間や夜間に詰め込む日々。
どこかで、「これが本当にやりたいことだったっけ?」という問いがよぎる。

——辞めたいわけじゃない。
でも、「もっと自分らしく働ける形があるんじゃないか」と思い始めている。
副業で感じた“手応え”や“自分の可能性”を、もっと活かせる道はないのだろうか——。

そんな思いを語ってくれたクライアントさんとの対話が、ぼくの中にも響きました。
実はぼく自身も、ただの会社員だった頃から副業としてコーチングを始め、独立、法人化と、段階的に選択肢を広げてきたひとりです。
だからこそ、「会社を辞めるかどうか」ではなく、“どうすれば自分らしく選べる状態でいられるか”という問いには、今でも何度も立ち返っています。

その選択の結果が、副業でも、転職でも、社内の異動でも、今の仕事を続けることでも、どれが正しいかではないと思っています。
大切なのは、それを「自分で選んでいる」と感じられること。

今これを読んでいるあなたが、
自分の人生や、仕事、働き方を「自分らしく選ぶ」ヒントを持ち帰っていただけたら嬉しいです。

1. 「辞める or 辞めない」の二択思考が、自分を縛ってしまう

副業がうまくいきはじめると、ふとした瞬間にこんなことを考える人がいます。

「このまま会社を続けるか、思い切って辞めるか」
「いっそ独立したほうがスッキリするんじゃないか」
「でも、家族のことを考えると…現実的じゃないよな」

実際、こうした話はコーチングの現場でもよく出てきます。
でも、ここで少し立ち止まって考えてみてほしいのです。

「このまま」か「辞めるか」しかないように見えるとき、視野そのものが狭くなっている

自分の中にある違和感や物足りなさ。
それを「辞める or 辞めない」という大きな決断に置き換えると、思考はたしかに動き出しやすくなります。
でも、それが本当に自分の納得感や充実感につながるとは限りません。
結果として、どちらを選んでもなんだかしっくりこない——そんな状態に陥ることもあります。

でも本来、「辞めたいわけじゃない」と思っている自分も確かにいる。
同時に、「このままでいいのかな」と問いかけている自分もいる。
この2つの感覚は、矛盾ではなく“共存”しているものなんです。

選択肢が見えていないのではなく、
“見えない状態”を許せない気持ちが、二択というシンプルな構造に無理やり当てはめてしまう。
そこに気づけると、「選べない」と感じていた状況にも、少し余白が生まれてきます。

決めきれないのではなく、
まだ言語化できていない感覚が、自分の中にあるだけかもしれません。

そして、その感覚は、必ずしも今すぐ言葉にできるようになる必要はないのだと思います。
まだ言葉にならない“違和感”や“もやもや”も、
自分にとって何か大事なことを知らせてくれているのかもしれません。

無理に結論を出そうとするのではなく、

「これは何を教えてくれようとしているんだろう?」

と、そっと問いを置いてみる。

そんなふうに、少し距離をとって感じてみるのも、一つの選択だと思うのです。

2. 副業の充実や手応えが、キャリアの選択肢を広げてくれる

副業が少しずつ形になってきたとき、私たちは数字や成果に注目しがちです。
「年収にどのくらいインパクトがあるか」
「本業と比較して、どれくらい意味があるのか」
そんなふうに、わかりやすい尺度で“価値”を測ろうとしてしまう。

でも、副業の本当の価値は、数字では見えにくい部分にこそあるのではないかと思います。

たとえば——
「自分で考えて、自分で動いて、結果を出した」という手応え。
本業ではなかなか得られなかった、“自分の感覚が通用した”という実感。
あるいは、普段出会わない人たちとのやりとりの中で感じた、新鮮な視点や広がり。

それらはすべて、「選べる自分」を育ててくれる要素です。

副業がうまくいっているからといって、すぐに独立する必要はありません。
むしろ、副業があるからこそ、「辞める/辞めない」以外の選択肢が自分の中に育っていく。
そしてそれが、本業に対するスタンスや関わり方にも、少しずつ変化をもたらしていく。

副業は、“逃げ道”でも“野望”でもなく、
**「自分らしさを確かめられる場」**として活かすことができる。

そう考えると、キャリアの軸が少しずつ“外側”にも育っていく感じがして、
選択肢が増えるだけでなく、「今ここ」にも安心していられるようになるのだと思います。

3. 「選べる自分」をつくる3つの準備

ここまでの話を読んで、
「たしかに…今すぐ辞めたいわけじゃないけど、もっと“選べる状態”になっていたい」
そう感じた方もいるかもしれません。

では、どうすれば“選べる自分”になれるのでしょうか?
これは一気に変えるものではなく、小さな準備の積み重ねで育っていくものだと、ぼくは思っています。

ここでは、そのためのヒントを3つ、ご紹介します。

① スキルと関係性の棚卸しをしてみる

自分には何ができて、どんな人とのつながりがあるのか。
これは、いざというときの選択肢を考えるうえで、土台になる情報です。

でも「強み」や「キャリアの棚卸し」といった言葉を聞くと、
ちょっと構えてしまう人もいるかもしれません。

そんなときは、

「今、自分が周りから求められていることって何だろう?」

「どんな時に“自分らしさ”を感じているだろう?」

そんな問いからゆるく始めても、十分価値があります。

② 社内と社外、両方に“話せる人”を持っておく

選択肢を広げるときに、一人で考えすぎると行き詰まりがちです。
社内の同僚や上司も大事ですが、**利害関係のない“社外の誰か”**との会話が、とても助けになることがあります。

過去にお世話になった上司、副業を通じて出会った人、
あるいはコーチやメンター的な存在。
「話すと、思考が整理される」という感覚をくれる人がいると、選択肢を“実感”として持てるようになっていきます。

③ 「こうありたい」を、ふんわりでも言葉にしておく

キャリアの選択肢を広げるうえで、「こうしたい」よりも大事なのは、
**「こうありたい」**という自分の感覚です。

・誰と、どんな時間を過ごしたいのか
・どんな状態だと、自分らしくいられるのか
・暮らし方、働き方、ペース感…心地よさの基準

こうした感覚は、はっきりと言葉にならなくてもかまいません。
でも、意識のどこかに持っておくことで、「選択肢の中から選ぶ」のではなく、
**「自分の基準で選ぶ」**ことができるようになっていきます。

たくさん準備しなければならないわけではありません。
でも、ちょっとした問いかけや、身近な誰かとの会話がきっかけになって、
“選べる自分”という感覚は少しずつ育っていく。

焦らず、でも見ないふりをしないで。
そんな距離感で、自分と向き合ってみてください。

4. まとめ:「自分で選んでいる」という感覚が、働き方の安心感につながる

「副業がうまくいってきたけど、このままでいいのかな」
「本業も悪くないけど、何か物足りない」
「辞めたいわけじゃない。でも、選択肢が少ない気がする」

そんな声に、これまで何度も出会ってきました。
そして、これらの声に共通していたのは、「どうしたらもっと自分らしく働けるか?」という問いでした。

“会社を辞める”ことが正解ではないし、
“今のまま続ける”ことが間違いでもない。

大切なのは、「自分で選んでいる」と感じられること

副業があること、誰かに話せること、
そして、「こうありたい」とふんわりでも描けること。
それらが少しずつ積み重なって、選択肢が見えてくる。
すると、「今ここ」にいる自分にも、安心できるようになっていきます。

この先も、働き方や人生に“答え”はないかもしれません。
でも、問いを持ち続けていくことはできます。
そしてその問いが、「自分の人生を、自分でつくっている」という感覚につながっていく。

あなたの今ある選択肢が、
これからもゆるやかに広がっていきますように。
会社を辞めるだけが自由じゃない。そんな日常を、自分で選んでいけますように。

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法人化して感じる違和感と向き合う。これから整えていくべき、本当のこと

