「いい影響を与える人」がしている、シンプルなこと──感情の伝え方

Pocket

冒頭|「あの人といると、なぜかがんばれる」

「なんか、あの人といるとがんばれるんだよね。」

そんな言葉を聞いたことはありませんか?
あるいは、自分が言われたことがある、という方もいるかもしれません。

明確な指導をしたわけでも、特別な成果を出したわけでもない。
でも、気がつくとまわりの人が前向きになっていたり、自然と相談を受けていたり。
「自分って、何かいい影響を与えられてるのかな?」
ふと、そんなことを感じる瞬間があるかもしれません。

先日、とあるクライアントさんとのコーチングセッションで、
まさにそんな話題があがりました。
経験や知識ではなく、「ふるまいや関わり方」がまわりに影響を与えている──
そんな姿に、あらためて大切なことを教わった気がします。

「なぜか一緒にいるとがんばれる人」には、
相手の気持ちを尊重しながら、自分の気持ちもきちんと伝える力がある。

言い換えれば、安心できる空気をつくれる人なんです。

今回は、そんな「いい影響を与える人」になるためのヒントとして、
“感情の伝え方”にフォーカスしてみたいと思います。

「いい影響」を与える人の共通点

「いい影響を与える人」と聞いて、どんな人物像を思い浮かべるでしょうか。

知識が豊富な人。
判断力がある人。
言葉に説得力がある人。

たしかに、そうした力も影響力を高める要素のひとつかもしれません。
実際にコーチングの現場でも、影響力を高めたいと話す方の多くが、
「もっと成果を出したい」
「専門分野の勉強をがんばりたい」
「まずは資格を取りたい」──そう口にされます。

そのどれもが、とても大切な努力です。
でも、ときどきこうも思うんです。
**“その前にやっておきたいことがあるかもしれない”**と。

誰かと関わるとき、最初に届くのは、
その人の「雰囲気」や「ふるまい」、そして「感情の扱い方」だったりします。

「なんだか話しかけやすい」
「一緒にいると安心する」
「自然と前向きになれる」
そんな印象を持たれている人は、日常の中で確実に“いい影響”を広げているんです。

共通しているのは、雰囲気をやわらかくする力
ピリピリした場面でも、ふっと空気をゆるめられる。
自分のことばかりを話さず、相手の反応に自然に目を向けられる。
そして何より、自分の感情を丁寧に扱っていることが伝わってくるんです。

感情にふりまわされるのではなく、
でも、感じたことをなかったことにもしない。
そのちょうどいいバランスが、まわりに安心をもたらします。

影響力というと、つい「なにができるか」に目が向きがちですが、
実はその土台には、「どんな人であるか」がしっかり存在している。
その“あり方”が、最初に信頼をつくっているのだと思います。

感情が伝えられる人が、なぜ信頼されるのか

どれだけ正しいことを言っても、
どれだけ立派な行動をしていても、
なんだか「距離を感じる人」がいます。

一方で、完璧じゃなくても、
*「この人のそばにいたいな」*と感じさせる人もいる。

その違いはどこから来るのか──
ぼくは、「感情の伝え方」がひとつの鍵になっていると思っています。

たとえば、誰かに頼みごとをするとき。
理路整然とお願いするよりも、
「ちょっと困ってて、助けてもらえるとありがたい」
と、自分の気持ちを添えて伝えた方が、相手の心が動くことがあります。

あるいは、失敗した部下に声をかけるとき。
「なんでこうなったの?」と詰めるより、
「正直ちょっと驚いた。でも、どうしたのか話を聞かせて」
と伝えられたほうが、相手は心を開きやすくなります。

感情を言葉にすることは、相手との距離を縮める力を持っています。

とくに、一次感情──「嬉しい」「悲しい」「驚いた」「がっかりした」などの、
素直な気持ちをそのまま伝えられる人は、信頼されやすい。

なぜなら、そこに人としてのリアリティがあるからです。

もちろん、感情をぶつけたり、過剰に表現したりするのとは違います。
必要なのは、「感じたことを、感じたままに、穏やかに伝える」こと。

それだけで、**“ちゃんと自分を持っている人”**という印象が自然と伝わっていきます。
そして、それが信頼の積み重ねになっていくのだと思います。

“うまく伝える”ための小さな実践

感情をそのまま伝える──
そう聞くと、「ちょっとハードルが高い」と感じる方もいるかもしれません。

特に、普段から周りに気を遣っていたり、
“空気を読む”ことを大切にしてきた人ほど、
自分の気持ちを言葉にするのがむずかしく感じるものです。

でも、感情を伝えるって、
なにも「熱く語る」とか「はっきり言い切る」ことばかりではありません。

まずは、ちいさく始めることから。

以下に、今日からできる実践をいくつか紹介します。

● 感じたことを、日記に書いてみる

まずはアウトプットの場を“対人”ではなく、“自分の中”に置く。
嬉しかったこと、モヤっとしたこと──一行でもいいので、
「自分はいま、こう感じたんだな」と書いてみることで、
自分の感情に気づく力が育っていきます。

● アドバイスより「わかるよ」を意識する

誰かの話を聞いているとき、ついアドバイスをしようとする自分に気づいたら、
ひと呼吸おいて、「それ、わかるなぁ」「そっか、そう感じたんだね」と
感情を受けとめるひと言に置き換えてみる。
それだけで相手の表情がやわらぐこともあります。

● 感情をゼロにしない

「怒ってないよ」ではなく、「ちょっと残念だったな」
「大丈夫だよ」だけで終わらせず、「でも正直ちょっと焦った」
そんなふうに、自分の感じた“温度”を少しだけ言葉にのせてみる。

感情の「強さ」ではなく、「輪郭」を伝える意識が大切です。

どれも、小さなことばかりかもしれません。
でもこうした日々の積み重ねが、
**“自分の気持ちに誠実でいながら、人とつながる”**という
土台をつくってくれます。

「伝えること」が特別なスキルではなく、
日常の中の“ふるまいのひとつ”になっていくと、
それだけで信頼の空気が育っていくのだと思います。

影響力は、少しの表現から始まる

「影響力」と聞くと、
多くの人を動かしたり、大きな成果を出したりと、
なにか特別なことを想像しがちです。

でも、ほんとうの意味で人に影響を与えるのは、
身近な誰かとの、ささやかな関わりの積み重ねかもしれません。

「その言葉に、救われた」
「ちょっと話せて、ほっとした」
「この人がいると、空気がやわらぐ」

そんなふうに思われる人が、
気づかないうちにまわりの空気を整え、
小さな勇気を広げている。

そして、その力は、
「自分の感情をどう扱うか」「どんなふうに伝えるか」という
日常の表現から、静かに育っていくものです。

自分の感じたことに気づき、
それを押しつけず、なかったことにもせず、
ちょうどいいかたちで伝える。

それだけで、**「この人のそばにいたい」**という信頼が生まれます。

だからこそ、もしあなたが
「もっとまわりに良い影響を与えられるようになりたい」
「リーダーとして信頼される存在になりたい」と思っているなら、
まずはほんの少し、自分の感情を表現してみてください。

特別な言葉じゃなくていい。
完璧に伝えられなくても大丈夫。

影響力は、特別な立場や知識からではなく、日常の「伝え方」から生まれるもの。

あなたが“自分の気持ちに丁寧である”その姿こそが、
 すでに影響力のはじまりなのです。

結び|“伝え方”が、あなたの影響力を育てる

いい影響を与えたい。
まわりに信頼される存在でありたい。

そんな思いを持つ人にとって、
成果や実績、知識や資格を磨くことは、きっとこれからも大切なチャレンジです。

でも、その前に。
**「どんな自分で在るか」**を少し見つめてみることも、とても意味のある時間だと思うのです。

感情に気づき、ことばにして、届ける。
その“伝え方”は、目には見えづらいけれど、
確実にあなたの影響力を育てていきます。

ちいさな日記のひとこと。
ちょっとした相づちの言葉。
少しだけ添えた「自分の気持ち」。

それらが、あなたのまわりに安心感を生み、
信頼という“土壌”を静かに耕していくのだと思います。

リーダーになることは、誰かの上に立つことではなく、
自分のふるまいを通して、まわりに良い空気を広げていくこと。

その第一歩は、今日のあなたの“伝え方”から、始まっているのかもしれません。

Pocket

“伝えてないのに伝わってる”──チームの空気を変えるリーダーのふるまい

Pocket

① はじめに

現場リーダーとして、「もっと主体的に動いてほしい」と感じる場面は少なくないと思います。

こちらが指示を出す前に動いてくれるのが理想。
でも、現実にはそうならず、結局は痺れを切らして指示を出す──
それでも、思ったような動きにはならない。
そんなジレンマを抱えたことはないでしょうか。

今回のコーチングセッションでは、
まさにその「メンバーがなかなか自律的に動いてくれない」という課題がテーマでした。

対話を深める中で見えてきたのは、
チームリーダー自身が抱いていた“ある感情”──
「この人にはもう言っても無駄かもしれない」
「最終的には強制的にでも動かさなきゃいけない」
といった、あきらめや苛立ちのようなもの。

そしてそれが、言葉にしなくても、
表情や態度、雰囲気といった非言語情報を通じて
メンバーに伝わってしまっている可能性があるのでは?と、感じたのでした。

このブログでは、こうした“言葉にならない影響”と、
メンバーの行動原理に目を向けながら、
現場リーダーとしてどんなふるまいや関わり方ができるかを一緒に考えていきたいと思います。

② チームの空気は“言葉にならない情報”でつくられている

「ちゃんと伝えたはずなのに、なぜか空気が重くなる」
「注意したわけでもないのに、相手がよそよそしくなる」
──そんな経験はないでしょうか。

人は言葉だけで相手とやりとりしているわけではありません。
表情、声のトーン、姿勢、タイミング、ちょっとした間(ま)──
こうした“言葉にならない情報”が、思っている以上に周囲に影響を与えています。

実際、現場でよくあるのが──
「自分が動いた方が早い」「何度言ってもできない」
そんな気持ちが、ふとした表情や態度ににじみ出てしまう場面です。

もちろん、声を荒げているわけでも、厳しく詰めているわけでもありません。
それでも、メンバーはどこかで察知してしまう。
「あ、自分は期待されていないのかもしれない」
「また怒られるんじゃないか」──そんな空気を、無意識に感じ取ってしまう。

これは、リーダーの“人としてのクセ”が悪いわけではありません。
むしろ自然な反応です。
でも、この非言語の影響に気づけるかどうかが、
チームの空気を少しずつ変えていく第一歩になるのだと思います。

③ 人は“正しさ”では動かない──行動原理を読むという視点

メンバーに対して「ちゃんと伝えたのに、なぜ動いてくれないんだろう」と感じるとき、
つい「言い方が悪かったのかな」「もう少しハッキリ言うべきだったかな」と
“伝え方”の技術に目が向きがちです。

もちろん、言い方の工夫は大切です。
でも、それだけでは動かないこともある。
それは、相手の“行動原理”とズレてしまっているからかもしれません。

人は、理屈ではなく「自分にとって意味がある」と感じたときに動きます。
たとえば、「このままだとあとで困るかもしれない」という未来の予測や、
「これは自分の役割だ」と感じる納得感。
あるいは、「あの人に頼まれたから応えたい」といった信頼のつながり。

今回のセッションでは、あるメンバーに対して
「これをやっておいた方が、あとで自分が楽になると思うよ」という伝え方を試してみる、
というアイディアが出ました。
これはまさに、“未来を想像する力”を使って行動を促すアプローチです。

ポイントは、“自分の正しさ”ではなく、“相手の行動原理”に合わせること。
指示そのものよりも、「なぜその行動が必要なのか」を、
相手の視点に立って意味づけできるかどうか。

動かないのは“部下のせい”に見えるかもしれませんが、
伝え手の視点を少し変えるだけで、状況が動き出すこともあるのです。

④ “伝えずに伝える”ふるまいを変えてみる

「もっと主体的に動いてほしい」
「指示しなくても気づいて動いてくれるといいんだけど」
──そう感じたとき、まず考えたくなるのは「どう伝えるか」かもしれません。

でも実は、“伝える”より前に
「ふるまいを変える」というアプローチが効くことがあります。

たとえば──
・朝の始まりに「今日はどんな予定?」と軽く声をかけてみる
・説明のとき、図や手順を一緒に見ながら話す
・ミスがあったときも、まず「どう感じてる?」と聞く余白をつくる
・進捗が遅れている相手にも、「前に進もうとしてるのは伝わってるよ」と一言添える

こうしたちょっとしたふるまいには、
「見てるよ」「気にかけてるよ」「信じてるよ」というメッセージが含まれています。
それは、“期待している”という気持ちを、言葉よりもずっと深く伝えてくれるものです。

