その言葉、誰のため? 聴くことから始まるチームづくり

Pocket

1. 冒頭:「伝えること」に必死になっていないか?

部下が思うように動かない。
チームにどうも一体感がない。
──そんなとき、つい考えてしまうのが「もっと伝えなきゃ」ということ。

指示の出し方が悪かったのかもしれない。
期待をもっと明確に伝えるべきだったかもしれない。
あるいは、感情的にならずに、もっと冷静に説明するべきだったのかも。

でも、こうした“伝えること”への意識が強くなればなるほど、
逆にチームの反応が鈍くなる…そんな感覚に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

実はそこに、「関係性が動き出すヒント」が隠れていることがあります。
それは、伝えることよりも“聴くこと”のほうが、チームを変える力を持っているという事実です。

ぼくがこれまでコーチングの現場でご一緒してきた、
さまざまな業種の多くの管理職の方も、
あるタイミングから“伝えること”への力みを少し手放し、
「どう聴くか」「何を受け取るか」に目を向け始めたときに、
チームとの関係性が少しずつ変化していくのを実感されています。

コミュニケーションを変える第一歩は、
“話し方を磨くこと”ではなく、「伝える前に立ち止まること」かもしれません。

2. 会話が変わると、チームが変わる──その実感

「最近、前よりも話してくれるようになった気がする」
「ミーティングで誰かが話し始めると、自然と他のメンバーも反応してくれるようになった」

そんな変化の声を、コーチングの中で管理職の方から聞くことがあります。
そのきっかけになっているのは、多くの場合、特別なスキルや施策ではありません。

それは、“聴き方”が変わったことによる、空気の変化です。

「こう言えば部下が動くだろう」「これを伝えれば納得してくれるはず」──
そんな“伝えようとする努力”は、もちろん大切なものです。
けれど、それだけでは伝わらないことがある。

むしろ、相手が話すのを待つ。
言葉をかぶせずに聴く。
評価せずに受け止める。
その“余白”があることで、メンバーは少しずつ「話してもいい」と思えるようになる。

とくに、管理職という立場であるあなたの一言は、
本人が意図する以上に大きく響き、影響を与えます。
だからこそ、言葉を選ぶこと以上に、“聴く姿勢”が大切になる場面があるのです。

「伝えよう」とする気持ちが強いほど、
知らず知らずのうちに、相手の言葉が入るスペースを奪っていることがある。

ほんの少し立ち止まって、相手の声に耳を傾ける。
その姿勢が、チームの空気を変え、関係性をじんわりと動かしていくのです。

3. “伝える力”よりも、“受け取る力”が先

コミュニケーションというと、「どう伝えるか」が主役になりがちです。
プレゼン力、言語化力、ロジカルシンキング──それらは確かにビジネスにおいて重要なスキルです。

でも、チームを動かし、関係性を育てるという文脈においては、
“受け取る力”が先にあってこそ、“伝える力”が活きるのではないでしょうか。

たとえば、メンバーに「期待してるよ」と声をかけるとき。
それが応援になるか、プレッシャーになるかは、相手が今どんな状態かによって変わります。
つまり、“何を言うか”と同じくらい、“いつ、誰に、どんな気持ちで言うか”が大事なんです。

その違いを見極めるには、まず相手のことをよく“見る”こと、
そして、“聴くこと”が必要です。

自分の正しさや意図を押しつける前に、
「相手は何を感じているだろうか」
「どんな前提をもって、この話を受け取るだろうか」
そんな問いを、言葉を発する前の1秒間に、自分に向けてみる。