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「法人化したのに、なんだか手応えがない…その理由」

会社をつくる。

それって、やっぱりすごいことだと思います。

「ようやく一歩踏み出せた」

「これで本格的にスタートできる」

そんなふうに感じながら、登記を終えて、口座を開設して、名刺に「代表取締役」と入れてみる。

けど、ふと立ち止まる瞬間も出てくるんですよね。

「で、これから何すればいいんだろう?」って。

実際、今年に入って法人化されたクライアントさんもいらっしゃいました。

これまでコツコツと副業を積み上げてきて、いよいよ自分のやりたいことを、自分の看板で始めていこうっていうタイミング。

話を聞いていて感じたのは、

「法人化」って、たしかにひとつの節目ではあるけれど、それで何かが完了するわけじゃないんですよね。

むしろ、ここからが本番。

どう事業を育てていくのか、どんな価値を届けていくのか、いろんな問いが目の前に出てきます。

「法人にしたのに、急に仕事が増えるわけでもない」

「責任は大きくなったけど、やるべきことはまだモヤっとしてる」

そんな感覚、あって当然だと思います。

それでも大丈夫。

大事なのは、「法人にしたこと」そのものよりも、

これからどう使っていくか、どう活かしていくかなんですよね。

ここから先は、「自分のやりたいこと」と「ビジネスとして続けること」をつなげていくフェーズ。

法人化は、そのための土台。

これから先の動き方次第で、ぐっと事業に広がりが出てきます。

「変わったような、変わってないような。でも確実に動き始めていること」

「法人化したけど、何か大きく変わった気がしない」

そんな声を聞くことがあります。

たしかに、普段の仕事内容やサービス内容が急に変わるわけじゃありませんし、目に見える変化は少ないかもしれません。

でも、実は静かに、だけど確実に、いろんなことが変わってるんですよね。

たとえば——

信頼感が変わる

取引先や見込み顧客から見ると、「個人」ではなく「会社」として仕事をしているというだけで、ひとつフィルターが変わります。

もちろん、法人=信頼できる、という単純な話ではないんですが、法人であることが信用の土台として働く場面は少なくありません。

ぼく自身も、知人のコーチから「この案件は企業との契約になるから、法人じゃないと厳しい」と声をかけてもらい、受託の窓口として法人格があったことで参加できたことがありました。

特に大きめの企業になると、個人事業主とはそもそも契約ができない、というケースもあるんですよね。

だからこそ、「法人化したから急に信頼される」ではなくて、**法人であることで入り口に立てる場面が増える”**と考えるといいかもしれません。

お金の扱いが変わる

これは良くも悪くも、ですね。

法人にすると「自分のお金」と「会社のお金」がはっきり分かれるようになります。

経費や報酬の扱い、税金の仕組み、キャッシュフローの見方もガラッと変わります。

ぼくの場合も、法人化したことでお金の流れをより客観的に見るようになりました。

「これは事業の支出として妥当か?」「手元に残るキャッシュはいくらか?」といった視点で見る癖がついて、自然と数字に強くなっていった感覚があります。

あわせて、税金の仕組みについても理解が深まり、リアルな気づきが増えたのを覚えています。

最初はちょっと面倒に感じるかもしれませんが、逆に言えば、ビジネスとしての自覚が育つタイミングでもあるんですよね。

「思ったよりお金が残らないな」とか「税金ってこういう仕組みなんだ!」と、これまでとは違う視点でお金と向き合うようになる

これは、法人化したからこそ得られる感覚かもしれません。

事業との向き合い方が変わる

副業のときは「できるときに」「好きな範囲で」というスタンスだった人も、法人化をきっかけに、

「これを続けていくにはどうしたらいいんだろう?」と視点が変わってきます。

ビジネスモデルや収支のバランス、事業としてのをどう育てていくか。

これまで感覚でやってきた部分が、少しずつ設計に変わっていく。

言い換えると、「想い」だけでなく「戦略」も必要になるタイミングなんです。

「肩書きだけじゃ変わらない。動き出すために必要なこと」

「法人にすれば、もっと仕事が増えるかな」

「ちゃんとした会社として見てもらえたら、安心して依頼されるようになるかも」

そんな期待を持つのは、すごく自然なことです。

実際、これまで副業で頑張ってきた人ほど、「ここからもっと広げていきたい」という気持ちが強くなるものですし、ぼくもそうでした。

でも、ここでひとつ立ち止まって考えてみてほしいんです。

法人化しただけで、ビジネスが勝手に成長することは、残念ながらないんです。

もちろん、法人格があることで信頼の土台ができたり、できる仕事の幅が広がったりするのは確かです。

でもそれはあくまでができたということであって、中身のビジネスが自動的に育つわけではありません。

むしろ、スタートラインに立ったからこそ、これまでよりも一歩深く、「自分の事業とどう向き合っていくか」が問われるフェーズに入っていきます。

たとえばこんなふうに、心のどこかで感じていませんか?

名刺に「代表取締役」と書かれていても、どこかしっくりきていない

「法人を立てたんです」と言うのが、ちょっと気恥ずかしい

自分のサービスを説明するたびに、「本当にこれでいいのかな」と不安になる

もしそうだとしたら、大丈夫です。それは、自然な反応です。

新しいステージに進んだとき、人はみんな少し戸惑うものだから。

ただここで大切なのは、「やりたいこと」を「続けられる形」にするという視点を持つこと。

どれだけ素敵な理念や想いがあっても、ビジネスとして続いていかなければ、届けたい人に届きません。

法人化は肩書き形式を整えることじゃなく、

自分の提供したい価値を、より確かな形で届けるための一歩

だからこそ、「法人化=完成」ではなく、

**「法人化=ようやく本番が始まるところ」**と捉えて、

少しずつ、中身を育てていければそれで十分なんです。

「“代表”になったあなたへ。まず整えておきたい3つのこと」

法人にしたあと、まず感じるのは「やることが多いな」という感覚かもしれません。

経理、契約、SNSの発信、商品の見直し。

やりたいことも、やらなきゃいけないこともたくさんあるけれど、全部いっぺんにはできない。

だからこそ大事なのは、「優先順位をつける」こと

特に最初の数ヶ月は、より強固な土台を整えることに力を注いでみてほしいんです。

ここでは、法人化した後に見直しておきたい3つのテーマをお伝えします。

ビジネスモデルの整理:どうやって売上を立てるか?

「これから何をしていくか?」だけでなく、

**「その活動がどうやって売上につながるか?」**まで見通せるようになることが大切です。

たとえば——

単発の講座で終わってしまわないようにするには?

継続的に収益が入る仕組みをどう作るか?

誰に・どんな価値を届けるのかが、きちんと整理されているか?

商品やサービスを「やりたいこと」だけで組み立てるのではなく、

続けられる形にしていく視点が必要になってきます。

キャッシュフローの把握:お金の動きをつかむ

「法人にしたけど、思ったよりお金が残らない」

これは本当によくある話です。

最初は見えづらいですが、売上の中から何が出ていって、何が残るのかをちゃんと見ていく必要があります。

そのためにおすすめなのは、まずは「ざっくりでもいいから毎月の収支を数字で把握する」こと。

利益が出るかどうか以上に、

「お金の動きがわかるようになる」ことの方が、最初のうちは大事だったりします。

「どの数字を把握しておけば上手くいくか」、あなたなりのダッシュボードを整備するのがこのタイミングです。

この感覚が掴めると、その後の意思決定がぐっとスムーズになります。

たとえば「ここは経費で出していいけど、ここはまだ早いかもな」といったことも、根拠のある感覚で判断できるようになるんですよね。

数字は、意外と自分の思考を整理してくれるんです。

事業の「らしさ」を整える:自分らしい軸をつくる

法人化すると、「ちゃんとしなきゃ」という気持ちが強くなる人が多いです。

でも実は、「らしさ」が失われるのもこの時期に起こりやすいんですよね。

大切なのは、「何をやるか」だけでなく、

**「なぜそれをやるのか」「どんな人に届けたいのか」**を自分の言葉で話せるようになること。

肩書きや形式に引っ張られすぎず、自分の中にあるを言葉にする

それがあると、迷ったときにも立ち戻れるし、周りとの関係性もグッと築きやすくなります。

ここまでの取り組みは、どれも立ち上げ期の基盤づくりです。

一つひとつを完璧にする必要はありません。

でも、焦らず丁寧に向き合っていくことで、

「なんとなくやってる」から「意図して動いている」に変わっていきます。

それが、ビジネスとしての自信につながっていくんです。

「次のステージに立ったあなたへ」

法人化は、たしかに大きな一歩です。

でもそれは「完成」の証ではなく、

ここから本格的に事業を形にしていくフェーズに入ったという合図のようなもの。

ここから先は、「想い」と「しくみ」の両方を少しずつ育てていく時間です。

そのときに、自分にこんな問いを投げかけてみてください:

この商品・サービスは、続けて提供できるか?

お金の流れは、把握できているか?

この事業は、自分らしさを表現できているか?

判断は、なんとなくじゃなく根拠のある感覚でできているか?