一方で、
「どうせまた…」
「もう言ってもムダかも」
そんな思いを抱えたままだと、たとえ笑顔で接していても、どこかでその空気がにじみ出てしまう。

こういう状況は、意外と現場ではよくあることです。
だからこそ、ふるまいの根っこにある「自分のスタンス」に目を向けることが大切です。

強く言わなくても、関わり方ひとつでチームの信頼は積み上がっていきます。
まずは「相手を信じている自分でいる」──
その状態から自然に出てくるふるまいこそが、信頼をつくる最初の一歩かもしれません。

⑤ まとめ──チームに影響を与えるのは、言葉の“外側”

チームリーダーとして、メンバーの動きが思わしくないとき、
つい「ちゃんと伝えなきゃ」と思って言葉を重ねてしまう。
でも、実はその前に、すでに“何か”が伝わってしまっていることがある──
今回のテーマは、そんな「言葉の外側」にある影響力についてでした。

人は、言葉だけで動いているわけではありません。
空気を読む、表情を察する、雰囲気を感じる──
そうした非言語の情報が、日々の関わりの中でチームの空気をつくっています。

そして、リーダー自身の「どうせやらないだろう」「また同じだ」というあきらめや苛立ちは、
知らず知らずのうちに態度やふるまいに現れ、
メンバーにも伝わってしまいます。

逆に言えば、
「信じてるよ」「一緒に進もう」というスタンスで関われば、
それもまた言葉以上に伝わっていく。

大事なのは、
“伝え方”のテクニックではなく、
“どんな姿勢で関わっているか”という自分のあり方。

メンバーの行動を変えたいと思ったとき、
相手に言葉を投げる前に、
自分のふるまい・スタンスをほんの少し見直してみる。

それだけで、
チームの空気がふっとやわらかくなることも、実は少なくないのです。

あなたは、今どんなスタンスでメンバーと向き合っていますか?
次に声をかけるとき、あるいはただ隣にいるとき──
“言葉の外側”で伝えているものにも、少し意識を向けてみてください。

きっとそこに、チームが動き出すヒントがあるはずです。

Pocket

「No.2」をどう育てるか?──課長の次の仕事はリーダーを育てること

Pocket

チームの成績も雰囲気も、まずまず順調。
そんなときこそ、ふと頭をよぎることはありませんか?

「このまま自分が中心で動き続ける状態でいいのか?」
「次のリーダーを育てていく必要があるんじゃないか?」

今回の記事では、実際に営業課長の方とのコーチングセッションを通じて見えてきた、
「No.2育成」のリアルな課題と、育て方の工夫について整理しています。

・なぜNo.2を育てる必要があるのか?
・うまく任せられないときにつまずきやすいポイントは?
・具体的にどんな関わり方をすればいいのか?

そんな疑問を持つ方に、現場感あるヒントをお届けできればうれしいです。

1. 次のリーダーを育てる──営業課長との対話から考えるチームづくり

ぼくのコーチングセッションを継続的に受けていただいている方のひとりに、営業課長を務めている方がいます。
いつもチームメンバー一人ひとりが自分らしさを発揮して活躍できるように、チームのマネジメントに全力で取り組んでいらっしゃる方です。

ある日のセッションでも、メンバーとのコミュニケーションについて話している中で、「No.2をもっと育てたい」という課題が話題に上がりました。

チーム全体としてはまずまず好調。でも、自分が常に中心に立つだけでなく、次のリーダーとなる存在を育てたい──そんな視点を持つことは、課長として次のステージに進むサインでもあります。

今回はそのセッションでの対話をもとに、課長クラスの方が「No.2をどう育てていくか?」について、実際の現場感を交えながら整理していきます。

2. 中心で動くだけでは続かない──チーム成長の次のステージへ

チームが安定してきた今、次に必要なのは「次のリーダー」の育成です。
チーム運営がある程度軌道に乗ってきたタイミングで、「次のリーダーを育てたい」と感じる課長の方は少なくありません。
営業成績もチームの雰囲気も悪くない。でもその一方で、「自分がずっと中心に立ち続ける状態は、この先も続けられるのか?」という問いが生まれてきます。

実際、チームが大きくなればなるほど、課長ひとりで全員を細かく見続けることは難しくなります。
そこで必要になるのが、No.2の存在です。

No.2がいることで──
・課長が見きれない部分まで目を配れる
・メンバー同士で支え合う流れが生まれる
・チーム全体が“自走”できる状態に近づく

つまり、No.2を育てることは、自分自身の負担を減らすためだけではなく、チーム全体の力を最大化するための大切なステップなんです。

特に営業部門のような成果主義の環境では、数字に意識が向きやすく、チーム内でリーダー的な役割を担う人材育成は後回しになりがちです。
だからこそ、意識的に「次のリーダーを育てる」時間を確保していく必要があります。

No.2を育てる必要性は分かった。でも実際には、思うように育たないこともあります。
ここからは、そんなときにつまずきやすいポイントを整理していきます。

3. うまく任せられない時に見直すべき3つの視点

コーチングを通じて多くの管理職の方と対話をしていると、「No.2を育てたい」と考えた時に、いくつか共通するつまずきポイントがあると感じます。

まず一つ目は、
自分がやった方が早い──その気持ちを手放しきれないこと。

目の前の業務や数字が動いている中で、「任せたほうがいい」と頭では分かっていても、つい自分で動いてしまう。
その結果、No.2がリーダーシップを発揮する場面が減ってしまいます。

二つ目は、
任せる範囲や役割があいまいなままになってしまうこと。

「リーダーらしく動いてほしい」と思っていても、No.2自身もまだ“チーム全体を見て動く”という感覚よりも、
「自分が動いたほうが早い」という意識が強く残っていることが多いんです。

そのため、こちらが期待しているほど周りを巻き込む動きが見られなかったり、
チームマネジメントよりも自分の数字を優先しがちになったりする場面も出てきます。

ここは、No.2育成において一番大事なポイントだと感じます。
だからこそ、任せる内容や判断の範囲を具体的に言語化して、No.2自身が「どこまで自分が責任を持つのか」を腹落ちできる状態をつくる必要があります。

そして三つ目は、
「任せた=放置」になってしまうこと。

任せることと、任せきりにすることは別物です。
任せたからこそ、節目節目でフィードバックをしたり、相談しやすい関係を保ったりする必要があります。

これらはどれも、忙しい日常の中ではつい後回しになりがちなポイントです。
だからこそ、意識的に仕組みや関わり方を整えていく必要があります。

4. 実践で使える! 育成を進めるための3つの工夫

ここまで触れてきたポイントをふまえて、「No.2」を育てるための具体的なアプローチを3つに絞って整理します。

① 役割の明確化と任せる範囲の言語化

No.2に対しては、「どこまで自分で判断していいか」を明確に伝えることが大前提です。
たとえば、チーム内の進捗確認や後輩指導の主担当はNo.2に任せる、といった具合に、範囲や権限をはっきりさせること。

あいまいなままだと、結局また自分に仕事が戻ってきます。
さらに、No.2の「自分でやった方が早い」が発揮されてしまい、育成が思うように進まなくなることもあります。

② 定期的な対話とフィードバック

任せっぱなしにならないように、No.2とは定期的に状況を確認する場を持つことが大切です。
特に意識したいのは、数字や業務だけでなく「今どんなふうに感じているか」「何がやりづらいか」といった内面的な部分まで話せる関係をつくること。
面談の場所やタイミングを変えるのも一つの工夫です。

③ チーム全体との関係性づくりを支援する

No.2が本当の意味で“リーダー”として機能するためには、他のメンバーからも頼られる存在になる必要があります。
そのためには、課長自身が「No.2を通す」場面を増やしたり、ナンバー3・4・5といった他のメンバーとの橋渡し役を積極的に任せたりすることも有効です。
No.2が自然と中心に立つ流れをつくること。
それが、結果的にチーム全体の自走力につながります。
この3つを意識して関わることで、「自分だけで何とかする」状態から「チームで自然に回る」状態へと、一歩進めるきっかけになります。

 

多くの場合、まずは自分が中心で動く時期があります。
でも、チームが成長し続けるためには、いつかその状態を手放すタイミングがやってきます。

No.2を育てることは、自分の仕事を減らすことではなく、チームの力を底上げすること。
むしろ、自分よりも優秀なNo.2が育った時こそ、本当の意味でチームが強くなったと言えるのかもしれません。

今回まとめた3つのアプローチは、そのための一つのヒントです。
「自分ひとりで全部やる」のではなく、「チームみんなで自然に回る」状態を目指して。
次のリーダーを育てることも、リーダー自身の大事な役割です。
チームの未来を考えるなら、No.2育成から、ぜひ始めてみてください。

Pocket

重責を担う管理職が、自分らしさを取り戻すとき──仕事のストーリーを描き直す3つの問い

Pocket

責任ある立場を任され、チームや組織全体を見渡す毎日。
ふと気がつくと、自分自身の気持ちや「わたしらしさ」を後回しにしてしまっている──
そんな感覚を持ったことはありませんか?

この記事では、経営企画部門課長という立場を例に、
重責を担う管理職が、自分らしさを取り戻すためのヒントをまとめました。

忙しい日々の中でも立ち止まり、自分自身を見つめ直すための「3つの問い」をご紹介します。
よかったら、今のあなた自身と重ねながら読み進めてみてください。

① はじめに

経営企画部門の課長として、日々多くの判断や調整を任される。
それは、信頼されている証でもあり、組織を支える大切な役割です。

けれど──
「このままでいいんだろうか」
「自分の気持ちは、どこに置いてきたんだろう」

ふとそんな風に立ち止まる瞬間もあるのではないでしょうか。
家族やチーム、組織のことを優先し続ける中で、
自分らしさがどこかに行ってしまった気がする。

そんな時こそ、一度立ち止まって
「わたし自身のストーリー」を描き直す時間を持ってみませんか。

今日は、とある経営企画部門の管理職の方とのコーチングセッションをきっかけに
重責を担いながら自分らしく働くことについて考えてみたいと思います。

自分らしさを忘れずに働き続けるためのヒント。ぜひ最後までお読みください。

② 「課長」という役割に押しつぶされそうになる瞬間

経営企画部門の課長という立場は、現場の状況を見渡し、
組織全体の流れをつくるポジションでもあります。

自分ひとりの判断が、部署や会社全体に影響する──
そんな責任の重さが、いつの間にか心に積み重なっているかもしれません。

さらに、家族やプライベートの時間も大切にしたい。
でも、すべてを完璧にこなそうとすればするほど、
「時間が足りない」「もっとできるはずなのに」と
自分自身を責める気持ちが強くなってしまうこともあります。

気がつけば、
「わたしは何のためにこの仕事をしているんだろう」
そんな問いさえ後回しになり、
ただ目の前のタスクをこなすだけの日々になってしまう──。

役割が大きくなればなるほど、
そんなふうに自分自身を見失いそうになる瞬間は、誰にでもあるものです。

まずはその事実に静かに気づき、
一度立ち止まること。
それもまた、大切なひとつの選択なのかもしれません。

③ 仕事は“タスク”ではなく“ストーリー”

経営企画部門の課長という役割を担っていると、
日々やるべきことは山のようにあります。
会議、資料作成、調整業務、チームマネジメント…。

気づけば、それら一つひとつが「ただのタスク」に見えてしまう。
そんな状態に陥ることもあるかもしれません。

けれど本来、仕事は単なるタスクの積み重ねではなく、
あなた自身の“ストーリー”の一部でもあります。

「このプロジェクトは、誰のために役立つものなのか?」
「この提案書は、どんな未来につながっていくのか?」
そんなふうに一歩引いて全体を見渡すと、
自分が今やっていることの意味や価値が、少しずつ輪郭を取り戻してきます。

これは、“英雄の旅”とも呼ばれる『ヒーローズジャーニー』という考え方にも通じます。
物語や神話に共通する流れをまとめたもので、
主人公がある日、普段の世界から一歩踏み出し、
さまざまな試練や学びを経て成長し、また元の場所に戻ってくる──
そんな循環のことを指します。

どんな物語にも、挑戦や試練があり、
それを越えた先に成長や新しい視点があります。

日々の忙しさに埋もれてしまいそうなときこそ、
「いま、自分はどんなストーリーのどの場面にいるんだろう?」
そんな問いを、そっと自分自身に投げかけてみてください。

タスクをこなすだけの日々から、
一歩先の視点を持つことができるはずです。

④ 「自分らしさ」を取り戻すための3つの問い

忙しさや責任感に押される日々の中でも、
自分らしさを見失わずに働き続けるためには、
ときどき自分自身と向き合う時間が必要です。

とはいえ、いきなり「自分らしさとは?」と考えるのは難しいもの。
そこで、日々の中で立ち止まったときに役立つ
3つの問いをお届けします。

1. いま、自分はどんなストーリーのどの場面にいるのか?