その“間”があるかないかで、
言葉の届き方も、相手の反応も、大きく変わってくるのです。

だからこそ、伝えるスキルを磨くよりも先に、
相手を受け取る土台を、自分の中につくっておくことが、信頼を育てる一歩になります。

4. 自然体のリーダーシップと、余白のある対話

管理職という立場になると、
「ちゃんとしなきゃ」「見本にならなきゃ」と、どうしても構えてしまうことがあります。

でも、その“構え”が、かえってコミュニケーションの流れを堰き止めてしまうことがあるんです。

こちらが肩に力を入れて話せば、相手も構えます。
完璧に伝えようとするほど、対話の“余白”がなくなってしまう。
結果として、「話しやすさ」が失われていくんですね。

実は、自然体でいることそのものが、強いメッセージになることがあります。

「すごいことを言わなくてもいい」
「ちゃんと答えられなくても大丈夫」
そう思ってもらえる空気感があるだけで、
部下は自分の言葉で話そうとし始めます。

そのきっかけになるのが、何気ない問いです。

「どう思う?」
「何か気になることある?」
「最近どう?」

──こんな、答えに“正解”のない問いかけ。
評価や判断をしない問いが、相手の心を少しずつ開いていきます。

そして、その姿勢こそがリーダーシップの本質ではないか と、ぼくは思うんです。

自然体で関わること。
構えずに、相手と同じ地平に立つこと。
対話に余白を持たせること。

それは、管理職としての“弱さ”ではなく、
むしろ“信頼をつくる強さ”なのかもしれません。

5. 相手の価値観に立った“ひとこと”が、関係を変える

言葉は、ときに人を動かします。
でもそれは、「正しい言葉」を選べば動く、という単純な話ではありません。

同じ言葉でも、ある人には届き、別の人には響かない。
それは、相手の価値観や、そのときの状態によって、言葉の意味が変わるからです。

たとえば、部下に「もっと自信を持って」と伝えたとき。
その言葉が励ましになることもあれば、
「プレッシャーだな」と感じさせてしまうこともある。

この違いは、伝える側の“言い方”や“論理”ではなく、
相手が今、どんな状態でその場にいるか──
その“前提”に目を向けられているかどうか、にかかっています。

だからこそ、「この言葉、誰のために言ってるんだろう?」と立ち止まる習慣が大切になります。

「自分を安心させるために言っているのか」
「相手を動かすためだけに言っているのか」
それとも、相手の価値観を尊重して、本当に支えになりたいと思っているのか

そこに自覚があると、同じ言葉でも“温度”が変わります。

相手に寄り添おうとする気持ちがにじんだひとことは、
派手じゃなくても、確実に相手の心に残るものになります。

管理職として言葉を使うということは、
“コントロールするため”ではなく、
相手が伸び伸びと働き、自分らしく成長していけるよう支援するためにある。

その土台となるのが、相手の価値観に立って言葉をかける姿勢であり、
信頼に根ざした、あたたかなコミュニケーションなのだと思います。

6. 結び:関係の質は、対話の積み重ねで変えられる

「もっと伝えなきゃ」と力んでいたときには見えなかったことが、
少し立ち止まって“聴く”ことを意識し始めると、不思議と見えてくることがあります。

表情の変化。
言葉の選び方。
沈黙の向こうにある感情。

相手の反応を丁寧に“受け取る”ようになると、
それまで一方通行だったコミュニケーションが、すこしずつ“対話”に変わっていきます。

そしてこの「対話の質」が、
チームの空気を変え、関係性を育て、
結果的に一人ひとりのパフォーマンスや働き方にも影響していくのです。

伝え方の工夫も、言葉の力も、もちろん大切です。
でもその前に、自分の“聴く姿勢”がどうあるかを問い直すことが、
管理職としてのリーダーシップをぐっと深めてくれる──
ぼくはそう信じています。

日々の会話のなかで、ほんの少し立ち止まる。
「この言葉は誰のため?」と自分に問うてみる。
「今、何を感じている?」と相手に尋ねてみる。

そんな小さな対話の積み重ねが、
“伝わるチーム”をつくり、
“安心して働ける関係性”を育てていくはずです。

Pocket

売れない商品と向き合う──整理することで見えてくること

Pocket

売れない商品があるとき、よくある反応はこうです。
「これ、本当に置いておく意味ある?」
「売れないなら、もうカタログから外してもいいんじゃない?」

でも、そんなふうに“売れない”ことばかりに目を向けてしまうと、
その商品が本来もっている役割や、ラインナップ全体に与えている影響を見逃してしまうことがあります。

実は──
「売れる商品」と同じくらい、「選ばれるプロセスを支えている商品」があるんです。
それは、比較対象としての展示品かもしれないし、
選択肢の幅を広げるために必要な“静かな存在”かもしれない。
あるいは、ラインナップを“面”で見せるために欠かせない、構成上のピースかもしれません。

今回は、そんな“売れない商品”との向き合い方について、
整理と伝え方の工夫から生まれる「選びやすさ」の話をしてみたいと思います。

第1章:「売れない=いらない」ではない

つい、「売れない=価値がない」と見なしてしまう。
忙しい日常のなかで、数字に表れない価値を評価するのは難しいから──
これは、どんな現場でも起きうる自然な感覚です。

でも本当に、その商品は「いらない」のでしょうか?

たとえば、同じジャンルの中で幅広い価格帯をカバーするラインナップ。
その“端”に位置する商品は、数としては出ていなくても、
実は「真ん中の価格の商品を選びやすくする」という役割を果たしていることがあります。

これは、**行動経済学で言う“極端回避性”**──
人は、複数の選択肢があるときに、極端なものを避けて「中間」を選ぶ傾向がある、という理論です。
たとえば3つの価格帯があると、「一番高いのは手が出ないけど、一番安いのも不安…」という心理が働き、結果として“真ん中”が選ばれやすくなります。

また、**“アンカリング効果”**とも関係しています。
最初に提示された価格(アンカー)が高いほど、その後に提示される価格が“お得”に感じられる。
つまり、一見売れそうにない高価格商品にも、「他の商品を魅力的に見せる」という効果があるわけです。

こうした視点で見ると、売れていない商品にも
“ラインナップ全体の選ばれやすさを設計するためのピース”としての価値があることがわかってきます。

また、ひとつの用途やシーンを“面”で見せたいとき、
パーツとしてはあまり選ばれない商品が、全体の統一感や安心感をつくっていることもあります。
そういう商品は、目立たずとも、選ばれるプロセスの一部を支えているのです。

