行動量とフォローアップ──営業を“継続できる人”になるためのヒント

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1. はじめに──「いま動くべき」営業とは?

「とにかく動け」「数を打てば当たる」──営業の世界では、そんな言葉を聞くことがあります。たしかに行動量は成果に直結する大切な要素です。でも、それだけで本当に成果が出るかというと、現実はもう少し複雑です。

9月末決算のとある営業パーソンとの先月(5月)のコーチングセッションで、
あらためてそのことを感じるやりとりがありました。
「今年度、残り数ヶ月。いま動けなきゃ、たぶん流れる」
この感覚には、“焦り”というより、「いまだからこそ動く理由」が込められています。

「いま動くべき」とは、単にがむしゃらに動くことではありません。
自分の目標やタイミングを見極めたうえで、“意味のある一手”を積み重ねていくこと。

この記事では、営業の現場で“勢い”をつくりながら、信頼を積み重ねていくスタイルについて紹介していきます。

2. “いま動くべき理由”が明確な人は、行動に軸がある

「いま動かなきゃ」──そう思っても、どこから手をつければいいかわからない。
そんなとき、多くの人は“動くこと”より先に、“迷うこと”に時間を使ってしまいます。

先月のコーチングセッションで、ある営業パーソンと一緒に6月・7月の見込み案件を整理しました。
動くべきタイミングや、注力すべき対象が明確になってくると、「この期間は営業強化のフェーズ」と、自分なりの方針が定まっていきました。

行動量を出せる人、継続して動ける人には、共通して「判断の軸」があります。
たとえば──
• 新規だけでなく、「過去の商談相手」にもあえてアプローチしている
• 同僚への相談や、社内の協力体制づくりを“計画的に”進めている
• 「このタイミングで30社フォローアップ」と数字を明確に定めている

動く理由が曖昧なままだと、行動も散らかります。
でも、「この期間で何を掴みたいか」が見えてくると、迷いが減り、継続しやすくなる。
行動量が安定して出せる人ほど、自分なりの判断軸を持っているものです。

3. 行動が続く人の共通点──“リズム”を自分でつくっている

行動量は、気合や気分に頼っていると長続きしません。
続けられる人は、特別な意志力があるわけではなくて、自分なりの“リズム”を持っていることが多いです。

たとえば、先ほど紹介した営業パーソンの場合。
「今月中に30社フォローアップする」と数字を明確に掲げた上で、
• 朝イチで同僚に相談する
• 自分のスキルを求めてくれそうな顧客に、順番に声をかけていく
• 営業チームにもフォローアップリストを渡して協力体制をつくる

など、毎日の動きに小さな仕掛けを入れてリズムを整えることにしました。

ポイントは、「一気にやる」ではなく「自然と続く流れをつくる」こと。
予定が入らない日でも「誰かに相談する」「ひと声かける」といった小さな動きを積み重ねることで、行動の流れは止まりにくくなります。

そしてこのリズムは、周囲との関係にも波及します。
社内の誰かを巻き込んで動ける人は、“相談できる関係性”も日々の行動で育てているのかもしれません。

4. フォローアップは「紹介」と「信頼」の起点になる

フォローアップという言葉には、どこか“おまけ”のような印象があるかもしれません。
でも、実際の現場ではむしろ、**フォローアップこそが「信頼関係の本番」**と言える場面が多くあります。

一度やりとりをしたものの、その後話が止まってしまっているお客様。
その存在を「まだ見込みが薄い」として放置するのか、
「今こそもう一度声をかけるチャンス」と捉えるのかで、次の動きは大きく変わります。

今回のセッションでは、過去の商談相手や既存顧客へのアプローチを改めて見直しました。
そのなかで出てきたのが、**「そういえば、あのときの●●さんにも連絡してみよう」**という気づき。
実際、このひと声が関係性の再接続につながることもあります。

また、社内に向けて「こういうお客様、今いませんか?」と具体的に聞いてみることで、
思いもよらない紹介や新しい情報が入ってくるケースもある。

紹介は、狙って得るものではなく、日々の積み重ねの中から自然に返ってくる、信頼の先にある“ギフト”のようなものです。

フォローアップとは、「売り込む」ではなく、「気にかけている」という姿勢を示す行為。
それが結果的に、紹介や次の商談の“種”を育てる動きになっていきます。

5. 「売る営業」より「思い出される営業」

目の前の数字を追いかけていると、「どう売るか」「どう契約を取るか」に意識が偏りがちです。
でも、実際の現場では──とくに関係性がものを言う営業では──**「売ろうとしない人」の方が信頼される**という場面もよくあります。

たとえば、「あのとき丁寧に話を聞いてくれた人」とか、
「こちらの状況をよく覚えてくれていた人」って、時間が経ってもふと“思い出す”ものです。
そして、そのときに“また声をかけよう”と思ってもらえるかどうかが、大きな差を生みます。

今回のセッションでも、このクライアントさんが元々大事にしてきた「思い出される関係性」を意識した動き方を、あらためて整理していきました。
新しい提案を出すことだけが営業じゃない。
必要なときに「そうだ、この人に相談してみよう」と思ってもらえる状態をつくる。
そのために、普段からのフォローアップや、小さな接点づくりを積み重ねていくんです。

「自分のスキルで誰かの役に立ちたい」「ちゃんと価値を届けたい」──
そんな思いをもって動いている人ほど、その姿勢は自然と相手に伝わります。
そして、相手の記憶の中に“信頼できる誰か”として残っていきます。

“売るための営業”ではなく、“思い出してもらえる営業”。
それは、焦らず・途切れず・気にかけ続ける人にしか、つくれない関係なのかもしれません。

6. おわりに──動き続けることが、信頼を育てる

営業という仕事の面白さは、「今」の行動が、ずっと先の未来に返ってくるところにあります。
すぐに成果が出ることもあれば、数ヶ月、あるいは数年越しで「またお願いしたい」と声がかかることもある。
その“時差のある成果”を信じて動き続けられるかどうかが、大きな分かれ道になるのかもしれません。

今回のセッションを通じて感じたのは、
行動量を増やすことも、リズムを整えることも、フォローアップを丁寧にすることも、
すべてが「思い出される存在であり続ける」ための工夫だということです。

営業は、“いま売る”だけがすべてじゃない。
むしろ、“また声をかけたいと思ってもらえる関係性”こそが、その人らしい営業スタイルの中心にある。
その関係性は、焦らず・丁寧に・動き続けることで育っていきます。

目の前の一歩を重ねることで、未来の誰かがあなたを思い出す。
それが営業の本質のひとつだと、ぼくは思っています。

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