これらの問いに「今はまだ答えられないかも」と思っても大丈夫。

むしろ問い続けて、少しずつ創り上げていけばいいんです。

それこそが、あなただけのビジネスの形になっていきます。

「なんとなくやっている」から「意図して動いている」へ。

その変化が、ビジネスとしての自信をつくっていきます。

法人化はゴールじゃない。

でも、確かにあなたは、次のステージに立っている。

ここから始まる事業の旅を、ぜひあなたらしく、たのしんでください。

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上司と合わなくても、仕事は進められる。7つの実践ヒント

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1. はじめに:価値観が合わない上司との仕事は、なぜこんなに疲れるのか?

中間管理職というポジションは、「上」からも「下」からも視線が集まる立場です。
そんな中で、上司との価値観が合わないというのは、仕事の進め方だけでなく、日々のちょっとしたやり取りにまで摩擦が生まれやすくなります。

たとえば――
「上司は社外アピールや自己保身ばかりで、実務や責任は部下任せ」
「こちらが丁寧に積み上げてきたことも、“見え方”の一言であっさり変えられてしまう」
「自分が信念を持って取り組んでいるチームマネジメントに口を出してくる」

こういった違和感が続くと、「この人の下で仕事を続けていて、大丈夫なのかな?」という気持ちになってくるものです。
ただ、そう感じながらも、現実としては“すぐに環境を変えることはできない”という制約もありますよね。

そして、そんな状況でもなお、「自分のチームのメンバーは守らなくてはいけない」という責任もある。
理不尽な影響が部下に及ばないように、間に立って調整することも少なくないはずです。

では、どうすればいいのでしょうか?

この記事では、そんな葛藤を抱える中間管理職の方に向けて、価値観の合わない上司との関係性を、仕事を進めるための“戦略的な関わり方”に変えていくヒントをご紹介していきます。

目指すのは、無理をしない関係性。
自分の力を発揮しながら、上司との関係で必要以上に疲弊しない働き方です。

2. 合わない上司を“敵”にしないために知っておきたい前提

上司との価値観がどうしても合わないと感じたとき、つい「どう付き合っていくか」よりも「どう距離を取るか」に意識が向いてしまうことがあります。
とくに、自分なりに誠実に仕事をしているほど、上司の振る舞いに対して怒りや失望を感じやすくなりますよね。

けれど――
ここで一度、視点を少しだけ変えてみてはどうでしょうか?

価値観が合わない相手とは、どうしても**「敵対構図」を描いてしまいがちですよね。
そうなると、あらゆる出来事が対立構造に見えてしまいます。
その状態では、どれだけ正しい判断をしても、対話の糸口が見えなくなっていく。
一方で、「価値観が違う」ことを前提にしたうえで、「どう上司をマネジメントしていくか?」という問いを持つことで、打ち手の幅は大きく広がっていきます。

そしてもうひとつ、大切な視点があります。

それは、「合わない上司と成果を出す経験」は、あなたのキャリアにおいて強い武器になる、ということ。
どんな職場でも“相性の良い上司”に恵まれるとは限らないからこそ、「合わなくても成果を出せる力」は中間管理職としての信頼や選択肢を増やしてくれます。

この記事は、「上司と仲良くなる方法」ではありません。
自分をすり減らさずに、必要な成果を出し、チームを守る。
そのために上司を“味方として戦略的に活かす”というアプローチを提案するものです。

ではここからは、実際にどんな関わり方ができるのか。
次の章では、そのヒントとなる「7つの調整ポイント」をご紹介します。

3. 7つのちょっとした“上司マネジメント”

ここからは、価値観が合わない上司に対して、あなた自身の信頼と成果を守りながら関係性を構築していくための、「7つの調整ポイント」をご紹介します。

いずれも、相手に深入りせずに自分の「関わり方」を少し調整することで、上司を戦略的に活かすという視点から整理しています。

① 上司の「好きなこと」「得意なこと」を観察する

価値観が違っても、上司が自然と動きやすい方向性を見つけておくことで、無駄なストレスを減らすことができます。
たとえば「外向けの発信が好き」「数字に強い」「〇〇の分野には興味がない」など、意外と分かりやすい傾向があるはずです。

どこで手が止まるのか、どこで反応が良くなるのか――観察は最高の準備です。

② 上司の成果に「乗っかる」形で提案してみる

たとえ上司が自己アピール型であっても、「その人が喜ぶ枠組み」の中に、自分のアイデアや動きを忍ばせることは可能なはずです。

あえて「うまく使わせてもらう」くらいの感覚でいくと、無駄にぶつからずに済みます。

③ 自分の専門性で“補完する”視点を持つ

真逆のタイプだからこそ、「相手が苦手なことに自分が強い」場面があるはずです。
そのギャップを責めるのではなく、補完し合うチームとして位置づけることで、対立を連携に変える糸口が見えてきます。

主導権を取ろうとするのではなく、「あなたがやらないところ、私がやりますね」とスッと差し出すことで、上司からの信頼というより、“任せていい人”としての立ち位置を得られる可能性があります。

④ 上司の興味に寄せた言葉で話す

同じ内容でも、「どんな言葉で伝えるか」で反応は変わります。
たとえば、ロジック重視の上司には「データで示す」、印象重視の上司には「外からどう見えるか」を意識して話す。
相手の“聞きたいモード”に合わせて言葉を選ぶだけで、歯車が噛み合う瞬間が生まれやすくなります。

⑤ あえて“確認”の頻度を上げる

相手が信頼できないと感じると、つい「任せてもらえればうまくやるのに」と思いがちですが、あえてこまめに確認を取ることで、主導権を握られずに仕事を進めることもできます。

確認は、「共通認識」を作るためのもの。
あらかじめズレを防ぐことで、無用な干渉を減らすことができます。

⑥ 上司の「困っていること」を探る

上司の余裕のなさや理不尽な振る舞いの裏には、本人なりの課題やプレッシャーが隠れていることもあります。
それを“人間的に理解する”ことで、少しだけ見方が変わることがあります。

こちらから歩み寄るのではなく、「何を抱えているのか」を把握しておくだけでOK。
それが上司を活かすための切り札になるかもしれません。

⑦ こまめに“振り返り”を入れて微調整する

関係構築は一度やって終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要です。
「このやり方、最近うまくいってないかも」と気づいたときに、振り返りができる人こそ、真に関係性をコントロールする力がある人。

毎週・毎月の振り返りタイミングで、「上司との関係性」も少しだけ俯瞰して見る習慣を持つことが、あなたの負担を減らすことにもつながります。

この7つの調整ポイントは、すべて**「相手に深入りせずに、自分の動き方を変える」**ことで、状況を前に進めていくためのヒントです。

次のセクションでは、こうした調整をどうキャリアと結びつけるかをまとめていきます。

4. まとめ:合わない上司の元でも仕事はうまく進められる

「上司とうまくいかない」という悩みは、誰にとっても心の重荷になりやすいテーマです。
とくに価値観が合わない上司との関係は、感情的にも論理的にも消耗しやすく、「どうにかしたいけど、どうにもできない」と感じてしまうこともあるでしょう。

でも実は、「関係を良くする」ことだけが解決ではありません。
この記事でご紹介した7つの調整ポイントはすべて、相手に深入りせずに、自分の関わり方を少し調整するだけで、仕事を前に進める方法です。

そしてこれは、“いい人間関係をつくる”ことではなく、自分の力を発揮し続けるための実践的な戦略でもあります。

上司との価値観のズレを受け入れることは難しくても
合わない上司の元でも仕事の成果を出せる動き方は、あなたのキャリアにとって大きな財産になります。

大事なのは、「上司とうまくやること」ではなく、
「どんな上司の下でも、自分の軸を持って働けること」

その力がある人は、どこに行っても強い。
あなたも、きっともうその一歩を踏み出しているはずです。

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昇進・昇格したあなたへ『何から始めればいいの?』迷ったときに立ち返る5つの視点