商品ひとつひとつに「売る」という役割だけを求めると、
この“静かな存在感”に気づけなくなってしまう。
むしろ、数字が出ていないからこそ、その価値を問い直すことが大切になってきます。

売れていないものを、ただ切り捨てる前に。
「この商品の存在は、意味を持っているだろうか?」
そんな問いを立てるところから、次の一手が見えてくるかもしれません。

第2章:商品マトリックスが教えてくれること

“なんとなく”で扱い続けてきた商品たち。
それらをあらためて見直したいとき、ただ眺めているだけでは全体像は見えてきません。
必要なのは、「整理すること」で、見えなかった関係性や抜けを“見える化”することです。

そのときに役に立つのが、金額や用途別、アイテムごとに整理したマトリックスです。

たとえば、価格帯を縦軸に、用途別やカテゴリーごとを横軸にして並べてみる。
あるいは、「単体で選ばれる商品」と「他の商品とセットで選ばれる商品」を分けてみる。
──そうやって整理してみると、意外と空白が多いことに気づくことがあります。
• この価格帯に、特定の用途の商品だけがない
• ある用途に使える中価格帯の選択肢が極端に少ない
• 一番高い価格帯に属する商品が、他の商品とつながっていない

つまり、“売れていない”という現象を、個別ではなく「構造」で見る視点が生まれてくるのです。

もうひとつのポイントは、マトリックスが“比較と選択”を可視化するツールにもなること。
「AとB、どちらにしようか」と迷ってもらうためには、並べる土台が必要です。
その土台がなければ、比較されることなく、最初から選ばれないまま終わってしまう商品もあります。

整理とは、「売る順番を決めること」ではありません。
まずは、ラインナップ全体を判断できる状態にしてあげること。
マトリックスは、そのための地図のような役割を果たしてくれます。

第3章:整理すれば、伝え方が変えられる

商品をマトリックスで整理してみると、
これまで「よくわからないけど売れない」と思っていたものに対しても、
その位置づけや関連性が見えてくるようになります。

すると、今度は「どう伝えるか?」という視点が生まれてきます。

たとえば──
・この価格帯では“選ばれにくい”のではなく、“比較されにくい”だけだった
・ある用途の商品が孤立していたのは、他の商品との関係が言語化されていなかったから
・売れ筋の商品ばかりを前に出していた結果、それ以外が“伝わる場”を失っていた

このように、「整理された情報」は、伝え方の土台になります。
伝える順番・見せる組み合わせ・ラベルの言葉ひとつで、印象は大きく変わるのです。

たとえば、同じ商品でも──
「この商品は高いけれど長持ちします」ではなく、
「同じジャンルで比較すると、実は10年スパンでは一番コストパフォーマンスが高いんです」と伝える。
これは、事実の変換ではなく、“伝え方の設計”です。

整理されていないものは、どう伝えるかも定まりません。
逆に言えば、整理ができれば“まだ伝えられていない価値”に手が届くのです。

売るためだけじゃなく、ちゃんと伝えるために整理する。
その発想が、売れない商品との関係を変えていくかもしれません。

第4章:展示や紹介の“意味”を、チームで共有する

商品の整理や伝え方を見直す中で気づくのは、
「これは売れないけれど、置いてある意味がある」という商品が意外と多いということです。

たとえば、売れ筋商品の隣に置かれることで「比較されるために存在している」商品。
あるいは、選ばれることは少なくても「ラインナップ全体の印象を支えている」商品。
こうした存在には、数字には出ないけれど確かな意味があります。

ただ、それをチーム全体で共有できていないと──
「なんでこれ、まだ扱ってるの?」
「場所を取るだけじゃない?」
そんな声が出てきてしまいます。

商品そのものを守るためではなく、
意図のある展示・紹介ができるチームにするために
「この商品は、こういう意図でここにある」という認識を言葉にしておくことが大切です。

たとえば、こんなふうに整理してみることができます。
比較の起点になる商品:売るためというより、“選ばせる”ために必要
ラインナップの幅を感じさせる商品:安心感や多様性の演出に貢献
未来提案のための商品:いまは選ばれなくても、「こういう選択肢もあります」と伝える材料

こうした“語りの補助線”が共有されていると、営業や接客の現場でも
無理に売ろうとするのではなく、「どう見せればよいか」が明確になっていきます。

展示とは、在庫ではない。
展示とは、対話のきっかけであり、選択の幅であり、
「この会社は、どういう姿勢で商品を見せているのか?」というメッセージでもあります。

だからこそ、「なぜここにあるのか?」という問いと、それに対する答えを
チームで共有できているかどうかが、売れない商品との付き合い方を変えていくのです。

第5章:「売れるかどうか」ではなく、「どう扱うか」を判断できるチームへ

商品を整理し、見せ方を見直し、社内でその意味を共有していく──
そうした一つひとつの積み重ねが、チーム全体に変化を生みはじめます。

その変化とは、
「売れない商品をどうするか?」という話を、ただ感覚や前例で済ませずに
「今のラインナップに、この商品はどう位置づけられるのか?」
「この商品を扱う意味は、現時点でも十分にあるのか?」
と、自ら問い、判断する力が育っていくことです。