──「挑戦の真っ只中」かもしれないし、
「少し休む時期」かもしれません。
まずはその場所を静かに確認することから。

2. この経験を通じて、誰に何を伝えたいのか?

──仕事は、自分一人のものではありません。
後輩や部下、家族、あるいは未来の自分へ。
この経験を通じて伝えたいことを考えてみると、
今やっていることの意味がまた少し変わって見えるはずです。

3. 自分の強みは、どの場面で一番活かせるのか?

──強みは「いつも同じ形で発揮するもの」ではありません。
状況に応じて形を変えながら活かしていくもの。
だからこそ、自分の強みと仕事の場面をすり合わせる視点を持つことが大切です。

この3つの問いは、特別な時間を取らなくても大丈夫。
朝の通勤時間や、ふと一息ついたとき。
そんなちょっとした瞬間に、自分自身に問いかけてみてください。

小さな習慣の積み重ねが、
「わたし自身のストーリー」を描き直す力になります。

⑤ おわりに

経営企画部門の課長という立場は、
チームや組織を支える重要な役割である一方で、
ときに「わたし自身」を置き去りにしてしまうこともあります。

けれど、役割や立場が変わったとしても、
あなた自身のストーリーは、ずっと続いています。

誰かの期待に応えることも大切。
組織を守ることももちろん大切。
でも、その中に「自分自身の想い」をそっと置いておけるかどうか。

それが、責任ある立場を長く続けていくための、
静かでしなやかな土台になるのだと思います。

今回お伝えした3つの問いを、ぜひ日々の中で思い出してみてください。
立場や状況がどんなに変わっても、
「わたし自身のストーリー」を描き続けていけるように。

あなたのストーリーが、これからもあなたらしく続いていくことを願っています。

Pocket

『人が足りない』は本質じゃない??──とあるセッションで感じた、“感情を扱う”という視点

Pocket

「人が足りないんです」

そんな言葉を、現場を預かる立場の方から聞くことは少なくありません。

たしかに、採用が難しい。育成にも時間がかかる。

仕組みや制度を見直しても、思うように動かない──

そんな歯がゆさを感じている方も多いのではないでしょうか。

今回のブログは、ある取締役とのコーチングセッションをきっかけに書いたものです。

その方の現場で起きていたのも、「人が足りない」ことで見えてきた業務の停滞でした。

でも、対話を通じてあらためて浮かび上がってきたのは、

仕組みや制度の話だけではなく、

“関係性の中にある小さな感情”が、チームや業務の流れを左右しているという事実でした。

「うまくいかない理由」に、もう少しだけ丁寧に目を向けてみる。

そんな視点のヒントになれば嬉しいです。

① 背景にある問い:「人が足りない」のか、本当に?

先日、とある企業の取締役の方とのコーチングセッションを行いました。

バックオフィス全体を統括されている方で、実務にも現場にも深く関わっておられます。

その日のテーマは、経理業務が思うように進まず、全体の流れに遅れが出ているというものでした。

人が足りないのかもしれない。

経験者を採用しても定着せず、派遣で補っても引き継ぎに時間がかかる。

今いるメンバーには限界が見えはじめている──

そんな現場の実感が、静かな語り口の中ににじんでいました。

話は自然と、人材の配置や教育プロセス、新しいシステムの導入といった「実務上の打ち手」に流れていきます。

けれど、そのやり取りの中で、ぼくの中にはある問いが浮かび上がってきました。

仕組みや制度だけじゃなくて、

人と人との関わり方にも、業務をスムーズにするヒントがあるんじゃないか。

関係性が止めていた:仕組みだけでは動かない理由

セッションでは、業務の流れをどう整えるか、人の配置をどう見直すか、具体的な話題が次々と出てきました。

チームや業務が滞っているとき、多くの組織では「仕組み」「制度」「スキル」の話をします。

もちろん、それらはとても大事な要素です。

でも、多くの企業をコーチングを通じて支援してきた中で、

実際には「仕組み」「制度」「スキル」の改善をしてもうまくいかない場面をたくさん見てきました。

うまく回らない原因が、“人と人との関係性”の中にあることは、これまで何度も見てきました。

たとえば──

誰に、どう伝えるか。どこまで任せるか。

マネージャーになることを避ける人に、どう声をかけるか。

こうしたテーマは一見、実務の範囲内に見えます。

でもその奥には、ちょっとした気まずさや、失敗への恐れ、責任感の重さといった“感情”の層がある。

それらは会議の議題には上がらないし、表立っては語られない。

でも、そこに少し目を向けるだけで、滞っていたやりとりがスッと動き出すことがある──

これも、コーチングを通じてぼくが何度も実感してきたことの一つです。

今回のセッションは、そのことをあらためて思い出させてくれるような時間でした。

③ 話すより、まず“聴く”:リーダーにできる対話のつくり方

役職が上がるほど、「どう判断するか」「どう決めるか」が求められる場面が増えていきます。

それ自体は当然のことだし、現場が混乱しないようにするための重要な役割でもあります。

でも、状況が複雑だったり、メンバーの思いや関係性が絡むときほど、

「まずは、相談という形で話してみる」という選択肢が、有効な場面もあると感じています。

今回のセッションでも、

「それって、決めるというより、まず“相談ベース”で伝えてみるのはどうでしょう?」

というやり取りが自然と出てきました。

誰かに動いてもらいたいとき、指示や依頼ではなく「聴くこと」から始める。

その余白があるだけで、相手の受け取り方がまったく変わることもあります。

何かを決めてから伝えるのではなく、

まだ決まっていない段階で声をかけてみる。

そうすることで、相手との間に「考える時間」や「すり合わせの余地」が生まれていく。

そんな関わり方が、感情が複雑に絡むような場面では、

実はすごく実務的な“前進のきっかけ”になるんじゃないか──

そんなことを、あらためて感じたセッションでした。

④ おわりに:感情は“チームを動かす力”になる

業務が滞っているとき、つい「仕組みを整えよう」「人を増やそう」といった対策に意識が向きがちです。

でも実際には、その前に「関係性のひっかかり」や「伝え方への迷い」といった、

表に出にくい“感情の層”が、動きを止めていることも少なくありません。

感情といっても、大げさな話ではなくて──

ちょっとした気まずさとか、失敗への恐れとか、「これ以上負担をかけたくないな」という遠慮とか。

そういう小さな気持ちの積み重ねが、チームや業務の流れをじわじわと止めてしまうことがあるんです。

今回のセッションでは、そうした話題が大きく扱われたわけではありません。

むしろ、話題の中心はあくまで実務でした。

でも、その中にふと現れた一言や反応が、ぼく自身にとって大事なヒントになりました。

「感情を扱う」というと、構えてしまう方も多いかもしれません。

でも実はそれは、チームをスムーズに動かすための、ごく実践的なヒントでもあるんだと思います。

Pocket

その言葉、誰のため? 聴くことから始まるチームづくり

Pocket

1. 冒頭:「伝えること」に必死になっていないか?

部下が思うように動かない。
チームにどうも一体感がない。
──そんなとき、つい考えてしまうのが「もっと伝えなきゃ」ということ。

指示の出し方が悪かったのかもしれない。
期待をもっと明確に伝えるべきだったかもしれない。
あるいは、感情的にならずに、もっと冷静に説明するべきだったのかも。

でも、こうした“伝えること”への意識が強くなればなるほど、
逆にチームの反応が鈍くなる…そんな感覚に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

実はそこに、「関係性が動き出すヒント」が隠れていることがあります。
それは、伝えることよりも“聴くこと”のほうが、チームを変える力を持っているという事実です。

ぼくがこれまでコーチングの現場でご一緒してきた、
さまざまな業種の多くの管理職の方も、
あるタイミングから“伝えること”への力みを少し手放し、
「どう聴くか」「何を受け取るか」に目を向け始めたときに、
チームとの関係性が少しずつ変化していくのを実感されています。

コミュニケーションを変える第一歩は、
“話し方を磨くこと”ではなく、「伝える前に立ち止まること」かもしれません。

2. 会話が変わると、チームが変わる──その実感

「最近、前よりも話してくれるようになった気がする」
「ミーティングで誰かが話し始めると、自然と他のメンバーも反応してくれるようになった」

そんな変化の声を、コーチングの中で管理職の方から聞くことがあります。
そのきっかけになっているのは、多くの場合、特別なスキルや施策ではありません。

それは、“聴き方”が変わったことによる、空気の変化です。

「こう言えば部下が動くだろう」「これを伝えれば納得してくれるはず」──
そんな“伝えようとする努力”は、もちろん大切なものです。
けれど、それだけでは伝わらないことがある。

むしろ、相手が話すのを待つ。
言葉をかぶせずに聴く。
評価せずに受け止める。
その“余白”があることで、メンバーは少しずつ「話してもいい」と思えるようになる。

とくに、管理職という立場であるあなたの一言は、
本人が意図する以上に大きく響き、影響を与えます。
だからこそ、言葉を選ぶこと以上に、“聴く姿勢”が大切になる場面があるのです。

「伝えよう」とする気持ちが強いほど、
知らず知らずのうちに、相手の言葉が入るスペースを奪っていることがある。

ほんの少し立ち止まって、相手の声に耳を傾ける。
その姿勢が、チームの空気を変え、関係性をじんわりと動かしていくのです。

3. “伝える力”よりも、“受け取る力”が先

コミュニケーションというと、「どう伝えるか」が主役になりがちです。
プレゼン力、言語化力、ロジカルシンキング──それらは確かにビジネスにおいて重要なスキルです。

でも、チームを動かし、関係性を育てるという文脈においては、
“受け取る力”が先にあってこそ、“伝える力”が活きるのではないでしょうか。

たとえば、メンバーに「期待してるよ」と声をかけるとき。
それが応援になるか、プレッシャーになるかは、相手が今どんな状態かによって変わります。
つまり、“何を言うか”と同じくらい、“いつ、誰に、どんな気持ちで言うか”が大事なんです。

その違いを見極めるには、まず相手のことをよく“見る”こと、
そして、“聴くこと”が必要です。

自分の正しさや意図を押しつける前に、
「相手は何を感じているだろうか」
「どんな前提をもって、この話を受け取るだろうか」
そんな問いを、言葉を発する前の1秒間に、自分に向けてみる。

その“間”があるかないかで、
言葉の届き方も、相手の反応も、大きく変わってくるのです。

だからこそ、伝えるスキルを磨くよりも先に、
相手を受け取る土台を、自分の中につくっておくことが、信頼を育てる一歩になります。

4. 自然体のリーダーシップと、余白のある対話

管理職という立場になると、
「ちゃんとしなきゃ」「見本にならなきゃ」と、どうしても構えてしまうことがあります。

でも、その“構え”が、かえってコミュニケーションの流れを堰き止めてしまうことがあるんです。

こちらが肩に力を入れて話せば、相手も構えます。
完璧に伝えようとするほど、対話の“余白”がなくなってしまう。
結果として、「話しやすさ」が失われていくんですね。

実は、自然体でいることそのものが、強いメッセージになることがあります。

「すごいことを言わなくてもいい」
「ちゃんと答えられなくても大丈夫」
そう思ってもらえる空気感があるだけで、
部下は自分の言葉で話そうとし始めます。

そのきっかけになるのが、何気ない問いです。

「どう思う?」
「何か気になることある?」
「最近どう?」

──こんな、答えに“正解”のない問いかけ。
評価や判断をしない問いが、相手の心を少しずつ開いていきます。

そして、その姿勢こそがリーダーシップの本質ではないか と、ぼくは思うんです。

自然体で関わること。
構えずに、相手と同じ地平に立つこと。
対話に余白を持たせること。

それは、管理職としての“弱さ”ではなく、
むしろ“信頼をつくる強さ”なのかもしれません。

5. 相手の価値観に立った“ひとこと”が、関係を変える

言葉は、ときに人を動かします。
でもそれは、「正しい言葉」を選べば動く、という単純な話ではありません。

同じ言葉でも、ある人には届き、別の人には響かない。
それは、相手の価値観や、そのときの状態によって、言葉の意味が変わるからです。

たとえば、部下に「もっと自信を持って」と伝えたとき。
その言葉が励ましになることもあれば、
「プレッシャーだな」と感じさせてしまうこともある。

この違いは、伝える側の“言い方”や“論理”ではなく、
相手が今、どんな状態でその場にいるか──
その“前提”に目を向けられているかどうか、にかかっています。

だからこそ、「この言葉、誰のために言ってるんだろう?」と立ち止まる習慣が大切になります。

「自分を安心させるために言っているのか」
「相手を動かすためだけに言っているのか」
それとも、相手の価値観を尊重して、本当に支えになりたいと思っているのか

そこに自覚があると、同じ言葉でも“温度”が変わります。

相手に寄り添おうとする気持ちがにじんだひとことは、
派手じゃなくても、確実に相手の心に残るものになります。

管理職として言葉を使うということは、
“コントロールするため”ではなく、
相手が伸び伸びと働き、自分らしく成長していけるよう支援するためにある。

その土台となるのが、相手の価値観に立って言葉をかける姿勢であり、
信頼に根ざした、あたたかなコミュニケーションなのだと思います。

6. 結び:関係の質は、対話の積み重ねで変えられる

「もっと伝えなきゃ」と力んでいたときには見えなかったことが、
少し立ち止まって“聴く”ことを意識し始めると、不思議と見えてくることがあります。

表情の変化。
言葉の選び方。
沈黙の向こうにある感情。

相手の反応を丁寧に“受け取る”ようになると、
それまで一方通行だったコミュニケーションが、すこしずつ“対話”に変わっていきます。

そしてこの「対話の質」が、
チームの空気を変え、関係性を育て、
結果的に一人ひとりのパフォーマンスや働き方にも影響していくのです。

伝え方の工夫も、言葉の力も、もちろん大切です。
でもその前に、自分の“聴く姿勢”がどうあるかを問い直すことが、
管理職としてのリーダーシップをぐっと深めてくれる──
ぼくはそう信じています。

日々の会話のなかで、ほんの少し立ち止まる。
「この言葉は誰のため?」と自分に問うてみる。
「今、何を感じている?」と相手に尋ねてみる。

そんな小さな対話の積み重ねが、
“伝わるチーム”をつくり、
“安心して働ける関係性”を育てていくはずです。

Pocket

「ありがとう」と「数字」を共有する営業所は、なぜ強くなるのか?