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はじめに:昇進はゴールではなくスタート

年度初め。

この時期、新しい肩書きでスタートを切った方も多いのではないでしょうか。

昇進や昇格は、これまでの努力が認められた大きな節目です。

でも同時に、「ここからが本当のスタートだ」と実感する瞬間でもあります。

今年度も、ぼくのコーチングを継続してくださっている方の中に、昇進・昇格を迎えた方が何人かいらっしゃいます。

新しい役割に向き合う姿はどの方も本当に真摯で、ぼく自身も毎回刺激を受けています。

実はこのブログも、その中のお一人とのセッションがきっかけで書いています。

初めて部下を持つことになり、「自分に人を育てることができるのか?」という問いに向き合っていた方です。

昇進したばかりの頃って、「とにかくミスなく回さないと」とか、「まずは自分がちゃんとやらないと」って気持ちになりやすいですよね。

ぼくもこれまで何人も、そんな気持ちで新しい役割に飛び込んでいく方たちを見てきました。

その姿勢はすばらしいし、責任感のある証拠。

でも、一つだけ視点を足すとしたら──

**「チームとして成果を出すには、自分一人では限界がある」**ということです。

なりたて管理職がはまりやすい「3つのトラップ」

① ✋ これまでどおり、自分で動いたほうが早いと思ってしまう

→ 手を動かせば成果は出る。でも、それを続けるほど部下は育たない。

② 📈 プレイヤーとしての延長線上で成果を出そうとする

→ 数字や結果で目立とうとするが、それはマネジメントの本質とはズレている。

③ 🧠 部下のことより、自分のことでいっぱいいっぱいになる

→ 「まず自分がちゃんとしなきゃ」と思いすぎて、部下との関係づくりが後回しに。

これ、全部「自分のがんばり」で何とかしようとしている状態なんですよね。

でも、役割が変わった今こそ、目を向けてほしいことがあります。

それは──

部下と一緒に成果を出していく、という視点です。

たとえば、自分がいないときもチームがちゃんと動いていたり、

誰かが「そのやり方、前に○○さんから学んだんです」とあなたのことを言ってくれたり。

そういう“じわっとくる成果”って、ほんとうに嬉しいんです。

だからこそ、今このタイミングで「育てる」というテーマに目を向けることは、

マネージャーとしてのスタートラインに立った今だからこそ、意味のあることだと思っています。

このブログでは、「育てるマネジメントって、どうやって始めればいいのか?」

そのヒントをお届けしていきます。

自分らしい関わり方を見つけたいと思っているあなたに、少しでも参考になれば嬉しいです。

1️⃣ 自分でやった方が早い、の壁

「これ、教えるより自分でやった方が早いな…」

管理職になって最初にぶつかる壁が、まさにこの感覚かもしれません。

チームとして成果を出したいと思っていても、現場は待ってくれません。

納期はあるし、質も落としたくない。

だからつい、手を出してしまう。自分でやった方が早いから。

しかも、切羽詰まれば詰まるほど、頭ではわかっていても思うようにいかないんですよね。

•報告の期限が明日まで!

•月末に売上が全然足りてない!

•プレゼンのクオリティがどうしても上がらない!

こういうとき、「育てる」なんて余裕がないよ…って思うのも、正直なところじゃないでしょうか。

「自分がいないと回らない」チームができあがる

もしあなたがずっとそのやり方を続けていたら、

メンバーは「困ったら上司に頼めばいい」「任せても結局自分で直される」と感じるようになります。

その結果、少しずつ自分で考える力や、自分で動く責任感が薄れていってしまうんです。

これって、長い目で見るとけっこう大きなリスクですよね。

でも、それでも少しずつ視点をずらしていくことができれば、

“自分がやる”というスタイルから抜け出していくことができます。

じゃあ任せるって、どうすればいいの?

「任せよう」と思っても、最初は勇気がいります。

でも、いきなり“全部”任せなくていいんです。

まずは「ここまでは任せる」という範囲を決めること。

その上で、うまくいかなかったときにどうフォローするかもセットで考えておく。

この“準備付きの任せ方”が、育てるマネジメントの最初の一歩になります。

そして大事なのは、「どうだった?」と振り返る時間をつくること。

これは、任せっぱなしではなく、関わり続ける姿勢を伝えることにもつながります。

任せることは、期待を伝えることでもある

人は、自分に期待されていると感じたときに一歩前に出ます。

逆に「どうせ無理だろうな」と思われていると、それ以上がんばろうとしません。

だからこそ、「やってみて」「任せるね」と伝えることは、

**「あなたならできると信じてる」**というメッセージにもなるんです。

もちろん、うまくいかないこともあります。

でも、そこで一緒に考え、成長のプロセスに付き合うことこそ、マネジメントの醍醐味かもしれません。

あなたがやった方が早い。

でも、あなたが“任せた先”にしか生まれない成長がある

それを信じて、最初の一歩を踏み出してみませんか?

2️⃣ 1on1は“管理”じゃなく“関係づくり”

昇進後にまず始めたほうがいいアクションは何ですか?

そう聞かれたら、ぼくは迷わずこう答えます。

「1on1をやってみてください」と。

メンバー一人ひとりと、落ち着いて話す時間を取ること。

これは、これからのチームづくりの土台になります。

でも、1on1ってやったことがないと、ちょっとハードル高く感じますよね。

「何を話せばいいんだろう…」とか

「ちゃんとアドバイスできる自信がない…」とか。

大丈夫です。

最初の1on1でいきなり深い話をしようとしなくてOKです。

むしろ、“管理”じゃなく“関係”をつくる場なんだと考えてもらえたら十分です。

聴くことから始まる信頼関係

1on1でいちばん大切なのは、相手の話を“ちゃんと聴く”こと。

アドバイスすることでも、管理することでもありません。

「最近どう?」というシンプルな問いからでも大丈夫。

相手の口から出てくる言葉を、途中でさえぎらず、評価せずに聴く。

これだけで、少しずつ「この人には話してもいいかも」という空気が生まれてきます。

上司が“ちゃんと聴いてくれる人”であることの価値

メンバーにとって、上司が「ちゃんと話を聴いてくれる人」かどうかは、とても大きな意味を持ちます。

ここでの“ちゃんと”には、ただ聞いているのではなく、評価せずに、途中で遮らずに、最後まで耳を傾けてくれるというニュアンスが含まれます。

仕事で判断に迷ったとき、誰かとの関係に悩んだとき。

そんなときに「この人なら話してもいいかも」と思える存在がいるだけで、人は安心し、前を向いていけるんです。

あなたが1on1を通じて「この人は大丈夫」と思ってもらえる存在になれたら、

それだけでチームの安心感と自走力は、確実に上がっていきます。

完璧な質問なんていらない

「どんな質問をすればいいですか?」と聞かれることもありますが、

正解の質問なんて、実はありません。

大事なのは、あなたが相手に関心を持っているかどうか。

その気持ちがあれば、多少ぎこちなくても1on1は成立します。

たとえば:

•「最近、仕事で面白かったことってある?」

•「いま、ちょっとしんどいなって思ってることってある?」

•「このチームで、もっとこうなったらいいなって思うことある?」

ちょっとした問いでも、関係性を深めるきっかけになります。

まずは月1回でも、10分でもいい。

1on1を始めてみることで、チームの空気は確実に変わりはじめます。

そして気づいたとき、きっとこう思うはずです。

「チームって、ひとりひとりとの対話の積み重ねでできていくんだな」と。

3️⃣ “強み”からマネジメントするという視点

部下の育成というと、つい「どこが足りないか」「何を直すべきか」に目が向きがちです。

もちろん、改善点に気づいて支援することは大切ですが──

そればかりだと、本人のモチベーションが下がってしまうこともあります。

そんなときこそ、“強み”に目を向けるという視点が力を発揮します。

弱点を補うより、強みを活かす方が伸びる

人は、自分の得意なことをやっているときに、自然とエネルギーが湧いてきます。

集中力も高まるし、周囲にも良い影響を与えやすくなる。

それはきっと、あなた自身も経験があるはずです。

だからこそ、上司として「この人は何が得意なのか?」「どんなときにイキイキしてるのか?」に目を向けて観察すること

それが、育成の入り口になります。

では、具体的にどこを見ればいいのか?