たとえば、こんな場面で違いが表れます。
• 「これはずっと売れてないから、もういいよね?」という声に対して、
 →「今は売れていないけれど、〇〇の比較軸として必要なんです」と返せる
• 「展示するには弱いよね」と言われたときに、
 →「展示というより、これは“対話の起点”として置いているんです」と位置づけを共有できる

このように、**商品の有無を“数字だけで決めない視点”**が生まれてくると、
売れない商品に対する会話そのものが変わっていきます。
誰かが一方的に決めるのではなく、現場とマネジメントが同じ地図を見ながら、
「扱い方そのもの」を戦略的に考えられるようになるのです。

大切なのは、「売るか、やめるか」の二択だけにしないこと。
ときに、“あえて置く”“あえて伝える”という選択もまた、有効な戦略になり得ます。

そのためには、問いを立て、整理し、伝え方を設計し、それを共有するプロセスが必要です。
そして、それを繰り返すうちに、チームは“売上を出す”だけではなく、
「判断できる組織」へと変わっていくのです。

まとめ:問い直す力が、商品にもチームにも変化を生む

「売れないものを、どうするか?」

この問いに向き合うとき、
私たちはつい“売上”や“数字”だけを判断基準にしてしまいがちです。

でも、売れていないからといって、すぐに「いらない」と決めてしまう前に──
その商品の存在が、選ばれるプロセスの中でどんな役割を果たしているのか。
ラインナップ全体の中で、何を支えていたのか。
そうした視点をいったん整理してみることには、十分に意味があります。

そしてその整理は、
伝え方や見せ方、さらにチームの中での共有や対話へとつながっていきます。

・なぜこれを展示しているのか
・誰にどう伝えたくて、どこに置いているのか
・その理由を、自分たちの言葉で説明できるか

それができるチームは、たとえ同じ商品ラインナップであっても、
「売る」ことだけでなく「扱う」ことそのものに意味を持たせることができます。

この取り組みは、劇的な改革ではありません。
でも、小さな問いを起点に、少しずつ見方を変えていくことで、
商品との関係性も、チームの判断力も、確実に変わっていくはずです。

売れないものをどう扱うか──その問いが、
自分たちのあり方を映し出す“鏡”になることもあるのです。

Pocket

「優しいね」と言われてきたあなたへ──“らしさ”を自分で選び直すということ

Pocket

1. はじめに

「優しいね」「しっかりしてるね」「落ち着いてるね」。
昔から、よくそんなふうに言われてきた。

もちろん、それを言ってもらえるのは嬉しいし、ありがたい。
実際、自分でも「そうありたい」と思ってきた部分はあるし、
その評価に違和感があるわけでもない。

でも時々、ふと考えることがある。
──これは“私”そのものなのか、それとも“役割”として身につけてきたものなのか。

たとえば、家族の中で自然と空気を読んだり、
職場で相手に合わせて言葉を選んだり。
気づけば「そう振る舞ってきた自分」がいて、
それがそのまま“評価”になっている気がする。

今回の記事では、そんな“長女っぽい”私を自認しているとあるクライアントさんが、
他者からの評価をどう受け取り、それをどう自分の中に位置づけていくのか

コーチングセッションで一緒に見つめ直した、そのプロセスをご紹介します。

2. 「長女っぽい」と言われる私のこれまで

今回ご紹介するクライアントさんは、自分のことを
「長女っぽいって、よく言われます」と表現しました。

話を聞いていくと、それが決してネガティブな意味ではなく、
これまでの人間関係の中で自然に身につけてきたスタイルであることが伝わってきました。

子どものころから
「しっかりしてるね」「空気が読めるね」「よく人に譲っているよね」と
言われることが多かったそうです。

特別頑張ってそうしてきたわけではないけれど、
気づけば人に気を配り、場に合わせて振る舞うことが“当たり前”になっていた。

その延長にあるのが、今の職場での評価です。
「優しい」「頼りになる」「落ち着いてる」など、周囲からの信頼を集めている。
そしてご本人も、その評価を概ね納得し、むしろ「ありがたいこと」として受け止めている。

ただ、そのうえでふと立ち止まったんです。
「これって本当に“私らしさ”なんだろうか?」
「もし私が“長女っぽくない人”だったら、どう振る舞っているんだろう?」と。

こうした問いは、自己否定から生まれるものではなく、
むしろ「今の自分を見つめ直す」という前向きな探求心から出てきたものでした。
そしてこの探求が、他者評価を“外の声”ではなく“自分の選択の結果”として受け止めていくプロセスの入口になっていきます。