Pocket

――とある営業所長との対話から見えた、“信頼の空気”をつくるふたつの鍵

第1章 はじめに

「所内の空気は悪くないし、売上も上がっています。

でも…どこかに“温度差”がある気がするんです。」

そんな言葉から始まった、とある営業所長とのコーチングセッション。

その方はこれまで複数の営業所で経験を重ね、今年4月に現在の営業所に着任しました。

プレイヤーとして結果を出しながら、育成にも真剣に取り組んできた方です。

今回の営業所でも、数字は安定しており、外から見れば順調に見えます。

しかし、着任から数週間、所内を丁寧に観察する中で、

少しずつ“見えない課題”に気づきはじめました。

「課をまたいだ連携が弱い気がする」

「非営業部門の動きに、やや“やらされ感”がある」

「報告や会議はあるけれど、行動の芯が揃っていない感じがする」

こうした感覚は、制度や仕組みの問題というよりも、空気の問題です。

表には見えにくいけれど、確実に営業所全体の力に影響しているものだと感じさせる内容でした。

その違和感に、正面から向き合おうとする姿勢に、

コーチとしての私も強く共感しました。

コーチングセッションを進めていく中で、とある営業所長の中に少しずつ浮かび上がってきたのが、

「ありがとうをもっと増やしたい」

「数字をもっとオープンにしていきたい」

という、ふたつのキーワードです。

どちらもシンプルな言葉ですが、

背景には「この営業所を、もっと信頼でつながった場所にしたい」という思いがありました。

この記事では、とある営業所長とのコーチングセッションを通じて見えてきた、

営業所全体を“信頼で動く組織”に育てていくための具体的なヒントを、

コーチとしての視点からお伝えしていきます。

第2章|数字を全所員と共有する──“営業所のひとつの船”としての自覚を育てる

コーチングセッションの中で、このクライアントさんはこんな話をしてくれました。

「営業のメンバーは、自分の数字とか、自分の課の数字にはちゃんとこだわるんです。

でも、“営業所全体の数字”に対しては、あまり関心がないというか…

そこへのこだわりが、もう少し欲しいなと思ってるんですよね。」

そしてもうひとつ。

「非営業のメンバーにも、もっと“数字への意識”を持ってもらいたい」とも話してくれました。

これは、営業所という単位でマネジメントをしていく上で、非常に本質的な課題だと感じました。

個人や課が目標に向かって努力する姿勢はもちろん大事です。

でも、それだけでは営業所全体の一体感や連携は生まれてきません。

営業所という「ひとつの船」を意識できるか

営業所は、ひとつのチームではなく、複数の課や機能が集まった集合体です。

それぞれが目標に向かって動いているからこそ、

全体を“ひとつの船”として動かしていくには、意識のベクトルを揃える必要があります。

クライアントさんはこう話していました。

「自分の数字は気にする。自分の数字をやっていれば営業所の数字はなんとかなるだろうってなりがちなんです。」

この“他人任せの空気”を変えていくためには、

やはり営業所全体の数字を「見える化」していくことが大切です。

・今、営業所はどんな状況なのか?

・どこに強みがあって、どこに弱点があるのか?

・数字の意味や背景を、全体で共有できているか?

数字の見せ方を工夫することで、営業所内に「共通言語」を育てていくことができます。

非営業メンバーの“数字感覚”を育てる

クライアントさんがもうひとつ強く望んでいたのは、

非営業メンバーにも“数字へのこだわり”を持ってほしいということでした。

でも、非営業の立場からすると、

「自分の仕事が数字とどうつながっているか」は見えにくいものです。

だからこそ、所長であるクライアントさんが、そのつながりを丁寧に言葉にしていくことが求められています。

・この仕事が、どういう数字に影響しているのか

・それが営業所にとって、どんな意味を持つのか

・その一手が、営業所の“力”をつくっていること

情報をただ共有するだけでなく、「腹落ち」してもらうことが大切です。

全員が“同じ数字”を見ているという感覚

クライアントさんは今後、営業所会議の場で、

経営の数字を全所員と共有していく予定です。

もちろん、細部まで細かく開示するわけではありません。

けれど、「この営業所は今こういう状況にある」

「この目標を達成するには、こういう力が必要なんだ」

というメッセージを、自分の言葉で伝えていくつもりだそうです。

数字を開示するのは、管理や評価のためではなく、

“一緒に動いていくための言葉”を整えることなのだと感じます。

全員が「自分の数字」「自分の課の数字」だけでなく、

「営業所全体の数字」も“自分ごと”として見られるようになったとき、

ようやく営業所は“組織としての力”を発揮しはじめるのではないでしょうか。

次章では、もうひとつのキーワード「ありがとう」を通じて、

“関係性の空気”をどう整えていくかを掘り下げていきます。

第3章|“ありがとう”が自然に生まれる営業所とは?

前章でお伝えしたように、このクライアントさんは、営業所全体のベクトルを揃えるために、

まず「数字を全所員と共有する」ことに取り組もうとしていました。

営業のメンバーは自分や課の数字には強くこだわる一方で、

営業所全体の数字には無関心になりがち。

また、非営業のメンバーは数字とのつながりを実感しづらく、当事者意識を持ちにくい。

そこで、数字を“見える化”し、みんなで同じ方向を向けるようにする――

このアプローチは、所長としての意思ある一歩でした。

けれど、コーチングセッションのなかでぼくと対話を重ねていく中で、

クライアントさんは、ふとこうつぶやきました。

「数字を共有すれば、確かに意識はそろうかもしれません。

でも、それだけで営業所が一体感を持って動けるようになるとは思えなくなってきました。」

数字で方向をそろえるだけでは、心のベクトルを揃えることは難しい

クライアントさんが感じていたのは、

「全体の目標はある。でも、個々の行動や関わりには“温度差”がある」という感覚でした。

そのとき、以前から頭の片隅にあったキーワードが、再び浮かび上がってきました。

それが――**「感謝される営業所」**です。

この言葉を思い出したとき、クライアントさんの中で、ある確信が生まれました。

お客様に「ありがとう」と言われる組織になるためには、まず自分たちが、互いに積極的に感謝を表現する必要がある。

「感謝される営業所」の第一歩は、営業所のなかで『ありがとう』が自然に飛び交う空気をつくることだ――

そんな考えに至ったのです。

「ありがとう」は、感情のベクトルをそろえる

クライアントさんは言います。

「ありがとうって、気づいたときに自然に出る言葉じゃないですか。

でも、その“気づき”自体が、今ちょっと薄れている気がするんです。」

ありがとうの言葉が自然に出てくるようになるためには、

お互いの動きや思いを“見る”力が必要です。

そしてその根っこには、「この場所を良くしたい」「一緒にやっていきたい」という

感情の方向性=ベクトルの一致があります。

感謝を“増やす”というマネジメント

クライアントさんは、感謝の言葉を増やすことを、

単なる“雰囲気づくり”とは捉えていませんでした。

むしろ、それを営業所の基礎力を上げるアプローチだと考えています。

・小さな気づきを見逃さない

・役割や立場を超えて声をかけ合う

・「助かった」「ありがたい」をためらわずに言葉にする

こうしたことが日常的に行われるようになると、

数字や制度では生まれにくい“関係性の信頼”が育っていきます。

「ありがとう」が飛び交う営業所にしたい。

その思いは、どんなマネジメント手法よりも、

このクライアントさんのあり方そのものを体現しているように感じました。

次章では、このような空気を営業所全体に広げていくために、

どんな“仕掛け”が考えられるのかをご紹介していきます。

第4章|言葉を空気に変えていくための「仕掛け」

「営業所のなかに“ありがとう”が飛び交う空気をつくりたい」

そんな思いを口にしたこのクライアントさんの言葉を受けて、

ぼく自身も、感謝の言葉が自然と交わされる組織にはどんな共通点があるのかを改めて考えていました。

その中で浮かんできたのが、「仕掛け」というキーワードです。

“いい雰囲気になったら感謝が増える”のではなく、

意図して空気をつくるための導線を用意することが必要なのではないかと。

雰囲気ではなく、仕掛けで空気をつくる

「ありがとう」は、自発的な言葉だからこそ力を持ちます。

でも、それを職場で自然に交わし合うには、ちょっとしたきっかけや仕組みがあった方がいいと感じています。

たとえば──

•面談や振り返りの場で「感謝したこと・されたこと」を言葉にする時間をつくる

•チャットやホワイトボードに“ありがとうメモ”を貼れるスペースを設ける

•定例の営業所会議に「今週のありがとう」という一言共有コーナーをつくる

こうした“動線”があるだけで、感謝の言葉は少しずつ日常に溶け込んでいきます。

感謝は「言おう」ではなく「言いたくなる」をつくるもの

「ありがとう」は強制できません。

むしろ、「感謝すべきことを探さなきゃいけない」となると、言葉が軽くなってしまうこともあります。

だからこそ大事なのは、自然と感謝したくなる空気をつくること

そのためには、“誰かが見てくれている”“自分も誰かを見ている”という相互の関心が必要です。

仕掛けの役割は、その“最初の一歩”を後押しすることにあると、ぼくは考えています。

そして、所長が動き方で語る

どんな仕掛けも、“誰がどう動くか”によって意味が変わります。

クライアントさんは、それをよく理解していました。

仕掛けを用意するだけでなく、

所長自身が一番最初に「ありがとう」を口にし、形にしていく――

その姿勢そのものが、組織へのメッセージになるのだと思います。

「ありがとう」の出発点に、自分がなる。

そのリーダーシップのある姿勢は、周囲の信頼と空気を確実に変えていく力を持っています。

“言葉を空気に変える”。

そのためにできる工夫は、決して大げさなものである必要はありません。

けれど、そこに意図があるかどうかで、営業所の未来は大きく変わると、ぼくは信じています。

次章では、ここまでの対話や気づきを踏まえて、

このクライアントさんが取り組もうとしている営業所マネジメントの“今とこれから”を整理していきます。

第5章|「信頼で動く営業所づくり」の今とこれから

ここまで書いてきたように、このクライアントさんは、

営業所を“信頼で動く組織”へと少しずつ変えていこうとしています。

その取り組みは、派手さこそありませんが、

現場で日々のリアルと向き合いながら、一歩ずつ“空気の質”を変えていく営みです。

取り組みの3つの柱

現在、営業所で進めようとしている取り組みは、大きく分けて3つの柱で構成されています。

① 数字の共有で、見ている方向をそろえる

営業や課の数字だけでなく、営業所全体の状況や経営的な観点も丁寧に共有していくことで、

メンバー一人ひとりが“営業所の一員”としての意識を持てるようにする。

② 感謝の言葉で、関係性の温度を上げる

「ありがとう」が自然と出てくるような関係性を、所内に少しずつ育てていく。

感情のベクトルをそろえることで、行動のベクトルにも影響が生まれていく。

③ 所長が仕掛け人として動く

場の空気は、自然発生するものではなく、意図してつくっていくもの。

その出発点に立つのが所長自身であり、日々の姿勢やふるまいこそが最大のメッセージになる。

“マネジメントとは、空気をつくること”