ぼくがよくお伝えしているのは、こんな3つの観点です。

その人が楽しそうに取り組んでいること(=好き)

周囲が自然とその人に頼っていること(=任せたくなる)

結果が出ていて、周囲からも評価されていること(=成果)

この3つが重なるところに、その人の“強み”が隠れていることがよくあります。

しかもそれは、目に見えるスキルだけじゃなく、関わり方や姿勢、仕事へのスタンスのような「その人らしさ」にも現れるんです。

「役割」ではなく「可能性」で関わる

マネージャーになると、つい“役割”で人を見てしまいがちです。

「あの人は経理だから数字まわり」「彼は中堅だから後輩指導」など。

でも、強みで見るということは、「この人にはこんな可能性があるかもしれない」という視点を持つということ。

実際にやったことがなくても、「向いてそう」と思えることを小さく任せてみることで、思わぬ成長につながることもあります。

強みを活かすチームは、自走する

強みを起点に任せられたメンバーは、「自分の力が活かされている」と感じやすくなります。

その実感が、自信と行動につながり、少しずつチーム全体の流れが変わっていきます。

こうした経験を積み重ねることで、メンバーの「自立」や「主体性」が育っていきます。

自分の意思で動ける人が増えると、やがてチーム全体が“自走”しはじめる。

「この人なら、あれを任せてみようかな」

そんな小さな選択の連続が、自走できるチームを育てていくんです。

強みを見る視点は、マネジメントにおいてとても優しい眼差しです。

それは、「あなたを見ているよ」「可能性を信じてるよ」というサインでもあります。

あなたがその視点を持つだけで、メンバーの表情がふっと明るくなる瞬間が、きっとあるはずです。

4️⃣ 自分の“理想の上司像”を棚卸ししてみる

部下を育てたい。

でも、自分はどう関わればいいのか、正解がわからない。

そんなときこそ、「自分がどんな上司でいたいか?」を考えてみることがヒントになります。

難しく考えなくても大丈夫です。

過去をちょっとだけ振り返ってみるだけでいいんです。

「この人みたいになりたい」と思った上司は誰でしたか?

•どんな関わり方をしてくれていましたか?

•どんな言葉が印象に残っていますか?

•自分がどんなふうに変わっていったか、覚えていますか?

あなた自身が成長したと感じた瞬間には、きっと誰かの“関わり”があったはずです。

そして大事なのは、その人のすべてを真似しようとしなくていいということ。

完璧に理想的な人なんて、きっといません。

でも、「あのときの言葉が嬉しかったな」「あの接し方は印象に残ってるな」

そんな“ひとつひとつの部品”のような要素を、自分なりに切り取って取り入れていけばいいんです。

そうやって、少しずつ自分だけのマネジメントスタイルをつくっていけばいい。

正解を探すのではなく、「自分の軸」を持つこと

マネジメントに“正解”はありません。

でも、「自分がどんな上司でいたいか」という軸があると、

迷ったときにもブレにくくなります。

•部下にどんなふうに関わりたいか

•どんなチームをつくりたいか

•自分がどんなふうに信頼されたいか

言葉にしてみることで、自分のマネジメントスタイルが少しずつ見えてきます。

育てるマネジメントは、他人のマネをすることじゃない。

あなた自身の言葉と行動で、少しずつ形づくられていくものです。

だからまずは、自分の過去を棚卸しして、

「自分が大切にしたい関わり方」を見つけるところから始めてみませんか?

5️⃣ 育成に“正解”はない

ここまで読んで、「なるほど、とは思うけれど…」と感じている方もいるかもしれません。

現場は忙しいし、余裕なんてない日もある。

ちゃんとやれている実感が持てないまま、毎日が過ぎていく。

そんな中で、「育てるマネジメント」なんて言われても、うまくできる気がしない──

そう感じるのも、すごく自然なことです。

育成は、正解を目指すものじゃない

マネジメントって、“うまくやろう”と思えば思うほど、プレッシャーが増します。

でも実際は、育成に「これが正解!」という唯一の答えなんてありません。

相手も状況も日々変わっていく中で、

あなた自身も試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ形をつくっていくしかない。

ときには遠回りに感じることもあるけれど、

そのプロセスこそが、あなたのチームを育てていく時間になります。

大切なのは、「関わろうとする意志」

うまくいくかどうかよりも、

何より大切なのは、**「部下と関わろうとする意志があるかどうか」**です。

忙しい中でも、少し時間を取って話を聴こうとする。

うまく伝わらなくても、また別の角度で伝えようとする。

任せたことに口を出したくなっても、信じて見守ろうとする。

その積み重ねが、メンバーに伝わっていきます。

「ちゃんと見てもらえている」「自分のことを気にかけてもらえている」

そんな実感が、行動を変えていくんです。

あなたのマネジメントには、あなたらしさがあっていい

ここまで読んでくれたあなたには、きっと「いいマネジメントをしたい」という思いがあるはずです。

その気持ちがある限り、たとえ迷いながらでも、きっとチームはついてきてくれます。

大事なのは、正しくやろうとしすぎないこと

完璧じゃなくていい。あなたらしさがある関わり方こそが、チームの空気をつくっていきます。

育成は、ゆっくりでいいんです。

関わる中で、お互いが育っていけばいい。

それが、あなたのチームの、これからの土台になっていきます。

🧭 おわりに:あなたらしい育成の一歩を

ここまで、「育てるマネジメント」をテーマに、5つの視点をお届けしてきました。

✅ 自分でやった方が早い、の壁を超える

✅ 1on1は“管理”ではなく“関係づくり”

✅ 強みからマネジメントするという視点

✅ 自分の理想の上司像を棚卸ししてみる

✅ 育成に“正解”はない

どれも、すぐに完璧にできるものではありません。

でも、どれも「意識して関わろう」と思ったその瞬間から、

少しずつチームの空気は変わっていきます。

昇進・昇格は、ゴールではなく新しいスタート。

大変なことも増えるけれど、その分だけ“育てる喜び”も手にしていけるはずです。

だからこそ、正解を探すのではなく、

「自分だったら、どんなふうに関わりたいか?」を問いながら、

あなたらしい育成の一歩を踏み出してみてください。

その一歩が、未来のチームをつくっていきます。

今日もその歩みを応援しています

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働くママのための、子どもの成長を信じる4つの実践方法

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「子どもの成長を信じたいけれど、失敗したらどうしよう。」と心配が先立ってついつい手を差し伸べてしまう。

このような悩みを抱えている働くママは少なくありません。仕事と家庭のバランスに追われる中、親としての理想と現実のギャップに戸惑うことがあるかもしれません。

これは、仕事と家庭のバランスに悩んでいるとあるクライアントさんがコーチングセッションの中でおっしゃったことです。

その方は、営業職の忙しい日々の中で、つい急かしたり指示を出し過ぎたりしてしまうことを感じ「これでいいのかしら??」と思うようになったというのです。

今回は、親が子どもの成長を信じることの重要性について深掘りしてみたいと思います。

これって管理職の方が部下、チームメンバーの成長を信じることにも共通する内容になると思いますので「成長を信じる」ことに興味ある方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。

はじめに: 「成長を信じる」ことの意義

成長を信じること。それは、相手の可能性を信頼し、安心して見守る姿勢を持つことです。親として子どもを育てる中で、つい手を出してしまったり、急かしたりする場面が多いかもしれません。

日常生活の中で『やらせてみたいけど失敗したらどうしよう』と悩む瞬間はありませんか?

「もっと我慢強く接するべきかも」と感じたり、

「ちゃんと成長してくれるかな」と心配したりするのは、どの親にもあることです。

ですが、目の前にいる子どもが自分自身で学び、成長していく力を持っていると信じることができれば、親子の関係にはポジティブな変化が生まれるでしょう。

こうした「成長を信じる」姿勢が、相手の成長に大きな影響を与える現象として知られているのが「ピグマリオン効果」です。相手に対する期待がその相手の成果や行動に影響を与えるというこの心理学的理論は、育児だけでなく、コーチングの場面でも非常に重要です。

だからこそ、コーチは心からクライアントさんの成長を信じてコーチングをすることがとても大切なのだと思います。コーチがクライアントさんの成長を心から信じることで、クライアントさんが自己効力感を感じやすくなり、自らの成長を実感する機会が増えるでしょう。

さらに、この考え方は職場や家庭の様々な場面で役立ちます。部下やチームメンバーが困難な状況を乗り越え、自ら解決策を見つけ出す力を信じることができれば、上司やリーダーとしての在り方も大きく変わるはずです。「成長を信じる」ことは、子育てやコーチングに限らず、ビジネスの現場などさまざまな場面で相手と自分の両方に成長のきっかけをもたらす大切なマインドセットなのです。

成長を信じるために必要な3つのマインドセット

ビジネスコーチの視点で見た時に、相手の成長を信じるために必要なポイントとしては、次の3つが考えられます。

1. 忍耐と見守る姿勢

子どもの成長や部下の進展、自発的な取り組みには時間がかかるものです。焦らず、相手のペースに寄り添いながら待つ忍耐力が必要です。特に、小さな成功や変化を見逃さず、それをもとに自信を育むサポートをすることで、相手も自分も次のステップへ進みやすくなります。信頼をもって見守る姿勢を持つことが、成長を信じる基盤となるでしょう。