3. 「落ち着いてるね」の奥にある感情と行動

クライアントさんは、職場でもよく「落ち着いているね」と言われるそうです。
プレッシャーがかかる場面でもいい意味でマイペースで、周囲に安心感を与えている──
そうした印象を持たれていることに、ご本人も納得している様子でした。

でも、本人の内側ではこんな感覚の時もあると言います。

「実はけっこう、焦ってるんですよね。
でも表に出さないようにしてるというか、
たぶん、出ないように“してる”んです。」

この言葉が出てきたとき、「落ち着いている」という状態の中には
“感情”と“行動”の二層構造があることが浮かび上がってきました。

外から見えるのは「行動としての落ち着き」。
でもその内側には、「揺れ」や「戸惑い」といった感情がある。
それらを無理に押し殺しているわけではないけれど、
ちゃんと見極めて、自分の中で「整える」ようにしている。

つまり彼女は、感情を“なくしている”のではなく、
感情を抱えたままでも、落ち着いて行動できる状態を
自分なりに作っていたということです。

この気づきは、彼女にとっても大きなものでした。
「ちゃんと感じてる自分」も、「落ち着いて動けている自分」も、
どちらも間違いなく自分なんだと認められたことで、
それまでよりも少しだけ、肩の力が抜けたように感じました。

4. 優しさと境界線──どちらも守っていい

クライアントさんは、「人に優しくしたい」という気持ちをとても大切にしている方です。
職場でもプライベートでも、相手の気持ちを思いやって接している。
その姿勢が、周囲からの「優しい」「気が利く」「頼りになる」といった評価にもつながっています。

でも、その“優しさ”が、時に自分自身を苦しくさせてしまうことがある。
たとえば、本当は余裕がないのに「大丈夫です」と言ってしまったり、
誰かのために行動しすぎて、自分の時間やエネルギーがすり減ってしまったり。

こんなふうに語ってくれました。

「“いい人でいたい”というより、“そういう自分でいたい”という気持ちなんです。
でも、その分、自分に無理させてるときがあるのもわかってて……。
気づかないうちに、自分の境界線が薄くなってるなって思うときがあるんです。」

この気づきもまた、とても大切なものでした。

人に優しくすることと、自分の境界線を守ること。
この2つは、相反するものではなく、両立していていいもの。
むしろ、自分をすり減らさずに人に接するためには、
「どこまでなら心地よく関われるか」という“優しさの半径”を知っておくことが必要なのかもしれません。

そして、それを知ることは、「自分を大切にする」という選択でもあります。
自分を雑に扱ったまま、他者に丁寧には接し続けられないからこそ──
優しさと境界線、どちらも守っていい。
このシンプルだけど奥行きのある前提を、彼女は少しずつ自分の中に育てはじめていました。

5. 評価は“土台”にも“呪縛”にもなる

「優しいね」「落ち着いてるね」「しっかりしてるね」──
クライアントさんが受け取ってきた評価は、どれも温かく、信頼のこもったものです。
そしてそれは、まさに彼女がこれまでしてきた選択と行動の積み重ねに対する“結果”でもあります。

本人が意識していたかどうかにかかわらず、
彼女は周囲に安心感を与えるような振る舞いを、自然と選んできた。
だからこそ、その評価に納得できるということは、
「そうしたくて、そうしてきたんだって、自分でも思えること」
という自分への信頼でもあるんです。

こうした見方に立つと、評価というものは
“他人から与えられるラベル”ではなく、
**「自分が育ててきたひとつの結果」**として捉え直せるようになります。

ぼくが一番大切だと思うのは、

自分の選択を肯定しながら、これからの選択も自由にできる。

ということ。

今までは「しっかりしてなきゃ」「落ち着いて見られてるから」──
そんな無言の期待に応えようとしていたかもしれない。
でも、評価を「過去の自分が築いてきたもの」として受け止められたとき、
そこに縛られる必要はないことにも気づけたんです。

「そういう自分でありたい」と思えば、これからもそうしていける。
でももし違う選択をしたくなったら、それも自分で決めていい。
評価を“自分の軸”にしながらも、進む方向は自由に選んでいい。

彼女の中に、そんな柔らかくもしなやかな自覚が芽生えていくのを感じました。

6. おわりに

「長女っぽいよね」と言われてきた彼女には、
人を思いやる力や、場を整える力が、自然と備わっていました。
そしてその力は、彼女自身が無意識のうちに選び、磨いてきたものでもあります。

他者からの評価は、外側からのラベルに見えるかもしれません。
でもそれは、自分が選んできた行動や姿勢の“積み重ね”に対する反応でもある。
だからこそ、その評価に納得できるということは、
**「私はそうしたくて、そうしてきた」**という自分への肯定でもあるんだと思います。

ただ、どんなにその評価がポジティブなものであっても、
それに縛られ続ける必要はありません。

これまでを肯定しながら、これからの選択は自由にできる。
そう思えることが、ほんとうの意味で「自分らしさ」を大切にするということかもしれません。

ぼくは、彼女のその姿勢にとても希望を感じました。

さて、ここまで読んでくださったあなたに、ひとつだけ問いかけを残して終わりにします。

あなたが今、大切にしている“らしさ”は、どんな選択の積み重ねからできていますか?