コーチとしてこのクライアントさんと関わる中で、

ぼく自身が改めて実感したことがあります。

それは――**マネジメントとは、“人を動かすこと”ではなく、“空気を整えること”**だということです。

制度や仕組みを整えても、思うように人が動かないのはよくある話です。

でも、関係性の空気が変わると、言葉の届き方も、行動の変化も、まるで違ってきます。

このクライアントさんのように、

目の前のチームや所の“空気”に意識を向け、より良い組織にしていこうとする姿勢は、

とても誠実で、実践的なマネジメントのあり方だと感じています。

「できることからやる」ことの力

最後に強調しておきたいのは、

このクライアントさんが決して完璧な状態を目指しているわけではない、ということです。

大きな改革でも、制度の見直しでもなく、

「できることからやる」というシンプルな行動こそが、営業所の空気を変える原動力になっています。

だからこそ、同じようにマネジメントに悩む方々にとっても、

こうした取り組みは“特別なこと”ではなく、すぐにでも始められる現実的な一歩として響くのではないでしょうか。

おわりに

この記事は、あるクライアントさんとのセッションを通じて見えてきた、

“信頼で動く営業所”へのヒントを整理したものです。

現場を預かる責任と孤独の中で、

「どうしたらうまくいくか」ではなく「どうしたら信頼が育つか」を考え続ける。

そんな所長の姿に、ぼく自身もたくさんエネルギーをいただきました。

組織が変わるきっかけは、いつも“小さな気づき”と“丁寧な実践”から始まります。

もしこの文章が、誰かのその一歩の背中をそっと押せたなら、これ以上うれしいことはありません。

Pocket

トッププレイヤーから営業所長へ。課長時代とは違う“次のマネジメント視点”

Pocket

はじめに

4月の人事異動で、より上位の管理職に就かれた方も多いのではないでしょうか。
現場の第一線で成果を出し続け、課長としてチームをまとめながら部下育成とチームの業績の両立を成し遂げてきたからこその結果が評価されたのだと思います。
まさに「プレイヤーとしてもマネージャーとしても結果を残してきた優秀な方々」ですね。

実際、ぼくのクライアントさんの中にも、この4月の人事異動でさらに上位の役職に就かれた方が複数いらっしゃいます
日々のセッションを通じて感じるのは、「すでに管理職経験も実績もある方」であっても、次の役職では求められる視点や取り組み方がここでもう一回変わるということです。

たとえば、これまでは「自らのチームや担当メンバー」に目を向けていれば良かったところが、今後は「営業所全体」や「部門横断の組織運営」に関与する場面が増えてきます。

今回のブログでは、営業所長をされているとあるクライアントさんの事例をもとに、複数のリーダーの個性を活かして組織をマネジメントしていくヒントをお伝えしていきます。

ご自身の現場と重ね合わせながら、次のステージでのマネジメントの視点として活用していただければ幸いです。

1. チームのカギは“3名の課長の個性”

営業所長として組織を見るとき、重要な視点の一つが「誰がどのポジションで、どのような役割を果たしているのか」という組織設計です。
特に営業所では、複数の課長が存在し、それぞれが異なる強みやスタイルを持ちながらチームをマネジメントしています。

ぼくのクライアントさんが所長をしている営業所でも、

その個性を活かしながら組織全体を機能させていくことが、営業所長としての大きなテーマとなりました。
ここでは、その3つのタイプをご紹介します。

① 縁の下で信頼を勝ち取る課長

このタイプの課長は、あえて前に出ることなく周囲から厚い信頼を得ています。
指示や指導よりも「見守り」や「支え」に重きを置き、メンバーの相談に対しては親身に応えます。
チームのメンバーからすると、「この人がいるから安心して挑戦できる」と感じられる存在です。

営業所全体の安定感や継続的な成果には、このような“影の安定軸”となる課長の存在が不可欠です。

② 経験と実績を持つベテラン課長

長年の経験と豊富な知識で、チーム内の「文化」や「基準」を守る役割を担っています。
特に業界や自社のルール・慣習に詳しく、チームの意思決定や若手メンバーの育成にも影響力を持ちます。

一方で、自身のやり方への強いこだわりや変化への抵抗感が出やすい側面もあります。
営業所長としては、その経験と知見を尊重しつつ、適度に変化を促す関わり方が求められます。

③ チャレンジ精神旺盛な次世代課長

新しいアイデアや手法を積極的に提案し、行動力と実行力でチームをリードしていくタイプです。
特に若手メンバーに対しては、指示待ちではなく「自ら考え行動する」スタンスを育てる点で頼もしい存在となります。

ただし、既存のルールや手順よりも成果・スピードを重視する傾向もあり、営業所全体としてはバランスが求められます。
このタイプの課長には「枠を与えすぎない自由さ」と「方向性のガイド」の両立がカギになります。

3名の課長の個性とスタイルは異なりますが、それぞれがチームの成果に欠かせない存在です。
営業所長としては、こうした多様なマネジメントスタイルを対立させるのではなく補完し合う関係として設計していくことが、営業所全体の成果につながっていきます。

2. 課長として経験した「営業所を動かす」チャレンジ

上位管理職に昇進された多くの方は、すでに課長としての経験を積み、チームマネジメントにおいて成果を上げてこられたことでしょう。
プレイヤーとして自身の営業成績を残し、その後は課長として **「メンバーを通じて成果を出す」**という難しさとやりがいの両方を体験されたはずです。

ぼくのクライアントさんも、まさにこのプロセスを経て営業所長に就任されました。
課長時代には、自ら動いて成果を出すのではなく、メンバーに任せ、成長を促しながらチームとして結果を出すことに力を注いでこられました。
プレイヤーとして成果を出していた時代とは違い、課長として **「人を通じて成果を出すこと」**に意識を切り替えることは、決して簡単なことではありません。

そして今、営業所長として再び「役割の変化」に直面しています。
課長時代は **「自分のチーム」**をマネジメントすればよかったものが、
営業所長となった今は **「営業所全体」**をどう動かすか、
複数の課長や部門をどのように連携させ成果につなげていくかが問われる立場となりました。

プレイヤー→課長→所長とステージが変わる中で、求められるマネジメントの視点やスタンスも進化しています。
クライアントさんも今、**「課長の個性を活かしながら営業所全体として成果を出す」**という次のチャレンジに挑んでいます。

この変化にうまく対応するためのカギとなるのが、課長同士の役割設計営業所全体の方針やビジョンを明確にすることです。
次章では、その具体的な考え方についてご紹介していきます。

3. チームの成果を引き出す役割設計

営業所長として営業所全体の成果を生み出すためには、課長同士の役割設計が非常に重要なポイントになります。
現場を預かる課長たちは、それぞれ異なる強み・スタイルを持っています。
その個性を理解し、意図的にチームや営業所全体のパフォーマンスにつなげる設計が求められます。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の強みと課題を整理するところから取り組みを始めました。
例えば「縁の下でメンバーを支える課長」「経験と実績を持つベテラン課長」「チャレンジ精神旺盛な次世代課長」という特徴をふまえ、

誰にどの領域・期待を託すのか

ポイント1:組織課題と個人課題を切り分ける

所長として「何が営業所全体の課題なのか」「どこは各課長に任せられるのか」を整理することが大切です。
たとえば、営業所全体の方針や人材育成の枠組みは所長が担い、
日々の目標管理やメンバーの育成は各課長に裁量を持たせるといった 役割のすみ分け を意識します。

ポイント2:期待値を明確にする

課長のスタイルや強みが違うからこそ、**「何を期待しているのか」**をあらかじめ言語化し、すり合わせることが欠かせません。
「この領域ではリードしてほしい」「このテーマは一緒に取り組もう」など、

あいまいさを減らし、安心して動ける環境

ポイント3:若手と次期所長候補の育成を意識する

営業所全体として中長期的に成果を出すためには、若手育成の視点も外せません。
課長には「日々の業務を回す責任」だけでなく、若手のチャレンジの場を意図的に作る役割も期待します。
また営業所長としては、中長期的な視点で**「次期所長候補となる人材を見極め、成長を支援していくこと」**も重要な役割になります。
次の世代の所長を意識して育成しておくことは、営業所全体の安定と継続的な成果につながります。

複数の課長の強みとスタイルを組み合わせて営業所の成果を引き出すこと。
そのための「役割の整理と言語化」が営業所長としての重要なマネジメントポイントになります。
次章では、この土台の上に「所長自身の発信力」がなぜ求められるのかについて考えていきます。

4. 所長としての“言語化力と発信力”

営業所長の役割に就くと、多くの方が感じるのが「課長時代と比べて自分の考えや方針を“言葉にして伝える”機会が圧倒的に増えた」という変化です。

課長としてチームをマネジメントしていたときは、日常のコミュニケーションや行動の積み重ねでメンバーと信頼関係を築けました。
しかし営業所長になると、複数の課長や部門、さらには経営層や他拠点との連携も必要になります。
その中で求められるのが **「所長としての発信力」**です。

組織の方針・優先順位を明確に伝える

複数のチーム・課長を束ねる立場では、所長自身が組織の「軸」を言語化し、明確に発信することが不可欠です。
営業所の方針や優先順位、期待する行動基準をあいまいにせず、誰もが理解できる形で示すことがメンバーの安心感と行動の統一につながります。

コーチングの視点を取り入れる

ぼくのクライアントさんの場合も、コーチングで培った**「問いかけ力」「対話力」**を所長のマネジメントに活かしています。
「〇〇について意見を聴かせて?」「この課題の解決策を提案して?」など、

課長自身に考えさせる言葉を投げかけることで、自走力や当事者意識を育てる

言葉の力で組織を前進させる

組織が大きくなればなるほど「察してくれるだろう」は通用しません。
所長の発信がなければ、現場は迷い、判断基準を失いがちです。
所長の役割として大事なのは、「細かなやり方を教えること」ではなく、課長や営業所員ひとりひとりが自ら考え判断ができるようになるための方向性を示すことです。
この発信が、課長たちの主体的なリーダーシップを後押しし、営業所全体の成長につながっていきます。

次章では最後に、こうした考え方を踏まえて所長としてのスタンスのまとめと、読者への問いかけをしていきます。

5. おわりに

営業所長としての役割は、プレイヤーや課長としての経験・実績を土台にしながらも、さらに視野とスタンスを広げることが求められます。
自身で成果を出す・自チームを動かすところから、営業所全体をどのように動かし成果につなげていくかという「組織全体視点」への進化です。

ぼくのクライアントさんも、3名の課長の個性や強みを活かしながら、
役割の設計や営業所としての方針の言語化、さらには次期所長候補の育成までを意識したマネジメントに取り組んでいます。
その過程は決して簡単ではありませんが、「人を通じて成果を生み出す」という上位管理職としての醍醐味とやりがいを実感されています。

この内容は、ぼくが実際にご支援しているクライアントさんとの取り組みの中でも成果につながっている実践例です。
ぜひ、ご自身の営業所や組織でも活かしていただければ嬉しいです。

ここまで読んでくださった方も、ぜひご自身の営業所や組織に置き換えて考えてみてください。
自分は今、どの課題に取り組むべきだろうか?
課長やメンバーが主体的に動ける環境を整えられているだろうか?
次のステージに進むために、今の自分に必要な成長は何だろうか?