また、相手のことを「よく観る」ことが大切です。相手をよく観察することで、些細な変化や小さな進歩に気づけるようになり、それが信じる力をさらに強めることに繋がります。ぜひ、「手を出す」「アドバイスをする」代わりに「よく観る」を実践してみましょう。

2. 小さな進歩を認める

成長を信じるには、相手の変化に敏感であることが大切です。目標が大きいと、どうしてもそこに到達するまでのプロセスを軽視しがちですが、途中経過で得られる進歩や学びに目を向けることが、信じる気持ちを支える大きなポイントです。

1.でお伝えした「よく観る」を実践することで、より「小さな進歩」に気がつくことができるようになり、小さな進歩を認めることができる場面が増えていくはずです。たとえ小さな一歩でも、それが次のステップにつながる大切な進展であると認識し、相手に伝えることで、互いにモチベーションが高まります。

「フィードバックをする」ことや、今の状況やどんな気持ちかを相手に「質問する」ことで「小さな進歩を認めている」ことがうまく伝わるでしょう。

3. 自分自身の変化・成長に対する柔軟な心

他者の成長を信じるためには、まず自分自身が変化・成長を受け入れる柔軟性を持つことも必要です。変化に対して柔らかく構え、自ら進んで変化することを受け入れることで自然と相手に対しても同じ姿勢で向き合えるようになります。親として、上司として、あるいは管理職として、自らが変化することを恐れず、自分自身も常に学び、成長する意欲を持つことで、その姿勢が周りに伝わり、良い影響を与えるでしょう。

以上の3つのマインドセットを意識することで、成長を信じる力が自然と育まれ、子育てや部下の育成、さらには職場や日常生活でも、より良い関係性や成果を生み出すことができるでしょう。

マインドセットがもたらす効果

成長を信じるための3つのマインドセットを意識することで、日常の中でさまざまな良い変化が生まれます。

まず、忍耐と見守る姿勢を持つことで、相手が自発的に成長しやすい環境が整います。焦らずに相手を見守ることで、信頼関係が深まり、子どもや部下が自ら挑戦する意欲を高めることができます。

また、小さな進歩を認める習慣を持つことで、相手は「自分を見てくれている」と感じるようになります。フィードバックや適切な質問を通じて、小さな進歩を認めることが伝わると、相手のモチベーションが向上し、さらなる成長に繋がります。このポジティブなスパイラルが続けば、相手の自信が積み重なり、結果的に大きな成果が生まれやすくなります。

さらに、自分自身が変化・成長を柔軟に受け入れる姿勢を持つことで、リーダーシップの質も向上します。親としても管理職としても、柔軟で学び続ける姿勢を見せることで、周囲への良い影響力を高めることができるようになります。この姿勢が相手に伝わることで、子どもや部下も同じく変化を恐れずに挑戦するようになるでしょう。

これらのマインドセットがもたらす効果は、単に個人の成長にとどまらず、家庭や職場全体の雰囲気をよりポジティブなものに変える力を持っています。相手と自分の成長を同時に促進するこのアプローチは、長期的な成功の基盤を築くために不可欠なものだと言えるでしょう。

実践的なアプローチ

働く子育てママが取り入れられる実践的なアプローチをいくつかご紹介します。

1. 小さなできたことを認める言葉かけをする

対話型育成で成果を出している管理職の方が「この提案資料お客様目線ですごく感情移入しやすいね」のようなこまめなフィードバックをしているのと同じように、「靴を履くの上手だね」や、「遊んだ後にきちんとお片付けができてすごいね!」など、具体的に言葉にして伝えるだけで、子どもは自分が成長していることを実感し、自信を持つようになります。

2. 問いかけを通じて自分で考える機会をつくる

管理職が適切な目標設定を促すのと同じように、子どもに「お城は上手に作れたね。じゃあ今度はこの積み木で何を作りたい?」とか「次は何色をつかったらこの絵がもっとたのしくなるかな?」といった簡単な質問を投げかけることで、自分で考える機会を増やしましょう。これにより、子どもは自分なりに進歩を感じ、親に褒められるだけでなく、自分の力で成長していることを認識するようになります。

3. 余裕を持った時間設定をする

人間の成長には、何度も試して学ぶ時間が必要です。管理職が余裕のある姿を見せることで部下が相談をしやすくなるのと同じように、働くママが日々のスケジュールをほんの少し緩めることで、失敗しても再挑戦できる環境を整えましょう。たとえば、着替えやお手伝いをする時間を少し余裕をもって設定することで、子どもは焦らず、自分のペースで挑戦しやすくなります。

4. 成長を目に見える形で共有する

ビジネスの進捗管理ミーティングのように、子どもの成長も記録や写真で可視化することで、親子でその変化を振り返ることができます。「去年はまだこれができなかったけど、今はこんなに上手になったね」といった会話を通じて、子どもも自分の成長を自覚し、さらなる挑戦への意欲が湧いてきます。

これらのアプローチを通じて、成長を信じるマインドセットが親子の日常に自然に溶け込み、子どもの自信と意欲を育む助けになるでしょう。

結論: 子どもの成長を信じることが、親の成長にもつながる

子どもの成長を信じて見守ることは、単に子どものためだけではありません。それは、親として、さらには一人の人間として成長するための扉を開く行為でもあります。

子どもの成長を見届ける中で、ビジネスにも必要な

1.小さな変化を見逃さない承認する力

2.変化・成長を受け入れる柔軟な思考

3.忍耐強さ

が自然と育まれ、親としてもビジネスパーソンとしても自己効力感を高めることができるでしょう。

成長を信じる姿勢を持つことで、家庭の中に信頼と安心の土台が生まれます。そして、その土台があれば、子どもは自信を持って新しい挑戦に踏み出し、親はその姿に励まされて自分自身の可能性を広げることができます。

「このやり方で本当に合っているのかな?」と感じることもあるかもしれませんが、それは自然な気持ちです。親が心から子どもの成長を信じる姿を見せることで、子どもはそれに応える力を持っています。

つまり、子どもを信じるという行為そのものが、親としての成熟や、家庭全体のポジティブな変化を促す大きな原動力となるのです。そして、この経験は今後の子育てにもビジネスにも必ず良い影響を与えるでしょう。

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若手の“転職したい”に、あなたが正解を出さなくても良い理由

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「部下から“転職を考えています”と言われました」

そんな報告を受けたとき、あなたはどう反応するでしょうか。
引き止めるべきか、黙って背中を押すべきか、それとも上司として何かを伝えるべきか。
――いろんな考えが一気に頭を駆け巡るかもしれません。

私たち管理職は、「その場で的確に対応すること」や「部下にとって正しい助言をすること」を求められる場面が多くあります。
だからこそ、“転職”という言葉を聞いた瞬間、つい「どう対処すればいいか?」という答え探しのスイッチが入ってしまうのも無理はありません。

でも、そんなときこそいったん立ち止まって考えてみてはどうでしょうか?
その言葉、本当に“辞めたい”という意味なのでしょうか?
そして――

その言葉をどう受け取るかが、あなた自身のマネジメントを問い直すチャンスになるかもしれません。


“転職”という言葉の奥にあるもの?