Pocket

「話すのが苦手」は変えられる──脳と心を整える“言葉の筋トレ”

Pocket

1. はじめに:話すのが苦手だと思っているあなたへ

「自分の気持ちをうまく言えない」
「何を話したらいいのか、頭が真っ白になる」
「会話の途中で、“これでよかったのかな?”と不安になる」

そんなふうに感じたことはありませんか?
もしあなたがそう感じているなら──安心してください。それは「あなたがダメだから」ではありません。
そして、それは変えていけるものです。

今回のテーマは、あるクライアントさんとのコーチングセッションがきっかけで生まれました。
その方がふと口にした「コミュニケーション、やっぱり苦手で…」という言葉から、
“話すこと”や“言葉にすること”について、改めて深く考える機会をもらったのです。

「話すのが得意な人」はたしかにいます。
でも、彼らが最初から“話す才能”を持っていたとは限りません。
むしろ、言葉にする力は、後天的に伸ばせるスキルだということが、心理学や脳科学の研究からも明らかになってきています。

このブログでは、「話すのが苦手」と感じている人が、
どうすれば少しずつ“言葉にする力”を育てていけるのか──
そのヒントを、科学的な根拠実際の気づきを交えて紹介していきます。

2. 「話す力」は、あとからでも育つ

「自分は話すのが苦手なんです」
そう言う人の多くが、「話すのが得意な人は、もともとそういう素質がある」と思い込んでいるように見えます。
でも実は、“話す力”や“言葉にする力”は、生まれつきの才能ではなく、後天的に伸ばすことができるスキルです。

これは、脳科学でいう「神経可塑性(Neuroplasticity)」という概念とも関係しています。
神経可塑性とは、経験や反復によって脳の神経回路が再編成され、機能そのものが変わっていく仕組みのこと。
つまり、言葉にするという行為を繰り返すことで、私たちの脳は「言語化の通り道」を強化し、よりスムーズに考えや気持ちを言葉にできるようになるのです。

これは、ぼく自身がコーチングの現場で日々実感していることでもあります。
たとえば、最初のころは「うまく話せない」「どう伝えればいいかわからない」と戸惑っていた方が、
セッションを重ねるにつれて少しずつ変化していくことがあります。

その変化は、単に話す内容が整っていくというよりも、
**「行動につながりやすい視点の持ち方」や「行動につながりやすい言葉遣い」**が上手くなっていく、という形で現れることが多いです。

つまり、話し方や言葉の選び方が変わることで、
考え方にも影響が生まれ、最終的には行動まで変わっていく。
これもまさに、言語化を通じて脳が変化し、現実に働きかける力が育っていくプロセスだとぼくは感じています。

「話す力」がある人というのは、才能があるからではなく、
そうした積み重ねを経て、“言葉を使って前に進む”回路ができている人なんだと思います。

そんなふうに、言葉にする力は筋トレのように少しずつ育っていきます。
次の章からはその“トレーニングの仕方”を、科学と実体験の両面からご紹介していきます。

3. 言葉が、こころの“混線”をほどいてくれる

「なんだかモヤモヤする」
「理由はよくわからないけど、気分が沈んでる」

こうした状態のとき、感情や思考が“混線”していることがあります。
でも、そんなときに「なんで自分はモヤモヤしてるんだろう」と問いかけてみたり、
「ちょっと疲れてるかもしれないな」とつぶやいてみたりするだけで、
気持ちが少し落ち着くことってありませんか?

実はこれ、偶然ではありません。

感情を言葉にすることには、脳科学的にもはっきりとした効果があります。
アメリカの研究者マシュー・リーバーマンの実験によると、
自分の感情を言葉で表現する(アフェクト・ラベリング)と、感情の中枢である扁桃体の活動が低下することが分かっています。
つまり、「ムカついてる」「不安だ」「なんか疲れてる」と言葉にするだけで、気持ちが整理されやすくなるということ。

言葉にすることは、単なる“説明”ではなく、
感情と距離をとるための技術でもあるのです。

ぼくがセッションでご一緒している方の中でも、
「言語化するだけで、自分の気持ちがはっきり見えてきた」と話してくれる場面があります。
一見ネガティブに見える気持ちも、
「ちゃんと自分にとって意味のある感情だったんだな」と腑に落ちるだけで、ぐっとラクになることがあるんですよね。