日々の業務の中でこの問いを持ち続けることが、次の成果と成長への第一歩になるはずです。

Pocket

昇進・昇格したあなたへ『何から始めればいいの?』迷ったときに立ち返る5つの視点

Pocket

はじめに:昇進はゴールではなくスタート

年度初め。

この時期、新しい肩書きでスタートを切った方も多いのではないでしょうか。

昇進や昇格は、これまでの努力が認められた大きな節目です。

でも同時に、「ここからが本当のスタートだ」と実感する瞬間でもあります。

今年度も、ぼくのコーチングを継続してくださっている方の中に、昇進・昇格を迎えた方が何人かいらっしゃいます。

新しい役割に向き合う姿はどの方も本当に真摯で、ぼく自身も毎回刺激を受けています。

実はこのブログも、その中のお一人とのセッションがきっかけで書いています。

初めて部下を持つことになり、「自分に人を育てることができるのか?」という問いに向き合っていた方です。

昇進したばかりの頃って、「とにかくミスなく回さないと」とか、「まずは自分がちゃんとやらないと」って気持ちになりやすいですよね。

ぼくもこれまで何人も、そんな気持ちで新しい役割に飛び込んでいく方たちを見てきました。

その姿勢はすばらしいし、責任感のある証拠。

でも、一つだけ視点を足すとしたら──

**「チームとして成果を出すには、自分一人では限界がある」**ということです。

なりたて管理職がはまりやすい「3つのトラップ」

① ✋ これまでどおり、自分で動いたほうが早いと思ってしまう

→ 手を動かせば成果は出る。でも、それを続けるほど部下は育たない。

② 📈 プレイヤーとしての延長線上で成果を出そうとする

→ 数字や結果で目立とうとするが、それはマネジメントの本質とはズレている。

③ 🧠 部下のことより、自分のことでいっぱいいっぱいになる

→ 「まず自分がちゃんとしなきゃ」と思いすぎて、部下との関係づくりが後回しに。

これ、全部「自分のがんばり」で何とかしようとしている状態なんですよね。

でも、役割が変わった今こそ、目を向けてほしいことがあります。

それは──

部下と一緒に成果を出していく、という視点です。

たとえば、自分がいないときもチームがちゃんと動いていたり、

誰かが「そのやり方、前に○○さんから学んだんです」とあなたのことを言ってくれたり。

そういう“じわっとくる成果”って、ほんとうに嬉しいんです。

だからこそ、今このタイミングで「育てる」というテーマに目を向けることは、

マネージャーとしてのスタートラインに立った今だからこそ、意味のあることだと思っています。

このブログでは、「育てるマネジメントって、どうやって始めればいいのか?」

そのヒントをお届けしていきます。

自分らしい関わり方を見つけたいと思っているあなたに、少しでも参考になれば嬉しいです。

1️⃣ 自分でやった方が早い、の壁

「これ、教えるより自分でやった方が早いな…」

管理職になって最初にぶつかる壁が、まさにこの感覚かもしれません。

チームとして成果を出したいと思っていても、現場は待ってくれません。

納期はあるし、質も落としたくない。

だからつい、手を出してしまう。自分でやった方が早いから。

しかも、切羽詰まれば詰まるほど、頭ではわかっていても思うようにいかないんですよね。

•報告の期限が明日まで!

•月末に売上が全然足りてない!

•プレゼンのクオリティがどうしても上がらない!

こういうとき、「育てる」なんて余裕がないよ…って思うのも、正直なところじゃないでしょうか。

「自分がいないと回らない」チームができあがる

もしあなたがずっとそのやり方を続けていたら、

メンバーは「困ったら上司に頼めばいい」「任せても結局自分で直される」と感じるようになります。

その結果、少しずつ自分で考える力や、自分で動く責任感が薄れていってしまうんです。

これって、長い目で見るとけっこう大きなリスクですよね。

でも、それでも少しずつ視点をずらしていくことができれば、

“自分がやる”というスタイルから抜け出していくことができます。

じゃあ任せるって、どうすればいいの?

「任せよう」と思っても、最初は勇気がいります。

でも、いきなり“全部”任せなくていいんです。

まずは「ここまでは任せる」という範囲を決めること。

その上で、うまくいかなかったときにどうフォローするかもセットで考えておく。

この“準備付きの任せ方”が、育てるマネジメントの最初の一歩になります。

そして大事なのは、「どうだった?」と振り返る時間をつくること。

これは、任せっぱなしではなく、関わり続ける姿勢を伝えることにもつながります。

任せることは、期待を伝えることでもある

人は、自分に期待されていると感じたときに一歩前に出ます。

逆に「どうせ無理だろうな」と思われていると、それ以上がんばろうとしません。

だからこそ、「やってみて」「任せるね」と伝えることは、

**「あなたならできると信じてる」**というメッセージにもなるんです。

もちろん、うまくいかないこともあります。

でも、そこで一緒に考え、成長のプロセスに付き合うことこそ、マネジメントの醍醐味かもしれません。

あなたがやった方が早い。

でも、あなたが“任せた先”にしか生まれない成長がある

それを信じて、最初の一歩を踏み出してみませんか?

2️⃣ 1on1は“管理”じゃなく“関係づくり”

昇進後にまず始めたほうがいいアクションは何ですか?

そう聞かれたら、ぼくは迷わずこう答えます。

「1on1をやってみてください」と。

メンバー一人ひとりと、落ち着いて話す時間を取ること。

これは、これからのチームづくりの土台になります。

でも、1on1ってやったことがないと、ちょっとハードル高く感じますよね。

「何を話せばいいんだろう…」とか

「ちゃんとアドバイスできる自信がない…」とか。

大丈夫です。

最初の1on1でいきなり深い話をしようとしなくてOKです。

むしろ、“管理”じゃなく“関係”をつくる場なんだと考えてもらえたら十分です。

聴くことから始まる信頼関係

1on1でいちばん大切なのは、相手の話を“ちゃんと聴く”こと。

アドバイスすることでも、管理することでもありません。

「最近どう?」というシンプルな問いからでも大丈夫。

相手の口から出てくる言葉を、途中でさえぎらず、評価せずに聴く。

これだけで、少しずつ「この人には話してもいいかも」という空気が生まれてきます。

上司が“ちゃんと聴いてくれる人”であることの価値

メンバーにとって、上司が「ちゃんと話を聴いてくれる人」かどうかは、とても大きな意味を持ちます。

ここでの“ちゃんと”には、ただ聞いているのではなく、評価せずに、途中で遮らずに、最後まで耳を傾けてくれるというニュアンスが含まれます。

仕事で判断に迷ったとき、誰かとの関係に悩んだとき。

そんなときに「この人なら話してもいいかも」と思える存在がいるだけで、人は安心し、前を向いていけるんです。

あなたが1on1を通じて「この人は大丈夫」と思ってもらえる存在になれたら、

それだけでチームの安心感と自走力は、確実に上がっていきます。

完璧な質問なんていらない

「どんな質問をすればいいですか?」と聞かれることもありますが、

正解の質問なんて、実はありません。

大事なのは、あなたが相手に関心を持っているかどうか。

その気持ちがあれば、多少ぎこちなくても1on1は成立します。

たとえば:

•「最近、仕事で面白かったことってある?」

•「いま、ちょっとしんどいなって思ってることってある?」

•「このチームで、もっとこうなったらいいなって思うことある?」

ちょっとした問いでも、関係性を深めるきっかけになります。

まずは月1回でも、10分でもいい。

1on1を始めてみることで、チームの空気は確実に変わりはじめます。

そして気づいたとき、きっとこう思うはずです。

「チームって、ひとりひとりとの対話の積み重ねでできていくんだな」と。

3️⃣ “強み”からマネジメントするという視点

部下の育成というと、つい「どこが足りないか」「何を直すべきか」に目が向きがちです。

もちろん、改善点に気づいて支援することは大切ですが──

そればかりだと、本人のモチベーションが下がってしまうこともあります。

そんなときこそ、“強み”に目を向けるという視点が力を発揮します。

弱点を補うより、強みを活かす方が伸びる

人は、自分の得意なことをやっているときに、自然とエネルギーが湧いてきます。

集中力も高まるし、周囲にも良い影響を与えやすくなる。

それはきっと、あなた自身も経験があるはずです。

だからこそ、上司として「この人は何が得意なのか?」「どんなときにイキイキしてるのか?」に目を向けて観察すること

それが、育成の入り口になります。

では、具体的にどこを見ればいいのか?

ぼくがよくお伝えしているのは、こんな3つの観点です。

その人が楽しそうに取り組んでいること(=好き)

周囲が自然とその人に頼っていること(=任せたくなる)

結果が出ていて、周囲からも評価されていること(=成果)

この3つが重なるところに、その人の“強み”が隠れていることがよくあります。

しかもそれは、目に見えるスキルだけじゃなく、関わり方や姿勢、仕事へのスタンスのような「その人らしさ」にも現れるんです。

「役割」ではなく「可能性」で関わる

マネージャーになると、つい“役割”で人を見てしまいがちです。

「あの人は経理だから数字まわり」「彼は中堅だから後輩指導」など。

でも、強みで見るということは、「この人にはこんな可能性があるかもしれない」という視点を持つということ。

実際にやったことがなくても、「向いてそう」と思えることを小さく任せてみることで、思わぬ成長につながることもあります。

強みを活かすチームは、自走する

強みを起点に任せられたメンバーは、「自分の力が活かされている」と感じやすくなります。

その実感が、自信と行動につながり、少しずつチーム全体の流れが変わっていきます。

こうした経験を積み重ねることで、メンバーの「自立」や「主体性」が育っていきます。

自分の意思で動ける人が増えると、やがてチーム全体が“自走”しはじめる。

「この人なら、あれを任せてみようかな」

そんな小さな選択の連続が、自走できるチームを育てていくんです。

強みを見る視点は、マネジメントにおいてとても優しい眼差しです。

それは、「あなたを見ているよ」「可能性を信じてるよ」というサインでもあります。

あなたがその視点を持つだけで、メンバーの表情がふっと明るくなる瞬間が、きっとあるはずです。

4️⃣ 自分の“理想の上司像”を棚卸ししてみる

部下を育てたい。

でも、自分はどう関わればいいのか、正解がわからない。

そんなときこそ、「自分がどんな上司でいたいか?」を考えてみることがヒントになります。

難しく考えなくても大丈夫です。

過去をちょっとだけ振り返ってみるだけでいいんです。

「この人みたいになりたい」と思った上司は誰でしたか?

•どんな関わり方をしてくれていましたか?

•どんな言葉が印象に残っていますか?

•自分がどんなふうに変わっていったか、覚えていますか?

あなた自身が成長したと感じた瞬間には、きっと誰かの“関わり”があったはずです。

そして大事なのは、その人のすべてを真似しようとしなくていいということ。

完璧に理想的な人なんて、きっといません。

でも、「あのときの言葉が嬉しかったな」「あの接し方は印象に残ってるな」

そんな“ひとつひとつの部品”のような要素を、自分なりに切り取って取り入れていけばいいんです。

そうやって、少しずつ自分だけのマネジメントスタイルをつくっていけばいい。

正解を探すのではなく、「自分の軸」を持つこと

マネジメントに“正解”はありません。

でも、「自分がどんな上司でいたいか」という軸があると、

迷ったときにもブレにくくなります。

•部下にどんなふうに関わりたいか

•どんなチームをつくりたいか

•自分がどんなふうに信頼されたいか

言葉にしてみることで、自分のマネジメントスタイルが少しずつ見えてきます。

育てるマネジメントは、他人のマネをすることじゃない。

あなた自身の言葉と行動で、少しずつ形づくられていくものです。

だからまずは、自分の過去を棚卸しして、

「自分が大切にしたい関わり方」を見つけるところから始めてみませんか?

5️⃣ 育成に“正解”はない

ここまで読んで、「なるほど、とは思うけれど…」と感じている方もいるかもしれません。

現場は忙しいし、余裕なんてない日もある。

ちゃんとやれている実感が持てないまま、毎日が過ぎていく。

そんな中で、「育てるマネジメント」なんて言われても、うまくできる気がしない──

そう感じるのも、すごく自然なことです。

育成は、正解を目指すものじゃない

マネジメントって、“うまくやろう”と思えば思うほど、プレッシャーが増します。

でも実際は、育成に「これが正解!」という唯一の答えなんてありません。

相手も状況も日々変わっていく中で、

あなた自身も試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ形をつくっていくしかない。

ときには遠回りに感じることもあるけれど、

そのプロセスこそが、あなたのチームを育てていく時間になります。

大切なのは、「関わろうとする意志」

うまくいくかどうかよりも、

何より大切なのは、**「部下と関わろうとする意志があるかどうか」**です。

忙しい中でも、少し時間を取って話を聴こうとする。

うまく伝わらなくても、また別の角度で伝えようとする。

任せたことに口を出したくなっても、信じて見守ろうとする。

その積み重ねが、メンバーに伝わっていきます。

「ちゃんと見てもらえている」「自分のことを気にかけてもらえている」

そんな実感が、行動を変えていくんです。

あなたのマネジメントには、あなたらしさがあっていい

ここまで読んでくれたあなたには、きっと「いいマネジメントをしたい」という思いがあるはずです。

その気持ちがある限り、たとえ迷いながらでも、きっとチームはついてきてくれます。

大事なのは、正しくやろうとしすぎないこと

完璧じゃなくていい。あなたらしさがある関わり方こそが、チームの空気をつくっていきます。

育成は、ゆっくりでいいんです。

関わる中で、お互いが育っていけばいい。

それが、あなたのチームの、これからの土台になっていきます。

🧭 おわりに:あなたらしい育成の一歩を

ここまで、「育てるマネジメント」をテーマに、5つの視点をお届けしてきました。

✅ 自分でやった方が早い、の壁を超える

✅ 1on1は“管理”ではなく“関係づくり”