以前のセッションで、ある管理職の方からこんな相談を受けました。
「新入社員の女性から“転職を考えています”と言われて、正直、どう対応すればいいかわからなくなってしまいました」

この方は、これまで対話型のマネジメントを実践し、部下の主体性を引き出し、安心して意見を出し合えるチームづくりを地道に積み重ねてきました。
実際、とても良いチームビルディングができていました。

しかし、今回の新人にはこれまでのやり方が通用しませんでした。

一見すると明るく、ポジティブな印象で、コミュニケーションもきちんと取れているように見える――
けれど、どこか本気さが感じられず、常に薄い違和感が残る。
大きなトラブルがあるわけではないものの、時折、目立たないかたちで自己中心的な行動が見られることもありました。

そんな新人との関わり方に悩み始めていた矢先の“転職発言”だったのです。

これまでも難しい局面は何度もあったけれど、自分のマネジメントでなんとか乗り越えてこられた。
でも今回は通用しないのではないか――そんな迷いが、少しずつ心の中に生まれていたようです。

とはいえ、「これまでのやり方が通用しない」という感覚は、これまで積み上げてきた自分のマネジメントに対する小さな不信感を呼び起こすこともあります。

とくに対話型のマネジメントを実践している人ほど、
「関係性を築く」「対話する」「相手の成長を信じて関わる」といった原則を大切にしているからこそ、
うまくいかない相手と出会ったときに、「自分のやり方がズレていたのではないか?」という自責の思考に陥りやすいのです。

だからこそ、「接し方を変えれば解決するのでは」と考えるのは、ある意味とても自然な反応です。
けれどその視点は、相手に合わせようとするがゆえに、逆に自分の視野を狭めてしまうこともある。

この方も、「新人に対してどのように接すればいいのか?」という“接し方の修正”に意識が向いている感じがしました。
けれど、それだと関わり方の選択肢の幅が狭くなるように感じたので、

私は、視点を変えることが効果的だと思えたのです。

そこで私は、こう問いかけてみました。

「その“転職したい”という言葉、本当にそのまま受け取って良いと思いますか?」

もしかすると――
• 自分の存在を認めてほしいという“試し行動”
• 過度な期待への“抵抗”
• 職場に対する違和感を言語化できず、転職という言葉に置き換えている

そんな背景がある可能性もあります。
「転職したいです」は、単なる意思表明ではなく、“何かを伝えたい”というサインなのかもしれません。


正解探しより、問いの力を信じてみる

転職の意思を伝えてきた新人に対して、どんな言葉をかければよいのか。
どんな態度で接するべきなのか。
管理職としてその場に立たされたとき、私たちはつい「正しい対応」を探そうとしてしまいます。

でも、すぐに“正解”を出そうとすることが、かえって状況を見誤らせてしまうこともあります。

対話型のマネジメントを実践してきたこの方も、今回ばかりは、

「自分のマネジメントにどこか足りないところがあったのではないか」
「接し方をもっと変えた方がよかったのではないか」
そんなふうに“答え”を求め始めていました。

ですが、マネジメントにはそもそも正解がありません。
あるのは、その時々の相手に合わせた“問い”を持てるかどうかです。

とはいえ、正解を出したくなる気持ちは、とてもよくわかります。
上司という立場にあると、部下の不安を取り除くことや、スムーズに仕事が回るように整えることが求められます。
だからこそ、「何か言わなければ」「すぐに動かなければ」と感じてしまうのは、ある意味自然な反応です。

けれど、「正しく対応すること」ばかりに意識が向いてしまうと、
いつの間にか、“相手の言葉をどう受け取るか?”という問いよりも、
“自分がどう振る舞えばいいか?”という問いにすり替わってしまうことがあります。

問いを持つとは、「正解を探し続ける」ことではありません。

一度立ち止まり、その言葉の裏にある背景やサインを見つめる余白を持つこと。

それこそが、対話型マネジメントを実践する上での“本当の問い”なのだと思います。

たとえば今回のように、「転職したい」という言葉が出てきたとき、
それをそのままの意味で受け取って、“転職したい部下”への接し方を選ぶのか?
それとも、その言葉を何かしらのサインとして捉えたうえで接するのか?

どちらの姿勢で関わるかによって、見えてくる景色は大きく変わってきますし、
関わり方の選択肢の幅も、圧倒的に変わってきます。

人は、心の中で思っていることをそのまま言葉にできないこともありますし、
意図的に、違う言葉を発することもありますよね。

だから、言葉に反応することではなく、問いを持ち続ける意識をもつこと。

その問いが、次の一手を見つける力になります。


「見守る」という粘り強さ

今回のケースでこの管理職の方が選んだのは、すぐに何かを変えようとするのではなく、“見守る”という選択でした。

ただ、それは決して放置ではありません。
「社会人としてのルールに明確に反したときだけ指導する」
「必要に応じて人事部門にも状況を共有する」
――そうした対応策を冷静に整えた上で、“あえて踏み込まない”という判断をされたのです。

そしてもう一つ、大切にされていたことがあります。
それは、新人の成長を諦めないこと
感情を介入させすぎず、でも見捨てることなく、距離を取りながらも可能性に目を向け続ける。
その姿勢には、粘り強さと覚悟がありました。

けれど、「見守る」という選択は、言うほど簡単ではありません。
人間のもつ本当の力を信じたいと思う反面、

「本当にこのままでいいのか」「何か動いた方がいいのではないか」――
そんな葛藤が、心の中で何度も浮かんでは消えます。

ときには、周囲からの声がプレッシャーになることもあります。
「最近あの子、大丈夫なの?」「もっと声をかけてあげた方がいいんじゃない?」
そんなふうに言われると、
自分の静かな“見守り”の姿勢が、消極的に見えているのではと不安になる瞬間もあるでしょう。

でも本当は、「見守る」というのは何もしないことではなく、“すぐに動かない”という決断を続けること。
その裏には、手を出すことが自分の安心のためになっていないかという、内省と問いかけがあるのだと思います。

すぐに動くこと、すぐに言葉をかけることが「マネジメントらしさ」だと思い込んでしまうと、
“何もしない”ことは無責任に感じられるかもしれません。
そして、とくに自分が迷っているときは、「動く」ほうが自分が楽なことも、本当は多いと思います。

でも実は、問いを持ち続けながら見守ることこそ、最もエネルギーがいるマネジメントのひとつなのだと思います。


部下の「転職したい」は、上司の成長の扉

「転職したい」と口にする部下に、どう向き合うか。
それは単に、“引き止める or 見送る”という二択の話ではありません。

まず大前提として、転職は悪いことではありません。
部下には部下の人生があり、その時点でのベストな選択として転職を選ぶことも、当然あり得ることです。

けれど、その選択が正しいかどうかを判断することよりも、
上司として本当に大切なのは――

たとえそれがマネジメント側の要因ではなかったとしても、その言葉が発せられた“状況”に、どれだけ真摯に向き合えるかどうか

正解を出そうと焦るよりも、問いを持ち続ける。
すぐに動くのではなく、粘り強く見守る。
その姿勢が、部下の未来を信じることにもなり、同時に自分自身を育てることにもつながっていきます。

だからこそ、「転職したい」のように、一見会社側にはマイナスに聞こえる、
現状を大きく変えようとする部下の言葉は、

結果がどうなろうとも、上司自身の成長に向けた扉をノックしてくれているのかもしれません。

たとえ最終的にその部下が転職という選択をしたとしても、関わった時間が無駄になるわけではありません。

マネジメントは、“関係性の結論”ではなく、“関わったプロセス”そのものに価値がある。

上司の問い続ける姿勢は、部下の心に直接届かなくても、
その後の誰かとの関係、あるいは自分自身の在り方に、きっとつながっていくはずです。

その扉の前で、あなたはどんな問いを持ちますか?

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目標設定は”道具”である!評価に振り回されない成長の考え方

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チームをまとめる立場の人としてのジレンマ:メンバーに寄り添うほど評価制度に疑問を持つ

Aはすごく頑張っているのに、評価はBの方が高いんですよね。」

チームをまとめる立場の人として、メンバーの努力や成長を間近で見ているからこそ、評価制度の結果に納得がいかないことがあります。

会社の評価基準は一応「公平」を目指しているはずですが、どうしても基準化できない「プロセスの頑張り」や「状況の違い」があります。

もちろん、会社としての評価制度は一定の基準を設けることで公平性を保とうとしています。しかし、実際の現場では、どうしても一律の基準では測れない努力や貢献があるため、管理職として納得感を持ちにくい部分があるのです。

その結果、

メンバーに寄り添いたい自分

会社の評価制度を運用する立場の自分

この間でジレンマを抱えることになります。

ぼくのコーチングを受けていただいている方には、現場を見ている管理職の方もたくさんいらっしゃいます。その中には、メンバーの評価に悩む方も少なくありません。

両方の立場を理解できるからこそ、「この評価制度で本当にいいのか?」という疑問が生まれがちです。

そんな中、ひとつ視点を変えることで、評価制度に振り回されず、メンバーの成長を本当に後押しできるマネジメントができます。そのポイントは、「目標設定は道具である」という考え方にあります。

目標設定は“成長の道具”であるはずなのに、“評価の義務”になっていないか?