大切なのは、“うまく話す”ことではなく、
いま感じていることを、そのままの言葉で置いてみること
それだけでも、心は少しずつ整っていきます。

4. 話すことが怖いあなたに、ちょっとした入口を

ここまで読んで、「言葉にすることって大事なんだな」と感じてくれた方もいるかもしれません。
でもきっと、こんなふうにも思うはずです。

「でもやっぱり、言葉が出てこないんだよな」
「どこから手をつけていいのか、わからない」

そんなとき、いきなり“うまく話そう”としなくていいんです。
大切なのは、**まず「ちょっと言ってみる」「ちょっと書いてみる」**こと。
それだけで、脳の中にはちゃんと“言語化の回路”が少しずつ育っていきます。

たとえば、こんなシンプルなことから始めてみてはどうでしょう?
ここからは、ぼくがクライアントさんに実際におすすめしている“言葉のストレッチ”を3つ紹介します。

📓 一言日記をつけてみる

「今日は〇〇でうれしかった」
「なんとなく疲れてた。たぶん△△のせい」
一言でいいんです。正確じゃなくても、きれいな言葉じゃなくても大丈夫。
「いまの自分にとってリアルな言葉」を出してみることに意味があります。

🗣 声に出して読んでみる

書いたことを、少しだけ声に出して読んでみるのもおすすめです。
自分の言葉を、自分の耳で聞いてみる。
それだけで、「あ、自分はこう思ってたんだな」と気づけることがあります。

💬「正しい言い方」より「出すこと」が大事

話すのが苦手な人ほど、「どう言えば正しいんだろう」と考えすぎてしまいがち。
でも、本当に必要なのは**“出してみる”こと**です。
少しくらい違和感があっても、曖昧でも、まずは出す。
そこから少しずつ、言葉の輪郭がはっきりしてきます。

こうした小さな「言葉のストレッチ」を続けていくうちに、
「前より言いやすくなったかも」と感じる瞬間が出てきます。
そしてその小さな成功体験が、自信や前向きな感覚につながっていきます。

“話すのが苦手”という自分に優しく向き合いながら、
まずは「出すことから始めてみる」──その選び方こそ、
言葉とのいい関係をつくる第一歩になるんじゃないかと思います。

5. さいごに──言葉は、あなたの味方になる

「話すのが苦手」
そう思う気持ちは、決して否定すべきものではありません。
その背景には、まじめさや、慎重さ、人への思いやりがあることも多いからです。

でも同時に、「話すのが苦手」と決めつけてしまうことで、
本当は届けたかった自分の思いや、本音や、小さな願いをしまい込んでしまうのも、少しもったいないなと思うのです。

このブログで紹介してきたように、
言葉にする力は、生まれつきの才能ではなく、あとから育てることができる力です。
神経可塑性の考え方が示すように、言語化を繰り返すことで脳の回路は変わり、
言葉は少しずつ、あなたの中で“使えるツール”になっていきます。

その変化は、たとえ小さくても、ちゃんと実感できる形で現れてきます。
・気持ちが整理できた
・人と話すのがちょっと楽になった
・自分のことを、少し前より理解できた気がする
そんな体験を、あなたにも味わってほしいと思っています。

言葉は、うまく使わなければいけない“武器”じゃありません。
自分自身を守ったり、整えたりする“味方”になってくれるものです。

最初の一歩は、たった一言からで十分です。
自分のために、自分の気持ちを、ちょっとだけ言葉にしてみる。
その繰り返しが、未来のあなたにとって、きっと大きな支えになってくれるはずです。

Pocket

行動量とフォローアップ──営業を“継続できる人”になるためのヒント

Pocket

1. はじめに──「いま動くべき」営業とは?

「とにかく動け」「数を打てば当たる」──営業の世界では、そんな言葉を聞くことがあります。たしかに行動量は成果に直結する大切な要素です。でも、それだけで本当に成果が出るかというと、現実はもう少し複雑です。

9月末決算のとある営業パーソンとの先月(5月)のコーチングセッションで、
あらためてそのことを感じるやりとりがありました。
「今年度、残り数ヶ月。いま動けなきゃ、たぶん流れる」
この感覚には、“焦り”というより、「いまだからこそ動く理由」が込められています。

「いま動くべき」とは、単にがむしゃらに動くことではありません。
自分の目標やタイミングを見極めたうえで、“意味のある一手”を積み重ねていくこと。

この記事では、営業の現場で“勢い”をつくりながら、信頼を積み重ねていくスタイルについて紹介していきます。

2. “いま動くべき理由”が明確な人は、行動に軸がある

「いま動かなきゃ」──そう思っても、どこから手をつければいいかわからない。
そんなとき、多くの人は“動くこと”より先に、“迷うこと”に時間を使ってしまいます。

先月のコーチングセッションで、ある営業パーソンと一緒に6月・7月の見込み案件を整理しました。
動くべきタイミングや、注力すべき対象が明確になってくると、「この期間は営業強化のフェーズ」と、自分なりの方針が定まっていきました。

行動量を出せる人、継続して動ける人には、共通して「判断の軸」があります。
たとえば──
• 新規だけでなく、「過去の商談相手」にもあえてアプローチしている
• 同僚への相談や、社内の協力体制づくりを“計画的に”進めている
• 「このタイミングで30社フォローアップ」と数字を明確に定めている