✅ 強みからマネジメントするという視点

✅ 自分の理想の上司像を棚卸ししてみる

✅ 育成に“正解”はない

どれも、すぐに完璧にできるものではありません。

でも、どれも「意識して関わろう」と思ったその瞬間から、

少しずつチームの空気は変わっていきます。

昇進・昇格は、ゴールではなく新しいスタート。

大変なことも増えるけれど、その分だけ“育てる喜び”も手にしていけるはずです。

だからこそ、正解を探すのではなく、

「自分だったら、どんなふうに関わりたいか?」を問いながら、

あなたらしい育成の一歩を踏み出してみてください。

その一歩が、未来のチームをつくっていきます。

今日もその歩みを応援しています

Pocket

大規模な組織変更を乗り越える!組織がやるべき施策

Pocket

 

はじめに

組織変更は、企業の成長や戦略転換に不可欠なプロセスですが、現場の社員にとっては不安やストレスの要因にもなります。単に新しい組織体制を発表するだけではなく、社員が変化を前向きに受け入れ、主体的に動ける環境を整えることが、組織として求められます。

しかし、実際には、
• 「なぜこの変更が必要なのか?」が十分に伝わらず、社員が納得感を持てない
• 情報が不足し、不安や憶測が広がる
• 「この変化で自分はどうなるのか?」という不安が生まれる

といった課題が発生しがちです。組織変更を単なる構造の変更で終わらせず、組織の成長につなげるためには、適切なアプローチが不可欠です。

ぼくは長年、さまざまな企業の人事・教育部門の方々とコーチングを通じて関わってきました。その中でも、特に長い付き合いのある人事・教育部門の方がいます。彼女の勤める会社では、現在、関連会社も絡んだ大規模な組織変更が進行中です。組織再編が行われることで、社内のキャリアパスや業務フローが大きく変わり、会社としても社員のサポートや組織の安定化に尽力する必要があります。

本記事では、 ビジネスコーチの視点から、「大規模な組織変更を成功させるために組織がやるべき施策」 を解説します。
まず、組織変更を成功させるためには、次の5つの施策が重要になります。

✅ 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える
✅ 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る
✅ 社員が将来への不安を感じる → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する
✅ 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する
✅ 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする

これらの施策を実践することで、組織変更を単なる構造の変化ではなく、社員の成長と組織の進化につなげることができます。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

第1章 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える

組織変更の際に起こる課題

組織変更がスムーズに進むかどうかは、社員の納得感に大きく左右されます。ただ「変更の背景を説明する」だけではなく、組織としてどう語るかが重要になります。

  • 「この変更は会社にとって必要なことです」

  • 「市場の変化に対応するためです」

と伝えるだけでは、社員にとって「他人ゴト」になりがちです。社員が「自分のこととして受け止める」には、ストーリーの設計がカギになります。

✅ ビジネスコーチの視点:伝え方の順番を意識する

組織変更の話をするとき、最初に「変更の理由」を説明するのは定石です。しかし、社員の立場に立つと、まずは『不安』を解消する情報が欲しいものです。
《伝える順番のポイント》
1️⃣ 変わること(ファクト)
→ 「この組織変更では、○○部と△△部が統合されます」
2️⃣ なぜ変わるのか(背景・目的)
→ 「市場環境の変化に対応し、スピード感を持って業務を進めるためです」
3️⃣ 社員にとっての意味(メリット・成長機会)
→ 「この変更によって、異なる分野の知見が結びつき、新たなキャリア機会も生まれます」
4️⃣ 具体的にどう影響するのか(実務レベルの説明)
→ 「日々の業務では、△△部との連携が増え、○○のプロジェクトに参加する可能性があります」
5️⃣ 不安へのフォロー
→ 「変更直後は戸惑いもあると思いますが、フォロー体制を整えます。不安なことがあれば気軽に相談してください」
🟠 コーチング的な問いかけ
✔ あなたが今伝えようとしている『変更の目的』は、社員にとって納得できる内容になっていますか?
✔ 「なぜこの変更が必要なのか?」を、組織の目線ではなく、社員の視点で説明できますか?
✔ 伝える順番を工夫することで、社員の受け取り方がどう変わると思いますか?

✅ ストーリーを活用して「自分ゴト化」させる

「なぜ変わるのか?」を説明するときに、単なるデータやロジックだけでなく、「ストーリー」を交えて伝えることで、理解しやすくなります。
例えば、次のような話し方ができます。
🔹 パターン①(市場変化を実感させるストーリー)
「5年前と比べて、私たちの業界の競争環境は大きく変わりました。 昔は○○が主流でしたが、今は△△が求められています。 この変化に対応しないと、競争力が低下してしまいます。 だからこそ、今回の組織変更が必要なんです。」
🔹 パターン②(社員の成長につなげるストーリー)
「実は、○○部のAさんも、△△部と関わることで新しいスキルを身につけ、キャリアの幅を広げました。 今回の組織変更では、より多くの社員がこうした経験を積めるようになります。」
🟠 コーチング的な問いかけ
✔ 社員が「自分ゴト」として捉えられるようなストーリーを作れていますか?
✔ 「会社としての変化」ではなく、「社員一人ひとりにとっての変化」を伝えていますか?
✔ 過去にうまく伝わったストーリーや、逆に伝わりにくかった経験を振り返ると、どんな違いがありましたか?

第2章 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る

組織変更の際に起こる課題

組織変更が発表されたとき、「情報が不十分」「何も知らされていない」 という状態が続くと、社員の間に不安や憶測が広がります。
特に、大規模な組織変更では、現場の混乱を防ぐためにも、

  • 「適切なタイミングで」

  • 「わかりやすく」

  • 「双方向のやり取りができる形で」

情報共有を行うことが重要です。

✅ ビジネスコーチの視点:情報共有=単なる通知ではない

「情報共有」と聞くと、メールや社内ポータルで一方的に通達する ことを想像しがちですが、それでは不十分です。社員が納得し、安心して働くためには、「情報を受け取る側の理解度や感情を考慮する」 必要があります。
例えば、次のようなアプローチを意識すると、より効果的な情報共有ができます。
1️⃣ 「知りたい情報が揃っているか?」を意識する
→ 社員が本当に知りたいのは「会社の都合」ではなく、「自分にどう影響するか?」
→ 役職ごとに異なる懸念点を考え、適切な情報を準備する
2️⃣ 情報が届いていない層を見落とさない
→ 一部のメンバーだけが情報を持っている状態になっていないか?
→ 伝えたつもりでも、現場では共有されていないケースはないか?
3️⃣ 双方向のやり取りを設計する
→ 質問を受け付ける場を設け、社員が安心して疑問を解消できるようにする
→ 説明会だけでなく、1on1や小規模の対話の場を作る

✅ 透明性の高い情報共有のポイント

1. 組織変更の説明会を開催し、質疑応答の場を設ける

✅ 形式:全社ミーティング、部門別説明会、1on1面談など

✅ 伝えるべき内容:

✔ 「何が変わるのか?」(組織全体の変更点)
✔ 「なぜこの変更が必要なのか?」(背景・目的)
✔ 「自分たちは何を求められるのか?」(役割・期待値)
✔ 「自部門への直接的な影響は?」(具体的な業務変化)

✅ 説明のポイント:

✔ 社員が「自分ごと」として受け止められるように、部門ごとに影響を整理する
✔ 「今後の動き」と「求められること」を明確に伝える
✔ 社員が納得するまで説明を続ける姿勢を見せる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は「自分に関係のある情報」を十分に得られていますか?
✔ 説明を受けた社員が「どんな質問を持つか?」を事前に想定できていますか?
✔ 情報を一方的に伝えるだけでなく、社員が意見を言える場を設けていますか?

2. FAQを整備し、社内ポータルやチャットで共有する

✅ 具体的なアクション:

✔ よくある質問と回答を整理し、誰でもアクセスできるようにする
✔ 「何を聞いていいのかわからない…」とならないように、具体例を交えた質問を用意する
✔ 新しい質問が出たら、FAQを随時更新し、組織として情報の透明性を維持する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が「気軽に質問できる環境」になっていますか?
✔ FAQは最新の情報に更新され、社員が活用できるものになっていますか?
✔ 「この情報を事前に共有しておけばよかった」と思ったことはありませんか?

3. 不安や疑問を気軽に相談できる窓口を設置する

✅ 実践ポイント:

✔ 人事やマネージャーが、定期的に社員の声を拾う仕組みを作る
✔ 「何か質問はある?」ではなく、「○○について気になっていることはある?」と具体的に聞く
✔ 匿名アンケートを活用し、心理的ハードルを下げる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が安心して疑問を話せる仕組みが整っていますか?
✔ 「質問が出にくい場」になっていないか、振り返る機会を持っていますか?
✔ 社員が本当に聞きたいことを拾い上げる工夫をしていますか?

✅ まとめ

情報共有は、単なる通知ではなく、社員の不安を解消し、納得感を高めるプロセスです。
そのためには、
✅ 「確定したことから伝える」姿勢を持つこと
✅ 社員一人ひとりに情報が確実に届くよう、複数のチャネルを活用すること
✅ 双方向の対話を促し、意見や質問を収集・反映すること
組織変更において、情報をどう伝えるかは、社員の信頼やエンゲージメントにも直結する重要な要素です。
「情報を伝える側」としてではなく、「情報を受け取る社員の視点」に立つこと。 その意識を持つだけでも、組織の変化をスムーズに進めるための大きな一歩になるはずです。

第3章 社員が将来への不安を感じる → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する

組織変更の際に起こる課題

組織変更が行われると、社員は 「これから自分はどうなるのか?」 と考えます。
組織の再編成や役割の変更があると、これまでのキャリアがどう影響を受けるのかが不透明になり、不安を感じるのは当然です。
しかし、「この変化は、あなたの成長のチャンスでもある」 というメッセージが伝われば、受け止め方は大きく変わります。
そのためには、組織としてキャリアパスを明確にし、成長の機会を提供し、変化を好まない社員への適切なアプローチを行い、キャリアについての対話の場を設計することが重要です。

✅ 1. キャリアパスの明確化 – 社員に「自分の未来」を見せる

✅ キャリアパスを明確にするためのアクション

  • 変更後の職務や役割の期待値を言語化し、社員に伝える

  • 「どのようなスキル・経験を積めば次のキャリアに進めるのか?」 を整理する

  • 職種ごとのキャリアパスモデル を作り、選択肢を提示する

  • 上司と部下の間でキャリアに関する 1on1ミーティング を実施する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は 「この組織変更の先に、どんなキャリアが開けるのか?」 を理解できていますか?
✔ 役職や役割が変わる社員に、十分な説明とサポートを提供できていますか?
✔ 組織の視点ではなく、社員一人ひとりの視点 に立ったキャリアの道筋を示せていますか?

✅ 2. 変化を好まない社員へのアプローチ

「変化をポジティブに捉えられる社員」 もいれば、「現状維持を好む社員」 もいます。
変化を好まない社員に対して、「これからはこう変わります」と一方的に伝えるだけでは、むしろ抵抗感を強める 可能性があります。
そのため、以下のようなアプローチを意識することが重要です。

✅ 変化を好まない社員へのアプローチ

 1️⃣ 「変わらないこと」も伝える
→ 「これまでと変わらない部分もある」 と伝えることで、安心感を提供する
2️⃣ 変化を小さく分解し、「少しずつ適応できる」形にする
→ 「この変更で、最初に影響があるのは○○だけです」 など、ステップごとに伝える
3️⃣ 変化による「損失」ではなく「得られるもの」を強調する
→ 「この変更で、○○の経験が積める」「将来的に△△の選択肢が増える」 というポジティブな視点を提供する

🟠 コーチング的な問いかけ

「変化に抵抗がある社員」 に対して、どんなサポートが必要でしょうか?
✔ 変化の中にも 「変わらないこと」 があると伝えていますか?
✔ いきなり大きな変化を求めるのではなく、適応のステップを示せていますか?

✅ 3. 成長機会を提供する – 変化を「学びのチャンス」にする

「成長機会の提供」 は、組織変更をポジティブに捉えるための強力なツールです。
「この変更で何を学べるのか?」 を明確にすることで、社員のモチベーションを高め、変化に適応する意欲を引き出すことができます。

成長機会を提供するための施策

  • 社内外の研修プログラム を整備し、新しいスキル習得を支援する

  • 異動やプロジェクト参画 を通じて、多様な経験を積める環境をつくる

  • メンター制度やコーチング の仕組みを導入し、個別の成長をサポートする

  • 資格取得や専門スキルの習得 を奨励し、補助制度を活用できるようにする

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員が 「この変化を成長の機会」 と捉えられる環境を提供できていますか?
✔ 組織変更後に必要となるスキルを、社員がどこで学べるのか明確になっていますか?
✔ 社員が主体的に学べる文化を育てるために、どんな支援ができますか?