評価制度のもとでの目標設定は、本来「メンバーが成長するための指針」として機能すべきものです。

しかし、現実には「評価のための義務」として運用されてしまうことが多いのではないでしょうか。

•「評価シートを埋めるために、とりあえず適当に目標を作る」
•「上司に指摘されないように無難な目標を設定する」
•「過去の目標をほぼそのままコピペする」

こうなってしまうと、目標設定の本来の意義が薄れ、

✅ メンバーの成長につながらない
✅ 評価のためにやらされ感が生まれる
✅ 目標が形骸化してしまう

といった問題が発生します。

「目標を設定しても、結局何も変わらない」と感じてしまうと、次第に目標設定そのものが形骸化してしまいます。

例えば、現場からこんな声を聞くことがあります。

•「去年と同じような目標を書いているけど、正直、内容を覚えていない。」
•「達成できるかどうかより、とりあえず書けばOKみたいになっている。」
•「評価のタイミングで上司に『これ、何のための目標だっけ?』と聞かれて、自分でも答えに詰まることがある。」
•「とにかく書かないといけないので、毎回適当に埋めているだけ。」

このような状態では、目標設定が形だけのものになり、実際の成長にはつながりません。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」として活用できるのでしょうか?

目標設定制度を厳しくすることで解決しようとする企業の落とし穴

目標設定制度が上手く機能しないときに、目標設定の範囲を狭くしたり、ルールを厳しくしたりすることで「なんとかしよう」とする企業を時々見かけます。

ですが、これをした企業でうまくいった事例というのは残念ながら見たことがありません。

このような”対処”をした企業の多くでは、前の章で挙げたような形骸化がさらに加速したり、現場社員の主体性が損なわれることが多いようです。

例えば、

•「目標フォーマットが細かすぎて、目標を自由に考える余地がなくなった。」
•「達成度の計測方法が厳密になりすぎて、短期的な目標しか立てられなくなった。」
•「自由度が低くなり、社員が“どうせ決められた範囲でしか目標を作れない”と諦めてしまった。」

目標設定制度のルールを厳しくすればするほど、社員は「決められた枠の中で適当にこなす」ことに意識を向けがちになります。

そして、目標設定の範囲が狭かったり、ルールが厳しいほど “適当にこなしやすく” なるのです。

結果として、目標設定そのものが単なる形式的な作業になり、メンバーの成長につながらないままとなってしまうのです。

では、どうすれば目標設定を「成長のための道具」に変えられるのでしょうか?

メンバーの目標設定を「成長のための道具」にするための3つの工夫

1. 「何を達成したいのか?」を本人と対話する

評価のための目標ではなく、本人が「これができるようになったら、自分の仕事の幅が広がる」と思える目標を引き出すことが大切です。

「この1年で、どんなスキルを身につけたいですか?」
「今の仕事をより良くするために、どんなことができるようになりたいですか?」
「3年後のキャリアを考えたときに、どんな経験を積んでおきたいですか?」

このような問いかけをすることで、目標設定の意義を本人の成長に紐づけることができます。

2. 「目標達成のプロセス」に価値を置く

評価制度の枠組みでは、目標の「結果」だけが評価されがちですが、成長のためにはプロセスの学びを重視することが重要 です。

「目標に向かって何を工夫しましたか?」
「途中で壁にぶつかったとき、どう乗り越えましたか?」
「どの部分が一番成長を実感できましたか?」

こうしたフィードバックを通じて、「目標達成のプロセス」そのものを評価の一部として意識づけることができます。

3. 目標は「途中で変えてもいい」と伝える

評価制度のもとでは、目標を一度設定したら固定されることが多いですが、現場では以下のようなことが日常的に起こります。

📌 業務の状況が変わる
📌 新たな課題が見つかる
📌 途中で「もっと良い目標」が見つかる

そのため、「目標は修正可能である」と伝え、

「途中で方向転換してもOK」
「柔軟に軌道修正できるようにする」

という意識を持つことで、目標がより実践的なものになります。

もちろん、目標を頻繁に変えるのではなく、成長に必要な修正であることを説明し、上司やチームとも共有することが大切です。目標設定の目的が『達成ありき』ではなく、『成長のための指針』であることをメンバーにも伝えることで、安心して挑戦しやすい環境を作ることができます。

このような工夫をすることで、目標設定を単なる「義務」ではなく、本当の意味での「成長のための道具」として機能させることができます。

そして、これらの工夫を機能させるためには、管理職のより高いリーダーシップを必要とします。

つまり、目標設定を成長の道具として機能させるための本質的な課題解決の方法は、管理職が成長すること なのです。

経営側にも求められる管理職の成長のための施策

管理職としてメンバーの成長を支援したくても、評価制度や会社の仕組みが壁になってしまうことがあります。だからこそ、経営側もこの問題に向き合い、管理職が成長支援をしやすい環境を整えることが重要です。

経営側にできることは、大きく3つです。

1. 目標設定を「成長の場」にする文化を作る
2. 管理職向けのコーチングや研修を実施する
3. 目標設定の自由度を確保する

特に、「こういう仕組みがあると助かる」と管理職が経営側にフィードバックすることは、現場の変化を生む大きな力になります。

経営側の支援を待つだけではなく、管理職自身が「この仕組みが必要だ」と働きかけることもできます。

では次のパートではいよいよ、管理職が自分のリーダーシップをどのように磨けばいいのかを見ていきましょう

管理職はどんなことを意識して自分のリーダーシップを磨いたら良いのか?

管理職のリーダーシップとは、単に指示を出すことではなく、部下の成長を促し、主体性を引き出す力のことです。目標設定を『評価の義務』ではなく『成長の機会』にするためには、管理職自身の関わり方が大きな影響を与えます。

管理職の立場として、メンバーの成長を支援したいと考えても、経営側の方針や評価制度の仕組みによって、その動きを制限されることがあ流かもしれません。

ですが管理職自身が出来ることとして、目標設定を「評価の義務」ではなく、「部下の成長を支援する機会」 と捉えて行動することが重要です。

1. 目標設定は「成長を引き出す場」だと捉える

「この目標は評価にどう影響するか?」ではなく、「この目標は、あなたのキャリアデザインにおいてどんな役割を果たすと想う?」 という視点を持つことが大切です。

目標設定面談でこの問いを投げかける
目標達成のプロセスを評価し、成長の視点からフィードバックする

こうした関わりをすることで、目標設定を通じて部下の成長を支援できるようになります。

2. 目標設定のフィードバックを充実させる

目標設定は、設定した時点ではなく、振り返りの場面でどれだけ学びを得られるかが重要 です。

「目標に向かって何を工夫した?」
「途中で困ったことは?どう乗り越えた?」
「次に活かせることは何?」

このような問いかけをすることで、部下が目標を成長の機会として捉えやすくなります。

3. 現場のリアルな声を拾う

部下が「目標設定が意味のあるもの」と感じているかどうかを、普段の会話や1on1の場で確認することも大切です。

「この目標、今の業務にどんなプラスがあった?」
「やってみて、どんな気づきがあった?」
「目標設定の仕方、変えたほうがいいことはある?」

こうしたやりとりを通じて、目標設定のあり方を、現場のリアルなニーズに合わせて進化させる視点 を持つことが、管理職としてのリーダーシップにつながります。

つまり、目標設定を「成長のための道具」として機能させるためには、管理職が自らの成長にチャレンジにながら、リーダーシップを発揮していくことが求められるのです。

まとめ

目標設定は本来、メンバーの成長を支援するための「道具」であるはずです。しかし、多くの企業では目標設定が「評価のための義務」となり、形骸化してしまっています。

その結果、メンバーはただ目標を書くだけの状態になり、管理職も「評価をつけるためのもの」として扱いがちです。こうした状況を変えるためには、目標設定を「成長のための道具」にする工夫 が必要です。

管理職がメンバーの成長を促すためにできることは、次の3つです。

1. 目標を「成長の場」にする

「評価のために作るもの」ではなく、「キャリアデザインの指針」として活用する。

✔ 目標設定面談で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」を対話する。

2. プロセスを評価する

結果だけでなく、取り組みの中で得られた学びや工夫を振り返る。

✔ 「この目標に向かって何を工夫した?」と問いかける。

3. 現場の声を拾い、柔軟に調整する

業務の変化に合わせて、目標設定を柔軟に見直す。

✔ 「今の目標、現場の実情に合っている?」と確認する。

評価制度に振り回されるのではなく、目標設定を成長の機会に変える。その視点を持ち、実践することが、これからの時代の管理職に求められる重要な役割です。まずは、自分のチームの目標設定のあり方を見直し、できることから始めることであなたのリーダーシップを発揮してください。

まずは、次の1on1で「この目標があなたの成長にどうつながるか?」と問いかけてみませんか?

そこから、あなたのリーダーシップは始まります。

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