動く理由が曖昧なままだと、行動も散らかります。
でも、「この期間で何を掴みたいか」が見えてくると、迷いが減り、継続しやすくなる。
行動量が安定して出せる人ほど、自分なりの判断軸を持っているものです。

3. 行動が続く人の共通点──“リズム”を自分でつくっている

行動量は、気合や気分に頼っていると長続きしません。
続けられる人は、特別な意志力があるわけではなくて、自分なりの“リズム”を持っていることが多いです。

たとえば、先ほど紹介した営業パーソンの場合。
「今月中に30社フォローアップする」と数字を明確に掲げた上で、
• 朝イチで同僚に相談する
• 自分のスキルを求めてくれそうな顧客に、順番に声をかけていく
• 営業チームにもフォローアップリストを渡して協力体制をつくる

など、毎日の動きに小さな仕掛けを入れてリズムを整えることにしました。

ポイントは、「一気にやる」ではなく「自然と続く流れをつくる」こと。
予定が入らない日でも「誰かに相談する」「ひと声かける」といった小さな動きを積み重ねることで、行動の流れは止まりにくくなります。

そしてこのリズムは、周囲との関係にも波及します。
社内の誰かを巻き込んで動ける人は、“相談できる関係性”も日々の行動で育てているのかもしれません。

4. フォローアップは「紹介」と「信頼」の起点になる

フォローアップという言葉には、どこか“おまけ”のような印象があるかもしれません。
でも、実際の現場ではむしろ、**フォローアップこそが「信頼関係の本番」**と言える場面が多くあります。

一度やりとりをしたものの、その後話が止まってしまっているお客様。
その存在を「まだ見込みが薄い」として放置するのか、
「今こそもう一度声をかけるチャンス」と捉えるのかで、次の動きは大きく変わります。

今回のセッションでは、過去の商談相手や既存顧客へのアプローチを改めて見直しました。
そのなかで出てきたのが、**「そういえば、あのときの●●さんにも連絡してみよう」**という気づき。
実際、このひと声が関係性の再接続につながることもあります。

また、社内に向けて「こういうお客様、今いませんか?」と具体的に聞いてみることで、
思いもよらない紹介や新しい情報が入ってくるケースもある。

紹介は、狙って得るものではなく、日々の積み重ねの中から自然に返ってくる、信頼の先にある“ギフト”のようなものです。

フォローアップとは、「売り込む」ではなく、「気にかけている」という姿勢を示す行為。
それが結果的に、紹介や次の商談の“種”を育てる動きになっていきます。

5. 「売る営業」より「思い出される営業」

目の前の数字を追いかけていると、「どう売るか」「どう契約を取るか」に意識が偏りがちです。
でも、実際の現場では──とくに関係性がものを言う営業では──**「売ろうとしない人」の方が信頼される**という場面もよくあります。

たとえば、「あのとき丁寧に話を聞いてくれた人」とか、
「こちらの状況をよく覚えてくれていた人」って、時間が経ってもふと“思い出す”ものです。
そして、そのときに“また声をかけよう”と思ってもらえるかどうかが、大きな差を生みます。

今回のセッションでも、このクライアントさんが元々大事にしてきた「思い出される関係性」を意識した動き方を、あらためて整理していきました。
新しい提案を出すことだけが営業じゃない。
必要なときに「そうだ、この人に相談してみよう」と思ってもらえる状態をつくる。
そのために、普段からのフォローアップや、小さな接点づくりを積み重ねていくんです。

「自分のスキルで誰かの役に立ちたい」「ちゃんと価値を届けたい」──
そんな思いをもって動いている人ほど、その姿勢は自然と相手に伝わります。
そして、相手の記憶の中に“信頼できる誰か”として残っていきます。

“売るための営業”ではなく、“思い出してもらえる営業”。
それは、焦らず・途切れず・気にかけ続ける人にしか、つくれない関係なのかもしれません。

6. おわりに──動き続けることが、信頼を育てる

営業という仕事の面白さは、「今」の行動が、ずっと先の未来に返ってくるところにあります。
すぐに成果が出ることもあれば、数ヶ月、あるいは数年越しで「またお願いしたい」と声がかかることもある。
その“時差のある成果”を信じて動き続けられるかどうかが、大きな分かれ道になるのかもしれません。

今回のセッションを通じて感じたのは、
行動量を増やすことも、リズムを整えることも、フォローアップを丁寧にすることも、
すべてが「思い出される存在であり続ける」ための工夫だということです。

営業は、“いま売る”だけがすべてじゃない。
むしろ、“また声をかけたいと思ってもらえる関係性”こそが、その人らしい営業スタイルの中心にある。
その関係性は、焦らず・丁寧に・動き続けることで育っていきます。

目の前の一歩を重ねることで、未来の誰かがあなたを思い出す。
それが営業の本質のひとつだと、ぼくは思っています。

Pocket

PAGE TOP