✅ 4. キャリアについての対話の場をつくる

社員がキャリアについて考えられる環境を整えることも、組織としての責任です。
特に、「これまでのキャリアプランが通用しなくなるかもしれない」 という不安を持っている社員に対しては、上司や人事が積極的に対話の場を作ることが重要です。

✅ キャリアについての対話を促す施策

  • 定期的な1on1ミーティング で、キャリアについて話す機会を設ける

  • 「キャリア対話会」 などの場を作り、他の社員の経験を学べる機会を提供する

  • 組織変更後の新しいポジションについて、実際に経験している人の話を共有する

  • 「あなたが望むキャリアに進むために、組織としてどうサポートできるか?」 という視点で関わる

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員は 「キャリアについて安心して相談できる場がある」 と感じていますか?
✔ 1on1や対話の場で、キャリアの不安を拾い上げる仕組みは整っていますか?
✔ 社員が 「この組織変更の中で、自分のキャリアをどう築くか」 を考えられる環境を作れていますか?

✅ まとめ

組織変更は、単にポジションが変わるイベントではなく、社員にとってのキャリアの転機 です。
そのために、
✅ キャリアパスを明確にし、社員が「自分の未来」をイメージできるようにする
✅ 変化を好まない社員に対して、適応しやすいサポートを提供する
✅ 成長機会を提供し、変化を「学びのチャンス」にする
✅ キャリアについて話せる場を作り、社員が前向きに行動できる環境を整える
これらのアクションを組み合わせることで、組織変更を「社員の成長につながる機会」に変えていくことができます。

第4章 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する

組織変更の際に起こる課題

組織変更が発表されると、社員の多くが業務面だけでなく、「人間関係の変化」 に対しても不安を感じます。

  • 「これまで一緒に働いていたメンバーと別の部署になってしまった…」

  • 「新しいチームで、自分はうまくやっていけるのか?」

  • 「誰に何を相談すればいいのかわからない」

こうした心理的な不安を放置すると、社員のモチベーションやパフォーマンスの低下につながる可能性があります。
そこで、組織として 「新しい環境でのつながりを意識的に作る」 ことで、社員が安心して適応できるようにサポートすることが重要です。

✅ 1. 交流の機会を意図的に設計する

組織変更後、「なんとなく仲良くなるのを待つ」ではなく、会社側が交流の機会を設計すること が求められます。
✅ 交流の機会を作るためのアクション

  • 「キックオフミーティング」 や 「オリエンテーション」 を実施し、新体制のビジョンを共有する

  • 部門間のコラボレーションを促進する ランチ会やオンライン交流会 を設ける

  • 雑談しやすい場(社内カフェスペース、チャットツールの雑談チャンネルなど) を活用する

  • 「新メンバー紹介」 を定期的に実施し、互いの理解を深める

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 新しい組織になった社員同士が気軽に交流できる仕組みを用意できていますか?
✔ 社員が安心して話せる場はありますか?
✔ 業務上の関係だけでなく、人間関係の構築をサポートできていますか?

✅ 2. 協働プロジェクトを活用し、自然な交流を生み出す

「話しやすい環境を作るだけ」 では、関係性の深まりが限定的になりがちです。
そこで、「協働する機会」 を増やし、自然な形で交流が生まれるようにすることが効果的です。

協働プロジェクトを活用するための施策

  • 小規模な ワーキンググループ を作り、新体制に関する意見交換の場を設ける

  • 部署を横断した プロジェクト を立ち上げ、異なるメンバーと協働する機会を増やす

  • ペアワークやメンター制度 を導入し、個別の交流を促す

  • 社内イベント(ワークショップ、アイデアソンなど) を活用して、チームワークを強化する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 社員同士が自然に関わる仕組みを作れていますか?
✔ 新しいチームの中で「共通の目標」を持てるようなプロジェクトを設計できていますか?
✔ 業務の枠を超えて、横のつながりを作るための工夫はありますか?

✅ 3. 心理的安全性を高め、意見が言いやすい環境を作る

新しい組織では、「何を言っていいのか、どう行動すればいいのか」がわからず、様子見する社員が多くなる傾向があります。
この状態が続くと、

  • 「周囲にどう思われるか不安で、意見を出せない」

  • 「新しいチームの中で発言しにくい」

  • 「指示がないと動きづらい」

といった状況になり、組織の成長が停滞します。
そこで、「心理的安全性」 を高めるための仕組みを整えることが重要です。

心理的安全性を高めるための施策

  • 「わからないことは聞いていい」「新しいアイデアを歓迎する」 という文化を組織が示す

  • リーダー自身も「完璧でなくていい」と伝え、挑戦する姿勢を見せる

  • 組織にとっても「変化に適応し、学び、成長する機会」になると考える

  • 1on1ミーティングやチームディスカッションを定期的に実施し、社員の意見を拾う

  • ミスを責めるのではなく、「学びの機会」として共有する場を作る

  • 「話しやすい環境」を整えるため、フラットなコミュニケーションを促進する

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織のリーダーが「新しい環境に適応する姿勢」を見せられていますか?
✔ 社員が気兼ねなく発言できる場を設けていますか?
✔ 社員だけでなく、リーダー層が「変化をポジティブに受け入れる文化」を作れていますか?

✅ まとめ

組織変更後、社員が 「新しい人間関係の中で安心して働ける」 と感じることが、適応の鍵 になります。
そのために、
✅ 交流の機会を意図的に設計し、自然な会話が生まれる場を作る
✅ 協働プロジェクトを活用し、業務を通じたつながりを強化する
✅ 心理的安全性を高め、意見を言いやすい環境を整える
また、組織にとっても「新しい環境をつくる側」としての成長の機会 であることを意識することで、より主体的に関与できるようになります。
これらのアクションを組み合わせることで、新体制への適応をスムーズにし、組織全体の活性化を促すことができます。

第5章 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする

組織変更の際に起こる課題

組織変更は、発表して完了するものではなく、「新体制が定着し、社員がスムーズに適応できるまで続くプロセス」 です。
最初の数週間や数ヶ月で表面的には落ち着いて見えても、

  • 「役割の変化に慣れず、業務に支障が出ている」

  • 「新しい組織文化が浸透せず、部門間の連携がうまくいかない」

  • 「変化のストレスが、モチベーションやエンゲージメントの低下につながっている」

といった問題が水面下で進行することも珍しくありません。
だからこそ、組織変更後も継続的に社員の声を拾い、必要なフォローアップを行うことが不可欠です。

✅ 1. 定期的なフィードバックを収集し、適応状況を把握する

組織変更後、社員がどのように感じているのかを定期的に確認することが重要です。

✅ フィードバックを収集するためのアクション

  • 1on1ミーティング を活用し、現場のリアルな声を拾う

  • 匿名アンケート を実施し、組織変更への不安や課題を把握する

  • マネージャーやリーダーから、現場のフィードバックを集約する仕組み を作る

  • 「何か問題はありますか?」ではなく、「今の業務で困っていることは?」と具体的に聞く

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更後、社員が本音を話せる場を定期的に設けていますか?
✔ 社員の適応状況を把握する仕組みは整っていますか?
✔ 表面的な意見だけでなく、現場のリアルな課題を深掘りできていますか?

✅ 2. 評価の仕組みを柔軟に運用し、適応の負担を軽減する

組織変更により、新しい役割や業務プロセスに慣れるまでの時間が必要になります。
しかし、従来の評価の仕組みをそのまま適用してしまうと、社員に過度なプレッシャーを与え、適応の妨げになる 可能性があります。

評価の仕組みを見直すポイント

  • 短期的な適応期間を考慮し、評価基準を調整する

  • 「結果」だけでなく、「適応のプロセス」 も評価に含める

  • 現場の業務負担を把握し、適応に必要なリソースを提供する

  • 成果の評価だけでなく、「試行錯誤したこと」や「新しいチャレンジ」 を肯定的にフィードバックする

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更後、社員が過度なプレッシャーを感じないよう、評価基準を調整していますか?
✔ 短期的な成果だけでなく、適応のプロセスも評価できていますか?
✔ 評価の仕組みが形骸化せず、社員の成長を促進するものになっていますか?

✅ 3. 組織の健全性をチェックし、必要な改善を行う

組織変更後、「思っていたよりスムーズにいかない」「予想外の課題が発生している」 というケースは少なくありません。
そのため、組織として定期的に 「今の状態」 を振り返り、必要な改善を加えていくことが重要です。

✅ 組織の健全性をチェックする方法

  • 部門ごとに現状の課題を洗い出し、「組織変更前と比べて何が変わったか?」 を振り返る

  • エンゲージメントサーベイ を実施し、社員の満足度やモチベーションを測る

  • 経営層・リーダー層・現場社員の3層で意見交換を行い、方向性をすり合わせる

  • 「この変更は本当にうまくいっているか?」という視点で、継続的に改善を行う

🟠 コーチング的な問いかけ

✔ 組織変更の効果を定期的に評価し、改善する仕組みを作れていますか?
✔ 現場・管理職・経営層、それぞれの視点での意見をすり合わせていますか?
✔ 変更後の組織文化が、社員にとって働きやすいものになっているかを振り返れていますか?

✅ まとめ

組織変更の成功は、発表した時点ではなく、「新しい体制がスムーズに機能しているかどうか」 で決まるものです。
そのために、
✅ 定期的なフィードバックを収集し、社員の適応状況を把握する
✅ 評価の仕組みを柔軟に運用し、適応の負担を軽減する
✅ 組織の健全性をチェックし、継続的な改善を行う
この3つのアクションを実践することで、組織変更を 「一時的な変化」で終わらせず、社員の成長につながるプロセスにできる ようになります。
全文まとめの部分を、提案した5つの見出しに合わせて修正しました!

まとめ:組織変更を成功させるために組織がやるべき5つの施策

組織変更は、単なる「発表して終わり」のものではなく、社員が新しい環境に適応し、組織がスムーズに機能するまで続くプロセスです。
この変化を成功させるために、組織として取り組むべきポイントは以下の5つです。

✅ 社員の納得感を得られない → 組織変更の「目的」と「ストーリー」を明確に伝える
→ 社員が「自分ゴト」として変化を受け入れられるよう、伝え方を工夫する

✅ 情報不足や憶測が広がる → 透明性のある情報共有とオープンな対話の場を作る
→ 確定した情報は早めに伝え、社員が不安を感じない環境を整える

✅ 「この変化で自分はどうなるのか?」という不安 → 社員のキャリアパスを明確にし、成長機会を提供する
→ 変化を「リスク」ではなく「成長のチャンス」と捉えられるようサポートする

✅ 新しいチームや人間関係に不安を感じる → 社員同士の交流を促進し、新体制への適応を支援する
→ 人間関係の不安を軽減し、新しいチームの中で信頼関係を築ける仕組みを作る

✅ 組織変更後の定着が不安定 → 継続的なフォローアップを行い、適応と成長をサポートする
→ 定期的にフィードバックを収集し、柔軟な評価制度と組織改善を続ける

💡 組織変更を「成長のチャンス」にするために

組織が変わるとき、最も大切なのは 「人の適応」 です。
組織としての目的や戦略がどれほど優れていても、社員がその変化を 「自分ゴト」として受け止められなければ、組織変更の効果は最大化されません。

この変化を「組織の都合によるもの」として押し付けるのではなく、「社員の成長やキャリアの選択肢を広げる機会」 として伝え、支援することが重要です。

では、具体的に この変化をどう活かせばよいのか?

1️⃣ 社員一人ひとりが「自分の成長の機会」として捉えられるよう、適切な情報と支援を提供する。
2️⃣ 組織全体が変化を「短期的な負担」ではなく「長期的な進化のプロセス」として認識できるよう、ストーリーを設計する。
3️⃣ 新しい環境の中で社員同士のつながりを強め、心理的な安全性を高めることで、前向きな行動を促す。

組織変更は、ただの「変化」ではなく、組織と社員がともに成長するチャンス です。
この機会を 「主体的に活かす」か、「受け身で乗り切る」か で、組織の未来は大きく変わります。

最後に今すぐできる3つのアクションを提案します。

1. 組織変更に関する「伝え方」を見直す
• 社員の視点で納得感を得られる説明になっているか?
• 「なぜこの変更が必要なのか?」のストーリーは明確か?
2. 社員の不安を解消する「対話の場」を作る
• 情報共有の方法は一方通行になっていないか?
• 質問や不安を話せる場は十分に確保されているか?
3. 変化を「成長の機会」として捉え、支援策を考える
• 社員のキャリアパスをどのように支援できるか?
• 新しいチームの適応を促す施策はあるか?

組織の在り方を進化させるためにも、「変化を味方につける」視点を持ち、前向きに取り組んでいきましょう! 🚀

Pocket

PAGE TOP